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KL2020・OD・037
婚約破棄されたことにより、慰謝料請求をお考えの方へ
婚約破棄に伴う当事者の背景にもよりますが、相当な精神的苦痛や金銭面での負担が大きい場合は慰謝料を請求できる可能性が高いのでご安心ください。
ここでは、慰謝料の相場と慰謝料が決まる際に考慮される10のポイントをお伝えします。
以下では10のポイントを掘り下げて説明していきますので、ご自身が該当しているかどうか確認しながら読み進めてみてくださいね。
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目次
婚約破棄の慰謝料相場は50万円から200万円となっていますが、婚約破棄に至るまでの状況を考慮した上で決定しますので決められた金額はありません。
人によって慰謝料が異なるとお考えください。
実際に婚約破棄で慰謝料を請求した裁判例を紹介します。
不当な婚約破棄と背信的行為(男女関係)によって、慰謝料300万円と結婚準備費用相当額376万円が認められたケースです。
原告 | 被告 | 請求額 | 認定額 | 認定理由 |
X(男) | Y(女) | 500万 | 300万 | ・YがXに隠れて複数の男性との関係を持っていた ・結婚式の4日前にほかの男と一夜を過ごした ・Yが一方的な婚約破棄を行った ・Yが家族や友人を巻き込みXを非難した |
つまり、浮気を行いさらに一方的に婚約破棄し、その上保身のためにXを悪者に仕立て上げたことにより、Xの精神的苦痛も相当だと考えられることが慰謝料が高額になった理由です。
参照元:東京地判 平成18年2月14日|慰謝料算定の実務|ぎょうせい
マンションを購入していたなどのことから、原告が2,000万円の高額な慰謝料を請求した事例です。結果的に認められた慰謝料額は300万円ですが、それでも高額な慰謝料であることには違いありません。
原告 | 被告 | 請求額 | 認定額 | 認定理由 |
X(女) | Y(男) | 2,000万 | 300万 | ・入籍前に結婚式は既に終えていた ・婚約期間にもかかわらず、Yが浮気をした ・X名義で2人の新居用マンションを購入していた |
このように、すでに結婚式を終えていたり、2人の住居を購入した後での婚約破棄は慰謝料も高額になってきます。
参照元:東京地判 平成18年7月26日|慰謝料算定の実務|ぎょうせい
X(女)がY(男)に対し、婚約の不当破棄を理由として慰謝料等を請求した例です。
原告 | 被告 | 請求額 | 認定額 | 認定理由 |
X(女) | Y(男) | 516万 | 100万 | ・交際期間が約1年3ヶ月と長い ・子を設けるつもりで性交渉を重ねていた ・お互いの親族に紹介済みであった ・Xが中絶手術をした |
1年以上付き合い、両親への紹介や子どもを妊娠するための準備もしていた状況での婚約破棄と、結果的にXが中絶したことが100万円以上の慰謝料を認められた要因です。
参照元:東京地判 平成21年2月24日|慰謝料算定の実務|ぎょうせい
婚約をしていたとして認められることとそうではないことを以下で説明します。
婚約指輪を受け取っていた(渡した)、新居の契約、2人で生活していく上で必要とされるものの購入がみられた場合は婚約とみなされるケースが多いです。婚約に関連するような金銭が発生すればするほど、婚約したと認められやすくなる傾向にあるようです。
単なる口約束の場合は婚約として認められない場合もあります。結婚で婚約を約束したものの、結婚への動きがみられない場合は婚約と呼ぶことは難しいでしょう。例えば、口頭で結婚すると約束したが婚約指輪や2人の結婚生活に必要なものが全く用意されていない場合などです。
婚約破棄をする際には正当な理由がなければ認められません。一般的に以下のことが発覚した場合は、婚約破棄として認められる上、損害賠償として慰謝料を請求できます。
