入居者が自殺したら? 損害賠償請求の方法と相場を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
入居者が自殺したら? 損害賠償請求の方法と相場を解説

入居者が自殺した場合、大家はさまざまな損害を受けることになります。高額な修繕費がかかる場合もあるでしょう。また、他の入居者まで退去してしまうなど、長期にわたる損害を受けることもあります。

警察庁によると、平成30年の自殺者の数は20,598人となっており、決して他人事ではありません。万が一自殺者が出たときのために、損害賠償請求などについて把握しておくことが大切です。

通常、大家が損害を受けたときは入居者に損害賠償を請求しますが、自殺した場合は連帯保証人遺族に請求します。損害賠償金は、請求しなければ支払われません。この記事では、入居者が自殺したときに受ける損害と、入居者が自殺したときに請求できるお金について解説します。

入居者が自殺すると、大家はどんな損害を受ける?

入居者が自殺した場合に大家が受ける損害は、数百万円もの損害を受けるケースも珍しくないため、入居者が自殺したときのリスクは高いと言えます。リスクの把握のためにも、入居者が自殺したときに受ける損害について確認しておきましょう。

自殺者が支払っていた家賃収入がなくなる

入居者が自殺した場合、入居していた部屋が空室になるため、1室分の家賃収入がなくなります。複数の部屋を借りていた場合は、それだけ多くの家賃収入が失われます。空室がすぐに埋まるとは限らないため、場合によっては多大な損害となるでしょう。

例えば、家賃が月額10万円の場合、月々の収入が10万円減ることになり、1年間空室が埋まらなければ、120万円もの損害になります。

その部屋に誰も住みたがらなくなる

入居者が自殺した場合、空室が長く続く可能性があります。これは、前の入居者が自殺したことに対し、多くの人が不吉な感情を抱くためです。

入居者が自殺したことを伝えなければ、賃貸借契約に支障をきたすことはないと思うかもしれませんが、宅建業者は賃貸借契約が成立する前重要事項を説明するよう義務付けられており、前入居者の自殺の事実は重要事項に含まれると考えられています。そのため、前入居者が自殺した事実は契約締結前に開示する必要があります。

もちろん、自殺者が出たことを理由に家賃を減額することで、早期に次の入居者が見つかることもありますが、この場合減額分家賃収入が減ってしまいます。

他の部屋の住人が引っ越してしまう

他の部屋の住人が入居者の自殺を知ると、引っ越してしまう恐れがあります。入居者が自殺した部屋とは住む階層が違っても、嫌がる人もいるでしょう。ただし、他の住人に対して、同じマンションやアパートで自殺者が出たことを告知する義務は必ずしもありません。そのため、住人に伝えないことで、引っ越されるリスクを抑えることは可能です。

しかし、新たな入居者を募集する際に、家賃を大幅に下げて検索サイトなどに登録した場合、それを住人が見たり、自殺者が発見された際に呼ばれたパトカーや救急車などを見たりして、自殺があったのではと疑われてしまうこともあります。

自殺者が出たのではないかと問い詰められ、結果的に住人に告知することになるかもしれません。その際には、自発的に告知しなかったことに不信感を抱かれることも懸念されます。

入居者の自殺により大家が請求できるのはどんなお金?

入居者の自殺によって損害を受けた場合は、遺族や連帯保証人にお金を請求できます。基本的に、相続人に請求しますが、相続人がいない場合や、皆が相続放棄した場合は連帯保証人に請求します。連帯保証人と相続人が同一人物の場合、相続を放棄しても連帯保証人の責任からは免れられないため、相続人に請求が可能です。

部屋を明け渡すまでに発生する家賃も請求できるなど、知っておきたいことはさまざまです。それでは、大家が遺族や連帯保証人に請求できるお金をみていきましょう。

明け渡しが完了するまでの家賃

自殺した入居者が住んでいた部屋の明け渡しが完了するまでの家賃を請求できます。入居者が自殺しても、賃貸借契約は相続人に引き継がれます。そのため、入居者が亡くなった時点で家賃の支払い義務がなくなるわけではありません。相続人が賃貸借契約を解約した場合、部屋に残っている遺品やゴミなどを片付けて大家に引き渡すまでは家賃が発生し続けます。

家賃が支払われていない場合は、未納として扱い、相続人に請求します。しかし、相続人が賃貸借契約も相続されることを把握しておらず、気づかないうちに多額の未納家賃が発生する可能性もあります。この場合は、家賃の精算について相続人と交渉し、お互いに良い結果となるよう譲歩し合うことも必要となるかもしれません。

原状回復費

退去時には、入居時の状態に戻す原状回復の義務が入居者に課せられます。入居者が自殺した場合、血液や体液などが床板や畳、壁紙に付着することがあります。また、遺体の発見が遅れると、においが染みつくこともあるでしょう。このような場合は、壁紙や床板、畳の貼り換えなどが必要となります。場合によっては、100万円以上もの費用がかかるため、軽視はできません。

