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KL2020・OD・037
ひったくりとは、歩行者や自転車に近づき、すれ違う瞬間や追い抜く瞬間にその荷物などを奪って逃走する行為をいい、刑法上は「窃盗」に該当する犯罪です。
ひったくり犯の特徴としては、徒歩や自転車の人(特に女性)を狙い、犯人自身はバイクや自転車といった移動手段を利用しての犯行であることが挙げられます。
そのため、追跡が難しく発生件数に対して検挙・逮捕が少ないので、安易に金銭を強奪できると犯行に至るケースも多いです。
しかし、ひったくりが基本的には窃盗罪にあたるとはいえ、犯行態様によっては強盗罪などの重い罪に該当してしまう場合があり、こういったケースでは重大事犯として逮捕に繋がる可能性も高くなります。
今回は、ひったくりがどういった罪になるのか、またひったくりで逮捕された場合にどういった手続きがなされるのかについて、ご紹介したいと思います。
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目次
ひったくりとは、その名の通り歩行者や自転車に乗る人の荷物を奪って逃走する行為をいい、窃盗罪(235条)で処罰されるものです。
ここではまず、ひったくりの手口と犯罪傾向について、簡単にご説明いたします。
ひったくりの手口は至ってシンプルで、ターゲットに近づいてすれ違い様や追い抜き様にその荷物を奪って逃走する、というものが一般的です。ただし、近年は巧妙な手口も増えてきていて、以下のような例も見られます。
ひったくりは単独犯はもちろんですが、複数人でのグループによる犯行も多く見られますので、非常に厄介な犯罪と言えるでしょう。
警視庁によれば、ひったくり犯の犯罪傾向としては以下の点が挙げられます。
ひったくり自体はどの時間帯でも発生するものですが、特に夕方から夜間にかけての時間帯に多発しています。
午後9時台がピークとのことですが、深夜0時頃や昼休みの時間帯なども発生件数が多く、警視庁は外出時の注意を促しています。
ひったくり被害者の約9割が女性で、バッグに貴重品を入れていることが多いため狙われやすいそうです。
また、車道側にバッグを持っていたり自転車の前かごにバッグを入れている際に被害に遭いやすいと言われています。
ひったくり犯は、バイクや自転車など逃走の際に便利な道具を利用して犯行に至っていることが多く、バイクを利用してのひったくりは52.1%とほぼ2件に1件の割合で行われています。
被害者は徒歩が53.6%、自転車が46.4%と若干徒歩の方が多いですが、簡単に追跡されないようにバイク・自転車を利用し、こういった人たちを選んでひったくり行為がなされるのが多いと言えるでしょう。
それでは、ひったくりをするとどのような罪にあたる可能性があるのか、具体的な例をもとに考えて行きましょう。
典型的なひったくりは、窃盗罪(刑法235条)にあたります。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法235条
窃盗罪の構成要件は、
です。
他人の財物は、「動産」と「電気」が含まれます。不動産に関しては235条の2(不動産侵奪罪)による罪が成立しますので、窃盗罪の「財物」は動産と電気に限られます。
また、自己の財物であっても、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものについては、他人の財物とみなされることになります(242条)。
なお、死者から財物を奪った場合は、事案に応じて「強盗殺人罪」、「窃盗罪」、「遺失物等横領罪」のいずれかが成立することになります。
不法領得の意思は、権利者を排除して本権者として振る舞う意思と、物の経済的用法に従いこれを利用処分する意思の2点を内容とするものとされており(大判大正4年5月21日)、ごく短時間の使用のための窃盗などが処罰されないのはこれらの意思が欠けると判断されるためです。
窃取とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいい(最判昭和31年7月3日)、その方法や手段は問わないものとされています。
ひったくりの際に被害者に怪我を負わせたり、捕まりそうになって暴力を振るったようなケースでは、強盗罪(刑法236条1項、238条、240条)と傷害罪(204条)が問題になります。
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
引用元:刑法204条、236条、238条、240条
ひったくりにおいて、被害者が荷物を取られまいと抵抗して怪我を負ったり、犯人が捕まるのを防ぐために暴力を振るうことは珍しくありません。強盗罪は窃盗罪よりも重い処罰が下されるため、このようなケースでは強盗罪の成否も問題になります。
強盗罪(236条1項)の構成要件は、
で、①~③に因果関係がある場合に成立します。人に向けられたものでも物に向けられたものでも「暴行」にあたりますが、「相手方の反抗を抑圧するに足りる」程度のものであることが必要になります。
したがって、暴行を手段としたひったくりであっても、その暴行が被害者の反抗を抑圧するに足りない場合には、強盗罪でなく恐喝罪が成立するにとどまるケースもあるでしょう。
なお、強盗致死傷罪は「強盗が」「人を負傷または死亡させたこと」が構成要件で、事後強盗罪は「窃盗が」「財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪責を隠滅するために」「暴行または脅迫したこと」が構成要件です。
これらの規定は、強盗や窃盗の機会に被害者等に暴行を加えることが多いため、人身の安全保護という趣旨でこれらの行為につき重い処罰をするものといえます。
傷害罪(204条)の構成要件は、
で、これらに因果関係がある場合に成立します。
強盗罪になり得るケースとしては、以下のような場合が考えられます。
