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KL2020・OD・037
取消訴訟の出訴期間は行政事件訴訟法第14条で規定されていて、正当な理由を除いて原則としては、処分または裁決があったことを知った日から6ヵ月以内であるか、処分または裁決があった日から1年以内であることが決まっています。
平成17年4月1日より施行された改正法によって上記の通り出訴期間が変わりましたが、改正前の出訴期間は短く3ヵ月でした。今回は取消訴訟の役割と合わせて、訴訟を利用しやすくするための法律的な整備が進んでいる現状を解説していきたいと思います。
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目次
最初に取消訴訟の出訴期間について説明しますが、参考にするのは行政事件訴訟法の第14条になります。フロー表と合わせて第1項から第3項まで順番に取り上げていきます。
(出訴期間)
第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
引用元:「行政事件訴訟法 第14条」
第14条1項では、処分または裁決があったことを知った日から出訴期間が起算される『主観的出訴期間』について規定されています。
また、条文では『正当な理由があるときは、この限りでない』と書かれていますが、正当な理由の例として災害や不慮の事故による傷害、または教示の間違いなどが挙げられます。
第14条2項では、処分または裁決の日より出訴期間が起算される『客観的出訴期間』について規定されています。当事者の認知とは別で、客観的な行為となる処分または裁決を基準にした場合は1年の出訴期間になります。
第14条3項では、すぐに取消訴訟を行わずに審査請求を経由した場合の出訴期間について規定されています。審査請求に対する裁決または決定日(または審査裁決・決定を知った日)を基準に出訴期間が起算されます。
審査請求は裁判上で訴える行政事件訴訟(取消訴訟)とは違い、国や地方公共団体による処分や裁決に対しての不服申立てになります。行政事件訴訟と比べて書面だけで手続きを行うことが可能で、裁判よりも短期間で結論が得られるメリットがあります。
不服申立てになる審査請求を選ぶか、審査請求をせずに取消訴訟を選ぶかについては原則自由だとされています。
現行の出訴期間について上記で説明しましたが、実は平成17年3月までは取消訴訟に関して、処分又は裁決があったことを知った日から3ヵ月以内が出訴期間でした。参考までに改正前の行政事件訴訟法について、下記で取り上げていきます。
改正前の行政事件訴訟法では、取消訴訟の主観的出訴期間は3ヵ月でしたが、法務省が公表している『平成16年改正行政事件訴訟法の概要』によると、提訴(訴訟の提起)における準備期間として3ヵ月では難しい場合が多いとの実情でした。
(2) 出訴期間の延長 ア 改正前の行政事件訴訟法 改正前は,取消訴訟については 「処分又は裁決があったことを知った日から3か月」以内に提訴しなければならず,かつ,出訴期間の 経過について正当な理由がある場合でも,出訴期間経過後の提訴は認められていなかった。 この点,国民が行政庁の処分又は裁決に対して取消訴訟を提起しようとする場合には,訴訟の適法性に関して,原告適格,被告適格,管轄,出訴期間など行政事件訴訟一般に特有の訴訟要件,個別の法律が 定める訴訟要件,処分又は裁決の違法性に関して処分又は裁決の根拠となる個別の法律の実体的な処分要件等,検討を要する問題が多くあるため,取消訴訟については,その訴訟準備に相当の期間を要することが少なくなく,原告にとって,3か月以内に提訴するのは困難との指摘がされていたところである。
引用元:「法務省 平成16年改正行政事件訴訟法の概要」
そのため、改正法では主観的出訴期間を3ヵ月から6ヵ月へ延長し、正当な理由が認められた場合は出訴期間を超えても取消訴訟をすることが可能になりました。
また、改正法では出訴期間の延長だけでなく取消訴訟が可能である人物の条件(原告適格)なども認められる範囲を広くして、行政事件訴訟をより利用しやすくなるような仕組みになりました。
多くの人々が法律的な権利を平等に行使できるように、今後も行政事件訴訟制度の見直しが入る可能性があるかもしれません。
取消訴訟に関しては行政事件訴訟法第14条でも取り上げたように、取消しを訴える対象は『処分』と『裁決』の2種類に分かれており、同法の第3条で明確な規定がされています。
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
引用元:「行政事件訴訟法 第3条」
そもそも取消訴訟とは行政事件訴訟の一種になりますが、簡単な図で分類を表すと以下の通りです。取消訴訟は主観訴訟の一つである抗告訴訟に分類されます。
主観訴訟は客観訴訟の対比になり、個人の権利や利益を保護するための訴訟として該当するものです。
抗告訴訟とは、国や地方公共団体などが国民を法律的に支配する権利(公権力)の行使に関する不服が対象になります。また、行政側と国民が対等な当事者として訴訟する場合は当事者訴訟に該当します。
処分の取消しの訴えは、国や地方公共団体などの行政機関(行政庁)が行った処分を裁判所に訴訟提起して取り消してもらうことになります。具体的な事例については『取消訴訟の事例』で取り上げますが、懲戒免職などが処分の一例になるでしょう。
裁決の取消しの訴えは、審査請求などの不服申立てに対して行政機関が行った裁決・決定などの行為を取り消してもらうことを目的とします。ただし、以下で規定されている通り取消訴訟においては『処分の違法を理由として裁決の取消しを求めることができない』との条件が追加されています。
(取消しの理由の制限)
第十条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
引用元:「行政事件訴訟法 第10条」
最後に取消訴訟を実際に起こしたケースについて、処分と裁決の両方に分けて見ていきましょう。
ビール会社が発売した製品に係る酒税について、税率適用区分に該当すると判断して所轄税務署長に更正の請求を行ったものの、各税務署長より『更正をすべき理由がない旨の通知処分』を受けて審査請求も棄却されたため、処分の取消しを求める訴訟が提起されました。
酒気帯び運転を理由に懲戒免職になった公務員が、市を相手に処分の取消訴訟を提起しました。一審と二審の判決ではいずれも処分を取消す判断をしており『飲酒運転の中では比較的軽く、免職処分は重すぎて違法である』との見識により、市の敗訴が確定しました。
県教育委員会の教員採用汚職事件で押収したフロッピーディスクの資料について、県警側が非公開にした判断に対して妥当とした裁決結果への取消訴訟になります。
市議選で無効票だった投票用紙を有効票だと判断した裁決に対する取消訴訟になります。当選を無効にされた議員が審査請求を申し立てた結果、無効票を有効票にした判断は妥当ではないとの判決が下されて、有効票にした裁決が違法だとして取消しになりました。
このように、国や地方公共団体より不利な処分を受けても取消訴訟を提起すれば覆される可能性もあります。合法や違法の判断が微妙な事例であれば、再審査によって判断が変わりやすくなるケースもあり得ると思われます。
取消訴訟の出訴期間と役割について解説しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。改正前と比較して出訴期間が長くなっているため、昔よりは訴訟の提起がしやすくなっている環境でありますが、当事者は法律的な問題を把握した上で対応した方が良いでしょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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