当番弁護士と国選弁護人の違い|役割や依頼方法を解説

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
当番弁護士と国選弁護人の違い|役割や依頼方法を解説

家族や身近な方が逮捕されてしまったのであれば、

  • 当番弁護士
  • 国選弁護人
  • 私選弁護人

のいずれかに依頼することができます。たとえ凶悪な事件を起こした被疑者であっても、憲法によって弁護士を付ける権利が認められています。

何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

引用元:日本国憲法第34条

特に、当番弁護士と国選弁護人には、国の制度としてすぐに弁護士費用が用意できない状況の方でも、無料で相談できるようになっています。

今回は、そのような当番弁護士と国選弁護人の違いと、どのような状況で利用できるのかについてご説明していきたいと思います。

 

当番弁護士

国選弁護人

呼べるタイミング

逮捕後から勾留期間終了まで

勾留後

呼ぶ条件

特になし

貧困その他の理由で弁護士に依頼できない

やってくれること

  • 1度のみの接見
  • 法的アドバイス
  • 今後の流れ説明
  • 私選弁護人と同じ弁護活動をしてくれる

費用

無料

原則として無料

当番弁護士と国選弁護人の役割

当番弁護士と国選弁護人の役割
それでは、当番弁護士と国選弁護人にはどのような役割があるのでしょうか。こちらでは、それぞれの役割についてご説明していきます。

当番弁護士制度とは|当番弁護士がやってくれること

当番弁護士制度とは、刑事事件で逮捕されてしまった人が一度だけ無料で弁護士を呼べる日本弁護士連合会(日弁連)が設けている制度です。

当番弁護士ができること

当番弁護士の弁護活動は、

  • 被疑者との接見(面会):初回のみ無料
  • 取り調べや今後の流れのアドバイス

あくまでも無料ですので、行ってくれる弁護活動は上記2つ程度であり、限りがあります。突然逮捕されて、どうすればいいのかわからない状態の方が利用します。

当番弁護士の呼び方

当番弁護士は、逮捕後から勾留期間終了までであれば簡単に呼べます。

被疑者本人が警察官に直接「弁護士を呼んでください」と伝えるだけで呼べますし、日弁連の「当番弁護士連絡先一覧」から、逮捕された方のご家族の方が呼ぶこともできます。

繰り返しますが、当番弁護士を呼ぶのにお金はかかりません。

国選弁護人とは|国選弁護人がやってくれること

国選弁護制度とは、貧困その他の理由から刑事事件の弁護を依頼できない被疑者・被告人の弁護人選任権を保障する制度です。

法テラスを運営している「日本司法支援センター」が主な業務を担っています。

国選弁護人ができること

国選弁護人は、依頼者が弁護士費用を支払って依頼した『私選弁護人』と同じような弁護活動を行ってくれます。主な弁護活動は以下のようなものがあります。

  • 被害者との示談交渉
  • 検察や裁判官とのやりとり
  • 刑事裁判への出廷、弁護
  • 被疑者家族との連絡
  • 準抗告など処分に対する異議申立て
  • その他、早期釈放や不起訴、無罪を証明するための弁護活動

国選弁護人を呼べるケース

①貧困・その他理由から弁護士に依頼できない

国選弁護人は、『貧困などの理由で弁護士に依頼できない』ときに利用する制度です。例えば、貯蓄などを含めた資産が50万円未満の場合はこれに該当します。
また資力要件を満たさない場合でも、弁護士会を通じて私選弁護人を選任できない場合は、国選弁護人を選任できます。

②勾留が決定している

国選弁護人制度は、勾留決定以降にしか利用することができません。
逮捕から勾留請求まで、最大72時間ありますが、その間は国選弁護人を呼んでもらうことができません。
逮捕されてすぐの状況であれば、まずは当番弁護士を呼んでください。

被疑者国選弁護人と被告人国選弁護人の違い

国選弁護人は大きく分けると『被疑者国選弁護人』と『被告人国選弁護人』があります。刑事事件の流れの中で、起訴される前の被疑者か起訴後の被告人かの違いです。

起訴前の被疑者国選弁護人は、従前、対象事件が限られていましたが、2018年6月から『勾留状が発せられているすべての事件』が対象となりました。

被告人国選は基本的に公判請求事件の場合は全件選任されると考えてOKです。

当番弁護士と国選弁護人の3つの違い

上記で述べたことをまとめて、それぞれの違いについて解説していきます。

呼べるタイミングが違う

呼べるタイミングが違う
当番弁護士は逮捕された後すぐに呼ぶことができますが、国選弁護人は勾留された後でないと呼ぶことができません。

呼べる条件が違う

当番弁護士は1回であればどのような被疑者でも呼ぶことができます。国選弁護人には貧困・その他の理由から弁護人を選任できないという条件があります。

取り扱える業務が違う

当番弁護士は一度の接見のみですので、法的アドバイスなどにとどまるでしょう。国選弁護人は私選弁護人と同じような働きをしてくれます。

不起訴を目指す、無実を証明する弁護活動もできるのです。

刑事事件では状況に応じて弁護士を使い分ける

刑事事件では状況に応じて弁護士を使い分ける

このように、当番弁護士と国選弁護人の役割は明確な違いがあります。さらには、弁護士費用を払えば私選弁護人にも依頼できるのです。

もしも身近な方が逮捕されてしまったのであれば、状況に応じて依頼する弁護人を選択してください。

こちらでは、どのような状況の方が当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人に相談すればいいのか解説します。

