取消訴訟の判例を参考に判断される訴訟要件(処分性と原告適格)の基準

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
取消訴訟の判例を参考に判断される訴訟要件(処分性と原告適格)の基準

取消訴訟の判例は原告側の請求における容認基準になるだけでなく、訴訟上の請求において審理にかけられるかどうかの条件(訴訟要件)を判断する重要な証拠になります。

取消訴訟の訴訟要件は、訴訟提起する裁判所の管轄や出訴期間など明確になっているものもありますが、可否の判断が非常に難しい処分性原告適格については最高裁まで争われるケースもあり得ます。

今回は訴訟要件の中でも基準が曖昧である処分性と原告適格について、参考になる判例を提示しながら説明していきたいと思います。

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取消訴訟における過去の判例が重要になる理由

取消訴訟に関連する過去の判例は以下で説明する通り、法令の基準だけでは判断が難しい訴訟要件の重要な証拠になります。

取消訴訟の訴訟要件を判断する基準になる

訴訟要件とは、訴訟の提起において原告側の請求が審議にかけるべきかどうかを決める条件のことです。

訴訟要件の有無をめぐって裁判で争われるケースが多くあります。

訴訟要件は法令の基準だけでは具体的に決められない場合がある

訴訟要件の基準が明確になっていない理由としては、法令による制定内容が曖昧である点が関わっているでしょう。

以下では訴訟要件に該当する『処分性』と『原告適格』を定めている法令を記載します。

2  この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

引用元:「行政事件訴訟法 第3条2項

(原告適格)

第九条  処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

引用元:「行政事件訴訟法 第9条

行政事件訴訟法の条文を見ただけでは処分とは具体的に何を示すのか、回復すべき法律上の利益とは何に該当するのか、見当がつかないと思われます。法令は裁判における審理の基準になるものですが、裁判事例を参考に各事件の内容に合わせた解釈をする必要があるでしょう。

基準が曖昧である訴訟要件|処分性と原告適格

今回は訴訟要件の中でも、見解が分かれやすい処分性と原告適格の2点に着目して次項以降で判例を取り上げていきたいと思います。

それぞれの概要については以下表の通りです。

簡単にいうと『法廷の審理にかけて解決する価値のある事件か?』という判断であり、法律上で示される処分行為や利益(または不利益)の証明によって取消訴訟の提起が認められます。

処分性 取消を要求する行政庁からの処分における『処分性』の有無。
※行政事件訴訟法で定義されている処分に該当するかどうか。
原告適格 取消訴訟をすることで権利又は法律上保護された利益の回復があるかどうか。
※直接的な利害関係が発生していることで、取消訴訟を提起する原告としての資格が備わっているという考え方。

取消訴訟の判例1|処分性の有無が問われるケース

処分性の有無が問われたケースを基に、取消訴訟の判例を見ていきましょう。

それぞれの事例において処分性が認められた理由、認められなかった理由について、ポイントになるのは行政庁からの処分行為によって特定の人の権利に影響を及ぼすことになるでしょう。

行政処分の『処分』が定義された事例

行政処分の『処分』については以下の判例(ごみ焼却場設置条例無効確認等請求)で示されている通り、行政の行為によって、原告側(訴える側)が何らかの不利益を被っていることが認められても、その行為がなされることによって法律上、個人の権利義務を形成し、または権利義務の範囲を確定することが認められない場合は処分性がないとの見解になります。

それ故、仮りに右設置行為によつて上告人らが所論のごとき不利益を被ることがあるとしても、右設置行為は、被上告人都が公権力の行使により直接上告人らの権利義務を形成し、またはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するものということを得ず、原判決がこれをもつて行政事件訴訟特例法にいう「行政庁の処分」にあたらないからその無効確認を求める上告人らの本訴請求を不適法であるとしたことは、結局正当である。されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は、採用できない。

引用元:「裁判所 ごみ焼却場設置条例無効確認等請求

処分性が認められた事例

処分性が認められた事例について、市町村の施行に関与する土地区画整理事業の事業計画の決定が行政処分として裁判で認められたケースがあります。

土地区画整理事業については、過去の判例において事業計画の決定が出された段階では個々人の権利義務が形成され、またはその範囲を確定するとはいえないとされ、処分性が認められなかったものの、平成20年の最高裁判決では以下の通り、事業計画の決定の段階で個人の権利義務に直接的な影響が認められるとして、処分性が肯定されました。

そうすると,事業計画の決定の処分性を肯定する結果,その違法を主張する者は,その段階でその取消訴訟を提起しておかなければ,後の仮換地や換地の段階ではもはや事業計画自体の適否は争えないことになる。しかし,土地区画整理事業のように,その事業計画に定められたところに従って,具体的な事業が段階を踏んでそのまま進められる手続については,むしろ,事業計画の適否に関する争いは早期の段階で決着させ,後の段階になってからさかのぼってこれを争うことは許さないとすることの方に合理性があると考えられるのである。

引用元:「裁判所 行政処分取消請求事件

処分性が認められなかった事例

ただし、処分性が認めない事例も多数あり、例を挙げると交通反則金納付通告に対する取消訴訟があります。

以下の判例で処分性を否定された理由は、交通反則金を納付しなかった場合は行政訴訟ではなく刑事訴訟で争うことが妥当であり、行政事件訴訟法に則って解決をする取消訴訟の提起は不適法であるとのことです。

