株式譲渡の手続きと株式譲渡を進める上で知っておくべき3つの注意点

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
株式譲渡の手続きと株式譲渡を進める上で知っておくべき3つの注意点

株式の譲渡を受けて、その企業の方針に何らかの影響力を持つためには、対象企業の株式を取得して、その企業の経営方針などを決定する会議における議決権を得る必要があります。

株式会社であれば会社設立時に株式を発行していますが、株主はその株式の取得率によって発言力が違うと考えていただくと、イメージが湧きやすいのではないでしょうか。

株式譲渡の手続きと株式譲渡を進める上で知っておくべき3つの注意点

株式会社はこの『株式』というものをより多く持っている人が、その企業の方向性を決める決定的な発言力を持つことになります。では、何らかの理由で株式を手放さなくてはいけない場合、どのような手続きで進めていけばよいのでしょうか?

今回は、非上場株式の譲渡手続きの流れと、知っておくべき注意点についてご紹介していきますので、今後の参考にして頂ければと思います。

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株式譲渡の全体の流れと手順

株式譲渡の全体の流れと手順

まずは、非上場である株式の譲渡がどう言った流れで進んでいき、どういった手続きを踏むことになるのかを確認していきましょう。

大体の流れは下表のように進んでいきますが、取締役会がある会社とない会社で微妙に違いますので、両方を見比べながら確認していきましょう。

手順

取締役会設置会社

取締役会非設置会社

1

株式譲渡承認請求を行う 株式譲渡承認請求を行う

2

取締役会を開く 臨時株主総会の開催

3

監査役に臨時役会の招集通知 臨時取締役会で株式譲渡の承認

4

臨時取締役会で株式譲渡の承認 株式譲渡承認の通知

5

株式譲渡承認の通知 株式譲渡契約の締結

6

株式譲渡契約の締結 株主名義書換請求

7

株主名義書換請求 株主名義の書き換え作業

8

株主名義の書き換え作業 株主名簿記載事項証明書の請求

9

株主名簿記載事項証明書の請求 株主名簿記載事項証明書の交付

10

株主名簿記載事項証明書の交付  

取締役会がある企業の場合、まずは社内の取締役会を開くことから始めるという違いがあるようです。

1:株式譲渡承認請求

株式譲渡承認請求(かぶしきぎょうとしょうにんせいきゅう)とは、第三者の株式を取得する場合に、所得される企業の『いいですよ』という承認を得るための手続きです。

非上場の株式は、会社の定款でなどに『譲渡制限』とうものをかけているケースがほとんどであり、この規定を置いておくことで、株主は会社の承認なくして勝手に株式を譲渡・売買することをできなくしているという訳です。

2:取締役会(臨時取締役会)を開く

譲渡制限株式を譲渡する場合は会社の承諾が必要であり、承認の可否は取締役会設置会社は取締役会が、非設置会社は株主総会が決定します。

これは会社法第139条に定められている項目ですので、必ず行う必要があります。

(譲渡等の承認の決定等)

第百三十九条  株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。

引用元:会社法第139条

この時、取締役会設置会社なら社外にいる監査役なども呼んで話し合うことになります。

3:株式譲渡承認の通知

取締役会や臨時取締役会で株式譲渡の承認が下りた場合、次は株式を取得したい側(譲渡等承認請求者)へ決定内容の通知を行うことになります。これは会社法第139条2、第141条で定められており、145条によって2週間以内に通知する必要があります。

(譲渡等の承認の決定等)

第百三十九条2 

株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

引用元:会社法第139条

(株式会社による買取りの通知)

第百四十一条  株式会社は、前条第一項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。

引用元:会社法第141条 

(株式会社が承認をしたとみなされる場合)

第百四十五条  次に掲げる場合には、株式会社は、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。

一  株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の規定による請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百三十九条第二項の規定による通知をしなかった場合

引用元:会社法第145条

4:株式譲渡契約の締結

株式譲渡承認の通知を終えたら株式譲渡契約書を作成し、譲渡等承認請求者と会社間で契約を結ぶことになります。

 

株式譲渡契約書(サンプル)

株式譲渡人である匿名太郎(以下「甲」)と、株式譲受人である匿名アシロ(以下「乙」)は、平成○年○月○日の臨時株主総会における株式譲渡承認決議に則り、甲が保有する普通株式○○株を乙に譲渡し、以下の通り契約する。

