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KL2020・OD・037
示談金とは、示談の際に加害者が被害者に対して損害を補償するために支払う金銭のことです。民法上には示談という言葉はなく、「和解」と呼ばれ、加害者と被害者が互いに譲歩し、その間に存在する争いを止めることをいいます。
示談金の額は加害者被害者双方が合意していればいくらでも良いですが、納得がいかなければ訴訟となり裁判所が判断することになります。しかし交通事故においては9割以上が示談により解決しています。
交通事故に遭い、後遺障害14級と認定された場合、加害者が加入している保険会社と示談交渉を行うことが一般的ですが、このとき保険会社が提示してくる示談金の金額が妥当なものかどうか判断しかねることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は後遺障害14級と認定された場合の示談金の算定方法と、示談をする際の注意点を記載したいと思います。
目次
示談金を算定するには、示談金として請求できる項目を把握する必要があります。ここでは示談金を算定する方法と、示談金として請求できる項目を紹介します。
示談金の算定は以下の計算式により行います。
示談金=積極損害+休業損害+逸失利益+入通院慰謝料+後遺障害慰謝料
では具体的に示談金として請求できる各項目の内訳について見ていきましょう
積極損害とは通院費や入院費など、事故により負ったケガを治療するためにかかった損害を言います。以下に一覧にて記載して置きます。
項目 |
説明 |
治療関係費 | 入院や通院にかかった費用。診断書料も含む。全額損害として請求できる。 |
付添看護費 | 付添が妥当である、もしくは医者が付き添いの必要性を認めた場合。●職業付添人…実費全額●近親者付添…5,000円~7,000 |
入院雑費 | 1日1,400円~1,600円 |
交通費 | 通院のために必要な交通費は原則実費全額請求できる。 |
通院のための宿泊費 | 治療のため特定の医者にかかる必要があり、その通院のために宿泊が必要である場合。 |
生徒・児童の学費等 | 事故の被害者が学生や児童で補習や留年のために授業料がかかった場合。 |
休業損害とは事故の影響により、仕事が出来なくなった期間の収入減に対する損害です。
交通事故でケガ負った場合入院や治療のために仕事を休まなければならない可能性がありますが、その休業期間中の収益減を加害者に請求することができます。たとえば月給20万円のサラリーマンがケガの治療のため2ヶ月入院した場合、その休業損害は40万円となります。
逸失利益とは、後遺障害による将来の収入源についての損害です。逸失利益は休業損害と別で請求することができます。
交通事故により後遺障害を負ってしまった場合、身体の機能が制限されることから労働能力の低下が見込まれます。労働能力が低下すれば、将来にわたって収入が減ることが予想されますが、この収入減分を加害者に請求することができます。
逸失利益の計算式は以下のようになっています。
逸失利益=「事故前の年収(基礎収入)×0.05(5%)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」
計算式にある5%は後遺障害14級の際の労働能力喪失率を表しています。また逸失利益は将来にわたる利益を現在に一括して受け取るため、その間の中間利息を割り引かなければなりませんが、その中間利息割引に用いられる数字が就労年数に対応するライプニッツ係数です。
逸失利益はサラリーマンや自営業者であれば請求することができます。また学生や主婦も請求することができます。学生、主婦の場合の事故前の年収は賃金構造基本統計調査(賃金センサス)を基準に事故前の年収が決まります。
逸失利益の詳しい内容や計算方法は「後遺障害逸失利益の算定|賠償金増額のための3つのポイント」に詳しいのでこちらを参考にしてください。
入通院慰謝料は入院や通院を行ったことによる精神的な苦痛に対する損害です。
入院や通院を行った際、実際に治療費などの目に見える金額を積極損害として請求することが出来ることはお伝えしましたが、入院や通院を行ったことに対する精神的な負担も慰謝料として示談金に含むことができます。入通院慰謝料は実際に入院・通院した期間が長くなるごとに増加します。
後遺症害慰謝料は後遺症を負ったことによる精神的な苦痛に対する損害です。
後遺障害慰謝料は、治療が終わってもなお回復する見込みがなく、一生背負っていかなくてはならない後遺障害を負ってしまった苦痛に対する慰謝料です。後遺障害慰謝料は、認定された等級によりおよその相場が決まっています。
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料に関しては「交通事故慰謝料を正しく計算し適正な慰謝料を獲得する全手順」を参照してください。
では実際に後遺障害14級と認定された場合の示談金を計算してみましょう。ただし示談金は事故の状況や被害者の状態により変わりますので、参考程度にしてください。また被害者の状況は以下の通りとします。
被害者の年齢 | 35歳 |
