労働時間の定義と平均|法律から見たブラック企業の判断基準と対処法

( 1件 )
分かりやすさ
役に立った
この記事を評価する
この記事を評価しませんか?
分かりやすさ
役に立った
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
労働時間の定義と平均|法律から見たブラック企業の判断基準と対処法

労働時間(ろうどうじかん)とは、労働者が会社の指揮命令下において業務に従事する時間のことです。法定労働時間を超えた労働時間は時間外労働といい、通常の労働賃金に対して割増の賃金が支払われます。

今回は、労働時間の定義や残業代を請求できる労働時間についてご紹介します。

残業代請求について弁護士に相談する

電話相談可・初回面談無料・完全成功報酬
の事務所も多数掲載!

北海道・東北 北海道青森岩手宮城秋田山形福島
関東 東京神奈川埼玉千葉茨城群馬栃木
北陸・甲信越 山梨新潟長野富山石川福井
東海 愛知岐阜静岡三重
関西 大阪兵庫京都滋賀奈良和歌山
中国・四国 鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知
九州・沖縄 福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄

労働時間の定義と上限|時間外労働・休日の割増賃

労働時間の定義と上限|時間外労働・休日の割増賃労働基準法では、労働時間を「1日8時間、週40時間以内」と規定しています。しかし、ザブロク協定を結ぶことで残業などの時間外労働が可能になります。

この項目では、労働基準法で定められている労働時間と三六協定での時間外労働の上限、休日の規定などについてご紹介します。

1日の労働時間は8時間まで|法定労働時間と時間外労働

労働基準法では、労働時間を「1日8時間、週40時間以内」にしなければならないとされています。労働基準法で定められている労働時間を法定労働時間といい、労働時間を考える際の原則となっています。

第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法

法定労働時間を超えた時間の労働は、時間外労働として割増した労働賃金を支払わなければなりません。これが、一般的に残業代として支払われる労働賃金です。

第三十七条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法

つまり、1日8時間、もしくは1週間に合計して40時間以上働いた場合は必ず残業代などの割増賃金が支払われます。

残業時間の上限は最大月45時間まで|サブロク協定

労働者に時間外労働をさせる際は、サブロク協定を結ばなければなりません。サブロク協定は労働基準法36条による時間外労働のための協定です。

サブロク協定で規定されている時間外労働の上限は以下のように定められています。残業などの時間がいるどうは、原則として下の表の時間内に収めなくてはならないのです。

一般労働者の時間外労働の上限

1週間

15時間

2週間

27時間

4週間

43時間

1ヶ月

45時間

2ヶ月

81時間

3ヶ月

120時間

1年間

360時間

変形労働時間制の場合の時間外労働の上限

1週間

14時間

2週間

25時間

4週間

40時間

1ヶ月

42時間

2ヶ月

75時間

3ヶ月

110時間

1年間

320時間

 

週1日は休日を与えなければならい|休日の規定

会社は労働時間に関係なく、週1日または月4日以上は休日を与えなければなりません。繁忙期などで連勤になってしまった場合は、週の労働時間が40時間を超えるため割増賃金を支払わなければなりません。

第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
○2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用元:労働基準法

労働時間の平均と「ブラック企業」

労働時間の定義と平均|法律から見たブラック企業の判断基準と対処法

労働者に過酷な長時間労働を恒常的に強いる会社は所謂「ブラック企業」かもしれません。「ブラック企業」の明確な定義はありませんが、過酷な長時間労働となっていないかどうかを判断するには2つのポイントがあります。

  • 平均して1日4時間以上の残業がある
  • 残業について適正な割増賃金の支払がない

時間外労働(残業時間)の月平均は47時間

サラリーマンの平均残業時間は月47時間といわれています。このことから半数近い会社では、サブロク協定の上限近く時間外労働を行なっていることがわかります。

ちなみに、月の出勤日数を22日とすると1日の平均残業時間は2.1時間となります。

月残業時間が80時間以上の場合は危険水域

時間外労働の過労死ラインは月平均残業時間が80時間以上と考えられています。そのため、月80時間(1日平均3.6時間)を超えるような残業が恒常的に続いている場合は危険水域にあるといえるでしょう。

