保釈金とは身柄の解放に必要なお金|相場と用意できない際の対策

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
保釈金とは身柄の解放に必要なお金|相場と用意できない際の対策

保釈金(ほしゃくきん)とは、被告人の身柄を一時的に解放にするために必要なお金のことです。被告人の保釈請求に基づいて裁判所が保釈金額を決定した場合、これを裁判所に納めれば保釈が認められます。

芸能人や会社芸能人の社長などが数百万円の保釈金を支払い保釈されたというニュースを目にすると、その金額に驚く方も多いのではないでしょうか。

保釈金は高額なイメージがあるかもしれませんが、その金額はさまざまな条件によって変わっていきます。保釈金は裁判の判決が出るまでの一時的な身柄の解放に必要なお金であり、必ず保釈が認められるものではありません。

また、高額と言われる保釈金ですが、通常は裁判が終了すると納めた全額が手元に戻ってきます。裁判所に一時的に預けるお金という認識でよいのですが、被告人が保釈中に保釈条件を破らないということが前提になっているため、条件に違反すれば保釈金の全額または一部が没収されて手元に戻ってこないということもあります。

この記事では、保釈金にはどのような効果があるのか、保釈金の役割などについて解説します。

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保釈金とは?

保釈金とは?

保釈金とは、保釈のために裁判所に納めるお金のことです。その金額は裁判所が決定します。保釈金を納めることは刑事訴訟法によって定められています。

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。

引用元:刑事訴訟法第九十三条

また、保釈金を納めなければ保釈は行われません。

第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。

引用元:刑事訴訟法第九十四条

保釈請求が認められる場合は裁判所から金額の指定があります。そもそも保釈請求が認められない場合には金額の指定もされません。

保釈金の役割

保釈金の役割

保釈金を納めることで、被告人は一時的に身柄が解放されます。身柄拘束が解かれるというだけでも保釈金を支払うことの意味は大きいですが、それ以外にも保釈金はさまざまな役割を持っています。

刑事裁判の公正・公平を維持する

被告人には裁判で判決が出るまで推定無罪の原則がはたらきます。推定無罪とは『有罪の判決が出るまでは無罪として扱う』という意味を持っており、憲法上保障されている刑事裁判の原則です。

しかし、刑事被告人の多くは無罪推定を受けつつも身柄は拘束されたままです。このような身柄拘束は刑事裁判を進める上で被告人にとって大きな足かせとなります。また長期間の身体拘束はそれ自体が被告人への強い負担となります。

そのため、保釈金を支払って一時的な身柄解放を認めることにより被告人の負担を軽減することは、刑事裁判の公平公正を保つ上で重要といえます。

具体的不利益の解消

刑事裁判は早くても起訴されてから終了するまで2ヶ月程度はかかります。この場合、被告人の身柄を拘束し続けることは、その日常生活に重大な支障となる可能性があります。例えば、長期間の身体拘束は被告人の職を奪ったり、住居の賃貸借契約を解除されたりという不利益が考えられます。

また、被告人に介護を必要とする家族や扶養の家族がいた場合、長期間の身体拘束はこれら親族への負担にもなります。

保釈によって一時的な身柄解放を認めることで、これら具体的な不利益を緩和するという効果も期待できます。

保釈金の意味

保釈が認められると被告人には保釈中に守らなければいけない条件が提示されます。

  1. 必ず裁判に参加し、理由のない欠席はしないこと
  2. 逃走しないこと
  3. 証拠隠滅はしないこと
  4. 事件の加害者や被害者に害や恐怖を与えるような行動をしないこと
  5. 保釈請求で申し出た住所ではないところに住まないこと
  6. そのほかにも裁判所の定める条件に違反してはならない

もしこの条件に違反した場合は保釈が取り消され、保釈金は全額または一部が没収されるということが刑事訴訟法で定められています。

第九十六条 第二項、第三項

○2 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。

○3 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

引用元:刑事訴訟法第九十六条 第二項、第三項

このように保釈金には被告人の逃走や証拠隠滅を防ぐための心理的圧迫を与えるという意義があります。

保釈金の相場

保釈金の相場

もし保釈が必要となった場合に保釈金がいくら必要になるのか不安な方もいるかと思います。法律によって下限や上限が定められているわけではないため、いくら納めればよいのかは裁判所の言い渡しがあるまで分かりません。

しかし、法律によって『金額を決める基準』は定められています。以下がその条文になります。

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。

○2 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。

引用元:刑事訴訟法第九十三条

では保釈金の相場というものはいくらなのでしょうか?

