原状回復費用の相場|引っ越し前のトラブル回避のポイント7つ

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
原状回復費用の相場|引っ越し前のトラブル回避のポイント7つ

原状回復費用は契約時に支払った敷金を担保として、入居者・オーナーで負担するものです。原状回復費用の相場は、部屋の広さや築年数、入居年数によって変動しますが、家賃の2〜3ヶ月分と言われています。

今回は、原状回復費用の内訳や定義などの知識をご紹介します。

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原状回復費用の相場は家賃の2〜3ヶ月分

原状回復費用として敷金から差し引くことができるのは家賃の2〜3ヶ月分と言われています。それ以上を入居者負担とすると、一方的・過度の負担とみなされ、契約内容自体が違法・無効となる場合があります。

この項目では、原状回復費用の内訳と「通常使用・経年劣化による汚れや破損」が入居者負担となる原状回復特約についてご紹介します。

原状回復でかかる費用の内訳

入居者が負担する原状回復費用には2つあります。

  • 入居者の故意・過失による汚れや破損
  • (特約がある場合)通常使用・経年劣化による消耗や損耗

古くなった設備を次の入居者のために取り替えたり(グレードアップ)、リフォームなどを行ったりする場合はオーナー側の負担で行うことになります。下の表では、原状回復で発生する可能性のある修繕の費用相場をまとめました。

汚れや破損

修繕内容

料金相場

壁のピン穴

壁紙張替え

約1,000円/2㎡

壁や天井の穴の修復

下地ボード取り替え

約30,000円/1箇所

床板のシミ

床板の汚れ除去

約10,000円/1箇所

床板のカビ・破損

床板の張替え

約8,000円/1㎡

お風呂のカビ

業者によるクリーニング

>10,000〜20,000円前後

台所の油汚れ

業者によるクリーニング

>15,000〜25,000円前後

部屋全体の軽度の汚れ

業者によるクリーニング

>10,000〜30,000円前後

原状回復費用は、部屋の広さ、汚れや破損の状態によって大きく変動します。原状回復費用を入居者負担とする場合、相場として家賃の2〜3ヶ月分以内の金額と考えてください。なお、入居者にとって一方的・過度な負担となるような請求を行うことは違法・無効になります。

入居者に通常消耗の原状回復費用を請求できる「特約」

原状回復で入居者負担となるものの原則は、「入居者の故意・過失による汚れや破損」です。人が物件に居住すると通常使用・経年劣化によってどうしても汚れや破損が発生します。特約で規定されていない場合は、これらの汚れや破損の修繕はオーナー負担と考えられています。

しかし、原状回復特約がある場合は通常使用・経年劣化による汚れや破損も入居者負担とすることができます。ただし、軽度の汚れや破損は月々の家賃によって負担されていると考えられるため、退去時のハウスクリーニング代金などを全て入居者が負担するものではないと考えられています。

原状回復費用をめぐる裁判

原状回復費用をめぐる裁判
原状回復費用の負担割合や敷金の返還などは、部屋の広さや状態、物件の価値の変動などの条件を考慮して決めなければならなりません。そのため、法律の解釈などを巡って入居者やオーナー間でトラブルになりやすい問題なのです。

この項目では原状回復費用が入居者となった事例、オーナー負担となった事例を合わせてご紹介します。

原状回復費用が入居者負担となった裁判事例

<事件概要>

入居者Yは月額家賃12万5,000円の賃貸物件を契約し、敷金として37万5,000円を支払った。当該物件の契約には原状回復義務と原状回復特約、修繕に関する費用として30〜60万円程度がかかる可能性があるとの旨が記載されており、契約時にY合意のもと捺印・署名がされていた。

退去時Yは敷金の返還としてオーナーに内金24万4600円の返金を請求した。

<結果>

当該物件では原状回復義務や原状回復特約の他、修繕に関わる費用に関しても明確に書面に記載しており、契約書に署名・捺印した時点で入居者Yはこれに合意したと解釈ができた。このため、原状回復費用は全てYの負担となった。

原状回復費用がオーナー負担となった裁判事例

<事件概要>

入居者Yは、契約時に敷金として20万円を支払った。当該物件は、原状回復特約に「通常使用による損耗・自然消耗の原状回復義務」が明記されていた。退去時、原状回復費用20万円を請求され、敷金の返還がされなかった。Yはこれを不当として、オーナーに対し敷金全額の返還を求めた。

<結果>

敷金20万円に対して、原状回復費用として20万円を差し引くことは入居者の負担が一方的・過度なものであり、消費者契約法10条により特約内容自体が無効であると判断された。特約の無効により、Yには敷金全額が返還された。

原状回復費用を抑えるための交渉ポイント

原状回復費用を抑えるための交渉ポイント入居者にとって退去時の原状回復費用はなるべく抑えたいものですよね。日頃の手入れや退去時の掃除、原状回復の知識を身につけることで原状回復費用のための交渉を有利に進めることが可能です。

この項目では、入居者がオーナーと原状回復費用の交渉をする際に有利に進めるためのポイントをいくつかご紹介します。

退去時の清掃は念入りに行う

オーナーは現状確認の際に部屋に入った際の印象で、原状回復費用の負担を決めることがあります。退去時の現状確認の前には、壁紙や天井なども固く絞った濡れ布巾で拭くなど念入りな清掃を行いましょう。また、日頃の手入れも欠かさず行いましょう。

