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KL2020・OD・037
成年後見制度とは、認知症などによって判断能力が低下し、自分では適切に財産管理できなくなった人が、第三者である「成年後見人」に財産管理をしてもらうための制度です。
成年後見制度は、本人の判断能力が衰えた後に利用できる『法定後見制度』と、本人の判断能力が正常なうちから利用できる『任意後見人制度』の2つに分けられます。
さらに、法定後見制度は本人の判断能力の程度に応じて、『後見』『保佐』『補助』の3類型に分かれます。それぞれ成年後見人(以下、後見人)に認められる権限が異なるので、正確な知識を持っておくことが大切です。
以下では、成年後見制度の内容やメリットデメリット、利用の流れなどをご説明します。
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目次
成年後見制度には『法定後見制度』と『任意後見制度』の2種類があります。
法定後見制度は、本人の判断能力が低下した後に、親族などが家庭裁判所に申し立てをすることによって、後見人を選任してもらう制度です。本人が元気なうちは、法定後見制度を利用できません。後見人は家庭裁判所が指定するため、本人に決定権はありません。
法定後見人制度はさらに、本人の判断能力低下の程度に応じて以下の3類型に分けられており、この中から適切な制度が選択されます。
後見人に認められる権限が大きいものから順に、後見、保佐、補助となります。
任意後見制度は、本人が元気なうちからに後見人になってもらう人を選んで『任意後見契約』を締結し、後見人に与える権限(代理権など)の内容を明らかにするものです。
任意後見契約の契約書は、公正証書として登記する必要があります。
将来、本人の判断能力が低下して実際に後見人が必要となった際は、後見人の予定者などが家庭裁判所に対して『任意後見監督人』の選任申し立てを行います。任意後見人は任意後見監督人による監督のもとで、契約によって定められた財産管理業務を行うことになります。
法定後見制度の『後見』『保佐』『補助』の3類型について、詳しく見ていきます。
後見は、本人の判断能力低下の程度がもっとも著しく「常に判断能力を欠く状態が継続している場合」に適用されます。認知症が進行し、自分ではほとんど正常な判断ができなくなっている場合などが、これに当たります。家庭裁判所が後見人を選任する際、本人の同意は不要です。
後見の場合、本人の判断能力がないぶん後見人の権限が強化されており、以下のような権限が認められます。
保佐は、本人の判断能力が「著しく不十分」である場合において適用されます。判断能力が全くないわけではないけれど、一人では適切な財産管理ができないような状態が、これに当たります。後見のケースと同様、保佐開始の審判において、本人の同意は不要です。
保佐おいて後見人に認められるのは、以下のような権限です。
民法13条の定める一定の重要な行為について、同意権が認められます。具体的には、貸付金の元本の受領や借金、保証、不動産の売買や増改築、訴訟、贈与契約、相続の単純承認や相続放棄などの行為がこれに当たり、保佐人が同意しないものは取り消すことが可能です。
上記の一定の重要な行為について、本人が単独で行った場合には、後見人による取り消しや追認が認められています。
代理権は、家庭裁判所に申し立てをして認められた際に、必要な範囲で付与されます。
補助は、本人の判断能力低下の程度が「不十分」である場合に適用されます。親族など、本人以外が補助人の選任申立をする際は、本人の同意が必要となります。
補助では、本人にある程度判断能力が残っているという前提があるため、後見人の権限は3類型の中で最も弱く、認められている権限は、
のみです。
補助人による上記権限はあくまで家庭裁判所の認めた範囲に限られます。そのため、範囲外の行為について上記権限を行使するためには別途家庭裁判所への申立てが必要です。なお、補助人に権限を与えることができるのは、民法13条の定める特定の重要な行為についてのみです。
成年後見制度には、以下のようなメリットがあります。
後見人が本人の財産を管理処分できることが、第一のメリットです。
例えば、介護施設に入るお金を用意しなければならないとき、本人の自宅や他の財産を売却しようにも、本人の判断能力が低下している場合は適切に売買の手続を進められません。権利をもたない親族は勝手に売ることもできません。そのようなときに後見人が選任されていれば、代理権によって財産を処分して本人のために使うことが可能となります。
本人の判断能力が低下していると、悪徳業者などに騙されたり、自分に不利な条件の契約をしてしまったりする可能性があります。後見人が選任されていれば、取消権を行使して契約を取り消すことができます。
高齢者の判断能力が低下してくると、親族などが本人の財産を使い込んでしまうことが考えられます。後見人が選任されている場合は、すべての本人の財産を成年後見人が管理するので、第三者が勝手に使うことは不可能となります。
成年後見制度には以下のようなデメリットもあります。
成年後見制度は「無料」ではありません。
まず、申し立ての際に費用が発生します。家庭裁判所に納める収入印紙代(800円)と連絡用の郵便切手、後見登記用の登記印紙(2000円)の他、診断書代などもかかります。
成年後見人が選任されてからは毎年、後見人への報酬も発生します。
いったん成年後見人が選任されると、自由に解任することはできません。親族が後見人に不信感を抱いたり、後見人への報酬がもったいないと感じることがあるかもしれませんが、「気が変わった」などの理由で後見人を解任することはできませんので注意が必要です。
成年後見人が選任されると、本人のすべての財産を後見人が管理し、本人にとって必要なことにしか出費ができなくなります。そのため、相続人予定者にとっては硬直的で不便と感じるケースがあります。
遠方から子どもが親の介護施設に面会に来るとき、交通費や宿泊費を出してもらえないことが原因で子どもと後見人が対立してしまうようなケースもあります。
成年後見制度を利用するときには、以下のように手続きを進めます。
家庭裁判所に提出する必要書類は以下の通りです。
書類を揃えたら、家庭裁判所で審判開始の申し立てを行います。上記の書類を提出し、印紙、郵便切手などの納付をすることで、申立てを受け付けてもらえます。
審判申立後、家庭裁判所の調査官による調査が行われます。本人が入院している施設まで調査官が面会に来て様子を確認するケースもあります。
調査の結果、後見人が必要な状態と判断されると、家庭裁判所が後見開始の審判を行い、後見人が選任されます。親族間に争いがない場合には、親族から後見人が選ばれることもありますが、近年では親族が後見人になるケースは減少しています。
後見人が選任されたら、本人の財産すべてを後見人に預けます。その後は後見人が本人の財産管理や処分、身上監護(入所する施設の決定や手続き)などを行うこととなります。
高齢化などにより判断能力が低下してしまうと、どこにどのような財産があるかわからなくなってしまうことも多いでしょう。きちんと財産を保全し本人のために使うために、積極的に成年後見制度を利用すべきです。
ご自身だけでは手続きの進め方や後見人の選定に不安がある場合は、相続問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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