婚約相手が別の異性と肉体関係があるとみられた場合は、慰謝料の請求が望めます。
これから結婚する相手に暴力やモラハラを行った場合、当然のことながら結婚するのは難しい上、精神的苦痛を与えられたとみなされるでしょう。
婚約をしていると客観的に証明できる書類や証拠がある場合は、証拠に基づいて慰謝料請求を行うことが出来ます。
音声などでも結構です。親御さんへのあいさつなどでも、有力な証拠となります。
では具体的には婚約とみなされるためにはどのような証拠が有効なのでしょうか。
同棲をしていた場合、同居していた賃貸物件の契約書の続柄部分に婚約者として表記があると婚約の証明となる可能性があります。
婚約破棄された相手と同棲をしていた場合は、一度賃貸契約書を確認してみましょう。
結婚式や披露宴を既に実施していたことを証明するものについても、相手に結婚意思があると思わせるには十分だった証拠となります。
例えば、結婚式の招待状や会場への予約明細などで結婚式や結婚披露宴としての名目が見当たる場合は証拠となる可能性があります。
結納を受け取ったことを証明が出来る場合も、婚約の証拠になりえます。
最近では結納自体をおこなう場合も少なくなってきたため、証拠として挙げられることも少ないかもしれません。
婚約相手が渡してきた手紙等に結婚を考えている等の婚約を意図した記載があった場合にも婚約の証拠となり得ます。
ただし、相手の印鑑が捺印されていることが判断として重要なポイントとなります。
そのため、実質的には相手からもらった手紙というよりも浮気をしたり、不貞行為を行った際にもう2度としないといったような念書などに婚約の意図を含んでいる場合に限られるでしょう。
相手から結婚をすることを意図した話があったことを証明できる音声録音内容などは有力な証拠となります。
男女関係の中で、状況に応じて結婚をにおわせることで相手の気を引こうとする男性もいます。
正式にプロポーズととれるようなシチュエーションでの録音音声が有力な証拠となります。
第三者からの証言が得られる場合にも証拠となりえます。
しかし、どうしても証言者の主観等で記憶をゆがめられる可能性もあるため、これまで上げてきたような客観性のある書類と比べて証拠能力は低いと考えておきましょう。
性的不能が発覚した時点で子孫繁栄にも大きく影響がでるため、正当な理由として認められます。ただし性的不能を理由に婚約破棄をされた側が慰謝料を請求することは難しいでしょう。
婚約後、事故や病気で障害を持ってしまった場合、一緒に生活することが難しいという理由から婚約破棄をしても認められます。しかし、理由が致し方ないことにもかかわらず慰謝料を請求することは認められません。
婚約前はわからなかったが、結婚を目前にして悪質な犯罪歴などが発覚した場合は婚約破棄の正当な理由として認められますが、慰謝料請求は難しいです。
婚約後に借金が発覚した場合は、婚約するまで借金の事実を隠していたことになりますから婚約破棄も認められますが、慰謝料請求までは難しいでしょう。
婚約破棄による慰謝料を請求する場合に、考慮される背景についてみていきたいと思います。
婚約破棄の原因になった理由として、他の異性との肉体関係や暴力、モラハラなど明らかに結婚するのが難しいと判断した場合。
婚約破棄により、心身喪失や食欲不振・不眠症に陥り体調を崩してしまった、またそれらが原因で会社に行けなくなった場合は大きく考慮される可能性があります。
婚約に限らず、どれだけ2人が交際していたかという点にも着目されます。過去の判例をみたときに交際期間が1年以上である場合は高額な慰謝料獲得をしているケースが多くみられますが、交際期間だけが考慮されているわけではありませんのでご注意ください。
婚約破棄をする(された)側の年齢が高いほど、今後の人生に影響があると考えられます。特に女性の場合は妊娠・出産との関係にも繋がりますので年齢がどのくらいであるかも重要です。
婚約破棄の時期をみる理由は、婚約破棄した側に何か裏の事情がある場合があるからです。近年では結婚詐欺があることも耳にしますので、婚約破棄のタイミングについても着目するようです。
