国選弁護人を選任する条件|選任方法から弁護士の種類別選び方まで

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
国選弁護人を選任する条件|選任方法から弁護士の種類別選び方まで

国選弁護人(こくせんべんごにん)を選任する条件とは一体何でしょうか。その条件とは、逮捕・勾留された被疑者・被告人が金銭的事情等で弁護士に依頼できない場合です。

刑事訴訟法と日本国憲法に定められており、国選弁護人を利用した際にかかる費用は国が負担することになっています。

第三十六条 被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
引用元:刑事訴訟法第36

○3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
引用元:日本国憲法第37

仮に事件を起こした加害者であったとしても、平等に弁護を受ける権利が与えられていることから、国選弁護人制度は設けられているのです。

国選弁護人には起訴前に選ばれる「被疑者国選弁護」起訴後に選ばれる「被告人国選弁護」の2種類があります。

この記事では、国選弁護人の具体的な選任条件を中心に、弁護内容や選任方法などの基礎知識について解説します。

国選弁護人の具体的な選任条件

はじめに、国選弁護人の具体的な選任条件について解説します。

資産が50万円以下の人

1つ目は、被疑者や被告人の資産額が50万円未満であることです。金額の根拠は法務省の策定する政令に基準額を50万円とするとの定めがあります。

そのため、資産が50万円未満であることが国選弁護人を選任する1つの条件となっているようです。

(2) 資力基準を50万円以上とすることについて
標準生計費を低めの1月分(33万円)とし,弁護士報酬についても低めの着手金(20万円)に限定した上で基準額を設定することとし,これらを 踏まえて資力基準を50万円としたのは一応の合理性が認められるものと考える
引用元:法務省刑事局

虚偽申告の場合は10万円以下の過料となる

ちなみに、虚偽の資産額を申告した場合、刑事訴訟法第38条4に基づいて、10万円以下の過料(金銭罰)とされています。

第三十八条の四 裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。
引用元:刑事訴訟法:第38条4

必要的弁護事件|弁護人の選任が裁判の条件のもの

国選弁護人は、被告人に弁護士が選任されていないと裁判ができない場合も利用できます。具体的には以下のような場合です。

  1. 法定刑が死刑または無期懲役
  2. 法定刑が長期3年以上(※)の懲役や禁錮に該当するもの
  3. 即決裁判手続きとなる事件
  4. 公判前整理手続きまたは期日間整理手続きとなった事件

第二百八十九条 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
引用元:刑事訴訟法289

※長期3年を超える犯罪はこちらです。

  1. 窃盗
  2. 傷害
  3. 業務上過失致死
  4. 詐欺
  5. 恐喝

上記のような犯罪が、該当します。

もっとも、このような重大事件でなくとも公判請求(裁判)の場合は、基本的には全件で弁護人が選任されています。

国選弁護人を選任してもらうメリット・デメリット

国選弁護人を選任してもらうメリット・デメリット
国選弁護人を選任するメリット、デメリットについて解説します。

メリット

メリットは何といっても、弁護士費用を国が負担してくれることです。

また、あなたが自由に選ぶことができる『私選弁護人』と同じように、法律に基づいて弁護活動をしてくれることもメリットに挙げられます。

弁護士費用を国で負担してくれる

弁護士費用は原則として国が負担してくれます。もっとも、裁判所の判決で国選弁護費用を被告人負担とするケースもないとはいえません。

私選弁護人と同じように弁護活動をしてくれる

国が費用負担をしてくれますが、私選弁護人と同じような弁護活動をしてくれます。

デメリット

国選弁護人を選ぶデメリットは、自分で弁護士の指名ができないという点です。

今後の人生を大きく左右する問題ですから、本来、あなたを守ってくれる弁護士は慎重に選びたいと考えるものです。

しかし、国選弁護人は、裁判所が選任するため、あなたが弁護士を指名することはできません。

したがって、相性があまりよくないと感じる弁護士が選任される可能性もあります。

弁護士の種類に応じた活用方法

刑事事件で依頼できる弁護士には3つの種類があります。シチュエーションに応じてどのように活用すればよいのか確認していきましょう。

私選弁護人

自分で探し依頼した弁護士

当番弁護士

逮捕された被疑者が1回だけ無料で相談できる弁護士制度

国選弁護人(被疑者国選)

勾留された被疑者で弁護士を呼べない人が利用できる制度(被疑者国選対象事件のみ)

費用を負担できないけど弁護士を選任したい|国選弁護人

「弁護士を選任したいが、弁護士費用を負担できない…」という方は、国選弁護人を利用しましょう。

1日でも早く事件を解決させたい|私選弁護人

「示談成立を目指し、1日でも早く事件を解決させたい!」などしっかりとした目的がある方におすすめしたいのが、私選弁護人です。

刑事事件に精通した私選弁護人であれば、おのずと早期解決に向けてすばやく示談交渉を行ってくれるでしょう。

相性のよい弁護士に依頼・変更したい|私選弁護人

相性のよい弁護士に依頼または変更したい場合、私選弁護人を選択する方法しかありません。

弁護士費用がかかりますが、納得のいく解決を目指すためには、信頼のおける弁護士に依頼することも大切です。

逮捕直後に今後の流れなどについてアドバイスを無料で受けたい|当番弁護人

逮捕直後は、これから何をどうすればよいのかと頭を悩ませてしまうものです。今後の流れや、何をすべきかなどについて相談したい場合は、当番弁護人を選びましょう。

国選弁護人とは違い、逮捕後からすぐに利用することができます。

国選弁護人の依頼方法

国選弁護人は、私選弁護人と違い、被疑者や被告人、ご家族が、好きな弁護士を自由に選ぶことはできませんが、希望することで、国が選任してくれます。

被疑者国選を希望する場合は、裁判所で行われる勾留質問時に裁判官へ、被告人国選を希望する場合は、起訴後に留置場の警察官へ、選任希望の旨を伝えれば、選任してもらうことができます。

(国選弁護人等の候補の指名及び通知等)
第三十八条 裁判所若しくは裁判長又は裁判官は、刑事訴訟法又は少年法の規定により国選弁護人等を付すべきときは、支援センターに対し、国選弁護人等の候補を指名して通知するよう求めるものとする。
引用元:総合法律支援法第38条1

国選弁護人を選任する際に役立つ知識

国選弁護人を選任する際に役立つ知識
最後に、国選弁護任を選任してもらう際に役立つ知識について解説します。

国選弁護人の変更はできない|変更は私選弁護人を選任

選任された国選弁護人の変更はできません。万が一、相性が良くないなどの理由で弁護士を変えたい場合、私選弁護人への依頼となります。

国選弁護人の選任は勾留後または起訴後

国選弁護人の依頼は、逮捕後すぐにできるものではありません。実は勾留後または起訴後と定められているのです。ご自身やご家族が好きなタイミングで弁護士を依頼したい場合は、私選弁護人に相談・依頼ことになるでしょう。

まとめ

国選弁護人は、お金がないため弁護士に依頼できない場合にはおすすめできますが、事件の早期解決を目指すなら私選弁護人を選ぶのが得策でしょう。

あなたの弁護士からも、刑事事件に精通した弁護士を探すことができますので、ぜひ参考にしてみてください。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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