残業代の未払いは違法

残業時間が短い・長いに関わらず、残業代などの時間外手当が未払いの会社は違法です。時間外労働に対する割増賃金は、必ず支払わなければならないのです。

  • 「今月は残業が多かったのに残業代が少ない」
  • 「うちの会社は残業代がつかないと言われた」

上記のような場合は、未払いの残業代がある可能性が非常に高いです。未払いの残業代は会社に請求することで取り戻すことができる可能性があるため、残業代請求をすることをお勧めします。残業代請求の方法は後の項目「残業代が少ない・未払いの時の対処法」でご紹介します。

賃金が発生する労働時間|見落としがちな残業代

賃金が発生する労働時間のポイントは2つあります。

労働時間として認められる業務の判断基準

  • 使用者の指揮命令下に置かれている
  • 業務に従事しているか、いつでも従事できる状態になっている。

上記のようなポイントで考えると、意外と見落としている労働時間があるのではないでしょうか。1日15分程度の労働時間であっても1ヶ月単位で考えると数時間に及びます。

この項目では、以下に当てはまる業務や労働時間についてご紹介します。

通勤時間を除く業務上の移動時間

営業・出張などの外出や事業所から現場までの移動時間などは、業務時間として賃金が発生します。なお、直行や直帰の場合は通勤時間とみなされます。

着替え・道具の整備・体操などの業務上必要な準備時間

現場業務などでは、始業前に着替えや道具の整備、体操を行う場合があります。これらの時間が、業務上必要であり、事業場内で行うことが暗黙の了解となっている場合は労働時間と判断される可能が高いです。

強制参加の研修など教育訓練時間

研修や社内イベントなどで、参加することが強制となっている場合は労働時間とみなされることがあります。なお、研修や社内イベントは業務にどれだけ関係のあることなのかという点が重要になります。

必要があれば直ちに業務に戻らなければならない休憩・仮眠時間

休憩時間や仮眠時間などで、呼び出しなどで直ちに業務に戻らなければならない場合は労働時間にみなされることがあります。

残業代が少ない・未払いの時の対処法

労働時間の定義と平均|法律から見たブラック企業の判断基準と対処法残業代が少ない・未払いの場合は、会社に残業代請求を行うことで取り戻せる可能性があります。残業代請求は以下のような手順で行うことができます。

  1. 労働時間の証拠を集める
  2. 未払いの残業代の計算を行う
  3. 残業代請求書を会社に送付する
  4. 会社から反応がない場合は労働基準監督署に申告

労働時間の証拠を集める

残業代請求を行う際に重要となるのが労働時間の証拠を集めることです。労働時間の証拠は以下のような方法で集めることができます。

タイムカードや業務日報などの記録をコピーしておく

タイムカードや業務日報がある場合はコピーなどを手元に控えておくようにしましょう。タイムカードや業務日報に書いてある労働時間と支払われている給与から計算した労働時間が一致しない場合は、差額を請求することができます。

業務メールの履歴・パソコンのログオン記録を控えておく

  • タイムカードや業務日報で残業を記録させない
  • 会社で残業は許可制または禁止している

上記のような場合には、業務メール履歴・業務用パソコンのログオン記録を控えておくことで労働時間をある程度証明することができます。

もしも会社や上司が労働時間を記録させない場合もパソコンのログオン記録でその時間働いていたことが証明できますし、業務メールの送受信時間い基づいて終業時刻を推認できる場合もあります。

出勤・退勤時刻をメモしておく

出勤・退勤時刻をメモで記録にとっておくということも有力な証拠となります。メモをする際はボールペンなどの消えない筆記具を使用し、手書きでノートなどのすり替えができないもので記録しておくことをおすすめします。

