相続放棄の手続きの流れと必要書類 | 相続放棄を選択すべき基準とは?

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
相続放棄の手続きの流れと必要書類 | 相続放棄を選択すべき基準とは?

相続放棄に必要な手続きはご存知でしょうか。相続放棄はマイナスの財産を相続したくないときに相続権を放棄することですべての財産を引き継がない選択をすることです。

相続放棄どころか相続に関わることなど人生でそう何回もないでしょうから、手続きや注意しなければいけないことに対して「知らなかった」ということもあると思います。実際に相続に直面したときにあたふたしないように相続放棄の手続きを知っておいたほうがいいでしょう。

また、相続放棄だけでなく財産の一部だけを相続する限定承認というものもありますので、こちらにも触れていきます。

相続放棄の手続きの流れと必要書類

あなたが相続人になったとき、単純承認、限定承認、相続放棄の3つから選択することになります。相続放棄はマイナスの財産を相続したくないときに相続権を放棄することで、すべての財産を引き継がない選択をすることです。

どのような手続きをする必要があるのでしょうか。

【関連記事】相続放棄の必要書類の集め方と書き方 | ケースごとに変わる必要書類一覧

相続放棄をする流れ

実際に相続放棄をするときは下記の手順で進んで行きます。

  1. 相続財産の調査
  2. 必要書類の準備
  3. 家庭裁判所へ必要書類を提出
  4. 裁判所から照会が来る
  5. 相続放棄へ

具体的にはどのような手順になるのでしょうか。

①まずは財産の調査を!

マイナスの財産はどう調べればいいのでしょうか。

借金がある場合、通常月払いでしょうからそれなりの頻度で請求書が来るはずです。まったく把握できていない場合はこういった返済の催促で知ることもあるでしょう。

被相続人が金融機関から借金をしている場合は、信用情報機関で借金のデータを照会してもらうこともできます。信用情報機関とは本人の属性や、金銭の取引状況といった個人の信用情報を収集して管理している組織のことで、金融機関の種類によってどこの信用情報機関の管轄か変わります。

消費者金融であれば日本信用情報機構、クレジット会社であればシー・アイ・シー、銀行ならば全国銀行個人信用センターです。

②必要書類を準備する

下記に挙げたような書類を集めましょう。相続放棄の申述書とその他添付書類が必要です。また相続人と被相続人との関係によって必要な書類が変わります。

どの関係でも共通で必要な書類
  • 相続放棄を希望する人の戸籍謄本
  • 被相続人(亡くなった人)の住民票除票もしくは戸籍附票
被相続人との関係で変わる書類
相続人が被相続人の配偶者もしくは被相続人のの場合

→被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)

相続人が被相続人のひ孫といった代襲者(子の代わり)である場合
  1. 被相続人が死亡したことがわかる戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
  2. 被代襲者(本来の相続人)が死亡したことがわかる戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
相続人が被相続人の直系尊属である父母祖父母である場合
  • 被相続人の出生から死亡したときまでの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
    • 加えて、被相続人にすでに死亡している子がいる場合
  • 死亡した子の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
    • 被相続人の相続人より下位の直系尊属の中で死亡している人がいる場合
  • 該当人物の死亡したことがわかる戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合
  • 被相続人の出生から死亡したときまでの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人の直系尊属が死亡していることがわかる戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
    • 加えて、被相続人にすでに死亡している子がいる場合
  • 死亡した子の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
相続人が被相続人のといった兄弟姉妹の代襲者である場合
  • 被相続人の出生から死亡したときまでの戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人の直系尊属が死亡していることがわかる戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被代襲者(元々の相続人)が死亡したことがわかる戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

以上の書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。その他に収入印紙800円分と郵便切手が必要になります。