当番弁護士を呼ぶべき人

逮捕直後、状況がまったく把握できていない人はまず当番弁護士を呼んでください。

当番弁護士は法的アドバイスをする程度かもしれませんが、逮捕されて右も左も分からない被疑者にとって、弁護士が味方してアドバイスしてくれることは非常に心強いことです。

また、刑事事件ではスピードが重要です。

弁護士を呼ぶつもりはなかったという方も、当番弁護士制度は無料で簡単に利用することができますので、利用しない手はありません。

早い段階で弁護士との接触を図りましょう。

《当番弁護士を呼ぶべき人》
  • 逮捕後すぐの人
  • 状況が把握できていない人
  • 逮捕されて今後が不安な人

国選弁護人を呼んでもらうべき人

国選弁護人を呼んでもらうには条件があることはお伝えしましたね。貧困・その他の理由から弁護士に依頼できないような方は、国選弁護人を選任してもらうことを検討してください。

《国選弁護人を呼ぶべき人》
  • 貧困などの理由で弁護士に依頼できない人

刑事事件の早い対応は私選弁護人を検討しよう

逮捕直後の人は当番弁護士、私選弁護人の選任が困難な人は国選弁護人を呼びます。

多少費用が掛かってしまいますが、早い段階で刑事事件の解決に向けて動き出したい方は、私選弁護人に依頼をすることも考えてください。

事件内容などにもよりますが、刑事事件での弁護士費用相場は70万円程度といわれています。

弁護士を依頼する場合の費用についての詳細は以下の記事をご覧ください。

私選弁護人とは?|私選弁護人がやってくれること

それでは、私選弁護人はどのような働きをしてくれるのでしょうか?上記でもお伝えしましたが、国選弁護人と弁護活動はほとんど変わりません。

被疑者(被告人)の早期釈放や不起訴獲得、刑の軽減などを目指して、

  • 被害者との示談交渉
  • 検察や裁判官とのやりとり
  • 刑事裁判への出廷、弁護
  • 被疑者家族との連絡
  • 準抗告など処分に対する異議申立て
  • その他、早期釈放や不起訴、無罪を証明するための弁護活動

などを行ってくれます。国選弁護人と違う点は、勾留されていなくても逮捕される前からでも依頼することができるという点です。

また、逮捕後すぐには当番弁護士しか呼べませんが、刑事事件を本気で解決させたい人は私選弁護人に早くから依頼しておくのが得策です。

事件にもよりますが、逮捕される前に被害者との示談によって和解するなどの方法もとれます。

私選弁護人は選ぶことができる

さらに、国が担当の弁護士を選任する国選弁護人とは違い、私選弁護人はあなた自身で弁護士を選ぶことができます。

弁護士費用は決して安くはありませんから、私選弁護人を選ぶ際は失敗したくないですよね。選び方のコツを知っておきましょう。

また、最近では初回の無料相談を実施している弁護士事務所も多いので、事件にかかわってしまいどうしたらいいのかわからない状態でも、当番弁護士のような感覚で、弁護士に相談してみましょう。

当番弁護士と国選弁護人の依頼方法

当番弁護士と国選弁護人の依頼方法

当番弁護士と国選弁護人は好きな弁護士を自由に選ぶことはできません。
ここでは、当番弁護士と国選弁護人の選任方法を解説します。

当番弁護士の依頼方法

もし、ご家族が逮捕されてしまったような場合に、あなたが当番弁護士を呼ぶのであれば、逮捕された管轄の弁護士会に電話をして、当番弁護士を呼びたい旨を伝えてください。

被疑者が当番弁護士を呼ぶ方法は、簡単。
逮捕後に警察で『当番弁護士を呼んでほしい』と伝えるだけで、警察から連絡がいき、当番弁護士が接見に来てくれます。

国選弁護人の依頼方法

国選弁護人を選任してもらう方法はこちらです。

被疑者国選弁護

勾留質問時に裁判官へ希望する旨を伝える

勾留期間中に留置施設の警察官に国選弁護人の希望を伝える。

被告人国選弁護

公判請求された段階で弁護人がいない場合、裁判所が職権で付す。

被疑者国選弁護を選任してもらうには、裁判所で行われる『勾留質問』時に、裁判官へ選任希望を伝えるか、勾留後に留置場の警察官に伝えます。

被告人国選弁護の場合は、公判請求された時点で弁護人が選任されていなければ、裁判所が職権で付しますので、特に手続きは不要です。

国選弁護人を選任してもらう方法や、選任タイミングについてさらに詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。

まとめ

当番弁護士と国選弁護人の違いがおわかりいただけたのではないでしょうか。
逮捕されてすぐのどうしていいかわからない状態の方は、ぜひ当番弁護士を呼んでください。

どうしても弁護士費用が捻出できないという方は、国選弁護人に依頼することもできます。

一方で、費用がある方は、穏便に解決させるためにも私選弁護人を探してみてもいいでしょう。

いずれにしても、事件を起こして逮捕されてしまった人にも弁護人をつける制度がきちんと整っていますので、利用するようにしてください。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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