第1条 甲は、甲が有する普通株式の全部(○○株)を乙に譲渡し、乙はこれを譲受する。

第2条 甲及び乙は、本契約締結後遅滞なく、前条の株式が甲から乙に譲渡されたことを通知する。

第3条 甲は、本契約日までに、株式を乙以外の第三者へ譲渡しないことを誓約する。当該株式の二重譲渡が発覚した場合、乙が被った損害の全額を賠償するものとする。

以上本契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印し各1通を保有する。
 

平成○年○月○日

(住所)東京都新宿区○○

(氏名)匿名太郎

(住所)東京都新宿区○○

(氏名)匿名アシロ

5:株主名義書換請求の交付と株主名簿記載事項証明書の請求

株式を譲渡したことを証明する手続きになります。これを株主名簿書換請求と言いますが、これがないとその会社の株式を保有していることの証明にもなりませんし、株主総会などでの発言権や決定権もない状態ですので、必ずやっておきましょう。

 

株式名義書換請求(サンプル)

●●●株式会社 御中

平成●●年●●月●●日


名義書換請求株式数●●株上記の株式について、共同して名義書き換えを請求いたします。

株主(譲渡人)
〒●●●-●●●●
東京都新宿区●●●●
匿名太郎  印

取得者(譲受人)
〒●●●-●●●●
東京都新宿区●●●●
匿名太郎   印

株主名簿記載事項証明書は確かに株式を譲渡したことを証明する紙面になります。株式名義書換請求に対する返答のようなものだとお考え頂ければよいかと思います。

株式譲渡を行う際に知っておくべき3つの注意点

株式譲渡を行う際に知っておくべき3つの注意点

ここまでは基本的な株式譲渡の手続き内容になりますが、株式譲渡には注意点もありますので、いくつかご紹介していきます。

譲渡契約の正当性は自分たちで確認する必要がある

株式の譲渡手続きを一通り見てきてお気づきになったかと思いますが、登記などでは必ず足を運ぶことになる、法務局といった役所が一切出てきません

ある意味手間が少なくて済むとも言えますが、役所が関与しないということは、手続きの妥当性や違法性をチェックする公的機関がいないということでもあります。つまり、何か問題があったとしても、罰則等が特に設けられていないと言い換えることもできるでしょう。

そうなった場合、企業間同士で問題解決をしなくてはいけないことになりますが、会社法を完璧に理解している方がどの程度いるでしょうか。

トラブルの多くは承認フローが確立していない中小企業で起こる可能性が高いので、今回ご紹介したような手順を遵守していただくことで、大きなトラブルを回避しやすくなると言えます。

株式譲渡があると税金が発生する

株式の売買や譲渡が発生した場合、下記の税率で譲渡所得税(住民税+所得税)がかかります。

区 分 税 率
上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) 20%(所得税15%、住民税5%)
一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) 20%(所得税15%、住民税5%)

具体的な計算方法は・・・

上場株式の計算方法

総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)

=上場株式等に係る譲渡所得等の金額

一般株式の計算方法

総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)

=一般株式等に係る譲渡所得等の金額

個人の株式譲渡は基本的に税金がかからないと言われていますが、時価と大きく離れた価格での譲渡があった場合、税務上問題がある場合も考えられますので、株式譲渡をする前に、顧問税理士や企業法務が得意な顧問弁護士へ相談されることをおすすめします。

中途半端な知識で臨むと足元を見られる

株式は会社で最も重要な要素の1つですので、安易に株式譲渡で利益をあげようだとか、取り急ぎの資金確保に使うのはおすすめできません。

もちろん、そんな理由で株式譲渡を行う経営者はいないとは思いますが、あまり深く考えずに進めてしまうと、破格の価格で株式を売却することにもなりかねませんし、譲渡する株式数の比率を間違えるとあとで後悔する可能性が高いでしょう。

従業員の今後を左右するかもしれない問題でもありますので、先に企業法務に詳しい専門家や、企業法務に詳しい弁護士などに相談し、後悔のない株式譲渡を進めて頂ければと思います。

まとめ

株式譲渡の手続きに関する内容は以上になります。字面でみると、意外とカンタンな手順で進んで行くのがわかると思いますが、実際は慎重に進めていく地味な作業の繰り返しです。

特に法務局が関わらない分、株主名義書換請求などを忘れがちなので、こう言った細かい部分も含めて、専門家や弁護士に相談しながらすすめていくのが良いのではないかと思います。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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