パワハラとは|6つのタイプとパワハラ問題解決のための全知識

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
パワハラとは|6つのタイプとパワハラ問題解決のための全知識

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場で優位な立場にいる人が、立場を利用して嫌がらせを行うハラスメントです。

パワハラは、上司だけでなく同僚や部下からの嫌がらせでも成立します。また、指導・叱責や冗談や付き合いで行っていても、相手が苦痛に感じている場合はパワハラになる場合があります。

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パワハラとは

パワハラの定義

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場などで優位な立場の人が、立場を利用して嫌がらせなどのハラスメントをすることです。厚生労働省では、職場のパワハラについて以下のように定義しています。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
引用元:あかるい職場応援団|パワーハラスメントの定義

パワハラのタイプには6つのタイプがある

厚生労働省が運営している「あかるい職場応援団」ではパワハラを6つのタイプに分類しています。この分類は、厚生労働省がパワハラの予防・解決に向けて行った提言にも盛り込まれています。パワハラに悩まれている方は、今受けているパワハラがどのタイプに当てはまるかを確認してみましょう。

パワハラの型 特徴 言動の例
身体的な攻撃型 パワハラ 部下や同僚、または周囲の人を威嚇し従わせようとする行為
  • 書類を投げつける
  • 椅子を蹴られる
  • 殴る、蹴る、大きな物音を立てる 等
精神的な攻撃型 パワハラ 「脅迫」、「名誉毀損」、「侮辱」、「暴言」などの精神的な攻撃によって苦痛を与え、職場環境を悪化させる行為
  • 大勢の前で叱責する(見せしめ行為)
  • 「無能」などの人格の否定・「飲みに行くぞ」などの強要 等
人間関係からの切り離し型 パワハラ 無視や仲間外しなどを行い、業務を円滑に進める妨げになる行為
  • 話しかけても無視される ・資料が一人だけ配られない 等
過大な要求型 パワハラ 明らかに不要な業務や遂行不可能なことの強制、仕事の妨害行為
  • 明らかに終わらない業務量を押し付ける 等
過小な要求型 パワハラ 合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、または仕事を与えないなどの行為
  • 「明日からこの業務外れていいから」・「資料づくりだけやってて」 等
個の侵害型 パワハラ 業務上の必要もなくプライベートに関わることに対し執拗に立ち入る行為
  • 私物のスマートフォンを勝手に覗き見る・休日の予定などをしつこく聞く
  • 「結婚は?」などをしつこく言う 等

パワハラの違法性

パワハラ自体を規制する個別の法律はありませんが、パワハラはさまざまな法律に違反する可能性のある行為です。この項目ではパワハラに関連する法律をご紹介します。パワハラ中止を会社と交渉する場合などで法律の知識を身につけていると、より具体的にどんなパワハラをやめてほしいかを主張することができるようになります。

労働基準法から見たパワハラの違法性

  • 残業代をつけさせない(残業をつけると昇進できない等と言われる)
  • 有給休暇の取得を妨害する
  • 「(会社を)辞めろ」、「辞めさせてやる」と雇用の不安を与える

上記のようなパワハラは、労働基準法に違反しています。残業代をつけさせないなどは賃金の未払いになりますし、休暇取得は特別な理由がない限り会社側が拒否できるものではありません。また、「(会社を)辞めろ」など労働者の雇用に不安を与えるような行為は禁止されています。

残業代をつけさせない(残業をつけると昇進できない等と言われる)

残業代をつけさせないことが上司からの命令であったり、職場で暗黙の了解となっている場合はパワハラになる可能性があります。会社は、働いた分の賃金を労働者に支払う義務があります。また、私たち労働者は賃金を請求する権利があります。残業代などの時間外労働の支払いは労働基準法第37条に定められています。

第三十七条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 引用元:労働基準法

もし、残業代をつけさせない、残業代が支払われていない場合は、残業代請求という方法で会社に請求することができます。

有給休暇の取得を妨害する

有給休暇の取得を妨害することは、「個の侵害型パワハラ」にあてはまる行為です。有給休暇を与えることは勿論、労働者の希望した日に休暇を与えることも使用者(会社側)の義務になります。

第三十九条  使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
○5  使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用元:労働基準法

