『喫煙者は一切採用しません』は法律的にどうなの?弁護士に聞いてみた

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
『喫煙者は一切採用しません』は法律的にどうなの?弁護士に聞いてみた

先月、某IT企業の社長がTwitterで、『喫煙者は採用しません』と宣言しました。『喫煙は、会社にとっていいことが何もない』ことを理由としているようです。

タバコを吸うこと自体に意味やメリットがあるかどうかはさておき、嗜好品として法律で認められているものを、採用の判断基準に使用するのは許されるのでしょうか。

弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤弁護士に聞いてみました。

喫煙者を採用しないのは法律的にアリ?

あなたの弁護士編集部:
募集の際に、『喫煙者は採用しない』と宣言し、応募時に誓約をさせることは違法になりますか?

梅澤弁護士:
企業には採用の自由が保障されていますので、採用条件は企業が自由に設定できるのが原則です。しかし、採用の自由の制限として以下のような規制があります。

① 雇用対策法10条により、一定の場合を除いて、採用募集の際に年齢制限をすることを禁止しています。

② 男女雇用機会均等法により、
・5条では性別による直接的な差別
・7条では性別による間接的な差別

で採用を区別することを禁止しています。性別による間接的な差別とは、例えば『身長・体重・体力』などに制限を設け、実質、性別によって採用を区別しているのと変わらないと思われる行為のことです。

③ 行政通達により、本人に責任のない事柄や、思想信条に関する事柄について情報を収集し、これを採用判断の要素とすることは禁止されています。

今回の喫煙の有無は上記①~③の例外事由には含まれませんので、非喫煙者であることを採用条件とすることはただちに違法とはならないと考えます。もっとも、採用時にそのような誓約をしたからといってこれが強い効力を有するとは思われません。

例えば喫煙の事実が発覚した場合、即解雇という対応はとれませんし、『喫煙をした』という事実のみで何らかの処分をすることも難しいと思います。

喫煙以外の、『経営者の好み』に関する場合はどうなる?

あなたの弁護士編集部:
タバコの場合、体に悪影響があったり、喫煙者だけ休憩が多くなったりするので、喫煙者を採用しないと宣言する経営者の気持ちもわかります。しかし、そういった問題も一切ない、完全に『経営者の好み』で特定の対象者を採用しないのは違法になりますか?例えば、

・野菜を食べない人は採用しない
・社長のお酒に付き合わない人は採用しない
・特定のテレビ番組を見ている人は採用しない

などです。

梅澤弁護士:
採用の自由に対する制約は現時点で前述①~③ですので、これに該当しないのであれば、採用する・しないは企業の自由です(したがって、上記のような幼稚な理由で採用する・しないを決定しても問題ありません)。

しかしながら、野菜を食べない、酒を飲まない、特定のTV番組を見ないということが本人の思想や信条に関わるような場合には、これを理由に採用しないことは上記③の観点から不適切ですし、場合によっては違法な就職差別と評価される可能性があります。

したがって、本人の自由にゆだねるべき事柄を問題視して、採用・不採用を判断する姿勢は、③の観点からおすすめできません。

まとめ

あなたの弁護士編集部:企業には人を自由に採用する権利がありますが、以下のような制限があります。

・募集の際に年齢制限を設けること
・男女どちらかの性別だけを募集すること、採用条件などで間接的にどちらかの性別だけを募集すること
・本人に責任のない事項(容姿、両親の職業、思想・宗教など)について応募用紙に書かせたり、面接時に尋ねたりして採用判断の要素にすること

つまり、上記にあてはまらない『喫煙者を採用しない』については違法とは考えにくいようです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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