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KL2020・OD・037
企業買収という言葉を聞くと『経営の厳しい会社が大手企業の子会社になる』、『敵対する会社を潰す』などのネガティブなイメージを持っている人が多いのではないのでしょうか。
ですが、企業買収はする側にもされる側にもメリットがあり、現在日本ではどんどん増えてきています。
この記事では企業買収が増えてきて来ている背景とその方法、メリット・デメリットや、買収と切っても切り離せない『株主』について紹介したいと思います。
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企業買収とはその名の通り、企業を買収することです。買収という言葉には“買い取る”や、“買い占める”といった意味があり、会社の一部、もしくは全部をお金や株を用いて取り引きすることをいいます。
合併(merger)と買収(Acquisition)はあわせて、『M&A』と呼ばれています。合併や買収の話題では必ずといっていいほどM&Aという表現が使われますので覚えておきましょう。
企業買収の方法は大きく分けて2種類あります。
買収したい企業の株を保有している個人・法人から株を買い取ることで、株主の地位を譲り受ける方法です。
詳しくは下記の、『株式保有率ごとの株主の権利』で説明しますが、会社が発行している株の51%以上を保有している状態になると、その会社では一番の権力を持っていることになります。
会社の事業の一部、もしくは全部を他者(他社)に譲り渡すことをいいます。株式取得とは違い、買収する側もされる側も株主が変わることはなく、単に会社の事業を売買するような形です。
日本の人口は減少傾向にありますが、人口減少がすると国内市場や経済成長に影響を与えます。
買収する側の狙いとしては、
買収される側の狙いとしては、
など、買収はする側にもされる側にもメリットがあるといえます。
買収には友好的買収と敵対的買収の2つがあります。この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
買収したい会社の経営陣の同意のもとに行われる買収行為です。日本における企業買収といえばほとんどこちらのことを指しています。
買収したい会社の経営陣の同意を得ることなく行われる買収行為です。資金力を武器に株を買い占めるなどの実力行使で企業を買収しようとします。
大前提として、会社で一番権力があるのは社長や取締役ではなく、株主です。企業買収において株は重要な存在です。
株主総会で話し合われた内容に対して賛成、もしくは反対をする権利のことを議決権といい、会社の発行済み株式のうち、全体の何%を保有しているかに応じて会社における株主の権利は変化します。
たとえば5%の株を保有していた場合、その株主は5%の議決権を持っているということになります。ここでは株の保有率によって株主の権利がどう変わっていくかを説明します。
特別決議(※)は、議決権を持つ株主の67%(3分の2)以上の賛成が必要になります。もし1人の株主が34%(3分の2)以上の株を持っている場合、残りの株主の保有数は66%となり、決定に必要な賛成数である67%に届きません。
つまり、34%以上の株を所持している株主は、会社における重要な決定を単独で拒否する権利があるということです。
普通決議(※)で何かを決定するときは、50%(2分の1)以上の賛成が必要になります。つまり51%の株を保有しているということは、普通決議では自身の意見だけで取り決めをすることができる状態です。
51%以上の株を保有している時点でその会社では一番権力を持つ存在となります。ですが、特別決議においては全体の3分2以上の賛成が必要なので、他者の反対により否決される可能性があります。
51%以上の株を保有した時点で買収はひとまず成功したといえるでしょう。
特別決議においても、普通決議においても単独の意見で取り決めることができるようになります。この時点で会社の全てをコントロールできる立場にあるので、買収が完了した状態といえるでしょう。
※特別決議と普通決議 ・普通の株主総会は“普通決議”と呼ばれ、主に役員の選任や報酬の決定、剰余金の配当などについて話し合われます。 ・会社における重要事項を決めるのは“特別決議”と呼ばれ、定款(会社名や所在地、発行できる株の総数など)の変更などについて話し合われます。 |
企業買収が増えてきている理由を知るには、買収にどんなメリットがあるのかを知るのが1番早いと思います。なので企業買収をするメリットと、それにともなうデメリットを紹介します。
規模の経済とは、製品を沢山生産するほど、1つあたりにかかる経費が少なくなる現象をいいます。
例えば、工場で製品を生産していたとしましょう。工場を動かすためには、電気代や家賃、人件費などが発生します。
仮に1月あたり300万円の固定費が発生したとすると、製品を1個作ろうが1000個作ろうが、固定費は300万円です。
企業買収をすることにより会社の規模が大きくなります。会社の規模が大きくなると、仕入れの量が増えてコストを下げることができたり、時間あたりで生産できる量が増えることによってコストを下げることができます。
範囲の経済とは、複数の事業をそれぞれの会社がバラバラにやるより、一つの企業がまとめて経営した方が重複するコストを削減できることをいいます。
例えば八百屋・肉屋・魚屋がバラバラにお店を構えるとそれぞれの家賃や光熱費、人件費などがかかります。ですが一つのお店で野菜・肉・魚を売る場合には重複するコストをカットすることができます。
クロスセルとは『商品を購入した人に関連商品も一緒に購入してもらう』ことになります。上の八百屋・肉屋・魚屋の例でたとえると、肉を買った人があわせて野菜を購入することはクロスセルといえます。
顧客層の親和性が高く、なおかつ扱いのない商品を販売する他社を買収した場合などは、すでにある流通網を活かしてクロスセルが見込めます。
同業にライバル企業がいる場合、その会社を買収してしまうことでその市場での占有率が高まります。逆に、経営が厳しい企業は同業他社に買収されることで経営を立て直すことができるかもしれません。
新規事業を始める場合や、異業種に参入する場合には必ずリスクがついてまわります。ですが、その分野ですでに実績を上げている企業を買収する場合には、リスクを抑えることができます。そして、買収を通じて複数の分野から収入源を確保しておくことでリスクを分散させることができます。
以降は、企業買収をすることによって考えられるデメリットを紹介します。
運営主体が変わる買収をきっかけに、顧客が離れていく可能性があります。
買収を通じて会社のトップの人間が変わる可能性があります。会社のルールが変わったことで買収された側の従業員はストレスを感じて退職してしまう可能性もあります。
買収した側の従業員とされた側の従業員の人間関係がうまくいかない可能性があります。
元々は別々の企業で働いていたわけですから、文化や従業員同士の距離感、人間関係などをすり合わせるのが難しくなる場合があります。
人口減にともなう国内市場の停滞をきっかけに合併や買収(M&A)は増えています。
企業買収の方法として、買収したい企業の株をたくさん持つ、『株式取得』がありますが、株をどれだけ保有できるかで株主の権限は変化していきます。
買収には企業を経営していく上で、コスト削減やリスク回避などメリットがたくさんありますが、顧客が離れる、人材を失う可能性があるなどのデメリットもありますので、実行する前によく検討した方がいいでしょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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