敷金返還トラブルの対処方法と原状回復費用の6つの知識

弁護士監修記事
弁護士を探すなら『あなたの弁護士』
敷金返還トラブルの対処方法と原状回復費用の6つの知識
シェアtwitterはてブ

敷金返還トラブルは、賃貸物件などの契約時に支払った敷金が退去時に返還されなかったり大幅に差引かれて返還されたりする問題です。国民生活センターによると、敷金の返還や原状回復費用などに関するトラブルは年間およそ1,400件発生しており、近年は微増傾向にあります。

年度

2011

2012

2013

2014

2015

2016

相談件数

15,518

14,222

13,921

13,913

14,228

13,016(前年同期 13,242

引用元:国民生活センター|賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル

なお、敷金返還トラブルの事例は「敷金返還でよくあるトラブル」で詳しくお伝えしています。合わせてご覧ください。今回は、敷金返還の対処方法と原状回復に関する知識をご紹介します。

敷金返還トラブルの対処方法

賃貸物件の契約時に支払う敷金は、退去する際に原状回復費用や未払い賃料等を差し引いた状態で返還されます。敷金返還トラブルとは、退去時に敷金が返還されなかったり、高額な原状回復費用を差引き・請求されたりする問題です。この項目では、敷金返還トラブルにあった際に確認するポイントと対処方法についてご紹介します。

関連記事:原状回復トラブルに悩んだ入居者が知っておくべき6つのこと

契約時に原状回復義務と特約を確認する

賃貸物件などを契約する際には、原状回復義務と原状回復特約についてよく確認する必要があります。原状回復義務や原状回復特約が契約書に明記されており、入居者に負担がかかる場合は契約時にオーナー側に説明責任があります。

なお、契約時に確認していない・よく分からなかったという方は、今からでも契約書類を確認して分からないことがあればオーナーに説明を求めましょう。

敷引き特約

特に、関西にお住まい(お引っ越し)の方が確認すべきなのは「敷引き特約」です。敷引き特約とは、契約内容に特約として「退去時は、敷金のうち○ヶ月分を差し引いて返還する」と定めることです。入居者から敷金を預かった際に、敷金の一部をあらかじめ原状回復費用として差引き、退去時に差引き金額が返還されることになります。

敷引き特約は、関西地方の一部の地域で慣行として契約内容に含まれていることがあります。敷引き特約がない地域から引っ越された方は、特約の内容や差し引き金額などをオーナーに確認しておくことをお勧めします。

原状回復費用の相場を知っておく

原状回復の原則は、通常使用・経年劣化による建物の汚れや破損はオーナー負担で修繕を行うというものです。原状回復費用を入居者負担にさせる場合は、契約時の説明や費用内訳の説明などをする必要があります。

また、敷金から原状回復費用を差し引く場合は家賃の2~3ヶ月分を差し引くのが相当とされています。それ以上の金額を入居者に負担させるのは、正当な事由がない限り無効となりえます。

敷金返還トラブルは専門家に相談

敷金が返還されなかったり退去時に高額な原状回復費用・不要なハウスクリーニング代金を請求されたりした際は、早い段階で専門家に相談しましょう。敷金返還トラブルは少額訴訟などの裁判に発展することもあります。

国民生活センター

敷金返還トラブルや原状回復トラブルなどは、国民生活センターに相談することができます。敷金返還トラブルを国民生活センターに相談すると、法的に見た負担額の妥当性の判断や解決のための方法を提案してくれます。

関連リンク:独立行政法人国民生活センター|全国の消費者生活センター等

弁護士

敷金が返還されなかったり高額な原状回復費用を請求されたりした場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談した場合は、書面交渉や少額訴訟などで敷金の返還や原状回復費用の負担を減額・無効を求めることができます。

不動産トラブルについて相談できる弁護士を探す

60万円以下の敷金返還は少額訴訟を起こす

60万円以下の敷金返還・原状回復費用トラブルは少額訴訟で取り戻すこともできます。少額訴訟は裁判所で手続きをとることで比較的簡単に起こすことができ、法的措置によってお金を取り戻すことができる裁判です。

