ネット通販で詐欺に遭ったら|お金を取り戻すための4つの手順を解説

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
ネット通販で詐欺に遭ったら|お金を取り戻すための4つの手順を解説

「お金を振り込んだのに(あるいはカードで精算したのに)商品が届かない!」「メールの返信がない上に、通販サイトに会社の情報がなかった!」「遅れてるなどの理由をつけて商品が発送されない!」など心当たりがあるあなた、もしかしたらそれはネット通販の詐欺かもしれません。

上記3つに当てはまる場合は早めに警察と銀行へ相談しましょう。

素早く行動をすることで振り込んでしまったお金を取り戻せるかもしれません。

この記事ではネット通販で詐欺に遭ってしまった場合の対処法と、詐欺の疑いがある通販サイトの見抜き方を解説していきます。

ネット通販詐欺からお金を取り戻す4つの手順

ネット通販詐欺からお金を取り戻す4つの手順まずすべきは警察への通報と銀行への相談です。

警察に詐欺被害の届出を行い、警察が詐欺に関係する口座であると判断した場合、警察は銀行に通知して犯罪利用口座を凍結させます。

その後、被害者側で振り込め詐欺救済法(※)に基づく手続きを履践すれば、凍結された犯罪利用口座の残高から犯罪被害金の全額または一部を回収できる可能性があります。

ここでは被害金を取り戻すための手順を解説していきます。

犯罪利用口座に振り込んでしまったお金は犯人がその日のうちに引き出してしまうことが多いので実際に回収することは困難な場合がほとんどです。

しかし、早め早めの行動によってお金が戻ってくる可能性はあります。

※振り込め詐欺救済法とは
振り込め詐欺に遭ってしまった被害者が少しでも被害金の回復ができるよう被害金を取り戻す手続きに関して定められた法律です。

手順1:警察へ被害届を提出する

まずは警察へ被害届を提出しましょう。警察はお近くの警察署でもいいですし、都道府県に設けられたサイバー犯罪対策窓口へ相談することも可能です。

警察署へ行く際は、下記の物証や情報をまとめておくとスムーズに進められます。

  • 商品を購入した画面の画像や印刷したもの
  • 振り込みの控えやメールのやりとりなどの物証
  • 被害に遭った経緯(日時・場所・時系列)
  • 被害金額(品名・数量)
  • 被害に遭ったサイトのURL・口座名義

この際、警察に対しては『詐欺の被害に遭ったので被害届を提出したいこと』『振り込め詐欺救済法に基づく対応を希望すること』を伝えることも有用でしょう。

事件として立件するかどうか、振り込め詐欺救済法に基づく凍結処理を行うかどうかは最終的には警察側の判断によりますが、被害者として意思を明確に伝えることが大切です。

手順2:銀行やカード会社に相談する

被害届を提出後は振込先の銀行やカード会社へ相談しましょう。

振込先の銀行に相談することで、同様の被害がないか調べ、銀行の判断で口座を凍結してくれる場合もあります。

銀行へ相談する際は、すでに警察に被害届を提出している旨や口座凍結を検討してほしい旨を一緒に伝えましょう。

犯罪利用口座は、銀行が顧客の預金を守るために加入している“預金保険機構”のサイトからも調べられます。

また銀行によってはホットラインを設けているところもありますので、そちらを利用してもよいでしょう。

クレジットカード決済はカード会社へ相談する

クレジットカード決済をしてしまった方もただちにカード会社へ連絡をしましょう。

通販サイトの画面からクレジットカードの情報を入力して決済をしてしまった場合は、情報を抜き取られている(フィッシング詐欺)可能性があります。

上記の内容をカード会社へ相談し、場合によってはカード番号を変更あるいは解約を行う必要があるかもしれません。

手順3:会員情報を削除・個人情報を変更する

詐欺サイトで会員登録を行ってしまった場合、あなたの個人情報は詐欺の加害者に渡ってしまっていると考えられます。可能であれば会員情報を削除してください。

郵送先の項目などで登録してしまった住所を変更することは難しいですが、電話番号やメールアドレスなどの個人情報であれば変更してしまいましょう。

手順4:預金保険機構のサイトで情報を確認する

預金保険機構は犯罪利用口座を調べるだけでなく、振り込め詐欺から、ネット上の詐欺に関して、口座の凍結や被害金の分配などについて公開しています。

下記の画像は預金保険機構の振り込め詐欺救済法に基づく公告のページです。緑の枠内で被害に遭った口座の情報を確認することができます。

手順4:預金保険機構のサイトで情報を確認する

被害金が返ってくるまでの流れ

被害金が返ってくるまでの簡単な流れは下記の通りです。

  1. 被害届の受理や金融機関の判断により犯罪利用口座が凍結される
  2. 口座の名義人に対し、口座利用の権利消滅を告知
  3. 名義人から連絡がなければ名義人の権利が消滅
  4. 銀行から被害者へ、被害金分配の案内が届く
  5. 被害金の割合に応じてお金が返金される

