警察に逮捕されるまでの流れと逮捕後の流れまとめ

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
警察に逮捕されるまでの流れと逮捕後の流れまとめ

捜査機関による逮捕は捜査機関が無制限に行うことができるわけではなく、一定の逮捕要件が必要とされています。また、逮捕された被疑者の身柄拘束には一定の期限があるため刑事手続は非常にスピーディーに進みます。そのため、逮捕された被疑者の刑事弁護活動はタイムリーな対応が必要となります。

ここでは逮捕されるまでの基本的な流れや逮捕後の手続きについて詳しく確認しながら、逮捕された場合の被疑者側の対応について書いていきたいと思います。

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通常逮捕の流れ

捜査機関がある犯罪事実で被疑者を通常逮捕する場合の流れは下図のとおりです。

通常逮捕の流れ以下上記図に従って簡単に解説します。

事件発生・捜査

警察は被害者からの被害申告などを端緒として捜査を開始します。警察は事情聴取、現場検証、防犯カメラ映像の確認、DNA鑑定など事件処理のプロとして必要な捜査を行い、犯人と犯罪事実の証拠を収集します。

裁判所に逮捕状の申請

捜査機関による捜査の結果、被疑者による犯行が行われたことについて疑うに足りる相当な理由があると判断され、かつ当該被疑者の身柄拘束が必要であると判断する場合、捜査機関は裁判所に対して逮捕令状の申請をします。

裁判官は、逮捕の理由と必要性があると認めれば逮捕令状を発布し、捜査機関はこれをもって被疑者を逮捕します(通常逮捕)。

逮捕状の請求から発付までの時間は、ケース・バイ・ケースですがおおむね数時間~半日以内に結論がでます。

逮捕要件について十分でないと判断される場合には捜査機関に対して補充が求められることもあるようですが、基本的に逮捕状の請求が却下されることはありません。したがって、捜査機関が身柄を拘束しようと思えば、基本的にそれなりの証拠を揃えることで身柄拘束が可能であるということです。

平成30年の司法統計によると、逮捕状が発付された総数は9万212件であったのに対して、却下はなんとわずか57件でした。

逮捕

逮捕状の発布を受けた捜査機関は、被疑者の自宅等に出向いて逮捕状を示し、逮捕を執行します。

逮捕前に連絡などはないので、誰もが突然のことに驚くでしょう。

逮捕の時間や状況は一定ではありませんが、セオリーとして「朝一番」に執行されるケースが多数です。

これは、仕事や学校に出かけてしまう前に身柄を確保したほうがスムーズであるほか、外出先などの衆人環視のなかで逮捕を執行しないという配慮によります。

また、日の出前や夜間の逮捕状執行にはそれなりの理由が必要で、逮捕状の請求時に夜間執行の許可も取り付ける必要があるので、警察としては日が昇った朝一番がベストなのです。

逮捕状の執行は、いたずらに家族や周囲の人には見えないようにおこなわれますが、逃走したり抵抗をみせたりすると、複数名に取り押さえられて手錠をかけられてしまいます。

逮捕状をいきなり見せられて気が動転してしまうことはやむを得ないですが、下手に暴れても逮捕が中止されることはありませんので、素直に従う方が賢明と言えそうです。

逮捕された後の流れと警察の対応

警察に逮捕されると、法律の定めに従って刑事手続きを受けることになります。

48時間以内に送検/釈放

警察に逮捕されると、まずは警察署の留置場において身柄を拘束されます。

48時間以内に検察庁に送致する」というタイムリミットがあるため、この段階では、犯行を認めるのかといった簡単な取調べに限られることが多いでしょう。

なお、検察官送致はマスコミ用語では「送検」と呼ばれます。

また、逮捕されずに在宅事件として検察官に事件送致がされることをマスコミ用語では「書類送検」と呼んでいます。

ただし、送致されるまでに「明らかに犯人ではない」という証拠がみつかった場合には送致されず釈放されることもあります。

24時間以内に勾留請求

送致を受け付けた検察官は、送致から24時間以内に長期の身柄拘束処分である「勾留」の要否を判断します。

検察官は、犯罪捜査のために勾留が必要と判断する場合、裁判官に勾留請求を行い、裁判官が勾留を認めると、最大10日の身柄拘束処分が認められます。

勾留延長は最長10日間

事案によっては、初回の勾留で認められた10日間では捜査が尽くせない場合があります。

この場合、検察官は裁判官に対して勾留の延長を請求することができ、裁判官が許可する場合最長で10日間の延長が認められます。

つまり、逮捕されて送検されるまでの48時間、検察官が勾留を請求するまでの24時間、勾留が認められた場合には延長も含めると最大20日間、合計して最大23日間の身柄が拘束される可能性があるということです。

