症状固定の時期の目安|診断を受けるタイミングと揉めた際の対処法

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
症状固定の時期の目安|診断を受けるタイミングと揉めた際の対処法

症状固定に決まった時期はありませんが、受傷してから半年以上が一つの目安ではあります。ただし、傷害の程度や種類によって基準は大きく異なるため、症状によっては負傷から症状固定まで1年~2年程度かかるケースもなくはありません。

症状固定とは、これ以上の治療を続けても症状が改善していく見込みがない状態です。被害者によって被害状況や回復力には差があるため、一概に「〇ヵ月過ぎたから症状固定だ」と判断するのは難しいでしょう。

ただ、傷害の種類ごとに大体の目安となる期間があるので当記事では症状固定までの大まかな目安をご紹介します。症状固定のタイミングや診断を受ける際の注意点について確認しておきたい場合はぜひ参考にしてみて下さい。

症状別|医学的に症状固定日を決める目安の時期

症状固定は医学的には、治療を継続しても症状が良くも悪くもならない状態を意味しますが、個別の症状に応じて症状固定時期の目安が定められています。

神経症状(むち打ち症)の場合|約半年

むち打ち症などの神経症状は、症状固定であることをレントゲンやMRI写真で証明するのが難しく、症状自体を客観的に示しにくい傷害です。

ただ、一般的にむち打ちは1ヶ月~3ヶ月程度で軽快すると言われています。この期間を超えても症状が軽快しない場合は、半年程度を上限として症状固定とすることを検討すべきでしょう。

骨折の場合|約1~2年

骨折については、修復後も骨が変形していたり、骨折していない方の腕(または脚)と比較して短縮していたりする場合に、後遺障害として認められる症状固定だとみなされます。

症状固定まで半年足らずで済む場合もありますが、骨癒合(ほねゆごう)で長期間かかったり、プレートやスクリューなどを取り外す必要があったりすると、1年~2年程度かかることもあります。

※骨癒合とは、骨がくっついて治癒されることを意味します。

醜状(しゅうじょう)障害の場合|2年以上

皮膚が剥がれたような酷い痕や目立つ傷のことを醜状といいますが、通常は傷が治ってから半年の経過で症状固定になります。ただし、レーザー治療などで傷跡を治す必要がある場合は症状固定まで2年以上かかることもあります。

高次脳機能障害の場合|約1~2年

高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、脳を損傷したことで生じる記憶障害や注意障害、社会的行動に関する障害などです。

症状固定した段階で後遺障害等級の認定申請を行えますが、等級認定の条件として『労働能力の喪失』があります。

労働能力がどれほど失っているかは精神的なコントロールや公共の場での振る舞いなど社会的行動の障害から判断されますが、等級認定条件になる具体的な指標が無いため、症状固定についても見極めが難しいとされています。

リハビリの効果によって症状固定時期が変わる

高次脳機能障害の場合、リハビリによる回復の状況を見て症状固定であるかどうか判断されます。リハビリを続けたことでの回復から、これ以上回復はしないだろうと思われる限界までを加味します。

リハビリによる改善効果が期待できる期間を考慮すると、高次脳機能障害の症状固定時期は1年~2年程度であるとされています。

未成年の場合は集団生活への適用状況を見て判断する

また、患者が学生である場合は学校などでの集団生活の様子を観察して、他者との生活に適応しているかどうかを確認することも大事です。乳幼児の場合も同様に、幼稚園や保育園、小学校に入るまで症状固定の判断を待つことも考えられます。

症状固定日を決めるのは誰か?

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症状固定を決める可能性があるのは任意保険会社と医師と被害者の三者になりますが、基本的には医師の判断を最優先するべきだと認識しておきましょう。保険会社から症状固定を迫られた場合は慎重に対応しなければいけません。

関連記事:症状固定は誰が決めるのか|被害者が知るべき症状固定のタイミング

任意保険会社の催促には要注意

加害者側の任意保険会社より早期の時点で症状固定とすることを提案されることがあります。症状固定後の治療費は補償対象外となりますので、保険会社は保険金の支払いを少しでも抑えるため、早期に症状固定を提案することもあるのです。

しかし、治療の必要性を判断するのは保険会社ではなく病院の担当医です。保険会社には症状固定のタイミングを決める権利はないので、症状固定を催促されても安易に応じないようにご注意ください。

担当の医師による判断が第一

症状固定は任意保険会社が決めることではなく、基本的には被害者を診察する医師が判断するものです。被害者の治療経過や症状の変化を把握している医師が最も理解しているので、症状固定のタイミングで迷っている場合はまず医師に相談をするようにしましょう。

被害者の自覚症状も申告して検討する

被害者の自覚症状も重要であり、仮に医師から症状固定であると宣告されても、症状が安定していると思えないようであれば正直に申告し、医師とよく相談するべきです。

また、被害者側から症状固定の目途について聞く方法もあります。症状固定の状態になったと被害者自身が思ったら、後遺障害診断書の作成依頼と合わせて症状固定の確認をするのも良いでしょう。