上記の流れは、前述した預金保険機構の振り込め詐欺救済法の公告(こうこく)から確認できます。

ここでは被害金が分配されるまでの流れを解説していきましょう。

1:取引停止等の措置

被害届の受理や、金融庁からの通達、あるいは銀行の判断により、取引停止等の措置がなされます。(振り込め詐欺救済法 第4条)

取引停止等の措置とは、犯罪利用口座の凍結を指し、犯罪に利用されたと考えられる口座を利用できなくすることで、口座にある被害金を保護します。

素早く凍結に持ち込むことで、被害金の返金が期待できるかもしれません。

被害を受けてから時間が経過してしまっていても、同じ口座で被害を受けた人の届け出により凍結されるケースもありますので、諦めずに被害届を出しましょう。

2:債権消滅の公告(失権手続)

債権消滅の公告(こうこく)とは、口座使用の権利消滅を名義人に対して告知することをいいます。(振り込め詐欺救済法 第5条)

例えば、詐欺を行った人が他人の口座を不正に利用しているケースもあるため、このような告知が行われます。

公告期間は、名義人にも十分な余裕を与えるために『60日以上』設けると定められています。(振り込め詐欺救済法 第5条2項)

設定された期間内に権利行使の届け出がなければ、権利は消滅します。

下記の画像は預金保険機構の公告が表示されているページで緑の枠内が公告です。

2:債権消滅の公告(失権手続)

公告から60日以上、口座の名義人から権利行使の届出書がなければ、口座の残金の権利は消滅します。(振り込め詐欺救済法 第7条)

3:権利消滅・支払手続き

振込先の銀行に所定の手続きにより被害申告をしている場合、権利消滅後に銀行から被害金分配の手続きをとるよう案内が届きます。

権利消滅後に被害金の支払いを受けるには、被害を受けた口座の銀行に支払い申請をしなければなりません。

支払い申請の受付期間は、公告から30日間以上とされています(振り込め詐欺救済法 第11条2項)ので、預金保険機構のサイトをこまめに確認し、必ず申請を行うようにしましょう。

下記の画像の緑の枠内にある“支払手続開始”の項目から、支払い申請期間と、該当口座を確認することができます。

3:権利消滅・支払手続き
振り込め詐欺救済法に基づく公告のページからであれば、被害を受けた口座から検索することも可能です。

注意点|支払い額

口座の残高が1,000円未満である場合、振り込め詐欺救済法の適用外となり、被害金は戻ってきませんので、注意が必要です。(振り込め詐欺救済法 第8条3項)

仮に残高があっても、被害届を提出した被害者それぞれの被害額の割合に応じて返ってくる額が決まります。

詐欺犯が被害金にまったく手をつけていないのであれば、全額戻ってくるかもしれませんが、満額が戻ってくるという可能性は極めて低いことを留意しておきましょう。

4:被害者への分配

振り込んでしまった口座の銀行からの連絡や、預金保険機構のサイトの公告から支払手続きを確認したのであれば、申請期間内に支払い申請を行ってください。

申請方法は、『被害回復分配金支払申請書(申請書)』『本人確認書類』『振り込みの事実を確認できる資料』を、該当銀行に郵送するか、直接申請をしに行くことになるでしょう。

『被害回復分配金支払申請書』は、預金保険機構のサイトからPDFなどで直接印刷するか(こちらからも可能)、銀行に連絡をして郵送してもらうか、直接銀行で入手して記入します。

※図:預金保険機構のサイトからダウンロードする方法

4:被害者への分配実際に支払いが終了すると下記のような公告がなされます。

4:被害者への分配

実際に被害金が戻ってくるまでの期間

実際に被害金が戻ってくるまでの期間は90日以上かかるとされています。

権利消滅の公告がなされ、口座の名義人の届出受付期間が60日以上、被害金の支払い申請受付期間が30日以上とされているからです。

実際に被害金が戻ってくるまで、辛抱強く待つ必要があります。

詐欺サイトの特徴7つ

詐欺サイトの特徴7つここでは詐欺サイトの特徴をご紹介します。該当するサイトでは購入をしない、あるいは該当事項を必ず確認するようにしてください。

特徴1:サイトに必要な情報が記載されていない

ネット通販のサイトには、原則特定商取引法(以下、特商法)に基づく以下の事項の記載が義務づけられています。

  • 事業者の氏名(名称)
  • 住所
  • 電話番号
  • 販売業者の責任者名
  • 販売価格
  • 商品の送料
  • 商品引渡時期
  • 支払方法
  • 支払期限

