家賃滞納トラブルの裁判事例と裁判による強制退去・家賃回収までの流れ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
家賃滞納トラブルの裁判事例と裁判による強制退去・家賃回収までの流れ

家賃滞納トラブルで、支払い交渉に難航した場合は裁判を起こすことによって、法的措置による家賃の回収をすることができます。家賃滞納による裁判では、強制的に立ち退きをさせたり、預金口座の差押えをすることができます。

今回は、家賃滞納による裁判や解決までの流れについて裁判例とともにご紹介いたします。

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家賃滞納トラブルは裁判に発展する場合もある

家賃滞納トラブルは、建物や土地を管理しているオーナーにとっては死活問題ですよね。住居者がどうしても家賃の支払いに応じない場合は法的手段をとる必要が出てきますが、家賃滞納トラブルの解決には2つの方法があります。

この項目では、まずその2つの方法についてご紹介します。

訴訟を起こして債務名義を得る

家賃滞納を回収するには、訴訟によって「債務名義(※)」を得る必要があるのです。債務名義を得ることで、債権の強制回収や強制退去をさせることができます。債務名義については後の項目「裁判で債務名義を得る」でもお伝えしていますので、合わせてご覧ください。

※ 債務名義(さいむめいぎ)とは、債権者の債務者に対する特定の権利があることを認める公文書のことです。

立ち退きの裁判は明渡請求訴訟

支払うべき家賃を滞納されたので、貸していた建物を返してもらうというのは当然のことです。そこで取るべき方法の一つとして、賃貸借契約の解除と建物の返却を求める「建物明渡請求訴訟(※)」を起こすという方法があります。

明渡請求(あけわたしせいきゅう)とは、裁判所の判決を経て居住者を強制退去させる手続きのことです

家賃滞納トラブルが裁判で争われた事例


家賃滞納トラブルが裁判で争われた事例

いつまでも家賃が払われえないからといって、脅迫や暴力などの不法行為を行なった場合は家賃を回収できなくなるだけでなく、住居者側から損害賠償を請求されてしまうこともあるのです。

この項目では、実際に起きた家賃滞納トラブルの裁判事例をご紹介します。

滞納家賃の支払いが認められた裁判

<事件概要>
オーナーは入居者に対し、居住用として建物と駐車場の賃貸借契約を結んだ。契約内容には、住居者が賃料を3ヶ月以上滞納した際に明渡し請求ができるとされていた。ところが、住居者が家賃滞納を行い、また、支払い督促にも応じなかったため、契約の解除及び滞納分の家賃として300万円の請求を行った。
<判決>
オーナーは、家賃の督促を滞納5ヶ月目から行っていたが、住居者は応じなかった。また、当該事件では家賃滞納から法的措置に至るまで長期間かかっているが、建物が公営住宅であったことから法的措置が控えられていた。上記の過程から、本事件では入居者はオーナーに対し293万1248円を支払うことで和解となり棄却した。

この裁判では、家賃滞納から10年という年月が過ぎていましたが、オーナー側が督促を何度か行っていたこと、また、督促に対し入居者が不払いと認めていたことから債権の承認が行われたと判断され、時効消滅が不完全であると判断されました。

参考リンク:裁判所|建物明渡等請求事件

違法行為と行うと家賃を回収できなくなる場合もある

<事件概要>
入居者は過去にも家賃滞納を行なっており、さらに3ヶ月の家賃滞納を行なっていた。オーナーは住居者に対し、部屋に入室できないようドアノブに金属製のカバーをつけて、了承なく家財を持ち出して処分した。
<判決>
住居者が入室できないように鍵を施錠する行為は住居侵害にあたり、家財を持ち出し処分した行為は器物損壊にあたる。そのためオーナーは、本件の不法行為により住居者に与えた損害を賠償する義務を負うものというべきである。

家賃滞納の交渉での不法行為は「家賃滞納の交渉で気をつけるべき4つの違法行為」に詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。

参考リンク:(参考)滞納・取立てをめぐる裁判事例

家賃滞納トラブルから裁判を行うまでの流れ

家賃滞納トラブルから裁判までの大まかな流れを図にまとめました。家賃滞納を円満に解決させるためには、入居者との交渉が必要になります。いきり立って怒鳴り込んでしまうと不法行為とみなされることもあるので、家賃滞納トラブルでの交渉は冷静に行うようにしてください。

家賃滞納トラブルから裁判を行うまでの流れ

家賃滞納の支払い催促を行う

入居者が家賃を数ヶ月以上滞納した場合は、家賃滞納者として回収のための行動をしましょう。家賃滞納の支払い催促は「電話・ポストなどへの投書・郵送」の順番で行います。

家賃の支払い催促を行う際、重要なのは、記録を残すということです。電話や文書でのやり取りを「いつ」・「どのように」行ったかなどを手帳などに記録しておくことで、法的措置をとる際に証拠にすることができます。

【関連記事】:家賃滞納トラブルを解決させる手順5つと注意すべき4つの違法行為

電話による催促

家賃滞納があった場合は、まず家賃滞納の事実を入居者に伝えましょう。電話交渉の際は、「滞納がいくらあるのか(具合的金額)」と「いつまでに支払うのか(支払い期限)」を伝えましょう。

