奨学金の踏み倒しで生じる危険性と返済が難しい時の対策

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
奨学金の踏み倒しで生じる危険性と返済が難しい時の対策

結論からいうと奨学金を踏み倒すことはできません。正確には、あなたの奨学金の支払い義務をなくすことはできますが、親族の将来を潰すような迷惑をかけてしまうでしょう。

そのうえ、踏み倒すことを考えた場合、あなたの将来に悪影響が出てくる可能性があります。踏み倒すとどういう危険性があるのか確認していきましょう。

奨学金の踏み倒しで生じる危険性と返済が難しい時の対策

奨学金を踏み倒すことで起きる3つの危険性

奨学金を踏み倒すということはすなわち延滞を意味します。このことを踏まえた上で3つの危険性について紹介していきます。

保証人が借金を背負うことになる

奨学金を踏み倒すことはできませんが、債務整理(※1)をして支払いの義務を保証人・連帯保証人に肩代わりしてもらうことはできます。

ですが、奨学金の保証人・連帯保証人になる人(機関)には、保証機関もありますが、親・親戚などの親族が保証人・連帯保証人になることが多いです。

奨学金の返済の義務を放棄することで親族に多大な迷惑をかけることも考えられます。

(※1)債務整理…自己破産・任意整理・個人再生など借金を減額する・ゼロにする方法

保証人への一括請求がいく

1つ注意してほしいのは、あなたが支払いを怠ることで保証人・連帯保証人に奨学金の総返済額の請求が一括返済でいくことです。

これは、『期限の利益損失(※2)』によるものです。

 (※2)期限の利益損失…期限が到来するまで債務を履行しなくてもよい債務者の利益(期限の利益)を失うこと

奨学金の返済金額は人によって違いますので、例として第2種奨学金で大学を4年間通った金額を計算してみました。参考にしてください。

第2種で奨学金を借りた場合の返済例

第2で1番安い金額の3万円を毎月借りていた場合の総額は約145万円。返済の時は、利息が3%つきますので返済総金額は177万円かかります。1番高い12万円を借りていた場合の総額は576万円。利子が3%つきますので返済総金額は775万円かかります。

安くはありませんよね。仮に、自分が返済できないからと言って本人が債務整理を行ってしまうと、保証人・連帯保証人に請求がいってしまい返済額を支払えないケースもあります。

その場合、保証人・連帯保証人も債務整理をすることになるでしょう。保証人・連帯保証人もあなたを信じて保証人になっていますので債務整理をするのはおすすめしません。

債務整理については次項で詳しく説明します。

ブラックリストに載る

奨学金を3ヶ月延滞すると信用情報機関(※1)の『ブラックリスト』に載ります。ブラックリストに載ってしまうと以下のデメリットが生じます。

(※1)信用情報機関…信用情報を管理する日本にある3つの機関

ブラックリストに載ることのデメリット

  • クレジットカードが使えなくなる
  • ローンが組めなくなる
  • ETCカードが使えなくなる

つまり、お金を借りる契約ができなくなってしまいます。ブラックリストに載ることで、あなたの信用情報(※2)に事故情報(※3)が登録されてしまうからです。

(※2)信用情報…クレジットカード・ローンの契約内容・支払い状況・返済状況など現金を使わずに取引した履歴
(※3)事故情報…お金に関する取引の時に返済が遅れたり、返済しなかったりすると登録される情報

信用情報に事故情報が登録されてしまうと信用がなくなるため、後払いでのお金の取引ができなくなってしまいます。

そのため、家・車などの大きな買い物は現金で購入するしかありません。高速道路でスムーズな支払いができ、割引も受けられるETCカードを使うことができなくなってしまいます。

ブラックリストは数年経てば解除される

なお、ブラックリストになっても、何年間かすれば抹消されます。以下は自己破産をした時に抹消される期間です。

  • 日本信用情報機構(JICC) 5年
  • シー・アイ・シー(CIC) 5年
  • 全国銀行協会(KSC) 10年

給与を差し押さえられる

奨学金を9ヵ月以上延滞すると、債務名義を取得された後に給与が差し押さえられてしまいます。

日本学生支援機構から勤務先に連絡がいき、あなたに給与が振り込まれる前に給与の4分の1が差し押さえられ、残りの4分の3が、あなたに実際支払われる給与です。

つまり、給料が20万円の人は5万円が差し押さえられてしまうので残りの給与は15万です。1人暮らしをしていた場合、その中で家賃・光熱費・携帯代を支払ったら今後の生活が厳しくなることは間違いないでしょう。

勤務先にブラックリスト入りしたことが発覚する可能性がある

給与が減るのに加えてもう1つ問題があります。勤務先に差し押さえられたことがバレるため会社に居づらくなります。クビになることはありませんが、こういう噂は広がりやすいので、周りの反応は今までと変わってくるかもしれません。