上司が特別な事情もなく有給休暇の取得を拒否、または、とらせないという行為をした場合はパワハラにあたります。

「(会社を)辞めろ」「辞めさせてやる」と雇用の不安を与える

「(会社を)辞めろ」、「辞めさせてやる」などを繰り返しいうことは退職勧告にあたり、違法です。退職勧告は、退職の強要にあたり違法なのです。退職は、労働者と使用者(会社側)の双方が合意の上で成立します。労働者の意に反する退職は違法になるのです。また、退職勧告は民法709条によって、損害賠償の対象になる可能性があります。

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 引用元:民法

男女雇用機会均等法から見たパワハラの違法性

  • 女だからお茶汲みをしろ、男だから営業だ
  • 恋人の有無などの男女関係をしつこく聞く、私生活を詮索する

上記の行為は「個の侵害型パワハラ」に分類されるパワハラですが、男女雇用機会均等法に違反するパワハラです。男女雇用機会均等法では性差別などを以下のように定めています。

第六条  事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
 一  労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
 二  住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
 三  労働者の職種及び雇用形態の変更
 四  退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
 引用元:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

「女だから(男だから)」という発言は上記の法律に違反する可能性があります。また、私生活の詮索などは場合によってはセクハラとも捉えることができます。

パワハラで問われる可能性のある罪

パワハラは内容によっては刑事責任を問われる可能性があります。パワハラによって問われる可能性のある罪を表にまとめました。

名誉毀損罪(刑法第230条) 3年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金。
侮辱罪(刑法第231条) 拘留または科料。
脅迫罪(刑法第222条) 2年以下の懲役または30万円以下の罰金。
暴行罪(刑法第208条) 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金
傷害罪(刑法第204条) 15年以下の懲役、または50万円以下の罰金

悪質なパワハラは訴えることができる

パワハラは内容によっては罪に問われる可能性もあります。

また、パワハラによって退職に追い込まれた、精神疾患を発症したという場合は損害賠償を請求することができます。パワハラは裁判に発展することもある問題なのです。

パワハラは裁判になることもある

パワハラは裁判に発展することもあります。パワハラによって、退職に追い込まれた、精神疾患を発症したという場合は、パワハラによって損害が発生していることになります。

例えば、パワハラによって退職に追い込まれたケースでは、パワハラがなければ働き続けることができたわけですから、仮に働き続けていた場合に得られた賃金を損害として、その賠償を請求することができます。

 また、パワハラによってうつ病などの精神疾患を発症した場合には、治療費を損害として慰謝料と共に請求することが可能です。

過大要求型パワハラは残業代も確認

過大要求型パワハラの中には、業務量を増やされるだけでなく、残業代をつけさせないということもあります。働いた分の賃金をもらうことは労働者の権利です。

もしも、パワハラで残業代をつけさせてもらえない、残業代が支払われないという場合は残業代を請求する方法もあります。過大要求型パワハラに遭っている方は、今支払われている賃金の確認もしましょう。

パワハラに悩んでいる方のための相談先

パワハラに悩んでいる方のための相談先

パワハラはさまざまな法律に違反する可能性のある行為です。また、上記の例にあてはまらない嫌がらせを受けている場合も、あなたが苦痛を感じ、仕事をする上で妨げとなっているならパワハラです。

パワハラの相談方法

パワハラは、まず始めに会社に相談しましょう。会社側はパワハラの防止措置をする義務があります。パワハラの相談先は以下の通りです。

  • 社内の相談窓口
    近年では、ほとんどの会社でコンプライアンスやハラスメントの相談窓口が設置されていると思います。もしも相談窓口を設けていない場合であっても、総務や人事などでパワハラの相談を受け付けていると思います。パワハラにあったら、まず社内の人にパワハラ被害があったことを報告・相談するようにしましょう。
  • 社外の相談窓口
    社内でパワハラを解決することが難しい場合は、社外の相談窓口を利用しましょう。社外の相談窓口には、労働局の総合労働相談コーナーや民間の相談窓口などがあります。
  • 弁護士に相談する
    パワハラで損害が発生したり、パワハラを訴えたいと考えている方は弁護士に相談しましょう。パワハラで退職に追い込まれたり、精神疾患になったりした場合はパワハラ訴訟によって慰謝料を請求できる可能性があります。

