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KL2020・OD・037
遺留分減殺請求を専門家に依頼する際に、多くの方が検討するのが「弁護士」「司法書士」「行政書士」といった法律の専門家かと思います。
このうち最も費用面で安価といえるのが行政書士ですが、他の士業と比べて業務の範囲が限られていることから、依頼の前には注意が必要になります。
今回は、遺留分減殺請求を行政書士に頼む際の注意点と題して、行政書士の業務範囲と費用相場、遺留分減殺請求を依頼する際におすすめな専門家についてご紹介していきたいと思います。
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目次
遺留分減殺請求といえば弁護士や司法書士に依頼するという方が多いですが、行政書士に依頼することも可能なのでしょうか。結論から言えば、一部の遺留分減殺請求手続に関しては、行政書士にも依頼が可能と言えるでしょう。
まずは、遺留分減殺請求において行政書士ができる業務と、行政書士に依頼した際のメリットなどをご紹介いたします。
遺留分減殺請求で行政書士ができることは、実はあまり多くありません。行政書士は、基本的には様々な法律文書の作成・代理・相談業務を行う士業ですが、相続の場面では主に「遺言書」の作成や「遺産分割協議書」の作成を行う専門家です。
大雑把に言うならば、相続においては「既に当事者間で話がまとまっていることを書面に残す仕事」しかできないと考えていただくのが良いかと思います。
そのため、遺留分減殺請求では、行政書士は「遺留分減殺の意思表示」すなわち内容証明郵便の作成・送付業務を行うことはできますが、実際の交渉や、裁判所へ提出する書類の作成・代理等を行うことはできません。多少のアドバイスを求めることはできるかもしれませんが、基本的にはあなた自身で残りの遺留分減殺請求手続きをすることになります。
行政書士に遺留分減殺請求を依頼するメリットとしては、何よりも費用が安価であるという点に尽きるかと思います。
内容証明郵便の作成・送付等であれば数千円~3万円程度、遺留分等の問題が解決した際の合意書作成費用も2万円~4万円程度(公正証書にする場合は1万円程度の加算料金あり)と、他の専門家に比べて安価な設定にしている事務所が多いといえます。
自分で全ての手続きを行うのはハードルが高いという場合に、遺留分減殺の意思表示だけでも専門家に代わってもらうとその後の手続きの負担も減りますし、法的に不備のない内容証明郵便が出来上がるので、裁判等になってもある程度安心して挑むことはできるでしょう。
そのため、とりあえず専門家を入れておきたいという方の場合は、行政書士に遺留分減殺のサポートを依頼するのも間違いではありません。
行政書士は、大きく以下の3つの業務を行う法律の専門家です。
各省庁や市区町村役場などに提出する書類の作成等がこの業務にあたり、いわゆる許認可に関わる書類を作ったり提出したりといったことを依頼することができます。
遺産分割協議書や、各種契約書の作成等がこの業務にあたり、権利の発生・変更・消滅などの効果を生じさせる意思表示を目的とする書面を作ったり提出したりということが依頼できます。そのため、行政書士は、内容証明郵便を作成したり公正証書を作成する際の代理人として活躍します。
あまり馴染みがないかもしれませんが、各種議事録や会計帳簿、実地調査に基づく各種図面類の作成なども、行政書士の業務に含まれています。
この他にも様々な法律文書の作成・代理・相談等ができるのが行政書士ですが、他の法律によって制限されている業務はできないとされており、例えば未だにまとまっていない遺産分割協議など、将来的に法的紛議が発生することが予測できる状況においては書類の作成・相談・助言等の業務が制限されることになります。
先ほど簡単にはご紹介しましたが、改めて、行政書士の費用相場についてご紹介しましょう。まずはこちらのグラフをご覧ください。
最小値は2,000円、最大値は200,000円、最頻値は20,000円(39件)というデータが出ています。ただし、どういった分野の内容証明郵便かは不明なので、行政書士に内容証明郵便を頼む際の大体の目安として考えていただければ良いでしょう。
こちらは最小値3,000円、最大値810,000円、最頻値は50,000円(69件)となっています。
