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KL2020・OD・037
差押えとは強制執行の一種で、債権者が債務者に対して有する債権を回収するために国が債務者に財産の処分を禁止する法的な手段です。この差押えは法的手段の中で最終手段でありますから、いきなり差押えができるというわけではなく、然るべき手順を踏まないといけません。
今回は差押えについて、手続きの方法や必要なことについて書いていきたいと思います。
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目次
差押えを裁判所に申請するには以下の3つの書類が必要となります。
債権者と債務者の関係を明確にして、債権者が強制執行をする権利を証明する書類が必要です。その書類とは、裁判の判決、和解・調停調書、公正証書等が代表的なものになります。
差押えができるとして、何を差し押さえるのかについて債権者側が調べてその情報を裁判所に申告しないといけません。裁判所はそういった債務者の所有している財産の情報を調査してはくれません。
仮に、強制執行ができる権利を持っていたとしても差し押さえるものが無い、若しくはわからない場合は差押えすることはできません。
上記の2つの条件をクリアしていたとしても、最終的に裁判所の許可がないと強制執行することはできません。必要書類などを不備なく提出・申請して、裁判所の許可が出て初めて強制執行をすることができます。
差押えの手続きは何を差し押さえるかによって変わってきます。それぞれの手続の方法と流れについて書いていきます。
(債権執行の流れ)
債権執行を申請する際には裁判所に以下の書類を納めないといけません。
申請が正式に受理された後は執行裁判所から第三債務者((債務者が預金している銀行や債務者に給料を支払っている雇い主のこと)と債務者へ債権差押命令書が発送されますが、この段階において第三債務者は債務者へ弁済することができなくなります。
発送完了後に申請者(債権者)は第三債務者へ直接取り立て(郵送や直接話し合いをする)を行うことができます。この際に第三債務者からの弁済額の合計が債権額に満たない場合は、改めて再度差し押さえるか、別の債権等を差し押さえることになります。
(動産執行の流れ)
債権者(債務名義)
動産執行を申請する方法は、債務名義の正本と執行文を持参し、地方裁判所に所属している執行官へ執行の申請をすることになります。申立書は執行官の部屋で用意されているので、指定された箇所に記入し印鑑を押すだけで申請できます。
差押えは執行官が債務者の自宅にて行います。その際に現金があった場合はその場で直接受け取ることができ、現金以外の動産については競売にかけて売却された金額が配当されます。
(不動産執行の流れ)
不動産執行を申請する場合は以下の書類を、差押えの対象である不動産を管轄する裁判所へ申請することになります(裁判所により運用が異なりますので詳しくは管轄裁判所にご確認ください)。
申請が正式に受理されれば裁判所から不動産の調査が行われ、不動産の最低競売価格を算定するのが一般的な流れで、期間は約半年から1年かかります。
不動産の売却基準価額が決まり次第、競売の日程が指定され、落札者が決まった後に売却された金額が債権者へ配当されるのが一般的な流れになります。
差押えの対象は債務者の債権・不動産・動産になりますが、その中にも差押えできるものとできないものがあります。
差押えができるものは以下のものになります。
不動産に関しては基本的にすべてのものを差し押さえることができます。債務者の所有している自宅、自社ビル、地上権について差し押さえすることができます。
※地上権(民法第265条):他人の土地において、工作物又は竹木を所有するために土地を使用する権利
差押えすることができる動産は、債務者の私物である現金(66万円を超える現金に限る)、貴金属、骨董品、小切手、自動車等になります。後述する差押えできないもの以外は基本的に全てできます。
差押えすることができる債権は、個人の場合は給料や預金で、法人や自営業者の場合は売掛金や貸付金も差押えすることができます。
上記の差押えできるものの中にも制限があり、差押えできないものがあります。
生活をする上で必要最低限欠くことのできないものは差し押さえることはできません。例えば以下のものが挙げられます。
債権の中では、以下の債権が社会政策的な観点から差押えが禁止されています。
また、給料に関しては原則手取りの4分の1までしか差し押さえることができません。しかし、請求債権額を満たすまでは毎月継続して差し押さえることは可能です。
裁判所の許可があれば絶対に差押えができる訳ではありません。差押えを行おうとする際に注意したい点がいくつかあります。
債務者は差押え等の強制執行に対して不服がある場合に、強制執行停止の手続きをすることができます。
しかし、仮に不服申立ての手続きをしたとしても差押えが自動的にストップするわけではなく、別途執行停止の手続きをする必要があります。
強制執行をするにも費用がかかります。ですから、最も注意したいのは費用倒れしないことです。特に不動産執行や動産執行は費用が高額になりますから、かかった費用分が回収できないことがいちばん注意したいことです。
債務者が所有している財産の調査は非常に重要なことです。不動産、動産、債権のうち何をどれくらい所有していているのかが明確になっていないとそもそも差押えをすることができません。
弁護士に依頼すると債務者の財産の調査を依頼することができます。債務者がどのような財産を持っているのか把握することはとても大事なことですが、同時に債権者自身で把握しようとするのはとても難しいことでもあります。ですから、債務者の財産を把握するにために弁護士へ依頼することは効果的です。
調査した結果、債務者が所有している財産についてわからなかった場合は財産開示手続きをすることができます。財産開示手続きとは、裁判所を介して公権力で債務者に財産を開示させることができる手続きになり、既に財産調査を行った人が申請することができます。
申請するにも条件があり、債務名義を取得している必要があります。ですが、そのうち仮執行宣言付支払督促、仮執行宣言付判決、公正証書は対象外になっています。
申し立てるには、申請理由と財産調査を行った事実を申立書に記述し、収入印紙代2,000円と、予納郵便切手代の6,000円を納め申請します。
強制執行をする前に、債務者に財産の処分をされてしまったら差押えをすることができなくなってしまします。それを防ぐために、仮差押という手続きがあります。仮差押とは、債務名義を取得する前に申請することができ、債務者に財産の処分を禁止することができる手続きとなっています。
申請方法は、本案の管轄裁判所又は仮差押の対象になる財産の所在地を管轄する裁判所に債務者の財産や被保全債権(仮差押の対象となる債権)を申請書に記入し、仮差押が必要であることを証明する書類と一緒に申請します。
その際に、手数料として収入印紙代3,000円、予納郵便切手代(差し押さえるのが債権の場合3,000円、不動産の場合2,000円、不動産仮処分の場合は1,000円)、資格証明書(法人に限り)として1社あたり1,000円、不動産全部事項証明書として1社あたり1,000円、登録免許税として請求額の0.4%がかかります。(なお,管轄裁判所によって異なることがありますので、事前に確認してください。)
差押えの手続きは債権者自身で行うことができますが、必要書類を揃え、手続きをするのはとても複雑で時間もかかります。ですから、それらのことを代行して全てやってくれる弁護士に依頼することを強くおすすめします。
弁護士費用はかかってしまいますが、費用は回収できた金額に応じた料金体系になっている事務所も多いですし、何より精神的・時間的なリスクや負担を軽減できスムーズに手続きを行い回収することができます。
債権回収について悩まれている方はぜひ一度弁護士に依頼することを検討してみてください。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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