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KL2020・OD・037
相続放棄申述受理証明書(そうぞくほうきしんじゅつ-じゅり-しょうめいしょ)とは、家庭裁判所の発行する「相続放棄申述が受理された」ことの証明書です。
相続放棄申述が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」というものが送られてくるため、大抵の相続手続きはこの「通知書」を利用すれば済むようになっていますが、一部の相続手続きに関しては、相続放棄の「証明書」を取得し添付しなければならないとされています。
今回は、相続放棄申述受理証明書が必要になる場面と、証明書の取得方法についてご紹介いたします。
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目次
相続放棄申述受理証明書は、その名の通り「相続放棄の申述が受理されたという証明書」のことをいい、相続放棄申述をすると自動的に必ずもらえるものではなく、家庭裁判所に発行を申請して取得する証明書になります。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をした本人と、利害関係人だけが申請・取得できる証明書ですが、書いてある内容は「被相続人の氏名と本籍」、「放棄をした申述人の氏名と放棄の事件番号および申述を受理した日」、「証明書の発行日と発行した裁判所書記官」という非常にシンプルなものになっています。
(※下部余白省略|基本的にはA4縦置きで下半分が余白というフォーマットで届くかと思います。)
まずは、相続放棄申述受理証明書が必要になる場面について、具体例をご紹介いたします。
相続放棄の申述を行い、それが無事に受理されれば「相続放棄申述受理通知書」というものが家庭裁判所から送られてきます。
(※下部備考・余白省略|縦置きA4用紙で届くかと思います。)
相続放棄をした本人は、相続放棄によってその相続の初めから相続人でなかったものとして扱われることになり、一切の権利義務を承継しません。しかし、相続放棄が受理されたという事実は、申述人本人にしか通知されませんから、被相続人の債権者などが放棄した本人に対しても債務の支払いを請求してくる場合があります。
そこで、放棄した本人としては、債権者等に「相続放棄申述受理通知書」を見せたり、コピーして渡す必要が出てくるわけですが、中には通知書でなく家庭裁判所の発行した証明書の提示や交付を求めてくる債権者等もいるかと思います。
したがって、放棄者本人が相続放棄申述受理証明書を必要とする場面としては、債権者等への対応を行うケースが考えられます。
相続放棄をした相続人本人は、放棄の手続きが済めばその他の相続手続きに関与する必要はありません。
しかし、放棄をしていない他の相続人は、相続手続きを進める際に「相続放棄をした相続人がいる」ことの証明書等の添付を求められることが多いことから、相続放棄申述受理証明書を取得する必要が出てくる場合があります。
例えば相続によって取得した被相続人名義の不動産の所有権移転登記を行う場合、相続人の中に相続放棄者がいるケースでは、登記申請書・戸籍全部事項証明書・遺言書や遺産分割協議書など相続に関する書類等の他に、相続放棄申述受理証明書の添付も求められます(相続放棄申述受理通知書はNG)。
また、金融機関等で預貯金の名義変更を行う場合にも、この証明書の添付が求められる場合があります。
したがって、相続放棄者以外の相続人が相続放棄申述受理証明書を必要とする場面としては、公的機関等への相続手続きを行うケースが考えられます。
相続放棄申述受理証明書を取得できるのは、「相続放棄をした本人」と「利害関係人」に限られ、単なる興味本位などで友人や知人がこれを取得できるわけではありませんので、ここで証明書を取得できる人の要件を整理しておきたいと思います。
相続放棄申述を行った本人は、自己の相続放棄申述受理証明書を取得する権限を有します。申述受理通知書にもその旨が記載されており、所定の申請書を利用し1通あたり150円分の収入印紙を納付すれば、申述受理証明書が交付されることになります。
ただし、相続放棄申述が受理された後で、同じ被相続人について同様に相続放棄した他の相続人の申述受理証明書を取得することは、原則としてできないとされています。
例えば配偶者と子2人の3人全員が相続放棄をし、配偶者が自己の申述受理証明書と子2人分の申述受理証明書をまとめて交付申請することはできないのです。
