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KL2020・OD・037
債権回収において最終的な手段として強制執行というものがあります。強制執行とは、簡単に言うと債権者の権利を国が代わりに実現するための手続きになります。
民事紛争は最終的に裁判所が判決を下し解決をすることになりますが、それはどちらが正しいのかを紙の上で決めるだけであって、国がお金を立て替えてくれるわけではありません。そのため、判決で下されたことを債務者が履行しない限り、債権者は回収することができません。
そういった場合に国が債権者に代わり、強制的に債務者の財産を差し押さえることを強制執行といいます。
今回は、その強制執行の流れを具体的に書いていきたいと思います。
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目次
強制執行の手続きは、差し押さえる財産の種類や債務名義によって変わってきます。
強制執行は主に以下の3つの財産について行うことになります。
不動産執行は債務者が所有している土地や建物を対象にした強制執行になります。例えば、自宅や自社ビル等が挙げられますが、登記されている地上権も対象にすることができます。
※地上権(民法第265条):他人の土地において、工作物又は竹木を所有するために土地を使用する権利
動産執行は債務者が所有している現金(66万円を超える現金に限る)、貴金属、骨董品、小切手等の換金できるものを対象にした強制執行になります。
債権執行は債務者が所有している債権を対象にした強制執行のことをいいます。債務者が個人の場合は銀行に預けている預金や給料を差し押さえるのが一般的です。逆に債務者が企業や個人事業主の場合は、売掛金や貸付金を対象にして差し押さえることになります。
上記の3つの財産が主に差押えの対象になるものですが、その中でも差し押さえすることができないのもがあります。それは債務者が必要最低限の生活をするのに必要な衣類や寝具、家具や仕事上で必要な道具等です。
また、債権執行で給料を差し押さえる場合も全額差し押さえることはできず、通勤交通費を除いた手取りの金額の4分の1までしか差し押さえることができないことになっています。
強制執行を申請する流れは債務名義によって異なります。以下の図を参考にしながら説明していきたいと思います。
それぞれの項目について強制執行を申し立てる際に共通して必要なことがあります。それは以下の2点になります。
そもそも強制執行を行う際には債務名義の取得が必要ですが、その効力を発生させるためには取得した債務名義に執行文を付与させないといけません。
仮執行宣言付支払督促や少額訴訟判決等の債務名義には執行文の付与は必要ありません。公正証書の場合は、一般的に、
等を持参し,公正証書を作成した公証人へ執行文付与の作成をしてもらうことになります。この際に手数料として1,700円がかかります。
判決や調停調書の場合は、申立書と債務名義の正本が必要になり、債務名義を作成した裁判所の書記官へ執行文を付与してもらうことになります。この際に収入印紙代として300円がかかります。
2つ目に、債務名義の正本か謄本を債務者へ郵送することが必要になり、それが送達されたことを証明する証明書が必要になってきます。債務名義を作成した裁判所の書記官に、送達の申請から証明書の発行まで依頼することになりますが、この際に収入印紙代として150円がかかります。
公正証書が債務名義の場合は、謄本を取得するために公証人へ依頼することになります。
公正証書を作成する際に債権者と債務者が揃っている時に、公証人から債務者へ謄本を渡すことで送達が完了したことになります。この際には別途1,600円程度の費用が発生します。
不動産執行を申請する場合は以下の書類を、差押えの対象である不動産を管轄する裁判所へ申請することになります(裁判所により運用が異なりますので詳しくは管轄裁判所にご確認ください)。
申請が正式に受理されれば裁判所から不動産の調査が行われ、不動産の最低競売価格を算定するのが一般的な流れで、期間は約半年から1年かかります。
不動産の売却基準価額が決まり次第、競売の日程が指定され、落札者が決まった後に売却された金額が債権者へ配当されるのが一般的な流れになります。
動産執行を申請する方法は、債務名義の正本と執行文を持参し、地方裁判所に所属している執行官へ執行の申請をすることになります。申立書は執行官の部屋に用意されているので、指定された箇所に記入し印鑑を押すだけで申請できます。
差押えは執行官が債務者の自宅にて行います。その際に現金があった場合はその場で直接受け取ることができ、現金以外の動産については競売にかけて売却された金額が配当されます。