金額は被告人の経済力で決まる

保釈金について『この罪を犯した人を保釈する場合、これだけの金額を支払わなければならない』というような規定はありません。保釈金額は裁判所の裁量によって決まります。

裁判所は、『出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない(引用元:刑事訴訟法第九十三条)』とされているように被告人の資産などを含めて判断し、金額を決めます。

一般的な相場としては150~200万円程度であり、最低でも150万円ほどの保釈金を請求されることが多いようです。

犯罪の重大さも金額に関わる

犯罪の性質及び情状(引用元:刑事訴訟法第九十三条)』と定められているように、経済力や資産以外に、犯した罪の重さも保釈金額に反映されます。

薬物事件

薬物事件での保釈金相場は大体150万円~200万円がほとんどのようです。しかし以下のようなケースではこれ以上の金額と判断されることがあります。

  1. 薬物を所持しただけの場合より、販売など流通にかかわった疑いがある
  2. 薬物の所持・使用のどちらか一方で起訴された場合と、併せて起訴された場合では金額が変わることがある

また、薬物の使用歴や前科がある場合は実刑判決を受ける可能性が高いことを考慮して、保釈を認められないということもあります。

痴漢

痴漢事件も上記相場と同様150~200万円程度で決まる場合が多いです。

もっとも、犯行態様が悪質であったり、罪を認めていないという場合は高額な金額を言い渡されることがあるようです。

窃盗

窃盗の場合も同じです。

窃盗を組織的に行っていたことや、前科がある場合などはこれよりも高い金額を提示される可能性があります。

このように大体150万円~200万円ほどの金額を提示されることが一般的と言えますが、多額の保釈金を支払ったとして挙げられるのが下記ニュースにもあるハンナン事件です。

▽ハンナン事件

確定判決によると、浅田元被告は2001~02年、BSE対策事業を悪用し、対象外の牛肉を混入して買い上げや補助金を申請。総額約15億4000円を詐取するなどした。04年12月に保釈された際の保釈保証金は20億円だった。

引用元:サンデー毎日|「ハンナン事件」がついに最終章 喜寿の浅田満元被告が強制収監

こちらの保釈金は20憶円とあまりにも高額であり、日本では最大の保釈金額といわれています。

保釈金が用意できないときの対処法

保釈金が用意できないときの対処法

保釈金が用意できない場合はどうすればよいのでしょうか? 以下でお伝えします。

日本保釈支援協会から保釈金を借り入れる

日本保釈支援協会とは、保釈金の用意ができない場合に立て替えを行ってくれる一般社団法人です。経済的な理由で保釈金を用意することができない方のために、最大500万円までの立て替えを行ってくれます。

あくまで立て替えであるため、最終的に返還された保釈金は協会に返済する必要があります。もし保釈金が没収されれば同等額を自己資金で返済しなければなりません。

保釈金の立て替えについての条件

申請できるのは被告人以外とされているため、被告人本人は申し込むことができません。

立て替えの限度額は上記にある通り500万円です。借入の際や裁判が終わらず契約延長が必要となった際にそれぞれ手数料が別途発生します。利用する際は手数料などの確認をしっかりと行いましょう。

然るべき団体の保釈保証書や有価証券を差し入れる

現金以外でも保釈金の代わりになる『保釈保証書』というものがあるのをご存知でしょうか?

保釈保証書とは保釈金の代わりとして、現金ではなく保釈金と同等であると認められた書類を納めるという制度です。

あまり利用される制度ではありませんが、裁判所が許可する場合に限り、保釈金に替えて全国弁護士協同組合連合会や日本保釈支援協会の発行する保釈保証書を差し入れることで保釈を認めてもらうことがあります。

また、こちらも実例は少ないですが、裁判所が許可する場合に限り保釈金に替えて有価証券を差し入れるという方法もあるようです。

第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。

○3 裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

(引用元:刑事訴訟法第九十四条

全国弁護士協同組合連合会の保釈保証書発行事業

全国弁護士協同組合連合会とは、全国各地の弁護士が属している組織のことであり、総数約3万6,100名の団体です。

全国弁護士協同組合連合会は保釈金の立て替えは行っておらず、保釈保証書発行事業のみを行っています。この保釈保証書発行の際に行う審査基準は非公開とされていますが、収入がない場合は審査に通らないことがあるようです。

保釈保証の限度額は300万円。被告人以外が利用可能となっています。

保釈保障支援協会の行う保釈保証書発行事業

請求できるのは被告人以外となっています。限度額は300万円です。

まとめ

一時的とはいえ、保釈による身柄解放は、被告人や親族にとって大きな意味を持ちます。

立て替え事業により、ご家族が保釈金を用意できない場合でも保釈が行えるかもしれません。保釈をお考えであれば弁護士へ相談し、必要となる手続きや被告人へのフォローなどをできるだけ早く依頼することが大切になるのではないでしょうか。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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