要は、取消訴訟で解決するべき処分性は見受けられないとの見識だと考えられます。

道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となつた反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によつてその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによつて開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。

引用元:「裁判所 行政処分取消

処分性の見解が分かれるポイント

処分性に関する判例の一部を上記で取り上げましたが、処分性の容認が難しくなるケースは以下の要素(要件)が絡んでいるとされています。

  • 公権力性
  • 個別具体性のある法的地位の変動

公権力性については、問題となる行政行為によって法的関係を一方的に変動するかどうか、といった判断基準になります。

また、個別具体性のある法的地位に関しては言い換えると、対象者の権利義務の範囲を確定させる(制限させる)事実が問われるでしょう。

取消訴訟の判例2|原告適格の有無が問われるケース

続いて、処分性と同じく可否の判断が難しいとされる原告適格に関連する判例についても取り上げていきます。

直接的な利害関係が証明できないと原告適格の立証が難しくなる

原告適格は、行政処分の取消しを求めることにつき法律上の利益を有する者に認められます。

法律上保護された利益を有する者とは、行政処分によって権利又は法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害される恐れのある者をいいますが、行政側との直接的な利害関係が証明されないと、法律上保護された利益を有する者とは考えにくいと思われます。

原告適格が認められなかった判例

原告適格が認められなかった判例を挙げると、地方鉄道業者における特急料金改定の認可処分の取消訴訟について、以下のような判決が下されました。

通勤定期券を購入するなどして鉄道を利用している者は、自己の権利利益を侵害されているとは認められないため、処分取消を求める原告適格を有していないとの見解になります。

地方鉄道法(大正八年法律第五二号)二一条による地方鉄道業者の特別急行料金の改定(変更)の認可処分の取消訴訟につき、当該地方鉄道業者の路線の周辺に居住し通勤定期券を購入するなどしてその特別急行旅客列車を利用している者は、原告適格を有しない。

引用元:「裁判所 近鉄特急料金認可処分取消等請求事件 裁判要旨

また、以下の判例はパチンコ店の営業許可が違法だと見なして取消訴訟を提起した結果になりますが、規制している法律が、当該営業制限地域の居住者における個別的利益まで保護する目的を有するとはいえないため、同じく原告適格が認められませんでした。

風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令六条一号イの定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可処分の取消しを求める原告適格を有しない。

引用元:「裁判所 風俗営業許可処分取消 裁判要旨

平成17年の改正法で原告適格の条件が拡大された

上記の裁判事例では、行政庁による行為が自らの権利利益の侵害になっている、あるいは、規制している法律が個人の個別的権利まで保護する趣旨とはいえないと判断されています。

しかし、平成17年に行政事件訴訟法が改正されてから、法律上の文言のみに限定せず個々の利益の内容や性質が考慮されて、第三者における利害関係についても広義的な解釈によって原告適格が認められる可能性が上がりました。

原告適格の条件拡大が認められた判例

以下の判例は広義的な解釈が適用された取消訴訟です。

都市計画事業による間接的な利害(騒音や振動などの公害)であっても、都市計画事業が認可された場合には住民の健康や普段の生活において著しい被害をもたらすことを理由に、法律上の保護に相当する具体的利益が認められて原告適格が肯定されました。

都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。

引用元:「裁判所 小田急線連続立体交差事業認可処分取消 裁判要旨

弁護士に依頼すれば判例を基に取消訴訟の適切な判断をしてくれる

弁護士に依頼すれば判例を基に取消訴訟の適切な判断をしてくれる

処分性や原告適格が問われるケースを基に取消訴訟の判例について説明してきましたが、専門家である弁護士は法廷で過去の判例を基準に、的確な弁護活動をしてくれます。

ですので、取消訴訟を検討している場合は弁護士に一度相談してみた方が良いですが、どんな事案でも必ず弁護士に依頼するべきとも言えません。

以下で説明するメリットとデメリットを理解した上で、取消訴訟の提起について判断するようにするべきでしょう。

弁護士に依頼するメリット|手続の代理・訴訟の妥当性を判断

弁護士に依頼をすれば裁判手続を代行してくれるほか、取消訴訟を提起するのが適切な事案であるかどうかを法律的な見地により正しく判断してくれます。

これまで説明したように、処分性や原告適格などの訴訟要件を全て満たさない限りは法廷での審理にかけられず裁判手続きが無駄になってしまうため、事前に弁護士へ確認するのが良いでしょう。

弁護士に依頼するデメリット|費用面の問題

しかし、弁護士に依頼する一番のデメリットとして『弁護士費用』が挙げられます。

これも依頼前(初回相談時)に弁護士へよく確認すべきポイントになりますが、取消訴訟に関する依頼で100万円以上の高額な着手金を支払っても、棄却されてしまえば原告側(訴える側)にとって大きな負担になってしまいます。

現実的に考えると、訴訟要件などの条件が厳しい理由などで取消請求が容認される可能性は低いため、安易な考えで弁護士へ依頼するのは止めた方が良いでしょう

まとめ

取消訴訟における原告側の要求や訴訟要件が認められる基準について、判例を通して様々な判断がされていることがお分かりいただけたかと思います。

改正法により一部の訴訟要件における条件が拡大されましたが、それでも法廷での審理を容認してもらうことは難しい問題であり、棄却されるケースの方が多いでしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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