医療裁判の勝訴率は15%|訴訟するなら弁護士の力が必要不可欠

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
医療裁判の勝訴率は15%|訴訟するなら弁護士の力が必要不可欠

医療裁判は、病院側の医療行為によって、患者に何かしらの損害を与えた際に行われます。しかし、病院側の過失を証明するために医療裁判へ発展しても、勝訴は難しいと言われています。一体なぜ、医療裁判での勝訴が難しいのでしょうか。

今回は、統計などから医療裁判で勝訴が難しい理由についてまとめました。さらに、医療裁判に必要な費用や流れなどの基礎知識についても合わせてご紹介します。

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医療裁判での勝訴率は15%|勝てる見込みが薄い理由

なぜ、医療裁判での勝訴率は低いのでしょうか。下記に1998年~2008年の間に発生した医療裁判の件数をまとめました。

医療裁判での勝訴率は15%|勝てる見込みが薄い理由

医療裁判件数

医療裁判件数

勝訴件数

和解件数

訴訟件数

1998年

101

285

582

1999年

70

267

569

2000年

143

317

691

2001年

128

318

722

2002年

149

381

869

2003年

180

508

1,035

2004年

160

463

1,004

2005年

151

529

1,062

2006年

141

607

1,139

2007年

138

536

1,027

2008年

99

493

986

件数引用元:医療事故の法律相談(全訂版)

医療裁判での勝訴率の平均は15.28%です。それに加え、勝訴率は年を追うごとに下降しており、2008年度はわずか10.0%でした。なぜ、勝てる見込みが薄いのでしょうか。

医療裁判の勝訴率

医療裁判の勝訴率

訴訟件数

勝訴率

1998年

582

17.3%

1999年

569

12.3%

2000年

691

20.6%

2001年

722

17.7%

2002年

869

17.1%

2003年

1,035

17.3%

2004年

1,004

15.9%

2005年

1,062

14.2%

2006年

1,139

12.3%

2007年

1,027

13.4%

2008年

986

10.0%

平均

 

15.28%

参照元:「医療事故の法律相談(全訂版)

病院側の明らかな過失は「和解」が多い

実は、病院側の明らかな過失で医療事故が発生した場合、相手側が早々に過失を認めてしまうケースが多いようです。そのため、勝訴ではなく和解という解決に落ち着くのかもしれません。

和解件数

訴訟件数

和解での解決率

1998年

285

582

48.9%

1999年

267

569

46.9%

2000年

317

691

45.8%

2001年

318

722

44.0%

2002年

381

869

43.8%

2003年

508

1,035

49.0%

2004年

463

1,004

46.1%

2005年

529

1,062

49.8%

2006年

607

1,139

53.2%

2007年

536

1,027

52.1%

2008年

493

986

50.0%

件数引用元:医療事故の法律相談(全訂版)

また、病院側としても、敗訴で終わるより和解で解決した方が世間的にも聞こえが良いと考えている可能性も考えられるでしょう。数値で見ても、医療裁判は和解で解決しているケースが約半数を占めています。

医療行為の過失を立証するのが難しい

医療裁判での勝訴が難しい理由は、過失の立証が難しいことも挙げられます。実は、他の裁判と比べて、医療行為の過失は立証が難しいと言われています。理由として、以下のことが考えられます。

  1. 医者や専門家でも真相が分からないケースがある
  2. 医療の素人がプロ相手に訴訟を起こすのと同じなため
  3. 協力医を見つけることが難しい
  4. 調査の範囲が広く深い

医療事故の証拠はすべて病院側にある

医療裁判での勝訴率が低い理由として、過失を立証するための証拠はすべて病院側が所持していることも挙げられます。申請手続きをすれば、被害者側もカルテを取り寄せることができますが、改ざんされている可能性も否定できません。

弁護士費用など様々な費用がかかる

医療裁判の勝訴率が低い理由には、費用面も理由に挙げられるでしょう。病院側の過失を認めさせるためには、それなりの証拠を用意しなければなりません。内容にもよりますが、最低でも30万円以上は必要だと言われています。

調査項目が増えれば、費用はさらに高くなります。十分な証拠集めに必要な経費がかけられず、勝訴に持ち込めなかったケースも少なからずあるでしょう。

医療裁判で慰謝料を請求した場合の相場

医療裁判で病院側に慰謝料を請求した場合の相場は約400万円です。ただし、被害者の負った損害によっては相場よりも安くなるケースがあります。逆に、1,000万円を超える慰謝料が認められる可能性もあるでしょう。