なお、少額訴訟を起こす場合は弁護士の力が必要になります。

敷金は原状回復費用の担保

敷金は原状回復費用の担保賃貸物件の契約時に支払う「敷金」とは、家賃が支払われなかったり原状回復などの修繕が発生したりした際の担保として支払っているお金です。家賃不払いによってオーナーに損害が発生した場合や原状回復などの修繕は発生した場合、オーナーは預かった敷金を使って損害や負担を補償することができます。

この項目では、原状回復と敷金の関係についてご紹介します。

賃貸物件には原状回復義務がある

賃貸物件には原状回復義務があります。近年では、リノベーション物件などもあるため、原状回復義務がある場合は、オーナーは契約者に対して契約時に必ず原状回復義務の有無の説明をする必要があります。

第五百九十八条  借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。
引用元:民法

また、国土交通省では原状回復について以下のように定義しています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

このことから原状回復の原則は、通常使用・経年劣化以外の理由で建物を汚したりキズをつけたりした場合に入居者負担で修繕を行うというものです。通常に使用していてエアコンなどの設備が壊れたり、経年劣化によって壁紙が日焼けした場合などの修繕は、通常オーナー負担で行います。

入居者の負担が増える原状回復特約とは

通常使用・経年劣化による汚れや破損の原状回復費用は原則としてオーナー負担で行いますが、契約書に原状回復特約を明記することによって入居者負担になる場合があります。原状回復特約を設けて、原状回復費用を入居者負担とさせる場合は以下の要件を満たさなければなりません。

【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

また、原状回復費用の入居者負担は、消費者契約法により一方的な内容は無効とされています。このことから敷金全額を原状回復費用として差引き、敷金返還を行わないような契約内容は無効になる可能性があるのです。

第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
引用元:消費者契約法

軽度の汚れやキズは月々の家賃で負担している

原状回復特約を契約書に明記すると通常使用・経年劣化による汚れや破損の修繕も入居者に負担させることができます。その一方で、軽度の汚れやキズは月々の家賃で負担しているという考えもあります。日常生活を送る中で、どんなに気をつけていても家具の設置などによって汚れやキズが発生します。

これらの軽度の汚れやキズに関しては、入居者が月々に支払っている賃料(家賃)によって負担しているものと考えることができるのです。

原状回復費用として敷金から差し引くのは家賃の2~3ヶ月分まで

先の項目「敷金返還トラブルの対処方法」でもお伝えしましたが、敷金から原状回復費用を差引く際に入居者の負担が一方的なものである場合は違法になる可能性があります。入居者負担が一方的・過度であると判断する目安は、「敷金のうち、家賃2~3ヶ月分以下の金額」と言われています。

なお、原状回復費用は、物件の築年数や広さなどによって大きく変動します。また、依頼する業者によっても金額が大きく異なります。
関連記事:原状回復の負担割合の考え方|トラブルに巻き込まれない為の5つの知識

敷金返還でよくあるトラブル

この記事の冒頭でも述べましたが、国民生活センターによると敷金返還トラブルは年間でおよそ1,400件近く発生しています。この項目では、実際にあった敷金返還のトラブル事例をご紹介します。

◆畳、 襖ふすまの張替え等を強制された|国民生活センター談事例

3 年住んだ部屋を退去する。まだ立ち会いもしていないのに、不動産管理会社から畳とクロスの張替え代、ハウスクリーニングは強制と言われた。重要事項説明の際には特別な説明はなかったと思う。契約書には「畳の張替え、襖ふすまの張替え、ハウスクリーニング、鍵の交換、その他損傷個所の復旧をすること」と記載されている。1 年間は煙草の習慣があったが、部屋の中では吸っていないと思う。特別部屋を傷つけたり、汚したりした覚えもない。
引用元:国民生活センター|賃貸住宅の退去時に伴う原状回復に関するトラブル

退去時の現状確認は、必ず契約者本人とオーナーの立会いのもと行いましょう。現状確認をする前に原状回復費用を請求された場合も、「退去時の現状確認を一緒に行ってから」と一度断りを入れるのもひとつです。また、原状回復費用を請求された場合は、請求の内訳や見積書などを提示してもらい説明を求めてください。

