バイク事故の過失割合|過失割合の増減を見極める基準

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
バイク事故の過失割合|過失割合の増減を見極める基準

交通事故の発生状況にて状態別負傷者数を見ると、自動二輪車と原付を合わせたバイク乗車での負傷者は年々減っていますが、平成27年度ではおよそ7万人がバイク乗車中に交通事故に遭って負傷したとされています。自動車と比較すれば少ないですが、全体の10%程度を占める負傷者数となっています。

平成27年における交通事故の発生状況 警察庁交通局

引用元:平成27年における交通事故の発生状況 警察庁交通局

バイクと四輪車の交通事故の過失割合においては、二輪のバイクの方が安全性に欠ける理由から四輪車の方に過失が多いとされていますが、事故の状況によって過失割合が変わります。特に大きなケガを負った被害者は、正しい過失割合を認められてもらえないと適切な慰謝料を獲得できなくなる可能性がありますので、バイク事故における過失割合の基準を知っておきましょう。

バイク(単車)と自動車との事故について

単車とも呼ばれる二輪車のバイクは、一般的に大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車の3種類の総称となります。バイクと自動車が衝突する状況としては、交差点に飛び出してきたり、直進と右折が重なったりした時に接触するケースが考えられます。それ以外にもバイクの場合は道路の左端をすり抜けて走行できますので、自動車の左折時に巻き込まれてバイクが転倒することもあります。

バイクの方が大きなケガをする可能性が高い

バイクと四輪車が衝突した場合、四輪車よりも車体が軽くバランスを失いやすいバイクの方が強い衝撃を受けるため、バイクの運転手はより深刻な傷害を負う可能性が高いです。普通乗用車やトラックとバイクが事故を起こした際、バイクの運転手が重傷を負ったり最悪死亡したりするケースも多くあります。

バイクの過失割合が減少する単車修正とは?

なので、四輪車よりも大きな損害を負うバイクとの平等性が考慮されて、四輪車と比較して単車側の過失が10%~20%程度の下方修正されるようになります。このことを単車修正といい、元々の過失割合が50%のところをバイクと自動車の事故であればバイクの過失を40%、自動車の過失を60%に見直される可能性があるということです。

バイク事故における過失割合|直進車同士の事故

具体的な過失割合の基準については別冊判例タイムズ38号で規定されていますので、それを参考にバイク事故の過失割合の決め方を状況別に見ていきましょう。まずは、バイクと四輪車がともに直進していた時に発生した事故を想定して考えていきます。

信号機が設置されている交差点の場合

信号機が設置されている交差点の場合バイクと四輪車の両方が直進で交差点へ進入した際、過失割合は以下表の通りです。バイクが青信号で進入していれば、バイク側の過失はゼロになります。

直進車同士の事故(信号有り) 過失割合(%)
バイク 四輪車
バイク側の信号:青 四輪車側の信号:赤 0 100
バイク側の信号:赤 四輪車側の信号:青 100 0
バイク側の信号:黄 四輪車側の信号:赤 10 90
バイク側の信号:赤 四輪車側の信号:黄 70 30
双方の信号:赤 40 60

信号機が設置されていない交差点の場合

次に信号機が設置されていない場合ですが、バイクが四輪車の右側または左側のどちらから衝突したのかによって過失割合が変わります。また、互いの走行していた道路の幅も過失割合を判断する要素の一つになります。

バイク左方車|四輪車右方車の時

信号機が設置されていない交差点の場合

幅員のほぼ同じ道路での事故
 (バイクの右側より四輪車が衝突した場合)
過失割合(%)
バイク 四輪車
両者とも減速せず 30 70
両者とも減速 30 70
バイクが減速、四輪車は減速せず 10 90
バイクは減速せず、四輪車が減速 45 55

バイク右方車|四輪車左方車の時

信号機が設置されていない交差点の場合

幅員のほぼ同じ道路での事故
 (バイクの左側より四輪車が衝突した場合)
過失割合(%)
バイク 四輪車
両者とも減速せず 50 50
両者とも減速 50 50
バイクが減速、四輪車は減速せず 35 65
バイクは減速せず、四輪車が減速 60 40

図をご覧いただくとイメージがつきやすいことですが、四輪車が右方から来る時は左方と比べてバイクの飛び出しが見えやすくやっているため、四輪車の過失割合が高くなっています。

広い道路・優先道路・一時停止標識などに関わる時

信号機が設置されていない交差点の場合信号機が設置されていない交差点の場合

一方が明らかに広い道路である場合 過失割合(%)
バイク 四輪車
バイク側が広路、四輪車側が狭路 (同速度の場合) 20 80
バイク側が狭路、四輪車側が広路 (同速度の場合) 60 40
一方が優先道路である場合 過失割合(%)
バイク 四輪車
バイク側が優先道路 10 90
四輪車が優先優先道路 70 30
一方に一時停止の標識がある場合 過失割合(%)
バイク 四輪車
四輪車側に規制 (同速度の場合) 15 85
バイク側に規制 (同速度の場合) 65 35
一方通行の違反がある場合 過失割合(%)
バイク 四輪車
四輪車の一方通行違反 10 90
バイク側の一方通行違反 70 30