被害者の事故前年収 | 480万円 |
通院期間 | 180日 |
認定後遺障害 | 14級6号(1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの) |
休業期間 | 1ヶ月 |
労働能力喪失率 | 5% |
労働能力喪失期間 | 67歳までの32年間 |
・入通院治療費…180万円
・交通費…15万円
計:195万円
示談金=①+②+③+④+⑤=180万円+15万円+40万円+379万円+116万円+110万円
=840万円
このケースの場合の示談金は840万円となります。
先述した通り、示談金に含まれる項目には入通院や後遺障害に対する精神的な損害である慰謝料を含んでいます。慰謝料は精神的な苦痛を金銭に換算するためその算定の方法が非常に難しいのが現実です。
そのため慰謝料には入通院の期間や認定された後遺障害等級により相場が決まっています。しかしこの相場には3つの基準があります。どの基準を用いるかにより慰謝料額が大きく変わってきます。
慰謝料の相場となる3つの基準はそれぞれ「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」と呼ばれます。
自賠責保険基準とは、車やバイクの運転者であれば強制的に加入する保険です。保険の役割としては交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことです。自賠責保険基準での慰謝料額は3つの基準の中で最も低くなっています。
任意保険基準は、事故の加害者が自賠責保険で負担できない部分を補うために、自由に加入する民間保険会社の基準です。保険会社は基準額を明らかにしていません。つまり被害者としては適正な慰謝料が支払われているか判断しかねることになると思われます。一般的には自賠責保険基準より高い基準が用いられていると考えられています。
弁護士基準は、裁判所基準ともいわれます。裁判所は過去の判例から慰謝料に関しての一定の目安を持っています。これを弁護士基準と呼びます。弁護士基準は3つの基準の中で最も高くなっています。
慰謝料には3つの基準があることをお伝えしましたが、それぞれの基準ごとに入通院慰謝料、後遺障害慰謝料がどの程度変わるのか見ていきましょう。
ここでは「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準」それぞれにおける入通院慰謝料を記載しておきます。
自賠責保険の入通院慰謝料は原則1日あたり4200円となっています。ただし日数に関しては規定があり
A:全体の治療期間(病院に通っていない自宅静養の期間も含む)
B:実質的な通院日数(入院日数+通院日数)×2
このA、Bのうち少ない日数の方に4200円をかけて求めます。
任意保険基準の入通院慰謝料を推定になりますが、以下の表に記載しておきます。
表:任意保険基準の推定入通院慰謝料(単位:万円)
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 170.2 |
1ヶ月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2ヶ月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3ヶ月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.0 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5ヶ月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6ヶ月 | 64.2 | 83.2 | 102.0 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7ヶ月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8ヶ月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9ヶ月 | 82.0 | 99.6 | 116.0 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10ヶ月 | 87.0 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
弁護士基準の入通院慰謝料は以下の通りとなります。
表:弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 | |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 191 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 232 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 288 |
たとえば先ほどの例の場合、通院期間が180日=6ヵ月となっているので
