雇用契約書を正社員と結ぶべき理由と記載すべき事項一覧

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
雇用契約書を正社員と結ぶべき理由と記載すべき事項一覧

近年、企業の雇用形態は多様化してきており、契約社員や派遣社員、アルバイトとパートタイマーなど様々です。正社員で終身雇用が当たり前だった時代は終りを迎えようとしています。

どのような雇用形態であれ、人を雇用する際に書面での労働条件の明示が労働基準法第15条で定められており、企業の義務となっております。その明示の仕方として雇用契約書を用いて明示をし、雇用契約を締結するのが通例となっています。

今回は、企業が正社員として人を雇用する際の雇用契約書に記載しないといけない事項、義務ではないが記載したほうが良い事項がありますので、それらを全てご紹介していきます。

雇用契約書における正社員の扱いと雇用契約書の必要性

上にも書きましたが、雇用形態の多様化により正社員と呼ばれる正規雇用の他に契約・派遣社員等の非正規雇用の割合が増えてきています。その中の正社員の定義とはどのようなことなのでしょうか。

正社員とは

法律の観点から言うと正社員という言葉は存在しません。あくまで便宜上正社員やパートタイマーといった呼び方をしているだけです。主に雇用契約に期間の定めがない労働者のことを正社員、期間の定めがある労働者のことを契約社員やアルバイト・パートタイマーと分類されています。

正社員の雇用に雇用契約書は必要か

結論から言うと必ずしも必要ではありません。労働基準法では、企業が人を雇用しようとする時は書面で労働条件を明示しないといけないことになっています。

この明示の方法には、雇用契約書の中に必要事項を記載し明示するのと、労働条件通知書を用いて明示する方法が一般的です。しかし、ここでは雇用契約書を用いた方法を推奨します。何故なら、双方が条件に納得した上で署名捺印することがとても大きい意味を持つからです。

企業としても雇用契約を締結後に労働者から労働条件についてのクレーム等を言われるリスクを避けられます。そういった考えから、雇用契約書は義務ではないが「用意しておくべきもの」であると思います。

雇用契約書への記載事項

雇用契約書を用いて労働条件を明示する際に、必ず記載しないといけない事項とそうでない事項があります。それは以下の通りです。

書面での明示が必要な事項

労働契約の期間

労働契約に期間の定めはあるか。あった場合はいつまでか。

有期労働契約を更新する場合の基準

労働契約に期間の定めがある場合に、契約の更新をするための条件・基準は何か。

就業場所・従事する業務内容

労働する場所はどこか。どのような内容の労働をするのか。

始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

労働時間の始まる時間と終わる時間。残業はあるか。休憩時間はいつどのくらいあるか。休日は何曜日にあるか。シフト制かどうか。

賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項

給与の金額。計算方法(月給か時給か等)。手渡しか振り込みか。締め日は何日か。給料日は何日か。

退職に関する事項(解雇の事由を含む)

定年はあるか。退職する際の申し出の方法や時期。懲戒解雇となりうる事由。

書面以外の明示の仕方でも良い事項

上記の事項は、必ず書面に記載して明示する必要があります。ですが、以下の事項は必ずしも書面に記載する必要はなく、口頭で伝えるだけでも良い事項になります。

昇給に関する事項

昇給の有無や時期等。

退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関する事項

退職金の有無。ある場合はその計算方法や支払時期について。

臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

報奨金や賞与の有無。又はその計算方法や支払時期。

労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項

勤務時間中の食事に関すること。労働に必要な物に関する事項

安全・衛生に関する事項

労働するにあたっての安全や衛生に関する事項。

職業訓練に関する事項

スキルアップのために講習会への参加等の制度の有無等。

災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

労働災害等への補償、健康診断等。

表彰、制裁に関する事項

労働の成果に応じて表彰制度の有無。又は制裁制度の有無。

休職に関する事項

休職する際の申し出の方法や、休職期間中の待遇、復職について。

雇用契約書を活用した企業のリスク管理

雇用契約書は義務ではないことはご説明しましたが、この方法を用いることで大きな効果を発揮し、労働問題に関するリスクを管理することができます。

従業員とのトラブルを回避

最初にも書きましたが、雇用契約書を作成するということは労働者側が提示された労働条件について了承した上で署名捺印をすることになります。これは後に条件に関して何か言ってきた時、双方了承の上で契約している確かな証拠になります。また、労働者側も条件について明確にできるので安心して働くことができるでしょう。

企業コンプライアンスの徹底に役立つ

近年、企業のコンプライアンスについて社会の見る目が厳しくなっており、こういった雇用関係のことも厳しく見られています。雇用契約書をしっかり作成して、何もトラブルが起きないようにするということはとても大事なことであり、企業のイメージアップにもつながってきます。

まとめ

雇用契約書に記載する事項や、必要性についてお分かりいただけたかと思います。正社員として雇用するということは、企業も長く勤務してもらって貢献してほしいと思いますし、労働者側も同じく思っていることだと思います。そんなお互いの気持ちが、余計なトラブル等で阻害されないように雇用契約書を活用するべきでしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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