自分の不注意や手入れ不足によってつけた傷は把握しておく

退去時に、入居者が故意・過失によって生じた汚れや破損は自覚している場合は、先にオーナー側に言ってしまいましょう。相手から申告されると他の箇所に目が行きにくいですし、裏を返すと「他の部分は私のせいではないですよ」という捉え方もできます。

原状回復のルールを理解しておく

原状回復にはいくつかのルールとオーナーが請求できる負担に制限があります。国土交通省が策定している「原状回復をめぐるガイドライン」などを理解したり、退去時の現状確認に印刷・持参しておくことでオーナーに高額な請求をさせないための牽制を行うことができます。

原状回復の費用負担の考え方

原状回復の費用負担の考え方原状回復トラブルは、入居者側が消費者としての権利を過度に主張したりオーナー側が原状回復義務や特約の有効性を過大解釈したりすることが原因で発生する問題です。決して安くはない金額がかかる原状回復費用ですので、正しい知識を身につけて穏便に解決させたいですよね。

この項目では、原状回復に伴う入居者とオーナーの費用負担についてご紹介します。

原状回復費用は耐用年数による負担割合で考える

原状回復は、原則として、通常使用・経年劣化による汚れや破損を考慮した上で原状に復することを指します。不動産は減価償却される資産に当てはまり、耐用年数によって価値が変動していきます。

例えば、新築で入居して1年未満で退去した場合にできた汚れや破損は、入居者負担の割合が多くなります。また、長く居住した場合は期間分の経年劣化などを考慮する必要があるため入居者負担の割合は少なくなります。

>

引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルをガイドライン

軽度の汚れ破損は家賃で負担されている

物件に人が居住している以上、日常生活での汚れや破損が発生するものです。どんなに手入れをした場合でも、お風呂場に多少のカビが発生したりキッチンに油汚れが発生したりしますよね。また家具の設置によって壁や床に小さな傷やへこみができることもあります。

これらのように、手入れをしていても発生してしまう汚れや破損に関しては入居者が月々の家賃を支払うことによって負担していると考えられています。

入居者の故意・過失による汚れや破損は入居者負担になる

飲食物をこぼして壁や床にシミができてしまったり家財をぶつけた・落とした等で大きな傷やへこみを作ってしまったり…悪質な場合は掃除を怠って広範囲にカビを発生させてしまう入居者もいます。これらの場合は入居者の故意・過失による汚れや破損になるので入居者負担となると考えられています。

契約時に支払った敷金が担保となっているため,原状回復に関しては,その不足分が追加請求されるというのが一般的です。ただし、原状回復費用が敷金では足りずに追加請求されることは、余程の場合でないと考えられないでしょう。

原状回復の法律とガイドライン

原状回復の法律とガイドライン
賃貸物件の原状回復をめぐるトラブルは年間約14,000件発生しています。物件の原状回復は民法や消費者契約法などの法律が複雑に関わってくるため、入居者・オーナー間で解釈に齟齬(そご)が発生しやすい問題なのです。

この項目では原状回復と費用負担などに関する法律をご紹介していきます。

原状回復義務と特約の制限

賃貸物件などの不動産には、民法で原状回復義務というものが定められています。原状回復義務で定められている「原状」とは、入居前の状態に戻すということではありません。人が居住することによって発生する通常使用・経年劣化による汚れや破損を考慮する必要があります。

第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
引用元:
民法

また、原状回復によって入居者に金銭的負担をかける場合は、入居者の負担が一方的・過度なものにならないようにしなければなりません。入居者(消費者)によって一方的・過度な内容の契約は消費者契約法により無効とされているのです。

第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
引用元:
消費者契約法

原状回復ガイドラインによる定義

原状回復や敷金の返還に伴うトラブルは毎年数多く発生しているため、国土交通省では「原状回復をめぐるガイドライン」が策定されています。このガイドラインでは原状回復を以下のように定義しています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるガイドライン

上記から原則としては、通常使用・経年劣化による汚れや破損は建物の管理者であるオーナーが負担することになっています。しかし、原状回復特約をつけることによって通常使用・経年劣化による汚れに関しても入居者負担とすることができます。ただし、原状回復特約を契約に含める場合は以下の要件を満たさなければなりません。

【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて

認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるガイドライン

原状回復費用として請求できるのは汚れ・破損した箇所のみ

原状回復費用として請求できるのは、あくまでも入居者が汚したり破損したりした部分のみの修繕費です。例えば、壁汚して壁紙の張替えが必要になった場合は、その箇所のみの修繕費用が入居者負担となります。張り替えた壁紙と色合いを合わせるために他の箇所の張替えを行う場合は、オーナー側が負担することになります。

原状回復費用などのトラブルは弁護士などの専門家に相談する

原状回復費用などのトラブルは弁護士などの専門家に相談する
原状回復費用は、入居者(借主)・オーナー(貸主)という立場上、一方的な請求が発生しがちな問題ですよね。悪質な入居者によって原状回復費用が支払われない、また、退去時にオーナーから高額な原状回復費用を請求されて困っている…どちらの場合も早い段階で弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

原状回復費用は入居者・オーナーにとって揉めやすいトラブルの一つです。原状回復は、部屋の広さや建物の価値・状態、入居年数などによってケース・バイ・ケースのため解釈にも齟齬(そご)が発生しやすいものです。正しい知識と日頃の手入れによって、穏便に退去したいですよね。

この記事で、原状回復費用に悩まされている方の手助けができれば幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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