敷金返還請求とは|少額訴訟の手続きとトラブル解決手順

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
敷金返還請求とは|少額訴訟の手続きとトラブル解決手順

敷金返還請求に関するトラブルは年間14,000件近く発生しています。原状回復費用によって敷金が返還されなかったり高額なハウスクリーニング費用を請求されたりなど様々なケースがありますが、これらは貸主に敷金返還請求を行うことが可能な場合があります。

今回は、敷金返還のトラブル解決のための手順や、少額訴訟による敷金返還請求の方法についてご紹介します。

不動産トラブルについて相談できる弁護士を探す

敷金返還トラブルに関する知識

敷金が返還されなかったり高額な原状回復費用を請求されたりなど、賃貸借契約を解除した後に発生する敷金返還トラブルは年間14,000件近く発生しています。

年度

2011

2012

2013

2014

2015

2016

相談件数

15,518

14,222

13,921

13,913

14,228

13,016(前年同期 13,242

引用元:国民生活センター|賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル

この項目では、敷金が返還される時期や原状回復費用としていくら差し引かれるのかなどをご紹介します。

敷金はいつ返還される?|退去時から概ね1ヶ月半以内

賃貸借契約を結んだ際に不動産会社などに預け金として支払った敷金は、契約の解除をしてから2週間〜1ヶ月半後に返還されます。

そのため、不動産会社に鍵を返却して退去が完了してから、概ね1ヶ月半以内には返還されると考えていいでしょう。

敷金はいくら差し引かれる?

敷金は、家賃滞納や原状回復費用の担保として不動産会社に支払うお金です。退去時の敷金返還トラブルは原状回復費用によって敷金が返還されないというケースが多いです。

原状回復義務は、民法で定められている義務です。

第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
引用元:民法
 

また、国土交通省で以下のように定義されています。もっとも、当該定義に拘らず、特約で原状回復費用の負担を定めることができます。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
 

原状回復費用としてどの程度の費用が発生するかはケース・バイ・ケースでしょう。原則的には通常の使用に対する原状回復は賃借人の負担とはなりませんが、特約で明確化することにより通常損耗の原状回復についても賃借人負担とすることができます。

敷金は必ず全額が返還されるわけではない

敷金は必ず全額が返還されるわけではありません。あくまでも原状回復費用を差し引いた余剰分が借主に返還されます。

ただし、原状回復を超えた過剰な負担を賃借人に負担させるような合意は、消費者契約法に違反する可能性があります。

第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
引用元:消費者契約法
 

原状回復や敷金に関する特約については、後の項目「契約内容と修繕費用を照らし合わせる」でも詳しく記載していますのであわせてご覧下さい。

敷金返還を請求するまでの流れ|トラブル解決手順

敷金返還を請求するまでの流れ|トラブル解決手順「貸主から敷金が返還されない」、「高額な原状回復費用を請求されて困っている」という場合のトラブル解決手順は以下の通りです。

  • 貸主に原状回復費用の内訳・見積もりをもらう
  • 契約内容と修繕費用を照らし合わせる
  • 貸主と敷金返還の交渉をする
  • 内容証明郵便を送る
  • 少額訴訟を起こす

この項目では、各工程について詳しくご紹介します。

貸主に原状回復費用の内訳・見積もりをもらう

敷金が返還されない、高額な原状回復費用を請求されたという場合は、まず貸主に原状回復費用の内訳や見積もりをもらうようにしましょう。

見積もりや内訳の中には、余計なハウスクリーニング代金や必要以上の金額請求が含まれている可能性があります。

契約内容と原状回復費用を照らし合わせる

原状回復費用の入居者負担は契約内容によって異なります。なお、特約で原状回復費用の一部を入居者とする場合は、契約をする際に貸主が入居者(契約者)に対して具体的な費用などの説明を行って合意を得なければなりません。

敷金返還で覚えておくべき特約

原状回復特約

国土交通省では「通常の使用範囲内での汚れや破損(キズ)は貸主が負担する」と定義していますが、原状回復特約を定めた場合は入居者負担になる場合があります。

ただし、原状回復特約をつける場合、貸主は「具体的にどのような場合に入居者負担となるのか」、「入居者が負担する費用の具体的金額」などを契約時に詳しく説明しなければなりません。

敷引き特約

関西の一部の地域では、特約として「敷引き」を規定する場合があります。敷引き特約とは、敷金から一定の金額を現状回復費用としてあらかじめ差し引くという契約です。

敷引特約自体は適法とされていますが、常識的な範囲を超えるような敷引特約は消費者契約法上無効となる可能性もあります。これが常識的な範囲か否かはケース・バイ・ケースであり、一概には言えないと思われます。

貸主と敷金返還の交渉をする

契約内容を確認した上で原状回復費用の内容に疑問がある場合は、貸主に交渉をしましょう。

原状回復費用の負担割合などで困った際は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参照することをお勧めします。