他にもこちらの統計で様々なデータが分かりますが、遺留分減殺請求を行政書士に依頼する場合であれば、内容証明郵便作成・送付を頼むのであれば2万円程度、その後の遺産分割協議書や合意書などの作成を頼むと5~6万円程度が相場と言うことができるかと思います。
これらはあくまで参考程度の相場になりますので、具体的なサービス内容や金額は事務所によって大きく異なることが予想されます。
したがって、行政書士事務所に遺留分減殺サポートを依頼する場合には、どういった内容がサービスに含まれるかを確認するとともに、他の事務所と比較して、あなたの納得する費用で収まっているかを充分に検討するのが良いでしょう。
行政書士に遺留分減殺請求を依頼する際の注意点や費用相場については以上のとおりになりますが、遺留分減殺請求を専門家に依頼する際に強くおすすめするのが弁護士です。
ここでは、遺留分減殺請求を弁護士に依頼するのが断然おすすめな理由を、その業務内容に沿ってご紹介したいと思います。
弁護士と行政書士の大きな違いは、遺留分減殺請求を始めとする法的な手続きについて、弁護士は代理権に制限がないのに対し、行政書士は基本的に裁判所に関わる書類の作成等が一切できないという点にあります。
行政書士の主な業務は各種法律文書の作成ではありますが、他の法律によって規定されている業務を代行することはできず、裁判所に提出する書類の作成や代理といった業務は弁護士(一部司法書士)の業務となることから、これをすることはできません。
遺留分減殺請求が調停や裁判まで行かずに決着するのであれば、行政書士に内容証明郵便を作成・送付してもらって、自分で手続きするのも良いかもしれませんが、紛争の気配がある場合には、始めから弁護士に依頼するほうが、その後にどんなトラブルが起こっても安心かと思います。
参照元:行政書士と弁護士の比較
弁護士 | 行政書士 | |
主な業務 | 法律業務全般法律相談、交渉、和解、代理、法律文書作成、訴訟等 | 法律文書の作成文書作成にかかる代理、相談、助言等 |
裁判の代理 | 制限なし | 一切不可(書面作成等も不可、ただし相続人調査等の提出用の資料収集は可) |
得意とする法分野 | 法律全般憲法、民法、刑法、商法(会社法)、行政法、民事訴訟法、刑事訴訟法、選択科目(破産法、知的財産法、労働法、環境法など) | 行政法特化憲法・民法・商法・行政法(行政法総論・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法) |
得意な業務 | 法律相談裁判外での交渉・和解等 裁判手続き 法律文書作成 その他一切の法律業務 |
法律文書作成許認可等の手続代行 在留資格等の手続代行 |
遺留分減殺請求を行う場合、弁護士以外にも司法書士という選択肢があります。しかし、それでもなお弁護士をおすすめする理由としては、弁護士はどんな分野を得意としていても、基本的に民法への理解が深いという点に尽きるでしょう。
遺留分減殺請求は民法1028条~1044条に詳細な規定が置かれており、この程度の条文数であれば、司法書士でも難なく遺留分減殺請求ができるようにも思えますが、実際に遺留分減殺請求を行う場合には、遺留分以外の民法の規定、特に882条以下1044条までの相続編の規定について、漏れなく確認し要件を満たしていなければ成功率は上がりません。
また、司法書士は140万円を超える事件の受任ができませんが、弁護士であればそのような制限はなくどんな事件でも扱うことができるため、その分交渉や訴訟の経験も豊富である可能性が高いといえます。
したがって、遺留分減殺請求の着手を考える時点で相続人間が既に不仲であったり、激しく争っている場合には、間違いなく弁護士に遺留分減殺請求を依頼するほうが確実かと思います。
遺留分減殺請求を行政書士に依頼することは、遺留分減殺の意思表示のみであれば可能ですが、その場合はあなた自身が残りの手続きを自力で行う必要が出てきます。その分費用も抑えられるので、とりあえず専門家を入れておきたい方にはおすすめです。
しかし、遺留分減殺請求の成功率を上げたい場合には、より効果的なのは弁護士への依頼かと思います。本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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