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KL2020・OD・037
親告罪(しんこくざい)とは、『被害者の告訴がないと起訴を行うことができない』犯罪のことを言います。
起訴ができないということは、検察官が被疑者について刑事裁判を起こすことができません。どのような犯罪を犯したとしても、被疑者は刑事裁判によってのみ自身の犯罪行為について裁きを受け、刑事裁判で有罪となった場合に限り刑罰を科せられます。これ以外の方法で被疑者が罪を裁かれる、刑罰を受けるということは絶対にありません。
では、なぜ親告罪というものが出来たのでしょうか。この記事では、親告罪が必要とされる理由やどのような犯罪に適用されているかについてご説明します。
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親告罪とはどのようなものなのでしょうか。こちらで項目ごとに詳しくご説明したいと思います。
冒頭でもご説明しましたが、親告罪とは刑事裁判を起こすために被害者からの告訴を必要とする犯罪です。適用されている犯罪はストーカー規制法違反・名誉棄損・侮辱罪・誘拐罪・信書開封罪・秘密漏示罪などが挙げられます。
では、なぜ親告罪というものが出来たのでしょうか。親告罪の類型としては以下のようなものがあります(これに限定する趣旨ではありません)。
なお、現在は法改正がなされましたが、つい最近まで親告罪として強制わいせつ罪や強姦罪などの性犯罪が含まれていました。
このような性犯罪では、被害者の証言や状況の再現が必要・重要であり、被害者の協力がなければ犯罪の立件は困難です。そのため、被害者は捜査及び裁判を通じて事件当時の状況について繰り返し質問され、証言しなければならない状況になることは避けられません。場合によってはプライバシーにかかわる事実を公開の裁判で明らかにする必要まで有るのです。
そのため、性犯罪では加害者の刑事責任を追及するかどうかについて、被害者に一定の選択権を与えるべきという考え方があり、昨今まで親告罪とされていたのです。
しかし、性犯罪が親告罪となっていたケースでは、被害者側が上記のような負担に耐えられないことから泣き寝入りするケースも多いという批判もありました。そして、近年の性犯罪への厳罰化の流れの中でこれら性犯罪について親告罪から非親告罪に変更する法改正がなされたのです。
したがって、現在はこれら性犯罪は非親告罪であり、被害者の告訴の有無がなくとも、立件・起訴することが可能となっています。
起訴はこのような刑事裁判の開始を求める法定の手続きであり、起訴がなければ刑事裁判が行われず、犯罪行為について審理・裁定が行われることはありません。そして、起訴・不起訴は被害者が決めるものではなく、検察官がその独自の裁量的判断で決めるものです。
そのため、被害者がいくら起訴して欲しいと思っても検察官が起訴しない場合は刑事裁判が開始されることは絶対にありません。他方、被害者が起訴しないで欲しいと思っても、検察官が起訴すれば刑事裁判は必ず開始されます。
告訴とは、捜査機関に対して加害者による犯罪事実を申告し、その処罰を求める被害者の意思表示です。
刑事訴訟法第241条1項により、警察または検察などの捜査機関に対し口頭か書面で行うことが定められています。
第241条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
○2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
【引用元:刑事訴訟法第241条】
しかし、この告訴は誰でも行うことはできません。
告訴が出来る人 |
告訴できる場所 |
被害者 |
警察 |
被害者の法定代理人 |
検察 |
(実子・親・兄弟など) |
など |
図のように告訴を行えるのは被害者とその法定代理人(実の子や親、兄弟など)が認められています。
告訴をする期間には制限が設けられています。告訴期間は法律上6ヵ月と定められており、同期間を過ぎた場合、告訴をすることが不可能となります。この期間について刑事訴訟法第235条に記載されています。
第235条 親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
【引用元:刑事訴訟法第235条】
このように、法律では『犯罪が起こった日』から6ヵ月ではなく、『犯人を知った日』から6ヵ月と定めています。そのため、被害にあったものの、犯人が不明であるという場合は告訴期間は経過しません。
告訴しないことで、被害者に具体的な不利益はありません。
しかし、告訴がなければ被疑者は起訴されず、刑事裁判は開かれませんので、被疑者の刑事責任を追及することはできなくなります。
被害者が裁判を行わず個人的に報復などの手段に踏み切る行為は、当該行為が犯罪であれば当然逮捕・起訴されるなど刑事責任を問われる恐れがあります。
非親告罪とは、親告罪に該当しない罪を言います。親告罪との違いは、『被害者からの告訴がなくとも起訴できる』という点です。
親告罪 |
非親告罪 |
被害者が告訴しないとできない |
被害者の告訴無しで起訴できる |
話し合いの場で、被害者・加害者のお互いが感情的になる可能性もあります。示談を申し込む場合は、第三者である弁護士を挟むことをおすすめします。また、親告罪の場合、示談を成立させ、告訴を取り下げてもらうことで刑事手続を終了させるという方法もあります。示談を行う際に気を付けることは、当人同士で行うことはできるだけ避けることです。
親告罪はどのような犯罪に適用されているのでしょうか。
ストーカー規制法とは、刑法で定められたものではなく特別法として定められています。