単なるひったくりで済めば10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、強盗罪・事後強盗罪・強盗致死罪に該当してしまうと、最低でも5年以上の懲役刑が科されることになりますので、ひったくりは非常にリスキーな犯罪と言えるでしょう。
以上がひったくりから生じうる罪になりますが、ひったくりで逮捕されるケースはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、ひったくりで逮捕される可能性が高いケースの具体例と、逮捕を避けるためにできること、逮捕後の手続きの流れをご紹介いたします。
ひったくりで逮捕される可能性が高いのは、「現行犯」の場合と「悪質な犯行」の場合が挙げられます。
ひったくりを始めとする窃盗事件では、軽微な事件であれば逮捕に至る可能性は比較的低いものです。というのも、令状に基づいて通常逮捕をする場合は「証拠資料に裏付けられた客観的・合理的な嫌疑」があり、「被疑者に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがある」など、明らかに逮捕の必要性があることが求められます。そのため、軽微かつ被疑者に逃亡等のおそれがない事件であれば、逮捕状の請求が却下されることになるのです。
しかし、現行犯逮捕の場合は警察官以外の人(私人)による逮捕も可能になっており、そういう意味で逮捕される確率が高いといえます。
被害者が大怪我をしたり、死亡してしまったというようなひったくり事件では、逮捕の必要性がぐっと高くなることから、逮捕される確率も上がってきます。
また、何度もひったくりを繰り返すなどの余罪があったり、窃盗での逮捕・服役といった前科前歴がある場合には、初犯などの場合に比べて逮捕される可能性が高いでしょう。
ひったくりでの逮捕を避けたい場合には、犯した罪を認めて、被害者に弁償したり、素直な態度で警官等からの取り調べに応じることが大切です。
先に述べたとおり、逮捕の際には「逮捕の必要性」が重視され、逮捕に引き続く勾留請求ではより厳格な「勾留の理由や必要性・相当性」が求められることになりますので、以下の点をクリアしていれば逮捕を回避できるかもしれません。
ちなみに、きちんと住所が定まっており、ある程度しっかりした職業についている場合(公務員やサラリーマンなど)であれば、逮捕されずに在宅での手続きが採られることが多いです。
もしひったくりで逮捕されてしまうと、以下のような流れで手続きが進んでいくことになります。
概ね図のとおりの流れで刑事手続が進みます(逮捕・勾留・勾留延長までの手続きについては,少年・成年者とで大きな違いはありません)。
初めに適法に逮捕が行われて検察庁へ身柄が引き渡されると、検察官は勾留請求をすることになります。裁判所が勾留を認めると、被疑者は最大で10日間(延長は+10日間まで)、留置場に入れられたまま自由に連絡したり外出したりすることができなくなります。
そして,勾留期間満了前に起訴か不起訴かが決まるわけですが、ここで起訴されてしまうと被告人として拘置所または留置場に移送されることになります。
そうすると、保釈請求が認められなければ裁判が終わるまで1ヶ月~1年以上も自由が制限されたままになりますので、こういった場合には弁護士へ相談して早々に対策を練るのが肝心と言えるでしょう。
ここでは、ひったくりで逮捕された場合の対処法を解説します。
逮捕された場合にまずすべきは、弁護士を呼ぶことです。
上記でお伝えした通り、刑事事件は限られた時間の中で進行していくため、ただちに弁護士へ依頼することで、早期の事件解決が期待できます。
当サイトから、お住まいの地域で刑事事件を積極的に扱っている弁護士を探すこともできますので、ぜひご活用ください。
また、一度きりではありますが、当番弁護士であれば、逮捕されてしまった人が警察にお願いすれば呼ぶことが可能です。
被害者との示談は当事者間では事件が解決したことを意味しますので、非常に重要です。
ひったくりで多数の余罪がある場合でも、逮捕・勾留の理由となった被疑事実は限定的です。
まずは立件されている事件について被害者との示談を進めることが重要です。
また、被害者が加害者や加害者のご家族と直接の示談を拒むケースもありますので、弁護士に依頼することでスムーズに進めることができるでしょう。
ひったくりで余罪がある場合は、再犯防止のための具体案を検討しているかどうかも、情状に影響します。
ここでいう具体案としては、同種前科が多数あり窃盗癖が見られるというケースであれば、専門機関の治療・カウンセリングを受けるという方法が挙げられます。
ここでは、ひったくりで実際に逮捕された事例を紹介します。
横浜市で起きたひったくり事件で、別の窃盗容疑で逮捕されていた17歳の少年が逮捕されました。
容疑は、自転車で帰宅中の男性が持っているショルダーバッグを、バイクで追い抜きざまにひったくろうとして、男性を転倒させ重傷を負わせたとる強盗致傷罪です。
このように、未成年者であってもひったくりで立件されれば逮捕される可能性があります。
路上で、帰宅途中の女性の背後から近づき、自転車で追い抜きざまに、かごからトートバッグをひったくったとして少年2人が逮捕されました。
女性は、事件直後に近くの交番に被害を届け出て、防犯カメラの映像から容疑者が浮上したということです。
今は、どこにでも防犯カメラがある時代ですので、ひったくりでも逮捕される可能性は十分に考えられます。
ひったくりは、成年者に限らず少年による犯行も増えており、逮捕されにくいという特徴も相まって、つい犯罪に手を染めてしまうという人もいます。
しかし、ひったくった際の行動次第で強盗罪などの重い罪に問われるリスクがあるほか、軽い気持ちで犯行に及んだのにも関わらず逮捕されてしまうという可能性が必ずあります。
逮捕されてしまうと長期間の身体拘束が続くことになりますので、そういった場合には迷わず弁護士と接見し、あなたの負担を減らすことのできる道を模索しましょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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