法律的な症状固定日の意味

これまでお伝えした症状固定では、『医学的』な意味で時期の目安を紹介しましたが、保険会社と賠償金を交渉する上では『法律的』な意味での症状固定を知っておく必要があります。

症状固定前後で補償範囲が変わる

症状固定が確定されることで被害者への補償内容が大きく変わります。詳しくは以下図の通りですが、傷害に関する損害の賠償請求は症状固定前で、症状固定後は後遺障害に関する慰謝料の請求に限定されます。症状固定をすれば治療の必要が無くなる代わりに、後遺障害等級の認定申請が可能になるからです。

症状固定前後で補償範囲が変わる

任意保険会社からの症状固定の催促理由は賠償面に関わる

任意保険会社の催促は要注意』で説明しましたが、任意保険会社が被害者の症状固定を決めようとするのは、賠償面の事情に深く関係していることがあります。早期の症状固定を任意保険会社が望むのは法律的な補償範囲を限定したいという思惑もあると思われます。

すなわち、症状固定までの期間が長くなれば休業損害の賠償金や入通院慰謝料などが増額するため、被害者にとっては得をしますが、任意保険会社には重い負担となるために早期に症状固定とすることを提案してくる可能性があります。

任意保険会社とのトラブルを防ぐためにも、原則としては医師と被害者で医学的な症状固定の時期を決めることが大事です。

症状固定の時期で加害者側と争うことになった場合

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医師と被害者で決めた症状固定日を基に、加害者側の任意保険会社へ治療費などの請求を行いますが、任意保険会社が認識している症状固定日と違うことを理由に裁判で争われる場合もあります。

症状固定日が争われる場合は裁判所の判断に委ねられる

症状固定の適切な時期を決めるのは裁判所ですが、条件によっては医師が判断した症状固定日が認められないケースがあります。医師が診断書に症状固定日を記載したからといって、それが法律上絶対的な証拠になる訳ではありません。

裁判所で妥当な症状固定日を決める要素

裁判所は下記の基準を参考に、医師と保険会社側がそれぞれ提示した症状固定日の妥当性を確認します。重要なポイントになるのは症状の推移や治療の経過などです。

症状の程度、及び当該症状に対する通常の症状固定時期

過去の事例を基に、症状固定まで必要とされる期間を推定して照らし合わせます。

交通事故の状況

症状の程度と関連しますが、事故の状況や衝撃から傷害が重度であるかどうかを検討します。

治療経過、診察記録

医師の診察結果が症状固定日と辻褄(つじつま)が合っているどうかを確認されます。

通院頻度

定期的に治療を受けていることも重要な点です。仮に長期間の治療中断が見られるようであれば、早期の症状固定が妥当であると判断されることもあります。

ですので、任意保険会社より強制的に治療費を打ち切られても通院を続けるようにしましょう。一時的に被害者が治療費を自己負担することになりますが、症状固定日の正当性が認められれば治療費の請求が可能になります。

的確な症状固定の時期を判断するためには

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これまで説明した注意点を含め、症状固定の時期を決める上で被害者が損をしないための方法を下記にてまとめます。

担当の医師と相談して『医学上の』症状固定日を判断する

『法律的な症状固定日の意味』でも解説したように、加害者側の任意保険会社が促してくる症状固定は賠償上の都合が関わっていることが多いです。

適切な期間の症状固定であれば治療費や入通院慰謝料を十分に請求できるだけでなく、重い症状だと見なされて後遺障害等級に認定されやすくなります。被害者側が有利になる後遺障害等級の申請手続きを進めるためにも、医学的な基準で医師と症状固定を決めるようにしましょう。

保険会社との意見が食い違う場合は弁護士へ相談する

症状固定の時期について任意保険会社ともめる場合、弁護士へ相談することを考えてみてはいかがでしょうか。任意保険会社と比べて被害者の立場は弱く、なかなか保険会社への説得が上手く行かないこともありますので、交通事故関連に詳しい弁護士に依頼して代理で交渉してもらうのも一つの手段です。

また、弁護士依頼をすれば症状固定の交渉だけでなく、その後の後遺障害等級の認定申請と慰謝料請求でも被害者側のメリットがあります。詳細については「弁護士に相談するメリット」で解説しているのでご参考ください。

症状固定の妥当な時期になっても治療の必要がある場合は通院を継続する

医師と相談して症状固定を決めても、治療の必要性を感じる場合は通院を続けた方が良いとされています。

症状固定後の治療費は加害者側に請求できませんが、症状固定後も通院を続けていれば治療へ積極性に取り組んでいる事実から、後遺障害が認定される可能性を高めることが可能です。

関連記事:後遺障害とは|正当な等級の獲得方法と慰謝料の相場額・算出方法

まとめ

症状固定の適切な時期を見極める基準と方法について説明しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。

傷害によっては症状固定まで長期間かかることもありますが、根気強く治療を続けながら医師と相談し、症状の経過を見ていくことが大事です。加害者側の任意保険会社が症状固定の時期を決めようとしたら、弁護士を介して確実に交渉するようにしましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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