ストーカー行為という決められた範囲で適用されるため、つきまとい行為などを行った人に対して適用されます。
この法律違反に該当する行動は警視庁のホームぺージで公開されていますので、よろしければそちらをご参考ください。
名誉毀損は、刑法第230条によって定められ、『提示された事実によってその人の社会的な地位・評価に傷をつける』ことが名誉毀損にあたるとされています。
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
【引用元:刑法第230条】
テレビなどでも名誉毀損は耳にする機会は多いですよね。「報道された内容が名誉棄損にあたる」として、男性がテレビ局を訴えたというニュースでは、テレビ局側に150万円の支払い命令が言い渡されるという判決が下されました。
侮辱罪は、刑法231条の中で『公然と人を侮辱した者』が対象になると定められています。
第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
【引用元:刑法第231条】
『事実の有無に関わらず人を侮辱した人』に適用され、「〇〇は馬鹿だ」「〇〇はクズだ」といった事実は伴わなくとも特定の人を中傷する言動が適用されると言えるでしょう。匿名掲示板に悪口を書き込む行為も、名誉毀損か侮辱罪となる可能性があります。
誘拐罪は刑法の第33章、『略取、誘拐及び人身売買の罪』の項目で定められ、第224条から228条において誘拐や人身売買などの刑罰を明記しています。
親告罪に関する表記は項目の最後にされています。
第229条 第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
【引用元:刑法第229条】
信書開封罪、秘密漏示罪という犯罪を初めて聞くという方もいらっしゃるかもしれませんが、刑法の第13章『秘密を侵す罪』として133条、134条、135条によって定められています。親告罪であることは、刑法第135条に記載されています。
第135条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
【引用元:刑法第135条】
信書開封罪は刑法第133条に定められています。手紙など封がされた物を勝手に開けた場合、この罪が適用される恐れがあります。
第133条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
【引用元:刑法第133条】
秘密漏示罪は刑法134条で定められています。業務上知りえた情報を他人に漏洩した場合に成立する罪と言えるでしょう。刑法の中では、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人と以前その職に就いていた人という規定がついています。
第134条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 宗教、祈祷とう若しくは祭祀しの職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。
【引用元:刑法第134条】
親告罪は他人とのトラブルだけではなく、親族間でも適用されます。
親族間での窃盗、不動産侵奪罪とその未遂も親告罪にあたります。
窃盗罪は刑法235条、不動産侵奪罪は235条の2に記載されており、親告罪であることは第244条の2で定められています。
第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
【引用元:刑法第235条】
第235条の2 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。
【引用元:刑法第235条の2】
第244条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
【引用元:刑法第244条】
詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪、背任罪、準詐欺罪、恐喝罪は未遂を含み、親族間で起こった場合は親告罪となります。
刑法の第37章『詐欺及び恐喝の罪』は上記の罪で構成されており、親告罪とすることは刑法第251条に定められています。
第251条 第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪について準用する。
【引用元:刑法第251条】
準用とは、定められた法律をあてはめることであり、刑法第242条・第244条・第245条の規定を第37章にあてはめていますよ、ということになります。
刑法の第38章『横領の罪』は、横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪によって構成されています。この章では、刑法第255条において、上記と同様に準用を定めています。
第255条 第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
【引用元:刑法第255条】
親告罪は限られた犯罪に適用されているものです。とくに、犯罪やトラブルに巻き込まれたとき1人で対応しようとすれば、心身共に疲弊してしまいますよね。
1人では抱え込まず、弁護士などに相談してその後の流れをスムーズに進めていくことをおすすめします。現在では無料相談を行っている弁護士事務所もありますので、そういったものを利用してみることも解決への一歩かもしれません。
この記事では、親告罪について詳しくお伝えしてきました。
当記事が、親告罪についての理解を深める一助となれれば幸いです。
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