労災認定における取消訴訟までの申請方法と審査請求の手順まとめ

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
労災認定における取消訴訟までの申請方法と審査請求の手順まとめ

労災保険の不支給処分に対する取消訴訟は、原則として審査請求による労働保険審査官の決定を経る必要がありますが、労働者災害補償保険法の改正により、再審査請求をしなくても取消訴訟の提起が可能になりました。

仕事中でのケガや業務上のストレスが原因で発症したうつ病などを補償してもらうためには労災認定の申請をする必要がありますが、業務外の災害だと判断されてしまう可能性もあるでしょう。

労災認定の申請が通らなければ審査請求を利用することで災害不認定の取消要求が可能になりますが、それでも不支給処分として棄却されることもあります。その場合は最終的な解決手段である取消訴訟の提起ができるようになり、裁判で争う流れとなります。

今回は取消訴訟の方法を含め、労災認定における全体の申請の流れについて解説していきます。

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労災保険の不支給処分における取消訴訟は最終的な手段

労災申請をしても労災として認定されなかった場合のことを一般的に『不支給処分』といいますが、不支給処分を取消しする訴訟をすぐに起こせる訳ではなく、取消訴訟は最終的な手段になります。

取消訴訟を提起するには審査請求を済ませる必要がある

取消訴訟に関しては労働者災害補償保険法で規定されていて、同法第40条で処分の取消しの訴え(取消訴訟)は審査請求の後でなければ提起できないことが定められています。

第五章 不服申立て及び訴訟

第三八条 保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

2 前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から三箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、労働者災害補償保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

《改正》平26法069

3 第一項の審査請求及び再審査請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。

《改正》平26法069

第三九条 前条第一項の審査請求及び再審査請求については、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二章(第二十二条を除く。)及び第四章の規定は、適用しない。

《改正》平26法069

第四〇条 第三十八条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。

引用元:労働者災害補償保険法 第38条~40条

改正法により再審査請求をしなくても取消訴訟が可能になった

上記の労働者災害補償保険法を見ていただくと分かるように、《改正》と記載されています。実際には平成28年4月1日に改正法が施行されていて、改正前は審査請求に加えて再審査請求の決定を得ないと取消訴訟の提起ができないようになっていました。

取消訴訟を含む行政事件訴訟の使いやすさや救済手段の拡大などを考慮して、労災保険関係の法律は適宜見直されています。
参照元:「厚生労働省 行政不服審査法の改正に伴う労働保険審査制度等の見直しについて

労災保険を請求するには段階的な手続きを取る

労災保険給付の申請から、審査請求(再審査請求)を経て取消訴訟の提起に至るまでの流れは下記図の通りです。詳細については次項以降で順番に取り上げていきます。

労災保険を請求するには段階的な手続きを取る

労災保険の申請請求手順1|労災申請

最初の段階では被災労働者(被災労働者が死亡した場合は遺族)が労災の申請書類をすることになります。申請では会社側で対応してくれる場合もありますが、基本的には労働者側の責任になるので自分で申請書類を確認する必要があるでしょう。

請求先は労働基準監督署長(労基署長)

労災保険の申請先は労働基準監督署長(労基署長)であり、管轄地域に応じて決められています。例えば所在地が東京都内の場合、『労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧』のサイトで確認できます。

また、申請時に必要な書類については厚生労働省のホームページにある『ダウンロード用様式』にてダウンロードすることが可能です。

労災保険には給付支給請求権の消滅時効がある

一つ注意点として、労災保険の申請に関わる『給付支給請求権』には消滅時効が規定されています。労働者災害補償保険法第42条で記載されていますが、給付内容に応じて2年または5年の請求期間が設けられているため、それまでに労働基準監督署長へ申請する必要があります。

第六章 雑則

第四十二条  療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、二年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、五年を経過したときは、時効によつて消滅する。

引用元:「労働者災害補償保険法 第42条

労災保険の申請請求手順2|審査請求

労働基準監督署(労基署)による調査の結果、労災不認定が下された場合に審査請求へと移行します。労働基準監督署長の決定を取り消すための審査を求めることになりますが、請求先は変わります。

請求先は労働者災害補償保険審査官

審査請求における担当者は、都道府県労働局に置かれる労働者災害補償保険審査官になります。

審査請求を行うためには『労働保険審査請求書』などの書類を労働者災害補償保険審査官へ送付する必要がありますが、労働保険審査請求書は労働基準監督署や都道府県労働局の労災補償課より取り寄せられるほか、下記より書式をダウンロードすることが可能です。
DL:厚生労働省 労災保険審査請求制度 労働保険審査請求書

審査請求の期限

審査請求も労災申請の消滅時効と同様に期限が定められています。原則としては労災保険の申請結果(労災保険不支給処分)が通達されたことを知った日の翌日から起算して3ヵ月以内であり、3ヵ月を超えると審査請求ができなくなるので注意しましょう。

審査請求期間|半年~1年が目安

審査請求期間は一般的に半年~1年程度要することが多いとされています。原則としては審査請求の結果が出るまで再審査請求や取消訴訟の提起ができないため長期間待つ必要がありますが、例外もあります。