なお、入居者が電話に出ない場合も留守番電話などに残しておき、いつ電話したかを記録しておきましょう。

ポストなどへの投書による催促

電話による催促を数回行っても、入居者が応じない場合はポストに投書する等の形で催促を行います。

ポストなどへの投書を行う場合は、目立つように貼り付けるなどの見せしめ・取り立てを行うと不法行為とみなされることがあるので注意しましょう。

普通郵便で催告書を郵送

投書での催促にも応じない場合は、「家賃滞納があり、支払わない場合は賃貸借契約を解除することも止むを得ない」旨を記載して住居者に郵送しましょう。催告書は、内容証明郵便で送るという方法もありますが、まず最初は普通郵便で送るほうが良いでしょう。

また、郵送した文書はコピーを取っておくなど記録として残しておきましょう。

催告書を内容証明郵便で送る

再三通知したのにも関わらず催促に応じない場合は、催告書を内容証明郵便で送付します。内容証明郵便とは、郵便局が送った文書の内容を保証してくれるサービスです。内容証明郵便を送ったことで、債権の時効消滅を一時的に中断させることができます。

ただし、内容証明郵便は、後に訴訟に発展する可能性を十分に考慮して送るようにしてください。もしも、請求内容等で不安な点があった際は、弁護士や行政書士などの専門家に一度相談することをおすすめします。

裁判で債務名義を得る

債務名義は債権の存在や支払いのための強制執行の内容などを公的に証明した文書のことです。家賃の支払いを命じたり、土地や建物の明け渡しを行う際は、この債務名義にしたがって強制執行が行われます。

債務名義を得るためには、裁判所で少額訴訟や支払い督促を申し立てる必要があります。

関連リンク:裁判所|債務名義とは何ですか?

強制執行をする

強制執行では、債務名義に従って銀行口座などを差押えたり、車などの動産の競売を行い強制的に滞納された家賃を回収します。また、強制的な立ち退きも強制執行に含まれることがあります。

【関連記事】:賃貸で立ち退き全手順|立ち退きの際に知っておくべき知識

強制執行はあくまで最終手段であることを覚えておく

ここまで裁判で強制退去させる方法をご紹介してきましたが、あくまで裁判は最終手段です。強制退去には費用も手間も発生しますので、冒頭でもお伝えしたように、可能な限り話し合いで解決することが望ましいと言えます。

どうしても滞納者との交渉が上手くいかない時に検討していただきたいですが、仮にどうしようもないのであれば、早い段階で弁護士などの専門家に相談し、どのように裁判を進めていけば良いかを相談して見ましょう。

下記で弁護士に相談した場合の費用をご紹介していますので、参考にして頂ければ幸いです。

家賃滞納の裁判で弁護士に依頼する際の費用

 

家賃滞納の裁判で弁護士に依頼する際の費用民事訴訟などの場合、弁護士の力が必要不可欠になります。弁護士費用は事務所によって「初回相談料無料」や「着手金無料」という場合もあり大きく変動します。また、家賃滞納トラブルの訴訟では、請求金額によって着手金や報酬金が変動するため、予算などはあらかじめ相談しておくといいでしょう。

【関連記事】立ち退き交渉で悩んだら弁護士に相談!専門家に代行を依頼しよう

相談料

相談料は初回無料や初回30分無料となっており、その後は時間により加算されるタイムジャージ制の事務所が多いようです。家賃滞納を弁護士に相談する際は相談内容や現在の進行状況をメモにまとめておくとスムーズに相談することができます。

着手金

着手金は裁判に勝っても負けても支払うお金のことです。弁護士事務所によって金額は変動しますが、旧日弁連の相場は以下の通りになっています。

請求額

着手金

金額

300万円以下

4%~8%

24万円 以下

300万円超、3000万円以下

2.5%~5%

7.5万円〜150万円

3000万円超、3億円以下

1.5%~3%

45万円〜900万円

3億円超

1%~2%

300万円 以上

報酬金

報酬金は裁判に勝訴した場合に支払うお金のことです。報酬金も弁護士事務所によって変動しますが、相場は以下の通りになっています。「相談料無料」、「着手金無料」という弁護士事務所の場合、報酬金の割合を高く設定していることがあります。

請求額

報酬金

金額

300万円以下

4%~16%

48万円 以下

300万円超、3000万円以下

2.5%~10%

7.5万円〜300万円

3000万円超、3億円以下

1.5%~6%

45万円〜1800万円

3億円超

1%~4%

300万円 以上

その他費用

このほかに、面談費用や催告書などの書類作成費用、弁護士が裁判所まで移動した際の交通費などが加算されます。弁護士に相談する場合は、費用のことも含めて相談することをおすすめします。

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まとめ

本来支払われるべき家賃が支払われない家賃滞納トラブルはオーナーにとって、深刻な問題ですよね。家賃滞納トラブルは入居者との交渉にも気を使いますし、その間も家賃収入が得られないため、精神的にも金銭的にも負担がかかります。

家賃支払い交渉が難航した場合は、早い段階で弁護士などの専門家に相談し、法的措置で強制的に回収しましょう。この記事が家賃滞納に悩んでいるオーナーの方々の手助けとなれば幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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