特商法とは、消費者が悪徳業者に騙されないよう、業者に対し違法行為や義務を定めた法律です。

例えば“Amazon”の場合であれば下記のように明記されています。

特徴1:サイトに必要な情報が記載されていない商品の購入時には、返品が必要なときなどのこともしっかり考え、返品先や連絡先なども確認することでトラブルを回避できるでしょう。

補足|会社情報は本物か

会社情報がしっかり記載されていても、実は事業を行っていない、存在していない、他社の情報をコピーして掲載しているなどのケースもあります。

検索エンジンなどで検索し、本当に通販サイトを運営しているのか、実在する企業なのか確認するとよいでしょう。

また電話番号の記載があれば、問題ある業者でないか電話番号の口コミサイトなどから調べることもできます。

特徴2:連絡用のメールアドレスがフリーメールアドレス

一般的な企業であれば、連絡先にフリーのメールアドレスを使用することは考えられません。

フリーのメールアドレスとは、Yahoo!やGoogleなどでIDさえあれば誰でも簡単に作成可能な無料のメールアドレスのことです。

使い捨て可能なフリーのメールアドレスを使用している企業は信用しないほうがよいでしょう。

特徴3:商品が不自然に安い

商品を安く購入したい消費者心理を狙い、本来考えられないような値段をつけている、他では売り切れの商品を掲載しているサイトは要注意です。

また、発送元が自宅から遠方なのに送料がかからないといったことも、通常では考えられません。おいしすぎる話には裏があると考える必要があるでしょう。

特徴4:サイトのデザインや取引メールの文章がおかしい

サイトのデザインで、日本語が不自然、見慣れないフォントを使用している、文字化けしている、あるいは送られてきたメールの文章がおかしいのも詐欺サイトの特徴です。

詐欺サイトを運営しているのが、外国人などの場合上記のような特徴が見られます。

また大手サイトの作りをコピーして見分けがつかないようにしている場合もありますので注意が必要です。

特徴5:振り込み方法は銀行振り込みのみ

ネット通販詐欺は、決済方法が銀行への振り込みのみである点が大きな特徴として挙げられるでしょう。

クレジットカード払いにすると、現金を手にする前にカード会社から取引を停止される可能性がありますし、代引きだと被害者が現金を支払わない可能性があるためです。

サイトには最初から銀行振り込みのみ、あるいは他の決済を選択できても、通信エラーなど理由をつけて銀行振込しかできないようにしてくるパターンもあります。

特徴6:振込先口座の名義人が個人名

振込先口座の名義人が個人名、あるいは日本人ではないなども詐欺の可能性があります。

法人口座は安全である、口座名義が個人名であるからすべて詐欺だ、とは限りませんが、上記の特徴が見られるのも事実です。

例えばご紹介した特徴にいくつか合致しており、なおかつ口座名義が個人名であったなどの場合は、購入しないほうがよいかもしれません。

預金保険機構のサイトで、犯罪利用口座として記載されていることも考えられますので、口座番号から検索して調べることも可能です。

また注文直後に不審な通販業者であると感じた場合は警察や国民生活センターなどに相談してみましょう。

特徴7:メールでのやり取りが不自然で時間稼ぎをされる

商品が届かないので、記載されていたメールアドレスに連絡をしたら返信はあるものの不自然な日本語だったり、理由をつけて発送されなかったりといった場合は、詐欺の可能性が高いと考えられるでしょう。

すぐに警察と銀行に相談してください。

その他実際にあった手口

すべての特徴に当てはまらなくても、下記のような事例もあるため注意が必要です。

  1. 代引きが可能だったので代引きにしたら、注文していない商品あるいは粗悪品が届いた。
  2. “価格ドットコム”に記載されていたので利用したら詐欺サイトだった。
  3. 商品を購入し、友人宛に送った。サプライズのつもりだったのですぐには確認しなかったが、結局商品は送られていなかった。

このようなトラブルも確認されていますので、安易に信用せず7つの特徴を確認する、届け先に確認するようにしましょう。

まとめ|顔の見えない取引だからこそ慎重に

ネット通販は非常に便利ですが、顔の見えない相手との取引だからこそ慎重になる必要があります。

ついつい値段だけを重視しがちですが、安価な商品には思わぬ落とし穴があるかもしれませんので、おいしい話には注意しましょう。

詐欺サイトの特徴がなくとも、注文した商品が掲載されている写真と全然違うなどのトラブルも考えられます。

購入する際は必ず、返品可能か、キャンセル可能か、キャンセル料は発生するのかなども確認しましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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