パワハラで退職に追い込まれた

パワハラで退職に追い込まれた、ひどいパワハラにあって会社を辞めたいと考えている方は、パワハラ退職の仕方を考えましょう。パワハラで退職する場合は退職自由を「自己都合」ではなく「会社都合」で退職することをおすすめします。

「会社都合」で退職をすると、失業保険を受けられる日数が「自己都合」で退職した場合よりも長くなることがあります。退職事由は退職してしまった後からでも変更できる場合があります。

ひどいパワハラに遭って精神疾患になってしまった

ひどいパワハラに遭って、うつ病などの精神疾患になってしまった場合は、労災申請をすることで治療費が補償されます。パワハラで病気や怪我をした場合は労働災害保険を申請することができます。

パワハラによる労災申請をする方法は、ハローワークや労働局などで労災申請をする際に「医師の診断書」と「パワハラの証拠」を持っていき、事情を説明してください。

パワハラの解決方法

パワハラを解決するには、周囲の人を巻き込むことが重要です。この項目では、パワハラ解決まで大まかな手順や、パワハラの解決方法などをご紹介します。

パワハラ解決までの手順

パワハラ解決までの大まかな流れを図にまとめました。なお、以下はあくまでも大まかな流れです。パワハラの解決方法は、パワハラ被害の内容や状態によって解決方法が変わります。また、以下のフローの途中でも会社との示談・和解などが成立するなど、あなた自身が納得できる方向に進んだなら、パワハラが解決したと判断できるでしょう。

パワハラをやめさせるにはまず証拠を集める

パワハラ被害を相談・報告する際やパワハラ解決にあたっては、証拠が重要になっていきます。パワハラの証拠には以下の3つが挙げられます。

  • パワハラの音声データ
  • パワハラメールなどの画像
  • パワハラの被害記録

パワハラを相談する

パワハラ被害にあったら必ず会社に報告・相談をするようにしてください。パワハラの解決には周囲の人を巻き込むことが必要です。当事者間で交渉を行うと、かえって問題が悪化する可能性があります。パワハラ解決にあたっては必ず第三者を間に入れて、解決方法を考えていきましょう。

また、この他にもパワハラの相談先は多数あります。あなたがパワハラをどう解決したいのか、また、どの相談先が一番相談をしやすいかなどを考えてみましょう。

パワハラの中止を会社と直接交渉する

パワハラ被害を相談してもパワハラ問題が解決されなかった場合は、パワハラ行為をやめてもらうように書面で交渉するという方法があります。パワハラの中止を会社と直接交渉するには、ハラスメント差止要求書を会社に送付し書面での交渉を行います。ハラスメント差止要求書は、パワハラ被害の内容をなるべく時系列で詳細に書きましょう。 

また、パワハラによって自分が今どんな状態になっているのかも書くようにしてください。パワハラ差止要求書は、内容証明郵便で送ります。内容証明郵便とは、送った文書の内容を郵便局が証明してくれるサービスです。会社とのやりとりの中で「言った・言わない」などのトラブルを防ぐ効果があります。

パワハラを訴える

パワハラで退職に追い込まれた、精神疾患を発症した場合は、パワハラによって損害が発生しているといえます。

パワハラによって損害が発生した場合は、パワハラを訴える事によって損害賠償の請求をすることができます。

会社を辞めるという選択もある

パワハラは、精神的にも肉体的にも「つらい」状態になるハラスメントです。パワハラで悩まれている方は、決して考えすぎないようにしましょう。会社を辞めてはいけない、どうにかして働き続けなければいけないと考えて込んでしまうと、さらに自分を追い詰めル事になります。パワハラで会社を辞めることは決して悪いことではありません。自分の心と身体を守りながら、解決方法を考えましょう。

まとめ

今回は、パワハラの定義やパワハラの対策法などをお伝えしました。この記事に出てきたパワハラの例に当てはまらない嫌がらせを受けている場合も、あなたが苦痛を感じ、仕事をする上で支障が出ているのならハラスメントになります。もし、今職場の人間関係で過度のストレスを感じている場合は、無理をせずパワハラや働き方に関して一度考えてみるということをおすすめします。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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