勤務先に差し押さえがバレた場合は、精神的にタフな人じゃないと同じ職場で続けて働くのは難しい可能性があります。

奨学金は踏み倒せないが毎月の返済額を減額できる制度がある

奨学金は踏み倒せないが毎月の返済額を減額できる制度がある

踏み倒すことができないのは冒頭でもお伝えしましたが、奨学金の毎月の返済額を抑えることはできます。そうすることで返済日に遅れないでスムーズな返済ができるようになります。

減額返済制度

奨学金の毎月の返済金額を2分の1にしてくれる制度です。条件は、以下のとおりです。

  • 年収335万以下
  • 副業225万以下
  • 被扶養者(※)1人につき38万円の控除

上記の条件にあてはまれば、奨学金の減額返済制度を受けることができます。控除に関して分かりづらいと思いますので例をあげました。

年収340万円の人は上記の条件に当てはまらないため減額返済制度を受けることができません。

しかし、配偶者がいる場合には38万円の控除が受けられます。

340万円-38万円=302万円

年収302万円の人なら上記の条件を満たしているので減額返済制度を受けることができます。ただし、減額返済制度を利用できたとしても奨学金の総返済金額は減りません。一定期間、毎月の返済金額が2分の1になるだけなので気をつけてください。

返還期限猶予

奨学金の返済が難しい場合、減額返済制度の他にもう1つ返済を手助けする制度があります。それが、返還期限猶予です。返還期限猶予は、毎月の奨学金返済を一定期間ストップしてくれる制度のことで条件は以下です。

  • 年収300万以下
  • 副業200万以下

減額返済制度より条件は厳しいです。とはいえ、返還期限猶予を利用できれば一定期間お金を貯めることも可能ですし、所得を増やすために転職をするといったこともできます。

返還期限猶予を利用することで延滞をしないための工夫ができる時間を得ることができるので活用していきましょう。

奨学金の踏み倒しで生じる危険性と返済が難しい時の対策

 奨学金が返せない場合は債務整理を検討

奨学金の返済が延滞すると延滞金が発生します。地道に毎月返済していれば返済できたはずの奨学金。長期間延滞することで返済がドンドン難しくなってしまいます。そうなった時は債務整理をして借金を減らすしかないかもしれません。

任意整理

借金をしている貸金業者を任意で選択できるのが任意整理です。例えば、消費者金融・銀行・奨学金から借金をしている場合。任意整理をすれば特定の借金を選んで整理することができます。

しかし、保証人が付いている奨学金を対象に任意整理を行うと、保証人に奨学金の返済していない金額全ての請求がいきます。あなたは返済の義務がなくなったので、いいかもしれません。でも、保証人は今後あなたの奨学金返済額全てを一括で返済しないといけないので辛い未来になることでしょう。

ゆえに、奨学金以外の借金がある場合は任意整理してもいいかもしれませんが、高額な奨学金を任意整理することはおすすめできません。

個人再生

個人再生とは、あなた(債務者)・日本学生支援機構(債権者)・裁判所を介して借金を減額する手続きです。最大、借金が5分の1になり3年から5年で支払いをしなければなりません。

例えば、奨学金の総返済金額が800万円なら返済額は160万円になります。それを3年で返済するとしたら毎月約45,000円。5年で返済すると毎月約27,000円を返済していくことになります。

個人再生のデメリットとしては裁判所が介入してくるので手続きが複雑な上に時間・費用もかかることです。さらに、保証人に減額した分の請求がいきます。

すなわち、800万円-160万円=640万円です。減額された640万円が一括で保証人に請求されます(期限の利益喪失の場合、残額ではなく全額を請求されることもあります)。

どうしても、個人再生をする場合には事前に保証人に相談しましょう。

自己破産

自己破産を行うと奨学金の借金が0になります。しかし、奨学金には申し込みの時に保証人・連帯保証人が必須です。自己破産をしたら保証人があなたの代わりに全て奨学金を返済しなくてはいけません。そのうえ、一括請求です。

保証人の方も支払いができなくて自己破産をするケースも珍しくありません。奨学金で自己破産すると、あなただけではなく親族の今後の人生に大打撃を与えることになります。

自己破産をする時は必ず保証人に相談してから行うようにしてください。

 まとめ

奨学金は踏み倒すことはできませんし、債務整理をしたとしても保証人・連帯保証人の親族に迷惑がかかります。さらに、奨学金は延滞してもメリットは1つもなく延滞が長引くにつれデメリットが増えていきます。

いかに延滞しないで返済をしていくかが長期間返済していく奨学金との付き合い方です。返済がキツイ場合は減額返済制度を利用するのも1つの手段でしょう。

奨学金の踏み倒しで生じる危険性と返済が難しい時の対策

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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