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KL2020・OD・037
略式起訴(りゃくしききそ)とは、簡易的な刑事裁判(通常の裁判のように弁論が行われず、書面審理が行われる)によって罰金刑を確定するための刑事手続、起訴の1つです。
法務省の2017年の犯罪白書によると、送検された112万4,506人のうち略式起訴された人員は26万4,934人で23.6%でした。
通常の起訴を受けた被告人は8万7,735人です。この記事では下記の4点について解説します。
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目次
略式起訴とは、起訴処分の1つ。
軽微な事件に限りますが、検察官が略式手続で処理することを決定し、被疑者がこれに同意すれば通常の刑事裁判よりも簡略化された裁判手続によって事件処理が行われます。
引用元:法務省|検察庁と刑事手続の流れ
ここでは略式起訴の目的、前科、メリット・デメリットについて解説します。
略式起訴の目的は、軽微な事件について簡易・迅速に処理すること。
略式ではない起訴(公判請求)が行われる場合、正式裁判が開かれ、審理は判決まで最短でも1~2ヶ月ほどの時間がかかります。
しかし、罰金刑で済むような軽微な事件にまですべて正式裁判を行うことは非効率的ですし、被告人、弁護人、検察官、裁判官など参加者すべての負担も重くなります。
こういった負担軽減を図るために、軽微な事件で一定の条件を満たしたものについては、略式起訴という簡略な手続きが用意されているのです。
略式手続において有罪判決を受けた場合は前科がつきます。
略式起訴は、手続きが簡略化されただけで刑事裁判が行われることに違いはなく、無罪判決は予定されていないので、手続きをした時点で必然的に前科がつくものと考えられるでしょう。
なお、略式起訴では起訴事実に争いがないことが通常です。
略式起訴の対象となるのは法定刑が100万円以下の罰金である犯罪です。
2017年の犯罪白書によると、略式命令請求(後述)が公判請求(刑事裁判)より多い犯罪は、傷害罪、道路交通法違反、廃棄物処理法違反です。
また、軽微な迷惑防止条例違反や、盗撮、公然わいせつ罪なども略式起訴で処理することが可能です。
被告人からみた略式起訴のメリットは、身柄が早期に解放される点です。
通常の刑事裁判の審理期間はどんなに短くても1~2ヶ月はかかりますが、その間身柄が解放されなければ被告人の社会復帰はどんどん難しくなります。
略式起訴であればこのような長期の審理は行われず、起訴された日に釈放されますので、被告人の負担が相当に軽くなるのが分かると思います。
略式起訴のデメリットは、書面のみの審理であるため、供述調書にない被告人の言い分や弁解は聞いてもらえないということです。
そのため、裁判所にきちんと言い分を聞いてもらい、有罪・無罪を緻密に判断してもらいたいという場合は略式起訴に同意するべきではないでしょう。
もし、被疑者が略式起訴に同意し、略式命令が下されたとしても、告知から14日以内に正式裁判の請求を行うこともできます。
略式起訴には以下3つの要件があります。
上記の要件を満たした場合に、検察は略式起訴し、裁判所が書面審理を行って、略式命令という形で判決が下されます。
略式起訴の要件の1つは、簡易裁判所管轄の事件であることです。簡易裁判所は、罰金や科料の刑に当たる犯罪で比較的軽微な事件の裁判権を持っています。
例えば、殺人などの重大事件は簡易裁判所に管轄がないため、略式起訴で処理することはできません。この場合地方裁判所で正式な刑事裁判が行われることになります。
略式起訴は軽微な事件に限り、刑事裁判を簡略化するためにある規定されています。具体的には法定刑が100万円以下の罰金・科料に相当する罪に限ります。
前述した通り、殺人などの死刑・懲役を含むような重大事件には適用されません。
略式起訴は検察官のみの判断ではできません。被疑者が略式起訴で処理することに同意することが条件です。
そのため、略式起訴を行う前には必ず検察から被疑者へ、略式起訴の説明と意思確認を行います。
正式な裁判で弁論を行い、裁判官に主張したいことがあるのなら略式起訴を拒否することも可能です。
また検察、被疑者の意思で裁判所へ略式請求を行っても、裁判官が裁判を行うのが適切であると判断すれば裁判が行われます。
仮に略式命令が下された後でも、告知から14日以内に正式裁判の請求を行うことも可能で、あらゆる点で人権に配慮されています。
なお、略式起訴手続に依ることの同意は、起訴事実を認めることではありません。
しかし、上記の通り略式起訴で無罪判決を下すことは通常予定されませんので、略式起訴の場合はすべて有罪判決となると考えたほうがよいと思われます。
略式起訴で確定した罰金・科料を納めなかった場合、未納額に応じた日数労役場に留置され、労務提供により罰金を支払うことになる可能性があります。
留置日数は1日5,000円換算され、1日以上2年以下とされています。
なお、どうしても一括では支払えないという場合、個別に相談することで分割納付を認めてもらえることもあります。
略式起訴の簡単な流れを下記にまとめました。
逮捕勾留されている場合(身柄事件) |
身柄拘束されていない場合(在宅事件) |
|
① |
逮捕後、勾留される |
書類送検 |
② |
勾留期間満期に検察庁で略式起訴の説明を受ける |
検察庁が事件処理を完了した時点で略式起訴の説明を受ける |
③ |
検察が簡易裁判所へ略式命令請求を行う |
検察が簡易裁判所へ略式命令請求を行う |
④ |
略式命令が下され、身柄解放後検察庁の窓口で罰金を収める |
略式命令が下されると裁判所から自宅へ通知が届く |
⑤ |
検察庁から罰金の納付書が届くので、金融機関で納める |
略式起訴と通常の起訴との違いはこちらです。
|
通常の起訴 |
略式起訴 |
手続き |
正式裁判が開かれ、検察や弁護人による弁論が行われる |
弁論は行われず、書面審理のみ |
期間 |
最短でも1~2ヶ月 長ければ1年~2年 |
起訴日に判決(略式命令)が出される。 |
裁判所 |
地方裁判所 |
簡易裁判所 |
前科 |
有罪判決となれば前科がつく。 |
有罪判決となれば前科がつく |
刑罰 |
死刑・懲役・罰金などが科される可能性がある |
罰金刑のみ |
ここでは略式起訴に関連する略式請求・略式命令・略式手続き・起訴・不起訴・罰金・科料についてご説明します。
略式請求とは、裁判所に命令(略式命令)を発付してもらうために、裁判所へ送る起訴状のことです。
通常の起訴状に略式命令請求と記されているだけですが、検察が略式請求と証拠書類を簡易裁判所へ提出し、これに基づく審理が行われ、略式命令が下されます。
略式命令は略式起訴の場合の判決です。検察官が提出した資料をもとに、裁判所が審判を行い略式命令を下します。
略式起訴から裁判所の略式命令が下される一連の流れが略式手続きです。
起訴とは被疑者について刑事裁判を求める手続きのことです。正式名称は公訴提起。略式起訴は起訴の1つです。不起訴は刑事裁判を求めない処分のことを言います。
刑罰の一種であり、強制的に財産を取り立てる財産刑です。罰金は基本的に1万円以上で、刑法では上限が定められていません。
科料は罰金よりも低い金額の1,000円以上1万円未満が科されます。軽犯罪法違反など軽微な犯罪に対して科されるでしょう。
納められた罰金は国庫に入り、国の運営費に充てられます。略式起訴では100万円以下の罰金が科されます。
略式起訴についてお分かりいただけたでしょうか。刑事裁判については関連記事で詳しく解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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