原状回復にかかる費用も相続人に請求できます。ただし、大家が負担すべきところまで相続人に請求することはできません。減価償却などや賃貸借契約で交わした内容を踏まえ、原状回復費を請求します。

部屋の価値が下がってしまったことに対する補償

自殺者が出た部屋は、事故物件として扱われ、価値が下がってしまいます。価値が下がることで、家賃収入が減少するという損害が発生します。相続人や連帯保証人には、入居者の自殺で低下した価値に対する賠償請求も可能です。ただし、これも無制限ではなく、あくまで自殺行為との法的な因果関係が認められる範囲に限定されます。

例えば、自殺者が出たことで他の部屋の住人が退去して発生した賃料減収分の請求は因果関係の観点から難しい場合が多いでしょう。また、自殺の出た部屋の賃料減収についても、自殺の影響が永久に続くものではないことから、一定期間の減収分に限られると判断されることが通常です。

いずれにせよ、請求できる期間や金額は、ケース・バイ・ケースであるため、裁判所で審理しなければ明確な金額はわかりません。

入居者が自殺した場合の損害賠償金のシミュレーション

入居者が自殺した場合、どれぐらいの損害賠償金を得られるのかシミュレーションしました。

月々の家賃が10万円で、入居者が自殺してから3ヶ月後に退去し、3年間は家賃を3万円下げることになった場合を想定しています。

項目

金額

家賃10万円×3ヶ月分

30万円

原状回復費用

(畳や壁紙の全貼り換えやエアコンなどの交換)

80万円

自殺による家賃の低下分5万円×3年

180万円

合計

290万円

あくまでもシミュレーションであるため、実際に請求できる金額はケースバイケースです。過去の事例や物件の状態、自殺した場所などさまざまな項目を踏まえて決定するため、事前に知ることは難しいでしょう。

特に、自殺による家賃の低下に関しては、期間が1年変わるだけで請求額も大きく変わります。

入居者が自殺したときに、弁護士に相談した方がいい理由

入居者が自殺した場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。弁護士への相談は、初回無料となっていることも多く、相談後に依頼するかどうかを決められます。入居者が自殺したときに、弁護士に相談するメリットは次のとおりです。

大体の請求額を想定できる

入居者の自殺による損害賠償請求の経験がある弁護士に相談することで、過去の判例などを踏まえて、どれぐらいの金額を請求できるか教えてもらえます。請求金額に対して、手続きの手間や心身のストレスなどが大きい場合、あえて請求しないという考え方もあります。

大体の請求額を想定できれば、今後の方針を決めるのにも役立つでしょう。

より多くの金額を請求できる可能性がある

自分で損害賠償請求をした場合と、弁護士のサポートを受けて請求する場合とでは、結果的に得られる金額が変わる可能性があります。損害賠償請求では、請求の根拠となる物件や自殺した場所の情報、判例などの提示が必要です。法律の知識や経験がなければ、裁判を有利に進めることが難しく、賠償請求額が思っていたよりも低くなる恐れもあります。

弁護士のサポートを受けることで、賠償請求額に関わる資料やデータ、判例などを提示し、適切な主張をできるようになり、より多くの金額を得られることが期待できます。

相手と直接交渉しなくて済む

弁護士に損害賠償請求の代行を依頼することで、自殺者の相続人や連帯保証人と直接交渉せずに済みます。自殺者の遺族や連帯保証人は、悲しみの中にいる可能性もあり、そのような人物に対して損害賠償請求の交渉をすることは気が引けるという方もいるでしょう。

遺族と顔を合わせることで、損害賠償請求をする気持ちがなくなったり、請求額を少なくしようと考えたりして、結果的に大家が損をする恐れもあります。

また、交渉の際に暴言を吐かれたり、話の内容が二転三転したりして、なかなか交渉が進まない場合もあるでしょう。弁護士であれば、要点を押さえているため、スムーズな交渉が可能です。相手方としても、法律の専門家である弁護士が交渉に入ることで、円滑な手続きに協力するようになるかもしれません。

手続きの代行を依頼できる

損害賠償請求には、さまざまな資料やデータ、手続きなどが必要です。1つずつ調べて手続きすることも可能ですが、手続きの方法を間違えたり、やり直しになったりする場合もあるでしょう。手続きのミスは、時間の浪費に繋がります。

弁護士に依頼すれば、手続きを代行してもらえるため、手続きのミスや遅延の心配がなくなります。

まとめ

入居者が自殺した場合には、相続人がいるかどうか確認しましょう。相続人が相続を放棄していなければ、自殺者の私物やゴミが片付いて大家に明け渡すまでに発生した家賃を負担してもらえます。その他、自殺による家賃の低下に対する損害賠償請求も可能です。まずは、弁護士に相談して、どれぐらいの額を請求できるか確認しましょう。

弁護士には、遺族や連帯保証人との交渉や各種手続きの代行も任せられます。遺族や連帯保証人と顔を合わせることなく損害賠償請求できます。弁護士に相談するかどうかで、実際に得られる額が変わるため、前向きに検討することをおすすめします。

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梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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