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KL2020・OD・037
建物の退去・明け渡しの際に起こる原状回復トラブルは、入居者とオーナー間で度々起こる問題です。原状回復義務の負担割合は、建物の入居年数や使用前の状態も考慮して決められるものです。原状回復の基本的な考え方は「通常使用・経年劣化以外の汚れを入居者負担とする」というものです。
今回は、原状回復の基準と負担割合を決める際の目安についてご紹介します。
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目次
部屋を借りるなどの賃貸借契約を結ぶ際、入居者は原状回復義務を負うことになります。入居者が負担する原状回復の範囲は、「通常使用や経年劣化による汚れ・破損」以外のものです。この項目では、原状回復が入居者負担となる基準や契約の制限などをご紹介します。
入居者の原状回復義務とは、民法598条によるものです。
第五百九十八条 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。
引用元:民法
原状回復で入居者負担となる修繕は以下の表の通りです。原状回復で入居者負担となるケースは、入居者が通常使用や経年劣化以外の理由で建物を汚したり破損したりした場合です。通常使用・経年劣化による汚れ・破損はオーナー側負担で修繕をしなければならないと考えられています。
部屋の箇所 | 入居者負担 | オーナー負担 |
壁 | 手入れ不足による拡大した壁紙クロスのカビやシミネジや釘穴など下地ボートの張替が必要な破損 | 日焼けなどによる壁紙クロスの変色下地ボードの張替が不要な範囲の穴(画鋲やピンによるもの) |
床 | 手入れ不足によるカビやシミ(飲み物をこぼして放置した等) | 家具の設置などによる床やカーペットのへこみ |
キッチン | 通常使用の範囲を超える油汚れやスス汚れ | 冷蔵庫の後ろなどの壁紙の汚れ |
お風呂 | 給湯器を空焚きして壊してしまったなどの場合 | 経年劣化による故障通常使用の範囲内のタイルのカビ等 |
入居者に原状回復義務を負わせる契約を結ぶ際には賃貸借契約に特約として明記し、入居者への事前説明と合意が必要となります。また、原状回復の負担割合が一方的に入居者にかかるようにする契約は無効とされています。
第十条 民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
引用元:消費者契約法
原状回復の負担割合は、建物の元々の状態(築年数や入居前の状態)と耐用年数(建物を何年使用したか)が大きく関わってきます。この項目では原状回復費用の負担の考え方についてご紹介します。
人が居住している建物は、どうしても家具の使用や設置による汚れや破損が発生するものです。家具を設置すればその際に床に凹みができたり、画鋲やピンによって壁紙が多少傷ついたりすることがあります。お風呂やキッチンなどの設備も長年使用していれば故障することもあるでしょう。このような通常使用や経年劣化による軽度の汚れ・破損は月々の家賃や設備費で回収できていると考えられています。
もしも、入居者に上記以外の理由で修繕を行う場合は契約書に明記した上で、入居者が部屋を契約する際に事前説明を行わなければなりません。
賃貸物件などの不動産は、状態や地価などによって物件価値自体が変動するものです。そのため、原状回復の際も入居前の物件の状態や経年劣化などを考慮して負担割合を決める必要があります。国土交通省では、入居者の原状回復の負担割合を以下のように規定しています。
下記グラフから、入居年数によって負担割合は低くなっていくことが分かります。これは、汚れや破損に対して、建物自体の経年劣化や価値の減少が考慮されるからです。
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
原状回復トラブルは、入居時と退去時に物件の状態を正確に把握しておくことで防げます。この項目では原状回復トラブルに巻き込まれる前に知っておくべきポイントについてご紹介します。
入居前はなるべく引っ越しの荷物を入れる前に以下のポイントを確認しましょう。
入居前に上記箇所に汚れ・破損があった場合は必ず写真などで記録をして、建物のオーナーに連絡・確認をしましょう。また、引っ越してから気づいた場合も入居してからなるべく早い段階でオーナーに連絡して、汚れ・破損があったという事実を伝えてください。
次の物件への引っ越しが決まり退去する場合はオーナーと共に物件の現状確認を行ってください。現状確認の際は、なるべく一緒に立ち会って汚れ・破損の状態を写真などに記録しておくことをお勧めします。
もしも、原状回復費用で高額なハウスクリーニング代金などを請求された場合は、オーナーに修繕の内訳や見積もりの説明を求めましょう。
原状回復費用などは損害賠償請求や少額訴訟に発展する場合もあります。
原状回復費用で高額なハウスクリーニング代金を請求された、支払いに納得がいかないという場合は早い段階で国民生活センターや弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
数年間、住居として利用した住まいのトラブルは気が滅入ってしまいますよね。入居者は部屋を利用したのは事実なので、オーナー側の請求を強く断れないのも事実です。また、オーナー側からすれば次の入居者に貸すための負担をなるべく減らしたい気持ちもあります。
双方の思惑があるなかで感情的になってしまうと問題が複雑化してしまうこともあります。お金が絡むトラブルこそ、冷静に穏便に解決策を考えていきましょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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