労働者災害補償保険法第38条2項にて、審査請求を行って3ヵ月が経過しても結果が出ない場合は棄却したものと見なせることが決められているので、審査請求から3ヵ月が経過すれば再審査請求や取消訴訟の提起が可能になります。

労災保険の申請請求手順3|再審査請求

再審査請求に関しては、改正法の施行により必ず行うべき方法ではなくなりました。

請求先は労働保険審査会

再審査請求の場合、厚生労働省の機関である労働保険審査会が請求先になります。労働保険審査会は第二審として労災保険や雇用保険の給付処分に対する審査を行います。

再審査請求で必要になる『再審査請求書』を労働保険審査会へ提出することになりますが、書類のフォーマットに関しては厚生労働省のサイト内にある『再審査請求書等の様式』で確認できます。

再審査請求の期限

再審査請求の期限は短く、審査請求の結果が通知された日の翌日から起算して2ヵ月以内になりますが、上記の審査請求でも説明したように審査請求から3ヵ月以上経過した場合も再審査請求が可能になります。

労災保険の申請請求手順4|取消訴訟の提起

労災保険の申請請求手順4|取消訴訟の提起

審査請求や再審査請求でも不支給処分を受けた場合、国や公共団体などの行政主体を相手に行政訴訟を提起する手段が考えられるでしょう。また、行政主体でなく会社を訴える『民事訴訟』の方法もありますので下記にて合わせて解説していきます。

取消訴訟(労災認定訴訟)は地方裁判所に提起する

取消訴訟を提起する先は地方裁判所になりますが、被告(訴えられる側)の所在地を管轄する地方裁判所のほか、原告(訴える側)の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所である『特定管轄裁判所』にも提起できます。

また、取消訴訟の提起では請求の趣旨や原因などを記載する訴状を提出する必要があります。

取消訴訟の出訴期間は6ヵ月か1年

取消訴訟の出訴期間(提起が可能な期間)は原則として、審査請求(または再審査請求)の結果が来たことを知った日から6ヵ月、または審査請求の結果があった日から1年になります。

それと、上記の審査請求や再審査請求と同様に、審査請求(または再審査請求)から3ヵ月以上経過した場合でも取消訴訟の提起が可能になります。

会社側に訴える(労災民事訴訟を起こす)ことで損害賠償金を請求できる

労災認定とは別で、会社側へ損害賠償金を請求することも可能です。民事上の損害賠償請求である労災民事訴訟では会社側の責任が問われ、被災労働者と会社の過失割合を基準に支払われる損害賠償金額が決まります。

労災認定訴訟(取消訴訟)と労災民事訴訟は独立した請求になるため、仮に労災認定が下りない判決が下されても、民事訴訟側で会社側に責任があると認めた場合は損害賠償金がもらえることになります。

民事訴訟における損害賠償請求の消滅時効は10年

労災に関する損害賠償請求では民法上の不法行為責任に該当する3年の消滅時効のほかに、債務不履行責任の消滅時効である10年も適用されます。一般的に3年では短いため、債務不履行を理由に民事訴訟を起こして10年の消滅時効扱いにするケースが多いようです。

(債権等の消滅時効)

第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

引用元:「民法 第167条

労災が認定される基準

参考までに、労災が認められる事例などを最後に取り上げていきます。法律的な問題になり判断が難しいケースもあるため、審査請求や取消訴訟の手続きでは弁護士に依頼した方が良いでしょう。

労災だと認められる例

仕事中のケガ

工場で機械に手を挟んで指を欠損したり、工事現場で高い場所より落下してケガをしたりするなど、業務をしている際の負傷行為などがあります。

通勤途中の交通事故

住居と就業場所の間を移動していたり、営業などで他の現場へ向かっている途中で交通事故に遭った場合も労災の対象になります。

働き過ぎによる肉体的・精神的疾患

過労が原因で心臓病になるほか、ストレスによるうつ病(精神障害)なども労災認定条件になります。心理的負荷を理由に労働者が自殺した場合も労災認定される可能性があるでしょう。

労災不認定処分の取消訴訟を提起した具体的な事例

労災が認められなかったことに対する具体的な取消訴訟の事例として、過度な時間外労働が原因で心停止に至って死亡した30代の会社員に関する事件があります。

妻による取消訴訟の提起により、労災認定基準を満たさなくても業務が原因で死亡した因果関係が裁判で認められ、労災不認定処分が取り消されました。

労災認定基準になる時間外労働(発症前1カ月で100時間の時間外労働)を満たさない場合でも、業務が原因で労働者が死亡した事実が明確であれは労災が認められる可能性があると考えられます。

労災保険の申請や取消訴訟の手続きでは弁護士の依頼がオススメ

これまで解説したように、労災認定の申請では法的な手段を取る必要があるため、被災者や遺族だけでは対応が難しい問題もあるでしょう。

取消訴訟を検討している場合のほか、審査請求の前段階である申請時でも弁護士は力になってくれます。労災認定を受けるために必要な証拠や書類を把握している弁護士からアドバイスをもらい、早めに解決するようにしましょう。

まとめ

労災認定における取消訴訟について申請手順や審査請求の方法と合わせて説明しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。労災認定の対象になりそうなケガを負った場合や、不幸にも家族が業務中の事故で死亡した場合などは早めに弁護士へ相談するのが良いでしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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