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KL2020・OD・037
離婚前に別居期間が発生すると、お互いにその間の生活費が必要です。相手の方があなたより高い収入を得ているなら「婚姻費用」の分担を求めることができます。婚姻費用とは、夫婦が互いに分担すべき生活費のことです。離婚が成立するまでの間、毎月支払ってもらえますが、相場の金額はどのくらいになるのでしょうか?
この記事では、離婚前の婚姻費用の相場と計算方法、相手に請求する方法を解説します。
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目次
婚姻費用とは、別居前の夫婦が分担すべき生活費です。夫婦は互いに扶助義務を負っていて、相手を扶養しなければなりません。たとえ離婚協議中で別居していても、この扶助義務は消えません。
そこで離婚が成立するまでの間、収入の高い方は相手に対して生活費を払わねばならないのです。
婚姻費用の金額は、夫婦のお互いの収入状況や子供の有無、人数や年齢などの要素によって異なります。
例えば、相手が高収入であなたに収入がなく、かつあなたが子供を養育しているような状態ならば、婚姻費用は多額になる傾向にあります。他方、夫婦の収入の差があまりなく、子供もいない場合なら婚姻費用は少なくなる傾向にあります。
一般的な相場として、相手がサラリーマンでこちらが子供を抱えた主婦などの場合、10~15万円前後となることが多いでしょう。
婚姻費用の概ねの金額は、家庭裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」をもとに計算できます。以下でその手順を示していきます。
まず婚姻費用の表を選びます。養育費と婚姻費用は表が違うので間違えないようにしましょう。また婚姻費用の表は夫婦のみ、子供が1人(0~14歳まで)、子供が1人(15歳以上)、子供が2人(両方とも0~14歳まで)など、複数のパターンに分かれているので、自分のケースで当てはまる表を選び出します。
次に、相手の年収を縦のラインに当てはめます。年収は「税込みの金額」を使います。また給与所得者か自営業者かで数字が違ってくるので注意して下さい。同じ収入額なら自営業者の方が高いラインになります。
次に、あなた自身の収入を横のラインに当てはめます。ここでも税込みの年収を基準にします。給与所得者か自営業者かで変わるので、注意しましょう。
相手の年収ラインとあなたの年収ラインをそれぞれ横と上に引き延ばし、ぶつかる帯(〇万円~〇万円)があなたたち夫婦における適切な婚姻費用の相場の金額です。
金額帯には2万円程度の幅があるので、状況に即した金額を設定しましょう。
婚姻費用には上記の通り相場がありますが、以下のような要素によって変動します。
婚姻費用を支払う側の年収が高くなると、婚姻費用の金額は高額になります。
婚姻費用の支払いを受ける側の年収が低ければ、金額は高額になり、年収が上がると婚姻費用は下がります。
支払いを受ける側が子供を養育していたら、子供の分の生活費も必要なので婚姻費用が増額されます。子供の人数が増えると金額も上がります。
子供の年齢が15歳以上になると、食費や学費など、さまざまな費用がかかるようになるので婚姻費用の相場が増額されます。
以下で、いくつか婚姻費用の金額のシミュレーションをしてみましょう。
夫婦のみの表を選び、給与所得者で夫600万円、妻100万円をあてはめると、婚姻費用は月8万円前後となります。
子供1人(0~14歳)の表を選び、収入をあてはめると婚姻費用は、月10~12万円程度となります。
子供2人(0~14歳、15歳以上)の表を選び、自営業の夫、会社員の妻の年収を当てはめると、婚姻費用の相場は、月14~16万円程度です。
別居時に婚姻費用を請求するには、以下のような手順で進めましょう。
まずは別居前に相手に口頭で婚姻費用の支払いを求めましょう。相手が支払いたくないという場合には、婚姻費用の支払いは夫婦の義務であることを説明して、説得します。
上記の婚姻費用の算定表による計算方法についても説明し、相場の金額を示して納得させましょう。相手が支払いに応じるなら「婚姻費用支払いに関する合意書」を作成し、約束した内容を書面化します。
そして別居後は、毎月指定した口座に入金があるかどうか、チェックしましょう。
相手に口頭で請求をしても支払いに応じない場合や、約束したのに婚姻費用を支払ってくれない場合には、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」を申し立てましょう。
婚姻費用分担調停とは、婚姻費用の支払い金額を決めるための調停です。裁判所の「調停委員」が夫婦の間に入って婚姻費用の金額や支払い方法について調整してくれます。相手に支払い義務がある場合には説得もしてもらえます。
夫婦間で合意ができたら調停が成立し、相手から支払いを受けられるようになります。
相手が約束を破った場合には、給料などを差し押さえて取り立てることも可能です。
調停で合意できなかった場合には、婚姻費用分担審判という手続きに移ります。審判になると、審判官(裁判官)が婚姻費用の金額を決めて、相手に支払い命令を出してくれます。
相手が審判に従わない場合には、給料や預金などを差し押さえて回収できます。
婚姻費用分担調停や審判では、申立時からの婚姻費用を請求できます。早く申立をするとその分たくさん支払ってもらえるので、可能な限り早めに(別居直後など)申立をしましょう。
婚姻費用分担調停の申立をするときには、弁護士に依頼することをおすすめします。
婚姻費用の相場を計算するとき、正しくできているか自信を持てないことがあるでしょう。また相手の収入を正確に知らないケースもあります。
弁護士であれば、夫婦の状況をみて正確に妥当な金額の婚姻費用を算定できます。
また相手の収入がわからない場合でも、適切な方法で資料を入手したり、それでもわからないようであれば、平均賃金を使って推定計算をしたりすることも可能です。
弁護士に依頼すると申立書の作成や裁判所への提出、その後の裁判所とのやり取りなども任せられます。
弁護士が代理人になると調停に同席して話をしてくれるので、あなた自身が上手に話をできなくても、調停委員を納得させやすくなり、有利に進む可能性が高くなります。
弁護士がついていると、常に法律の専門家が味方になってくれるという安心感から、気持ちも楽になります。
以上のように弁護士をつけると、自分で進めるよりもよい結果を得られる可能性が高まるので、婚姻費用分担調停を申し立てるなら、ぜひ一度相談してみてください。
弁護士に婚姻費用分担調停を依頼すると、弁護士費用がかかります。
弁護士の費用には、法律相談料、着手金、報酬金の3種類があります。
法律相談料の相場は30分5,000円ですが、最近では初回の相談料を無料に設定している法律事務所が多くなっています。
婚姻費用調停の着手金相場は、10~30万円程度です。離婚調停と同時に申し立てる場合には安くしてもらえるケースがあります。
報酬金は、経済的利益(相手から確保できた婚姻費用の金額)の10~20%程度となるケースが多いようです。
離婚前に別居するとき、生活費を支払ってもらえなかったら別居できない、と考えてしまう方がおられます。しかし別居中も相手に婚姻費用の支払いを求められるので、あきらめる必要はありません。
婚姻費用分担調停や審判を利用して、早期に支払いを開始してもらいましょう。
別居後の生活費に不安があるなら、まずは一度、離婚問題に強い弁護士に相談してみてください。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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