畳、ハウスクリーニング代金の差引き|国民生活センター相談事例

70 歳代の親戚が、1 年数カ月前に入居し一人で住んでいた賃貸アパートを退去した。保証人である自分が立ち会ったが、仲介業者から、畳替えとルームクリーニングの費用を請求すると言われた。後日届いた精算書を見ると、これらの費用が敷金から引かれており、敷金の返還額は数百円しかない。特に汚したり、壊したりしていないのに、畳替えとルームクリーニングでこれほど高額な費用がかかるのはおかしくないか。
引用元:国民生活センター|賃貸住宅の退去時に伴う原状回復に関するトラブル

原状回復費用で敷金の大半を差引くような契約内容は、一方的・過度な入居者負担とされる可能性が高いです。原状回復に伴う一方的・過度な入居者負担は、消費者契約法によって無効な契約と判断される場合があります。このような場合は、早い段階で弁護士などに相談しましょう。

原状回復特約が成立していないと判断された裁判事例

<事例内容>

入居者Dは、集合住宅への入居のためにオーナーとの間に賃貸借契約を結んだ。契約に伴い行われた入居説明会では、原状回復義務や原状回復特約がある旨は説明されたが、個々の内容については説明されなかった。本物件の原状回復特約には、「通常使用・経年劣化による消耗や損耗について入居者負担となる」旨が契約書に明記してあり、契約書に捺印する際に契約内容全てに同意したとみなされていた。

<結果>

原状回復義務や原状回復特約によって入居者負担となるものの詳細が説明されていないことから、「通常使用・経年劣化による消耗や損耗について入居者負担となる」旨の原状回復特約は成立していないとみなされた。よって、入居者Dには通常使用・経年劣化による消耗や損耗を負担する必要はないと判断された。

参考:裁判所|敷金返還請求事件 主文

敷金返還トラブルの注意点

敷金返還トラブルの注意点敷金は基本的に返還されるものですが、必ず全額返還されなければならないものではありません。オーナーが、原状回復費用や最低限のハウスクリーニング代金を敷金から差引いて返還すること自体は違法ではないのです。

この項目では、敷金返還トラブルを解決させる際に知っておくべき注意点についてご紹介します。

敷金は全額返還が「普通」ではない

原状回復義務や原状回復特約、家賃滞納などがあった場合はもちろんですが、敷金はオーナーが入居者に物件を貸すことによって発生する損害への担保として預けるお金です。また、オーナーには預かった敷金を全額返金する義務はありません。そのため全額返金が「普通」ではないのです。

ただし、原状回復義務や特約を契約書に明記していなかったり契約時に説明しなかったりした場合は、全額返金となる場合もあります。

敷金による原状回復費用の負担割合

原状回復費用の負担割合は、建物の耐用年数によっても変わります。原状回復費用は、耐用年数と入居年数によって建物が経年劣化することも考慮する必要があります。つまり、築年数が経っている建物や長く入居している物件では、原状回復費用の入居者負担は少なくなるということです。原状回復の負担が少なければ、返還される敷金も多くなるのです。

 

国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

入居者への一方的・過度な費用負担は無効

原状回復特約などで「通常使用・経年劣化による汚れや破損を入居者負担とする」旨を契約書に明記している場合であっても、負担が入居者に偏っているものであった場合は契約内容自体が無効となることもあります。

敷金返還トラブルは冷静・穏便に解決を図る

敷金返還トラブルは、入居者にとって「戻ってくると思っていたお金が戻ってこない」という苛立ちや理不尽さを感じる問題ですよね。また、原状回復費用を請求された際も、入居者はわざとではないものの、居住して汚れや破損を発生させたのは事実なので強く言い返せない立場でもあります。

もしも、あなたが敷金返還トラブルに巻き込まれてしまった際は、トラブルが複雑化する前に弁護士などの専門家に相談して早急な解決を図るようにしましょう。

不動産トラブルについて相談できる弁護士を探す
この記事を監修した法律事務所
弁護士法人ネクスパート法律事務所
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。
Prevent banner

関連記事

あなたの弁護士

本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。

※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

シェアtwitterはてブ

弁護士を探す