債権執行を申請する際には裁判所に以下の書類を納めないといけません。
申請が正式に受理された後は執行裁判所から第三債務者(債務者が預金している銀行や債務者に給料を支払っている雇い主のこと)と債務者へ債権差押命令書が発送されますが、この段階において第三債務者は債務者へ弁済することができなくなります。
発送完了後に申請者(債権者)は第三債務者へ直接取り立て(郵送や直接話し合いをする)を行うことができます。この際に第三債務者からの弁済額の合計が債権額に満たない場合は、改めて再度差し押さえるか、別の債権等を差し押さえることになります。
強制執行は非常に強力な手続きとなっています。ですからこの効力を発揮するにはきちんとした条件があります。以下の3つの書類が無いと強制執行を申請することはできません。
債権者と債務者の関係を明確にして、債権者が強制執行をする権利を証明する書類が必要です。その書類とは、裁判の判決、和解・調停調書、公正証書等が代表的なものになります。
差押えができるとして、何を差し押さえるのかについて債権者側が調べてその情報を裁判所に申告しないといけません。裁判所はそういった債務者の所有している財産の情報は調査してくれません。
仮に、強制執行ができる権利を持っていたとしても差し押さえるものが無い、若しくはわからない場合は差し押さえることはできません。
上記の2つの条件をクリアしていたとしても、最終的に裁判所の許可がないと強制執行することはできません。必要書類などを不備なく提出・申請して、裁判所の許可が出て初めて強制執行をすることができます。
強制執行をするにも費用がかかります。ですから、最も注意したいのは費用倒れしないことです。特に不動産執行や動産執行は費用が高額になりますから、かかった費用分が回収できないことに特に注意する必要があります。
そのために以下の2点については知っておきたいところであります。
債務者が所有している財産の調査は非常に重要なことです。不動産、動産、債権のうち何をどれくらい所有しているのかが明確になっていないとそもそも差押えをすることができません。
弁護士に債務者の財産調査を依頼することができます。債務者がどのような財産を持っているのか把握することはとても大事なことですが、同時に債権者自身で把握しようとするのはとても難しいことでもあります。ですから、債務者の財産を把握するにために弁護士へ依頼することは効果的です。
調査した結果、債務者が所有している財産についてわからなかった場合は財産開示手続きをすることができます。財産開示手続きとは、裁判所を介して公権力で債務者に財産を開示させることができる手続きになります。
申請するにも条件があり、債務名義を取得している必要があります。ですが、そのうち仮執行宣言付支払督促、仮執行宣言付判決、公正証書は対象外になっています。
申し立てるには、申請理由と財産調査を行った事実を申立書に記述し、収入印紙代2,000円と、予納郵便切手代の6,000円を納め申請します。
強制執行をする前に債務者に財産の処分をされてしまったら差押えをすることができなくなってしまします。それを防ぐために、仮差押という手続きがあります。仮差押とは、債務名義を取得する前に申請することができ、債務者に財産の処分を禁止することができる手続きとなっています。
申請方法は、本案の管轄裁判所又は仮差押の対象になる財産の所在地を管轄する裁判所に債務者の財産や被保全債権(仮差押の対象となる債権)を申請書に記入し、仮差押が必要であることを証明する書類と一緒に申請します。
なお、民事保全手続を行うためには、一定額の担保金と支払う必要があります。これは、債権者が訴訟提起して敗訴した場合に備えて、債務者が被る損害賠償金を担保する目的で設定しているものです。
その際に、手数料として収入印紙代2,000円、予納郵便切手代(差し押さえるのが債権の場合3,000円、不動産の場合2,000円、不動産仮処分の場合は1,000円)、資格証明書(法人に限り)として1社あたり1,000円、不動産全部事項証明書として1社あたり1,000円、登録免許税として請求額の0.4%がかかります。(なお,管轄裁判所によって異なることがありますので、事前に確認してください。)
強制執行は非常に強力な手続きですが、その反面手続きは複雑で費用も高く費用倒れする恐れもあります。そうならないためにも是非弁護士へ依頼することを検討してみてください。プロの法律家である弁護士は、複雑な手続き等を全て代行してくれますし、スムーズに進めることができます。
この記事を通して、強制執行を考えている方のお役に立てたのなら幸いです。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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