自賠責保険基準の入通院慰謝料…75.6万円(4,200円×180日)
任意保険基準の入通院慰謝料…64.2万円
弁護士基準の入通院慰謝料…116万円
となり、自賠責保険基準と弁護士基準では入通院慰謝料額に40万円以上の差が出ることが分かります。
後遺障害慰謝料の相場は各基準により以下の表の通りとなっています。
等級 | 自賠責基準 | 任意基準(推定) | 裁判基準 |
第1級 | 1100万円 | 1600万円 | 2800万円 |
第2級 | 958万円 | 1300万円 | 2370万円 |
第3級 | 829万円 | 1100万円 | 1990万円 |
第4級 | 712万円 | 900万円 | 1670万円 |
第5級 | 599万円 | 750万円 | 1400万円 |
第6級 | 498万円 | 600万円 | 1180万円 |
第7級 | 409万円 | 500万円 | 1000万円 |
第8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 300万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 200万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 150万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 100万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
つまり、後遺障害14級の場合、自賠責保険だと32万円、弁護士基準だと110万円となり、約3.5倍の違いがあります。
後遺障害14級となった際の示談金の算定方法はご理解いただけたと思いますが、ここでは示談をする際の注意点を記載しておきたいと思います。
示談金の請求には時効があります。時効の期限は民法724条により規定されています。
交通事故により後遺障害を負った場合の時効の期限は症状固定から3年となっています。症状固定とは治療を行ったにもかかわらず、それ以上症状の回復が見込まれなくなった日のことをいいます。
症状固定に関しては「症状固定は誰が決めるのか|被害者が知るべき症状固定のタイミング」を参照してください。
また時効は中断することもできます。「交通事故における慰謝料請求の時効を中断させる3つの方法」を参照してください。
加害者の保険会社が通院中の比較的早い段階で症状固定を打診してくるケースがあります。これは症状固定となった後は入通院費を示談金として請求できなくなることを理由にしています。
保険会社は営利企業ですから支払う保険金が少なくなればその分利益が増えます。そのため積極損害の支払いを下げるため、早い段階で症状固定を打診するケースがあります。
症状固定は示談金や後遺障害の認定に影響を与えますので、担当の医者と十分にコミュニケーションを取りながら決定するのがいいでしょう。
先述した通り慰謝料には3つの基準があり、自賠責保険基準と弁護士基準では慰謝料額に大きな差があります。
示談交渉の相手である加害者の保険会社は示談交渉のプロであるため、法律的な知識も豊富でノウハウもあります。場合によっては保険会社に不利な示談内容を提示されても、それが不当に低い示談金であると気付かぬまま示談をしてしまうケースがあります。
保険会社から示談金の提示があった場合、一度専門家である弁護士に示談交渉の依頼をすることをおすすめします。
加害者被害者互いに示談内容に示談に合意した場合、示談書を作成し、署名捺印します。示談書に記載される内容には決まりはありませんが、主に以下の事項を記載します。
・事故発生日
・車両所有者の 氏名
・運転者の氏名
・車両番号
・示談内容・支払方法
・示談書の作成日
示談書に記載された内容、特に示談の内容や、示談金の支払い方法は後から変更することは不可能です。示談書を作成した後に、仮に新たに後遺障害が発生した場合であっても示談内容は変更することが出来ませんので、示談の内容確定、示談書の署名捺印に関しては慎重に行う必要があります。
示談金は一括で受取ることがベストですが、加害者の支払い能力によっては示談金の支払いが分割払いになる可能性もあります。そのため示談金を確実に支払わせるために示談書を公正証書にすることを検討しても良いかもしれません。
公正証書は、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書のことをいいます。公正証書に、「強制執行認諾条項」を記載していれば、示談金の支払いが滞った際に、本来であれば裁判での判決を受けなければ行うことの出来ない、給与や口座の差押などの「強制執行」の申し立てをすぐに行うことができます。
後遺障害の認定をうけ、保険会社からの示談金の提示があった場合にその額が明らかに少ないと感じる場合は、弁護士に示談交渉の依頼をすることで示談金の増額が見込めます。
少しでも示談金の内容に疑問がある場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
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