起訴・不起訴の判断

検察官は、勾留が満期を迎える日までに起訴・不起訴を判断します。

ここまでで犯罪を証明する証拠が十分にそろっていて、刑事裁判で罪を問う必要があると判断されれば、検察官は被疑者を起訴します。

証拠が不十分であったり、ある程度の証拠はそろっていても罪を問うまでの必要はなかったりなどの状況があれば、不起訴処分を下します。

起訴されれば刑事裁判が開かれて、不起訴処分になればすぐに釈放されます。

少年(14歳以上)の場合

20歳未満の少年が逮捕された場合最長23日間の身柄拘束があり得ることは成人と一緒ですが、少年事件の場合検察官は直ちに起訴するのではなく、必ず家庭裁判所に一度事件を送致することとされています(全件送致主義)。

家庭裁判所は送致された事件について少年審判によりその処分を決定しますが、その前に観護措置を取り鑑別所に収容するか、鑑別所には収容はせず在宅で家庭裁判所の調査官の観護を受けるのかを決めます。

少年審判の結果、未成年として保護措置をするべきと判断されれば保護処分、成人と同様に刑事裁判で裁かれるべきと判断されれば検察官送致、処分の必要がないと判断されれば不処分となります。

少年(14歳以上)の場合

逮捕の種類

逮捕されるまで及び逮捕された後の流れについてはお分かりいただけたかと思いますが、身体を拘束する逮捕の手続きにも刑事訴訟法にて定められている4つの種類があります。

通常逮捕(刑訴法第199条)

日本は憲法にて令状主義が定められているので、原則は逮捕状を用いた逮捕の手続きになり、これを通常逮捕と言います。

緊急逮捕(刑訴法第210条)

死刑、無期懲役、長期3年以上の懲役・禁錮に当たる重大な罪を犯したと認めるに充分な理由や証拠がある場合に、逮捕状を請求している時間がなく急を要する場合において逮捕状がなくとも逮捕できる手続きのことを緊急逮捕と言います。緊急逮捕した場合は逮捕した後に逮捕状を請求しなければならず、仮に逮捕状が発付されなかった場合は即時に釈放しないといけません。

現行犯逮捕(刑訴法第212条)

犯罪を現に行っているか現に行い終わった場合(現行犯人)、もしくは罪を行ったことが明らかな場合(準現行犯人)においては逮捕状がなくとも逮捕することができます。これを現行犯逮捕といい、緊急逮捕と違い、逮捕した後にも逮捕状の請求をする必要はありません。

私人逮捕(刑訴法第213・214条)

本来逮捕ができるのは警察官か検察官というイメージがありますが、現行犯逮捕に限っては一般人でもすることができることになっています。仮に一般人が逮捕した場合には、直ちに検察官か警察官に身柄を引き渡さないといけません。

逮捕されてしまった場合にすべきこと

逮捕されてしまった場合にすべきこと

実際に逮捕されてしまった場合、逮捕期間中は家族や友人と面会することはできませんし、直接連絡を取ることもできません。この場合に重要となる被疑者の権利は弁護人選任権と黙秘権です。

すぐに弁護士との接見を依頼する

逮捕期間中はたとえ家族でも面会は認められていませんが、弁護人との面会は制限されません。また、逮捕された被疑者は当番弁護士制度の利用が可能であり、取調べの担当警察や留置場の警察官に「弁護士と話をしたい」と頼めば、速やかに当番弁護士を呼ぶ手配をしてくれます。

当番弁護士は逮捕直後に接見して取り調べを受ける際のアドバイスをくれたり、今後の手続の流れについて説明してくれたり、外部との必要最低限の連絡をとってくれたりと非常に心強い存在です。

そのため、突然逮捕され、何をどうすればよいかわからないような場合には、まずは当番弁護士を呼んでおくことを強くおすすめします。

黙秘権の有効活用

刑事手続において自分の不利益になる供述を強要されない権利を黙秘権といい、憲法第38条第1項で保障されています。黙秘権は話したくないことは話さなくてよい権利ですので、極端な話ずっと黙っていてもかまわないのです。

そのため、逮捕直後の取調べで何をどう供述してよいか、どう供述するべきかわからないという場合は「弁護士が来るまで何も話しません」と黙秘権を行使することも検討に値します。

家族が逮捕されてしまった場合の対処法

ご家族が逮捕されてしまい、どうしていいのかわからず不安と思うでしょう。家族が逮捕された場合は自ら被疑者となった家族と面会することや弁護士を通じて面会することを検討するべきでしょう。

家族を通じて弁護士に相談する場合は、少なくとも逮捕日と留置場所くらいは伝えられるようにしましょう。また、弁護士を通じて本人からどのような情報を共有してほしいのかも明確とするべきでしょう。

まとめ

逮捕に関係する一連の流れについてお分かりいただけたでしょうか。逮捕されてしまうと今後の生活への影響はもちろん、家族にも多大な迷惑をかけることとなります。

日本では、起訴されてしまうと99.9%有罪になってしまいます。逮捕されただけでは前科になりませんが、起訴され有罪になってしまえば前科として一生残ってしまいます。刑事事件の被疑者・被告人となることによる不利益を最大限抑制したいのであれば、できるだけ早いタイミングで弁護士のサポートを受けるべきでしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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