性交渉の有無も大きく考慮されます。先ほどの判例にもありましたが子どもを設ける目的で性行為を行っている場合も考えられるためです。
慰謝料の請求をしても相手に支払い能力がない場合は、どんなに高額な請求をしても慰謝料を受け取ることが難しいです。そのため、慰謝料を支払う側の年収は考慮要素とされます。
結納を済ませている場合は、その分も考慮した上で慰謝料が決定します。
婚約した2人がどれだけ結婚に向けて準備を行っていたかという点は非常に重要です。以下のことが済んでいた場合は、第三者がみても結婚への準備が進められていたと認められますね。
これまで、婚約破棄の慰謝料をそもそも請求できるかどうかについての判断となる情報を伝えてきました。
ここからは婚約破棄の慰謝料の金額がどのような場合に高くなったり、低くなるのかについて解説していきます。
婚約破棄の慰謝料として多くの金額を獲得できるのはどのようなケースなのでしょうか。
基本的に婚約破棄の慰謝料獲得での争点となるのは婚姻の確実性と婚姻への期待感です。
相手との婚姻に対して確実であると確信していたと証明できる要素と相手と婚約したと証明できる要素によって、婚約破棄の慰謝料決定に左右されるのです。
ここからは婚約破棄された際の慰謝料が高額となるケースについて解説していきます。
婚約したことをきっかけに仕事をやめてしまった場合、相手との婚姻を確実だと感じていたからこそ離職の道を選んだと言えるでしょう。
そのため、慰謝料の金額を考慮する際の1つの要素として扱われる可能性が高いです。
婚約していて、婚姻を前提にして肉体関係を持つからこそ婚約相手の子供を妊娠・出産するものであると考えられます。
婚約相手の子を妊娠・出産した場合も、相手との婚姻の確実性が高いと考えていたと判断されるため、慰謝料金額決定を左右する1要素となります。
この場合には、認知養育費などの問題に発展していくことも多くみられます。
婚約は婚姻の1つ手前の段階であると言えます。
そのため、基本的には結婚している状態での不倫や不貞行為に対する慰謝料の考え方と基本的には同じです。
この場合、他の異性との肉体関係があったということが証明できるかどうかが慰謝料増額の争点となります。
一方、婚約段階で他の異性との肉体関係がないお付き合いや、肉体関係があったと証明できない場合において、慰謝料増額は難しいでしょう。
もし肉体関係があったと証明できる場合は、婚姻に準じるような期待感を不貞行為によって裏切られたと判断できるため、慰謝料の増額が見込めます。
婚約しているといった内容を友達に伝えていた場合、婚約しているかどうかを推認するための1つの要素として扱われます。
しかし、そもそも婚約しているとみなされる客観的な証拠による事実確認があることが前提です。
また、婚約していることの証明としても客観性の高い書面等と比べて証拠能力が低いと考えておきましょう。
逆に婚約破棄の慰謝料が低額になってしまうパターンとしてはどのような場合があるのでしょうか。
ここからは婚約破棄の慰謝料が低額となるケースについて解説していきます。
被害者側にも非があり、婚約者との関係性を悪化させる要因があった場合は婚約破棄の慰謝料は低くなるでしょう。
例えば、自身の浮気等の発覚によって相手から婚約破棄を切り出された場合などがあてはまります。
婚約の事実があいまいな場合も婚約破棄の慰謝料は低くなるでしょう。
婚約したという事実を証明する有力な証拠がない場合は、そもそも婚約があったこと自体がはっきりとしないため、どうしても婚約破棄での慰謝料は低くなってしまいます。
ここからは実際に婚約破棄の慰謝料請求を行うための具体的な方法についてお伝えします。
まずは相手に婚約破棄の慰謝料を請求することを伝えましょう。
とはいえ、精神的に相手と連絡を取り合うことに抵抗を感じることもあるでしょう。
そのような場合は、弁護士に代理交渉を行ってもらうこともできます。