医療裁判で慰謝料を請求した場合の相場

慰謝料額

割合

100~200万円以内

7.90%

200~300万円以内

13.20%

300~400万円以内

26.30%

400~500万円以内

15.80%

500~600万円以内

15.80%

600~700万円以内

7.90%

700~800万円以内

7.90%

1,000万円以内

2.60%

1,500万円以内

2.60%

参照元:「医療事故の法律相談(全訂版)

ちなみに、以下の項目に当てはまると、高額な慰謝料が認められる可能性は高まると言われています。

  1. 被害者となる患者が死亡している
  2. 被害者となる患者の年齢が若い
  3. 病院側の過失に悪意が見られるとき

医療裁判でかかる費用の目安

医療裁判でかかる費用の目安についてご紹介します。裁判費用は案件により異なりますが、最低でも30万円以上かかることを見越しておきましょう。以下に、医療裁判で必要とされる費用の目安をまとめました。

ちなみに、裁判で敗訴すると病院側の弁護士費用も、支払わなければいけないと思っている方がいるかもしれません。仮に、裁判で敗訴しても病院側の弁護士費用を請求されることは原則ないため、安心して良いでしょう。

かかる費用項目

目安となる費用

弁護士への相談料(30分)

5,000円

着手金

320,000円~540,000円

報酬金

被害者が得た利益の1割

訴訟費用

210,000円~

日当

10,000~50,000円

実費(弁護士の交通費、調査費用など)

30,000円~

医療裁判を起こしたときの流れと平均審理期間

医療裁判の流れと、平均的な審理時間について以下にまとめました。基本的に、医療裁判を起こすと、最低でも1~2年ほどの期間を要すると言われています。

医療裁判を起こしたときの流れと平均審理期間

医療裁判での平均審理期間

下図を確認すると医療裁判にかかる審理期間は、年々短くなっていることがわかります。2000年には35.6ヶ月でしたが、2008年には、24ヶ月と1年ほど短くなっています。

審理期間

2000年

35.6ヶ月

2001年

32.6ヶ月

2002年

30.9ヶ月

2003年

27.7ヶ月

2004年

27.3ヶ月

2005年

26.9ヶ月

2006年

25.1ヶ月

2007年

23.6ヶ月

2008年

24.0ヶ月

参照元:「医療事故の法律相談(全訂版)

理由は、医療訴訟における審理を迅速化させるため、裁判所で以下の取り組みを行っていることが挙げられます。

  1. 漂流型審理から計画的な審理方法へ変更した
  2. 争点と証拠の整理を強化した
  3. 五月雨式の証拠調べを止めて集中証拠調べにした
  4. 鑑定依存型心証形成を止めて鑑定手続きを整備課した

弁護士に相談

まずは、医療事故に該当するかどうか弁護士に相談してみましょう。いくらあなたが医療事故を疑っても、裁判で勝訴が難しいなどの問題が出てくるかもしれません。まずは客観的に見て、医療事故の可能性があるのか、立証できる見込みがあるのか専門家の見解をもらうことをおすすめします。

  1. 医療事故や医療過誤に該当するか
  2. 病院相手に勝訴または和解に持ち込める可能性があるか

裁判所へ提訴

医療事故の被害者本人または親族が、家庭裁判所へ赴き「医療裁判」の申立てを行います。このとき、訴状に「裁判を起こした理由」と「病院側に求める対応」をまとめてから提出します。

争点の整理

被害者側の主張と原告となる加害者側の主張を裁判所で取りまとめ、食い違いが生じている点を洗い出します。原告の主張は、「答弁書」という書類に記載してもらい家庭裁判所に提出してもらいます。

証拠の収集

主張が食い違っている点を元に、被害者と病院側それぞれに尋問を取り証拠を集めていきます。裁判の内容によっては関係者からも尋問を行い、裁判所側で証拠を集めるケースもあります。

鑑定と審議

被害者と病院側の主張や証拠、裁判所側で集めた証拠を元にどのような判決を下すかの審議を行います。このとき、集めた証拠を裁判所が選任した専門家に鑑定してもらうケースがあります。

判決

審議から2~3ヶ月後、被害者と病院側に判決を下します。内容は、どちらが勝訴したかどうかと簡単な判決理由を述べるのみに留め、判決理由は後日書面で被害者と病院側のそれぞれに送られます。

和解

実は、医療裁判の多くは、「和解」という形で終結しています。その理由として、明らかな病院側の過失で和解を持ちかけられるケースや、被害者側の勝訴が難しいために和解に持ち込むケースが挙げられます。

