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KL2020・OD・037
発信者情報開示請求(はっしんしゃじょうほうかいじせいきゅう)とは、「プロバイダ責任制限法の第4条」定められている制度で、名誉棄損・誹謗中傷・プライバシーの侵害をするような投稿に対し、プロバイダや運営会社などにその投稿を行った人物が誰なのか特定するために、個人情報の公開を請求するための制度です。
匿名性の高いネット上の掲示板やSNSなどで誹謗中傷を受けた場合、被害者が損害賠償などをしたくても、どこの誰かが情報を発信しているのかわからないと裁判も起こすことができません。
そういった場合に発信者を特定するための手段として使える制度ですが、同時に発信者の情報提供を行えば、プロバイダの責任をいくばくか制限(損害賠償の対象から外す)できるようにしたものでもあります。
ここでは、発信者情報開示請求の具体的な内容や開示請求方法、開示請求を拒否された場合の対処法を紹介します。
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目次
発信者情報開示請求とはどのようなものなのでしょうか。プロバイダ責任制限法の第4条では、どのようなことが定められているのか、条文を見ながら、確認していきましょう。
特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求することができる
(引用: プロバイダ責任制限法の第4条)
「特定電気通信」とは、不特定の者に受診されることを目的としている電気通信のことを指し、例としてインターネットのWEBページやネット上の掲示板が挙げられます。
「自己の権利を侵害されたとする者」と定められているため、開示請求ができるのは個人以外にも会社や非営利団体なども含まれます。また自己の権利とは、名誉棄損・誹謗中傷・プライバシーの侵害などです。
開示される情報は下記の7つになります。
(参照元:第四条第一項の発信者情報を定める省令)
侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
(引用: プロバイダ責任制限法の第4条)
これは「権利侵害の明白性」と呼ばれる要件で、請求者の権利侵害の事実を明確に証明しなければ、開示してもらうことができません。
当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
(引用: プロバイダ責任制限法の第4条)
損害賠償請求権の行使のため以外の正当な理由とは以下のようなものを指します。
そのため、私的制裁や不当目的のために請求はできません。
発信者情報開示請求の流れは、住所や実名などの個人情報の登録が必要なサイトと、ニックネームのみで利用できるサイトの2つのパターンで分かれます。
住所や実名の登録が必要なサイトでは、管理人や運営サイトが個人情報を持っているので、請求先は1か所になります。しかし、匿名サイトの場合、当該サイトの管理者のみならず、アクセスプロバイダ(インターネット回線に接続するために契約する業者)に対する請求も必要になります。
どのような流れになるのか、まず下の図をご覧ください。
では、匿名サイトに発信者情報を請求する流れをもっと詳しくみていきましょう。
ここでいう発信者情報開示請求とは管理人や運営会社にIPアドレスの開示を請求することをさします。請求方法はテレコムサービス協会が公開している「発信者情報開示請求標準書式」のテンプレートを印刷し、必要事項を記載し郵送するという方法です。
発信者情報開示請求書には以下のような内容の記載が必要になります。
これらの内容が必要になります。また。侵害された権利や明らかに侵害された理由には法的な知識が必要です。作成する前にネット問題にが得意な弁護士に1度相談することをおすすめします。
開示されなかった場合は、発信者情報開示請求の仮処分を申し立てる必要があります。発信者情報の開示は速やかに行わなければならないので、仮処分で行うことが多いです。
また申立てに必要な費用は、1つの案件につき印紙代2,000円及び郵券代(数千円程度)になります。また、保全が認められた場合は、担保金として10~30万円程度を納める必要もあります(これは後に返還されます。)。申立書類についてはこちら「保全事件の申立て」をご覧ください。
IPアドレスが開示されたら、IPアドレスからどのプロバイダでインターネットにアクセスしているのかを調べます。ネット犯罪などに詳しい弁護士であれば、調査の依頼も可能です。
どこのプロバイダを利用しているのかが分かったら、そのプロバイダへ発信者の情報開示の請求をします。プロバイダは、最初に紹介しましたが、インターネット回線とインターネットを繋ぐ役割をしているため、インターネットの開通時に使用者は必ずどこかのプロバイダと契約しているのです。
そのため、プロバイダはIPアドレスから、個人情報を調べることができます。
プロバイダへ発信者情報の開示を請求しますが、プロバイダがログ(通信記録)を保存するのは3か月から6か月程度になります。
そのため、被害を受けた日から3ヶ月以内に開示請求を行う必要があるのです。3ヶ月を過ぎてしまいそうな場合は、プロバイダに対しログの保存請求を行いましょう。
請求書の書式に指定は無いので、なにを保存してほしいのかわかる内容であればかまいません。下の例1、例2を参考にして作成してみてください。
プロバイダを特定したら、プロバイダに対して発信者情報の開示請求を行います。
請求されたプロバイダは発信者に対し、個人情報を公開しても良いか確認しますが、基本的に発信者は拒否の意見を出します(自分の個人情報を積極的に開示する発信者は普通いません。)。
拒否の場合、プロバイダは発信者情報の開示を拒否しますので、この場合は裁判に移行します。
発信者情報公開請求自体には費用がかかりません。強いていうのなら、封筒や切手代、コピー代が必要になります。
何故、ネット問題の解決につよい弁護士に相談するといいのか、どのように探すといいのか、相場はどれくらいなのかをまとめました。
弁護士はみな法律の専門家ではありますが、弁護士資格を持っているからと言って、すべての法律問題に詳しいというわけではありません。
つまり、IT、離婚問題、交通事故、遺産相続など、分野ごとに「得意分野を持った弁護士」が存在します。今回のようなケースであれば、迷いなくネット問題に詳しい弁護士に相談すべきでしょう。
得意分野を持っている弁護士であれば、
を熟知していますから、もし相談するのであれば、ネットに注力している弁護士を選ぶようにしましょう。
インターネット分野に注力している弁護士はいまだ数は少なく、私たちもインターネット上のトラブルに対して、弁護士に相談するという発想は少ないのかもしれません。
それゆえに、対応できる弁護士も少ないのが現状です。しかし、裏を返せばネットに詳しい弁護士は探しやすいと言えますので、「インターネットが得意な弁護士」などで検索すると、目的の弁護士を比較的探しやすいでしょう。
発信者情報公開請求に対しての費用は掛かりませんが、弁護士に発信者の特定を行ってもらった場合以下のような費用が掛かります。また、この金額は裁判を行った場合の目安になるので、あくまで参考としてご覧ください。
内容 |
相談料 |
着手金 |
報酬金 |
掲示板・SNS削除請求 |
無料〜1万円/時 |
10万円〜20万円 |
5万円〜20万円 |
発信者情報開示請求 |
無料〜1万円/時 |
20万円前後 |
10万円〜20万円 |
損害賠償請求(訴訟・裁判) |
無料〜1万円/時 |
20万円前後 (1回の裁判につき3万円) |
経済的利益の10%〜20% |
弁護士の費用は掛かりますが、弁護士から運営会社やプロバイダに開示請求を行うと、個人で行っていた場合に拒否されていても、承諾される可能性が上がります。スムーズな発信者特定を考えるのならば、弁護士に依頼するのがおすすめです。
発信者情報公開請求では多くの部分に法的専門知識が必要なため、多くの部分を弁護士に依頼すると思います。弁護士にはネットに弱いという方もいるので、ネット問題に慣れていない弁護士に依頼してしまうと長引いたり、余計な費用が掛かってしまったりする可能性があるのです。
「あなたの弁護士」でネット問題が得意な弁護士を検索できますので、ぜひご覧ください。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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