この場合、子2人がそれぞれ自己の証明書の交付申請を行うことができますから、多少面倒でも別々に手続きをしなければなりません。子が幼いなどの事情がある場合は定かではありません。
ただ、例外的に相続関係以外の利害関係がある場合は他の相続人の申述受理証明書の交付申請ができる可能性があるとされているので、詳しくは家庭裁判所に問い合わせるのが良いかと思います。
相続放棄をするとその相続について一切の利害関係を有さないことになりますので、後述する利害関係人からの請求という形でも本人が他の相続人の申述受理証明書を取得することはできないと考えておくのが良いでしょう。
相続に関して利害関係を有する人は、相続放棄申述受理証明書の交付申請をすることができるとされています。
例えば被相続人の債権者や他の相続人などが利害関係人の典型例となりますので、相続放棄した人が申請書を渡してくれない場合や、相続人間が不仲でお互いの行動に干渉したくない場合などは、利害関係人として相続放棄申述受理証明書を取得することも選択肢のひとつになります。
この利害関係人には、自然人だけでなく法人も含まれ、債権回収会社なども適法に相続放棄申述受理証明書の交付申請を行うことができます。
また、相続人以外の関係者である受遺者や相続分の譲受人など「法律上の利益を有する人」も含まれるので、放棄した相続人本人からの協力が得られない場合には、現在相続に関わる人が積極的に行動したほうがスムーズかもしれません。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申述を行った家庭裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に対して交付申請を行わなければならないため、窓口のほか、郵送での交付申請も利用できるようになっています。
ここでは、相続放棄申述受理証明書の交付申請方法について、窓口申請と郵送申請の詳細と、申請の際に必要な事件番号の調べ方をご紹介いたします。
相続放棄申述受理証明書の交付申請に必要な書類は、放棄者本人の場合と利害関係人の場合とで若干異なっています。そのため、申請前にどちらの立場で申請を行うのかをよく確認し、漏れなく書類を揃えることが大切です。
なお、申請者が法人の場合には、通常の申請書類の他にも準備するべき書類がありますので、こちらも併せてチェックしましょう。
本人による申請 | 利害関係人による申請 | |
申述受理証明書の交付申請書 | ◯
押印は認印も可ですが、スタンプ印は不可です。裁判所によって若干書式が異なりますので、申請前に確認しておくとスムーズです。
|
◯
利害関係人用の用紙または利害関係人からの申請欄にチェックを入れて作成します。申請書の押印につき、法人の場合は会社代表者の職印が必要になります。
|
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍・改製原戸籍謄本も可) | ◯ | ◯ |
申請者の戸籍謄本 | ◯ | △
他の相続人からの申請の場合、利害関係を証明する書類として必要になる可能性があります。
|
利害関係を証明する書類 | × | ◯
|
資格証明書の原本 | × | ◯
申請者が法人の場合、資格証明書の原本を提出する必要がありますが、この原本について還付を受けることはできません。債権回収会社等が申請する場合には、「債権回収に関する委託証明書」の原本も必要です。契約時から法人や債権者に変更がある場合には、その証明となる書類(法人の登記事項証明書や債権譲渡通知書等※コピーOK)も準備します。
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放棄した本人が管轄家庭裁判所の窓口で申述受理証明書の交付申請を行う場合には、前記必要書類を揃え、必要通数分の手数料(150円分の収入印紙×通数分)と申請者の身分証明書(運転免許証や健康保険証等)、認印を持参します。
原則として本人自ら手続きしなければならず、弁護士等の専門家が代行することは可能ですが、郵送請求という代替手段がある以上、その他の家族等に代わりに申請してもらうのは難しいようです。
利害関係人からの交付申請の場合も、基本的には必要書類と手数料、手続きする人の身分証明書、認印を持参すれば良いかと思いますが、詳しくは管轄家庭裁判所へ問い合わせるのが確実です。
郵送で申述受理証明書の交付申請を行う場合には、前記必要書類を揃え、必要通数分の手数料(150円分の収入印紙×通数分)と申請者の身分証明書(運転免許証や健康保険証等)のコピーを準備し、返信用封筒(宛名を記入し切手を貼付したもの)を同封して家庭裁判所の担当部署へ送付します。