医療裁判を起こすときの注意点

医療裁判を起こすときには、3つの注意点があります。もし、裁判を起こす場合は、手続きを踏む前に以下に該当していないかどうか確認してみてください。

医療事故や医療過誤による裁判は消滅時効がある

医療事故や医療過誤による裁判には、消滅時効という期限が設けられています。消滅時効とは、被害の請求権を得た者が、定められた期間内にその権利を行使しないと効力が無くなるというものです。具体的な時効は、民法724条として以下のように定められています。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

第七百二十四条 

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

引用元:民法(724条)

また、医療事故の内容によって時効が異なります。抱えている医療事故の内容がどちらに該当するかどうか弁護士などの専門家に確認の上、裁判の手続きを進めることをおすすめします。

 

時効期間

該当する内容

債務不履行

権利が発生日から10年

病院側が、診療契約に定められた内容に基づいて医療行為をしなかったとき。ただし、消滅時効も適用されるため注意が必要

不法行為

被害者の症状が確定してから3年

医師や看護師の故意または過失によって起きた事故が該当。ただし、被害者の症状が確定しないと訴えができないため注意が必要。

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(消滅時効の進行等)

第百六十六条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(債権等の消滅時効)

第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法

必ずしも刑事事件になる訳ではない

医療事故が発生したからといって、必ず刑事事件になるとは限りません。なぜなら、起訴すべきかどうかの判断を検察官が行うためです。万が一、あなた自身や家族が医療事故の被害に遭った場合、刑事事件として起訴することが妥当か弁護士や専門家に判断を仰ぐのが望ましいでしょう。

医療事故が原因で治療中のときは原則裁判を起こせない

医療事故の事実が発生しても、すぐに裁判を起こせる訳ではありません。理由は、裁判で病院側の非を訴えるにあたり、具体的にどんな症状を患ったか示す必要があるためです。しかし、訴えが可能となるまでに医療事故の証拠集めや、裁判の進め方など計画を練る期間として使えばスムーズに裁判の手続きが進められるでしょう。

医療裁判の判例

医療裁判の一例を見てみましょう。以下に挙げた2つの判例は、どちらも医療事故として認められたものです。

TIAを見逃したために患者に重い後遺症が残る

専門外の医師が、「TIA」という血液の流れが悪くなることで起こる、運動麻痺や感覚障害などの症状が出る病気を見逃したために、重い後遺症が残った判例です。裁判では、医師の診断ミスが認められ、被害者に440万円の慰謝料支払いを命じました。

【福岡地裁 2012年3月27日判決】

手術に必要な説明義務違反で賠償命令

患者の肝臓にできた腫瘍を壊死させるため、「PEIT」というエタノールを注入する治療方法を行いました。その後、黄疸や異常行動が現れ、最終的に患者は多臓器不全で死亡してしまったのです。裁判では、PEIT実施が他の感染症を誘発して患者死亡に至ったと認め、被害者に300万円の慰謝料支払いを命じました。

【名古屋地裁 2008年10月31日判決】

参考書籍:「医療訴訟のここがポイント

医療裁判外の解決方法の例

医療事故が起きたときの解決方法は裁判だけではありません。事故の内容や状況などによっては、以下の方法を用いて解決させると良いでしょう。

示談や民事訴訟

病院側との話し合いで解決する示談や、民事訴訟を起こす方法です。裁判よりも、平和的な解決が望めることが大きなメリットと言えます。ただし、相手に納得させるための証拠や、被害者側に優位な解決へと導くための交渉力が必要となるかもしれません。

対話による関係値の回復|医療メディエーション

医療メディエーションとは、医療事故が発生した際、被害者と病院側の主張からでた食い違いを話し合いで解決する機関です。論理的に話し合いを進めるだけでなく、被害者の心情にも寄り添う真摯な姿勢もあるため需要は高まっています。

参考元:社団法人日本医療メディエーター協会

無過失補償制度の利用

「無過失補償制度」とは、加害者となる病院側の有無に関係なく、医療事故の被害者に対して補償がなされる制度です。海外でも導入されている制度で、日本では2009年に重い脳性麻痺に対して無過失補償制度が導入されたのが始まりです。

参考元:日本医師会

まとめ

医療事故が発生した場合、裁判を起こすことで、病院側の非を認めさせられる可能性があります。しかし、医療裁判を起こすには多額の費用がかかるだけでなく、証拠集めが難しいことや時効があるなどの様々な課題を抱えなければいけません。

また、勝訴率が15%という低さから、裁判を起こすことにハードルを感じる人もいるでしょう。とはいえ、和解など勝訴以外の解決方法もあり、被害者が報われる環境整備がなされているのも事実です。

もし、医療事故に遭ったときは、不利な状況で終わらないよう弁護士などに相談し、適切な指示の元で手続きを進めることをおすすめします。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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編集部

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