基本的には道路の幅が広かったり優先道路で走っていたりする場合に、過失割合が下がるようになります。

バイク事故における過失割合|直進車と右折車の事故

続いては直進車と右折車の事故についての過失割合も説明していきますが、交差点に信号があるかどうかで基準が変わりますので、別々で取り上げます。

信号機が設置されている交差点の場合

バイク直進|四輪車右折の時

信号機が設置されている交差点の場合

バイク直進・四輪車右折での事故(信号有り) 過失割合(%)
バイク 四輪車
双方の信号:青 15 85
バイク(直進):黄
 四輪車は青で進入、黄色で右折
60 40
双方の信号:黄 30 70
バイク(直進):黄
 四輪車は青で進入、赤で右折
80 20
バイク(直進):赤
 四輪車は黄で進入、赤で右折
60 40
バイク(直進):赤
 四輪車は青矢印による右折可の信号
100 0
双方の信号:赤 40 60

バイク右折|四輪車直進の時

信号機が設置されている交差点の場合

バイク右折・四輪車直進での事故(信号有り) 過失割合(%)
バイク 四輪車
双方の信号:青 70 30
四輪車(直進):黄
 バイクは青で進入、黄色で右折
25 75
双方の信号:黄 50 50
四輪車(直進):黄
 バイクは青で進入、赤で右折
10 90
四輪車(直進):赤
 バイクは黄で進入、赤で右折
20 80
四輪車(直進):赤
 バイクは青矢印による右折可の信号
0 100
双方の信号:赤 40 60

信号機が設置されていない交差点の場合

対向方向から進入する時

信号機が設置されていない交差点の場合信号機が設置されていない交差点の場合

対向方向から進入した際の事故 過失割合(%)
バイク 四輪車
バイク直進、四輪車右折の場合(図1) 15 85
バイク右折、四輪車直進の場合(図2) 70 30

交差道路から進入する時(バイク直進・四輪車右折)

信号機が設置されていない交差点の場合信号機が設置されていない交差点の場合

幅員のほぼ同じ道路での事故
 (バイクが直進・四輪車が右折する場合)
過失割合(%)
バイク 四輪車
四輪車左方車の時(図A) 30 70
四輪車右方車の時(図B) 20 80

交差道路から進入する時(バイク右折・四輪車直進)

信号機が設置されていない交差点の場合信号機が設置されていない交差点の場合

幅員のほぼ同じ道路での事故
 (バイクが右折・四輪車が直進する場合)
過失割合(%)
バイク 四輪車
バイクが左方車の時(図C) 50 50
バイクが右方車の時(図D) 60 40

以上で説明した通り、バイクと自動車の事故では種類ごとに基本過失割合が細かく決められています。バイク側の過失が減少されるケースは多いですが、赤信号での進入など交通事故を起こした明確な原因があると判断されれば、バイク側にも重い過失が認められます。

過失割合を交渉する上でのポイント

一般的に過失割合については、加害者側の任意保険会社と交渉して決めることになります。その交渉において過失割合を判断する決め手としては、上記で取り上げた事故状況別の過失割合基準のほか、バイク側と四輪車側、両方の過失に関する修正要素も加味されます。

過失割合に関する修正要素とは

交通事故の要因となる著しい過失

交通事故が発生する原因の多くは、前方不注視や脇見であるとされています。想定外の危機への反応が遅れてしまうことで衝突事故を起こしてしまいますので、仮に運転者が前方を確認していなかった場合には著しい過失があると見なされます。その他にもウィンカーの出し忘れやハンドルやブレーキの操作ミスも過失の対象となります。

道路交通法の違反(重過失)

スピード違反や飲酒運転、または無免許といった要素は重大な過失につながります。追越禁止場所での追越し行為や一時停止違反でも過失割合が加算されます。

上記のほかにも法律上の違反や事故の原因となる行為など様々な基準がありますが、一般的にはこのような修正要素で過失割合が5%~20%程度増減するとされています。

過失相殺で被害者側に支払われる保険金が減額される

過失割合は被害者側に支払われる損害賠償金の額に直接影響しますので、加害者側としっかり交渉することが重要です。逆に加害者側の任意保険会社は、保険金の支払いを少なくさせるために『過失相殺』を目的とした、加害者側の過失減少を持ち掛けようとすることがあります。

過失相殺とは、被害者側の過失割合に応じて支払う保険金額を減らすことを意味します。例えば被害者側に20%の過失が認められれば、本来の損害賠償金額の80%の支払いで済むことになります。なので、被害者は自分の過失がないことを主張しなければなりません。

示談が難しいようであれば弁護士に相談する

保険会社との示談交渉では専門的な知識が必要になってくるため、被害者本人が直接保険会社と話し合うのは難しいとされています。損害賠償金をめぐって裁判までもつれ込む可能性もありますので、過失割合で争うことになったら弁護士へ相談するのが良いでしょう。

弁護士に依頼することでの費用を懸念する人もいるかもしれませんが、自動車保険のオプションになっている『弁護士費用特約』を活用すれば、弁護士費用を補償してもらえるようになります。保険会社との示談で有利に進めるためには専門家の力を頼るのが確実な方法だと思われますので、検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

バイク事故に関する過失割合の基準について説明しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。重傷を負ったバイク側の被害者でも100%の損害補償を受けられるとは限りませんので、自分の過失を極力減らすためのポイントを把握し、専門家の協力を受けながら加害者側と交渉するようにしましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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