内容証明郵便を送る

敷金返還の交渉が難航した場合は、内容証明郵便で請求書を送ります。内容証明郵便とは送った文書の内容を郵便局が証明してくれるサービスで、1,200〜2,000円程度で送付することができます。

内容証明郵便は訴訟の際に証拠にすることもできる書面です。そのため、後々少額訴訟などに発展する可能性も考えられる場合に利用することをおすすめします。

少額訴訟を起こす

内容証明郵便を送っても、貸主が交渉に応じない場合は少額訴訟を起こします。敷金返還や原状回復に関するトラブルで少額訴訟を起こす場合は、敷金返還請求の訴状を送って少額訴訟を起こします。

裁判所|少額訴訟

引用元:裁判所|少額訴訟

次の項目「敷金返還請求で少額訴訟を起こす時の流れ」では、敷金返還請求について詳しく説明していきます。なお、少額訴訟での審判内容に納得がいかない場合は通常訴訟に移行します。

敷金返還請求で少額訴訟を起こす時の流れ

敷金返還請求で少額訴訟を起こす時の流れ少額訴訟での敷金返還請求は、管轄の簡易裁判所で行います。この項目では、少額訴訟を起こす際に必要となる証拠資料や訴状、費用などについてご紹介します。

証拠資料を揃える

敷金返還請求で証拠となるのは、以下のようなものです。

  • 賃貸借契約書の該当箇所のコピー
  • 貸主にもらった原状回復費用の見積もりや請求書
  • 貸主との交渉記録をノートなどにまとめたもの
  • 物件の写真

証拠資料は訴状を送る際に添付して裁判所に提出します。

敷金返還請求の訴状を作成する

敷金返還請求の訴状は裁判所のホームページからダウンロードできます。訴状の記入例は以下の通りです。なお、訴状は管轄の簡易裁判所に提出します。

関連リンク:裁判所|裁判所の管轄区域

裁判所|敷金返還請求

引用元:裁判所|敷金返還請求
 

裁判所|敷金返還請求

引用元:裁判所|敷金返還請求

少額訴訟による敷金返還請求でかかる費用

手数料

少額訴訟の手数料は、請求する金額によって変わります。手数料は収入印紙で納めることになります。

請求する金額(訴額)

手数料

~10万円

1,000円

~20万円

2,000円

~30万円

3,000円

~40万円

4,000円

~50万円

5,000円

~60万円

6,000円

※訴額に遅延損害金や利息等は含めません。

予納郵券代

予納郵券とは裁判所が書類を送る際に必要になる切手をあらかじめ用意して納めることです。予納郵券代は訴える人・訴えられる人の人数によっても変動しますが、相場は3,000〜5,000円程度です。また、余剰分は後日返還されます。

少額訴訟の結果に納得がいかない場合は通常訴訟に移行

少額訴訟での結果に納得がいかない場合は通常訴訟に移行します。なお、通常訴訟の場合は弁護士の力が必要となりますので、早い段階で相談することをおすすめします。

不動産トラブルについて相談できる弁護士を探す

敷金返還請求は専門家に相談する

敷金返還請求は専門家に相談する敷金返還請求は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。大まかな相談窓口は以下の通りです。

  • 国民生活センター
  • 日本賃貸住宅管理協会
  • 法テラス
  • 弁護士

無料相談を行なっている窓口もいくつかあるため、一度利用してみるのもひとつです。

まとめ

正当な理由なく敷金が返還されなかったり高額な原状回復費用を請求されたりした場合は、まずは敷金の返還を求めて貸主と交渉しましょう。もしも、貸主が交渉に応じない場合は、少額訴訟で敷金返還請求を行うというのもひとつです。

この記事で、敷金返還請求を考えている方の疑問が解消されれば幸いです。

Q弁護士に無料で簡単に質問できるって本当?

CTA QAテスト A 「ズバリ、本当です!」
あなたの弁護士では質問を投稿することで弁護士にどんなことでも簡単に質問できます。

この記事を見た人におすすめの記事

この記事を見た人におすすめの法律相談

  • 賃貸物件の原状回復費用について
    管理会社の対応が悪く原状回復費用不足となっております。賃借人は1月末に退去...
  • 賃貸契約解約時のトラブルに関するご相談
    解約時に家主より納得できない支払額を請求されました。 以下、契約内容...
  • 賃貸物件でのトラブル
    賃貸の一軒家に住んでる者です。ひと月程前から給湯器が故障してお湯は出るけど...
  • 賃貸一軒家修繕費
    賃貸一軒家(テラスハウス)の修繕についてお伺いいたします。 特約事項...
この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

関連記事

あなたの弁護士

本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。

※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

不動産トラブルが得意な弁護士を探す