なお、住所地を管轄する家庭裁判所は裁判所のサイトから確認することができます。
参照元:裁判所-裁判所の管轄区域

相続放棄の申述書は裁判所のサイトから雛形をダウンロードすることができます。また家庭裁判所でもらうことも可能です。

裁判所-相続の放棄の申述書 20歳以上 20歳未満

戸籍謄本は市区町村の役所、役場で取得しましょう。

③家庭裁判所へ必要書類を提出

相続放棄の申述書と必要な添付書類を管轄の家庭裁判所に行って提出しましょう。その際、800円分の収入印紙と郵便切手が必要になります。

④裁判所から照会が来る

書類に問題がなければ裁判所から連絡が来るので回答をしましょう。相続放棄をする理由や対象の被相続人の財産を一切使っていないかの確認に答える必要があります。

もしもこの時点で財産を使ってしまっていた場合、相続放棄は認められず、単純承認と見做されます。

⑤相続放棄へ

回答後、特に問題がないと裁判所から判断されれば無事に相続放棄が成立します。その後、相続放棄申述受理証明書というものが送られてきますので、大切に保管しましょう。なお、この証明書は裁判所で複数枚発行が可能です。

相続放棄が認められれば、相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったという扱いになります。ゆえにその人が存在しないものとして相続分と相続順位が決まります。

申請できる人

原則、相続人本人が行います。相続人が未成年や成年被後見人の場合は法定代理人が申立を行うことになります。成年被後見人とは精神障害などにより判断能力に欠けている人のことをいいます。

どこへ申請すればいいのか?

被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で申請を行うことになります。

民法 第三節 相続の放棄(相続の放棄の方式)第938条

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない

相続放棄には期限があることに注意

相続放棄には期限があることに注意

おそらくいちばん気をつけなければいけないのがこの期限でしょう。

相続放棄が認められるのは3ヶ月以内まで

相続放棄には3か月という期限があります。相続というものは法定相続人の意思ではなく、自動的に発生するもので、したがってマイナスの財産しかなかったとしても、あなたは勝手に相続人になります。

相続を放棄したいときは、相続が開始されてから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。期間中であれば家庭裁判所に申告することで、3ヶ月という期間から延長ができる可能性があります。

民法 (相続の承認又は放棄をすべき機関)第九百十五条

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

3ヶ月の期限が過ぎてしまった場合

通常なら3ヶ月を過ぎてしまったら相続放棄はできませんが、理由によっては相続放棄が認められる可能性があります。もし被相続人が借金を隠していて、相続人がその存在に気づくことができなかった場合、例外的に認められます。

要は先の民法915条の「開始があったときから3ヶ月以内」という文言の解釈を広げた形になります。

相続放棄以外の選択肢|限定承認とはなにか

単純承認はすべての財産を相続することで、相続放棄はすべての財産を放棄することです。100か0かになってしまいますが、選択肢はこの2つだけではありません。

債務整理後に相続するか考えられる

限定承認は相続人になったときに選択できる3つ目の方法です。すべての財産の中から債務整理を行い、プラスの財産からマイナスの財産を引いて余りが出るのならば相続をし、余りが出ない場合は相続しないというものです。

相続放棄のときと同じく3ヶ月以内に管轄の家庭裁判所へ申述する必要があります。限定承認は相続放棄よりしなければいけないことが多いことと、共同相続人全員で申述をしなければいけないせいで、あまり使われていないようです。

相続放棄は代行も可能

弁護士や税理士の事務所にて相談できます。戸籍謄本をあなたに代わって取得できますし、裁判所の申立書の提出や裁判所とのやりとりもしてくれます。3ヶ月しかないことを考えればインターネットで良さそうな事務所を探して、代行サービスを受けたほうが間違いないかもしれません。

【関連記事】相続放棄の相談先とよくある相談例|弁護士に依頼した場合の費用

まとめ

相続放棄は、被相続人が亡くなったときから3ヶ月以内に裁判所に意思を表明しなければなりませんし、書類を集めたり、家庭裁判所へその書類を提出したりする必要もあり、面倒だなと思ってしまうこともあるかと思います。

ですが、思わぬ形で債務を引き継ぐようなことがあってはいけません。人生でそう何回もあることではないですが、しっかり手続きをおこないましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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