返信用封筒に貼付する切手は、申請通数によって値段が変わり、1通~4通が82円分、5通以上が92円としている裁判所が多いです。こちらも裁判所によって異なる可能性がありますので、郵送請求の際には事前に返信用切手代を尋ねておくのがおすすめです。
相続放棄申述受理証明書の申請用紙には、「事件番号」を記載する欄が設けられています。
事件番号とは、裁判所で調停や審判、裁判などを申し立てると付与される独自の番号で、相続放棄申述の場合は【平成○○年(家)第○○◯◯番】というナンバリングになっています。
(家)という部分が家事審判事件であることを表しているので、利用する手続きによってかっこの中の符号が変わります。(例:通常民事訴訟事件=(ワ)、刑事事件の略式事件=(い)など)
さて、この事件番号ですが、放棄した本人は「申述受理通知書」を見れば知ることができるようになっていますが、通知書をなくしてしまったり、本人以外の利害関係人が証明書の交付請求をする場合には、申請先の家庭裁判所に対して「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」を行わなければなりません。
事件番号欄を空欄のまま提出すると証明書を発行してもらうことはできませんので、申請時に事件番号がわからない場合には、まずこちらの手続きを行うようにしましょう。
必要書類 |
・申請書、被相続人等目録 | 家庭裁判所によって異なる場合があります。 |
・被相続人の本籍地が表示された住民票の除票 | 取得できないときは、戸籍謄本および戸籍の附票でも認められる場合があります。 | |
・照会者の資格を証明する書類 | 法人の場合は資格証明書、個人の場合は住民票などが必要です。 | |
・利害関係の存在を証明する書類のコピー | 債権者による請求の場合は契約書や債務名義、登記事項証明書などが必要です。個人からの請求の場合は、相続関係図などが必要です。 | |
・委任状 | 弁護士等の専門家に依頼する場合や、法人が社員に委任する場合には、必ず委任状を準備します。 | |
申請方法 |
窓口申請 or 郵送申請 | |
手数料 |
基本的に無料 ※郵送申請の場合、返信用封筒に切手を貼付する必要あり |
相続放棄申述受理通知書は、放棄の申述が受理された際に一度だけ発行される通知書なので、なくした場合に再発行をすることができません。しかし、申述受理証明書は、交付申請の権利を有する人であればいつでも好きな通数だけ発行することができますので、なくしても再発行が可能となっています。
再発行をする場合も基本的な申請方法は変わりませんし、再発行などという備考を記載することもありません。また、放棄から何年経っていたとしても交付申請は可能なので、必要になったら取得するという形でも困らないかと思います。
ただし、相続放棄申述受理証明書が確実に必要になる場面は他の相続人等による「相続登記」の際だけです。
本人が取得する必要性はあまり高くないかもしれませんから、後から手続きするのが面倒であれば申述受理通知書が届いた際に1~3通程度の証明書の交付申請も済ませておいて、他の相続人に渡したりコピーを取って保管した方が簡単でしょう。
なお、何度も述べているように、本人以外でも相続について利害関係を有する人であれば申述受理証明書の申請・取得ができるようになっていますから、本人が証明書を取得してくれない場合や、そもそも相続人間が不仲の場合には、利害関係人からの請求を利用した方がスムーズです。
申請書の取得には少額ですが手数料が発生しますので、相続放棄を済ませた後にこういった費用を支払いたくないのであれば、本人としても証明書を求めてきた相手に対しては「必要ならば自分で取得してください」というような話をしても良いかと思います。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をした人にとってはほとんど利用しないであろう証明書になりますので、どちらかといえば利害関係人である他の相続人等にとっての重要書類にあたるかと思います。
本人が申請し取得する方が簡単なので、他の相続人としては本人から証明書を直接もらいたいかもしれませんが、放棄手続きが済んだ後でその相続について再度手を煩わされることを不快に感じる方もいらっしゃるでしょうから、あまりしつこく催促せず、利害関係人として交付申請を行うことも視野に入れてみてくださいね。
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