婚約破棄での慰謝料請求の時効は3年ですので、なるべく早めに慰謝料請求をする旨を相手に伝えるようにしましょう。
しかし、実際に慰謝料金額を交渉すると、相手がそもそも慰謝料請求に応じようとしないようなケースも多々あります。
相手が慰謝料請求を拒否している場合は、弁護士に代理交渉を行ってもらうことをおすすめします。
代理で弁護士に相手と連絡を取ってもらうことで、相手も慰謝料請求に応じてくれる可能性も高まります。
交渉決裂した場合は、慰謝料請求調停を申し立てましょう。
しかし、あくまでも調停では第三者が双方の妥協点を探るサポートをしてくれるだけです。
慰謝料請求調停では、慰謝料に対する判決などが出ることはないためあくまでも相手との慰謝料金額の妥協点を見出すことになります。
慰謝料請求調停では、相手と別室に案内されて調停員が双方の部屋に出入りして、相手の言い分を伝えてくれるので相手と直接話し合うことはありません。
慰謝料請求調停でも慰謝料がまとまらず、明確な判決として結果を残したい場合は、慰謝料請求審判へ移行することになります。
審判では判決として結果を言い渡されます。
婚約破棄に関する慰謝料の獲得成功率を上げるためにはどのような点に注意すると良いのでしょうか。
婚約破棄の慰謝料請求を行う際の大前提は、相手との婚約関係があったことの事実認定ができることです。
婚約関係を客観的に証明するには、これまでに説明してきたような証拠が必要です。
また、相手が浮気していたことが原因で婚約破棄された場合などは、慰謝料増額のために浮気相手との肉体関係があることを証明する写真等が必要となります。
婚約破棄の慰謝料請求については婚約の事実認定と慰謝料決定を左右する要素に対する証拠が必要です。
さらに、それらの証拠に基づいて相手に請求する適切な慰謝料を定めて請求する必要があります。
一人で行うことが困難だと感じたり、証拠として自分は何をそろえる必要があるのか分からない場合は弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
婚約破棄慰謝料の相場は50~200万円程度です。
もしあなたが、相場から大きくかけ離れた慰謝料を請求した場合、相手の抵抗は強くなることが予測されます。
相手からの抵抗が強ければ、その分離婚調停は長引きますし、どちらにせよ審判移行して判決結果がでても相場の範囲内に収まることがほとんどでしょう。
出来れば、婚約破棄された相手とのやり取りは精神的な負担も強いため長引かないに越したことはありません。
そのため、あらかじめ相場の範囲内で慰謝料を請求するようにしましょう。
同じ慰謝料金額でも相手の経済状況によって、負担を感じる度合は変わってきます。
そのため、相手の経済状況を考慮した慰謝料金額を請求することが相手との争いを大きくしないためのポイントの1つです。
また、相手の経済状況を考慮して分割払いにしたとしても相手が必ず期日に遅れることなく定期的に慰謝料の支払いを行ってくれる保証はありません。
そのため、法的な効力をもって強制執行による慰謝料の回収を行うことができる公正証書や調停証書に支払い方法や期日なども記載しておくようにしておきましょう。
公正証書は公証役場に行って作成を依頼する形となります。
話し合いの内容を紙にまとめておいて、公証役場に行って公正証書の作成を申請することが可能です。なお、公正証書の作成には、公証人との打ち合わせなど、綿密な法的知識が必要になることがほとんどなので、依頼をしなくても、相談は弁護士にすべきでしょう。
慰謝料の請求をお考えの方は、今日お伝えしたことに該当している場合、よほどのことが無い限り慰謝料が認められると考えて良いでしょう。幸せな結婚を信じて婚約したにも関わらず、婚約破棄という形で2人の関係が終わってしまうことは大変残念なことです。
簡単なことではないでしょうが、ここは気持ちを切り替えて新たな再出発のためにも慰謝料の獲得に向けて動いていただければと思います。
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