未払いの残業代の計算を行う

労働時間の記録から残業代を計算します。残業代は以下の式で計算することができます。

残業代 =(1時間あたりの労働賃金)×(割増率)×(未払いの時間外労働)

こちらは、勤め先の給与規定や労働契約によって計算の仕方が変わってくるため、特殊な労働制度の場合や正確な金額を計算したい場合は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

残業代請求書を会社に送付する

請求する残業代の金額が決まったら残業代の請求書を会社に送付しましょう。

請求書を会社に送付する際は、まず普通郵便で会社に送付します。このときに送る書面は、支払いをお願いする形にするといいでしょう。

普通郵便を送ったあと反応がない場合は、内容証明郵便で送ります。内容証明郵便とは郵便局が送った書面の内容を保障するサービスで、裁判などの証拠としても有効な方法です。

会社から反応がない場合は労働基準監督署に申告

内容証明郵便での残業代請求をしても会社から反応がない場合は、労働基準監督署に申告します。残業代未払いは労働基準法違反ですので、労働基準監督署で労働問題解決のための指導や調査を依頼することが可能です。

なお、労働基準監督署に相談して解決が難航した場合は、労働審判や裁判など法的措置に移行することになります。

残業時間が長い時の相談先

残業などの労働時間が長いと心身に不調をきたす恐れがあるため、この項目では、労働時間の相談が可能な3つの相談先についてご紹介します。

社内の相談窓口

残業などの長時間労働は、会社が認知しているか(黙認していたか)ということが重要になります。そのため、残業時間が多い際は、まず社内の相談窓口などに報告することをお勧めします。

なお、社内の相談窓口に報告したのにも関わらず、会社が長時間労働への対処を怠った場合は労働基準監督署にその旨を伝えるようにしてください。

労働条件相談ほっとライン

残業時間が多くて困っている、現状の労働時間に異方性があるか相談したいという場合は、厚生労働省が運営している労働条件相談ほっとラインを利用するのもひとつです。

労働条件相談ほっとラインでは無料電話相談を行なっており、夜間・休日なども利用することができます。

【労働条件相談ほっとライン】

TEL:0120-811-610

  • 月〜金曜日17:00〜22:00
  • 土・日曜日10:00〜17:00

労働基準監督署

会社が残業などの長時間労働についての相談に応じない、相談したのに反応がないという場合は、労働基準監督署に相談することも可能です。残業代未払いや慢性的な長時間労働は違法性が高いため、労働時間の証拠を持って労働基準監督署に相談・申告を行いましょう。

まとめ

労働時間は労働基準法やサブロク協定によって規定や上限が細かく決まっています。

また、普段行なっている業務の中には労働時間として判断される時間があり、労働賃金が未払いの場合は残業代請求を行うことができるのです。

この記事で、労働時間に関する疑問が解消されれば幸いです。

残業代請求について弁護士に相談する

電話相談可・初回面談無料・完全成功報酬
の事務所も多数掲載!

北海道・東北 北海道青森岩手宮城秋田山形福島
関東 東京神奈川埼玉千葉茨城群馬栃木
北陸・甲信越 山梨新潟長野富山石川福井
東海 愛知岐阜静岡三重
関西 大阪兵庫京都滋賀奈良和歌山
中国・四国 鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知
九州・沖縄 福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄
数十万~数百万の弁護士費用、用意できますか?

決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。

Cta_merci

離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。

【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】

  • 保険料は1日あたり約96円
  • 通算支払限度額1,000万円
  • 追加保険料0円で家族も補償

保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。

ベンナビ弁護士保険に無料で資料請求する

KL2020・OD・037

この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

この記事を見た人におすすめの記事

newブラック企業の新着コラム

もっと見る

ブラック企業の人気コラム

もっと見る

ブラック企業の関連コラム

編集部

本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。

※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
 詳しくはあなたの弁護士の理念と信頼できる情報提供に向けた執筆体制をご覧ください。

※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。