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KL2020・OD・037
『遺留分は残された者が持つ正当な権利』とは分かっていても、どうしても財産を渡したくない身内がいる。そんな状況で頭を悩ませている方は意外と少なくないようです。
ただ、いくら法律で決まっていることだと言っても、遺留分を請求できる権利を持つ方からの請求(遺留分減殺請求)がない場合などは遺留分の効果は生じないので、どんな場合でも必ず行使されるる権利ではないということを覚えておくと良いでしょう。
当記事では、遺留分を渡さなくて良い事例や、渡さずに済む事例を紹介していきますのでぜひ参考にしてみて下さい。
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目次
まず大前提ですが、遺留分とは相続人が法律上要求できる最低限度の相続財産の割合であって、相続人が主張しない限りは支払う必要はありません。
相続人が遺産分配に不服がある場合は遺留分減殺請求といって、遺留分として民法で定められた限度で財産を要求することは可能ですが、それはあくまで権利であって義務ではないのです。
そのため、遺留分を渡さなくて済むかどうかは相続人が遺留分減殺請求をするかどうかの確認がとても重要になります。
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
引用元:民法891条
これら遺産を不正に手に入れるための行為を働いた相続人は相続欠格となり強制的に相続人の権利を失います。
遺留分は相続人の権利なので、相続人が相続放棄をしている場合は、すでに相続人ではなくなっており、払う必要がありません。
遺留分を受け取る権利がある相続人は配偶者と子供と親になるので、兄弟姉妹には遺産分割が不服だからと言って遺留分減殺請求をする権利はありません。
兄弟姉妹にも一応被相続人の相続財産の形成に貢献した場合に、相続財産の受け取りを主張できる寄与分というものもありますが、遺言の内容が優先されるため、支払わなくても問題ありません。
遺産相続の遺言を作る前にあらかじめ身内で話し合い、遺留分を渡したくない方に権利を行使しないよう約束できれば、遺産相続の際の揉め事を回避できる可能性があるでしょう。
ただし、上記約束には法的効力は生じません。民法では、相続開始前における遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要だからです。
(遺留分の放棄)
第千四十三条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
引用元:民法1043条1項
この方法ですんなり和解というのは難しいかもですが、話し合いで解決できそうなら、一番手っ取り早い解決策になります。
遺留分の計算は「相続開始の時に有した財産に贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して行う」という民法のルールがあります。
【民法 第1029条】
遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
引用元:民法第1029条
例えば権利者の借金を、被相続人が300万円肩代わりしている場合、その権利者の遺留分の金額は借金の300万円を引いた金額で計算されます。
留分減殺請求には期限があり、相続開始から10年もしくは相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年もしくは相続開始から10年までという決まりがあります。
【民法 第1042条】
減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から11年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から1010年を経過したときも,同様とする。
引用元:民法第1042条
この期限が過ぎてしまえば遺留分減殺請求をする権利は失われますので、遺留分を渡す必要はありません。
ただし、これは10年以上その権利者と音信不通が続くことが前提のなため、その点が危うい場合は注意が必要です。
被相続人が相続人から激しい虐待や侮辱を受けていたり、非行を繰り返えされ多大な損害を受けている場合、家庭裁判所に相続人の廃除の申立てが可能です。
申立方法には被相続人本人が申し立てる方法と遺言で遺言執行者に申し立ててもらう2パターンがあります。
裁判には大きな手間と時間が必要になるため、遺言執行者にお願いする場合は遺言書を作成する前に必ず相談して、手続きを行ってもらう手配をしておきましょう。
家庭裁判所に、遺留分を渡したくない推定相続人の廃除の申立てを行います。廃除が認められれば市町村役場に届け出をして、遺留分を渡したくない推定相続人の戸籍の身分事項に相続人廃除の記載をしてもらい、廃除手続きが完了します。
推定相続人が廃除申立てに対して異議を申し立てた場合は裁判の判断次第ですが、相続権が剥奪されることは少ないようです…。
基本的に上記と同じ手続きを遺言執行者が行うことになります。なお、遺言執行者は「未成年」「破産者」以外であれば知人や友人といった身内以外の人を選んでも何の問題もありません。
そのため、もし周りに適した材な人物がいない場合は、弁護士や司法書士などの専門家にお任せしておくと手続きがスムーズに運べ、時間の節約になるでしょう。
遺留分は権利だからと言って必ず行使されるわけではありません。当記事で紹介した通り例外もいくつか存在しています。
どうしても遺留分を払いたくない相手がいる場合、この記事が参考になれば幸いです。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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