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KL2020・OD・037
婚姻関係はあるが別居中であるという場合、夫婦間の扶養義務の1つとして、配偶者は共に婚姻費用(生活費など)を分担する義務があります。
子供を連れて別居した場合や、別居から離婚まで長期化しそうなときは、生活費への不安は尽きませんよね。
そんなとき、相手に婚姻費用の支払いを求める方法が、家庭裁判所に申し立てる『婚姻費用分担請求調停』です。
この記事では、婚姻費用分担請求調停の申立て方法について、必要な書類や費用、流れをわかりやすく解説します。
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目次
ここでは、婚姻費用分担請求を行う前に知っておきたい以下の点などについて解説します。
婚姻費用とは、別居中であっても夫婦であるかぎりは生じる婚姻費用分担の義務に基づいて配偶者に支払う、生活を維持するために必要な費用のことです。
具体的には次のものが含まれます。
相手に婚姻費用の支払いを求める法的手続きが、家庭裁判所に対して『婚姻費用分担調停』を申し立てる方法です。
表:調停・審判・裁判の違い
調停 |
調停委員を交え相手と話し合いを行う場 |
審判 |
調停不成立となった内容に対して、当事者の陳述と家庭裁判所の調査官の調査に基づいて裁判官が判断を下す |
裁判 |
双方で口頭弁論や請求の根拠・証拠を提出するなどして争う場で最終的に裁判官が判断を下す |
調停は、あくまで当事者同士の話合いによる解決を模索する手続きです。具体的には、裁判所の調停委員を交え、申立人と相手方の双方で婚姻費用の分担額を話し合い、決定していくことになります。
調停の中で話合いが成立しない場合は、調停は不調となり終了し、裁判所の裁定手続きである審判手続に移行します。
この手続きは、裁判官が証拠に基づいて事実を認定し、これを前提として妥当と思われる婚姻費用の分担額を決定することになります。
調停を申立てず、双方の話し合いで婚姻費用の分担額を決めることも可能です。
しかしこの場合も後々のトラブルを回避するため、婚姻費用について合意内容を書面化することは必須でしょう。
もし可能であれば、相手の協力を得て合意書面を公正証書化しておくことをおすすめします。
というのも、単なる合意文書に基づいて強制執行手続きを行う場合、一度、債務名義を取得するための訴訟手続を行わなければならないのですが、執行受諾文言付の公正証書として作成すれば、このような訴訟手続を省略することが可能だからです。
もっとも、実際の処理の中で相手が公正証書の作成まで協力してくれることは多くありませんし、この点を無理にお願いして費用額の合意自体ができなくなってしまっては本末転倒です。
したがって、無理をする必要はありません。最低限、合意内容を書面化しておけば大丈夫です。
婚姻費用がいくらもらえるのかは、まずは双方の収入や生活状況等の事情を考慮しながら当事者でよく話し合って決定していくのが通常でしょう。
双方の話合いであれば、ある程度柔軟に金額を決定することができるといえます。
何もないところから費用額を決定するのは非常に難しいでしょう。当事者間の話合いの場で参考とすべき資料として、裁判所が実務で利用する『婚姻費用算定表』があります。
引用元:裁判所|養育費・婚姻費用算定表
この算定表には、子供の数・年齢ごとに、夫婦双方の収入を目安としたおおむねの金額が明記されています。
そのため、当事者間での協議の取っ掛かりとして、この算定表に基づいて話合いを進めるのが最も適切と思われます。
例えば妻の年収を100万円とした場合に、目安となる金額はこちらです。
子供の年齢 |
子供の数 |
夫の年収400万円 |
夫の年収500万円 |
夫の年収600万円 |
0~14歳 |
1人 |
2~4万円 |
4~6万円 |
4~6万円 |
2人 |
4~6万円 |
6~8万円 |
8~10万円 |
|
15~19歳 |
1人 |
4~6万円 |
6~8万円 |
6~8万円 |
2人 |
4~6万円 |
6~8万円 |
8~10万円 |
【参考元】裁判所|養育費・婚姻費用算定表
婚姻費用算定表の見方を解説します。
引用元:裁判所|養育費・婚姻費用算定表
※枠と数字は編集部による強調
夫婦双方の金額が交わる箇所が、目安となる金額です。
ただし、これはあくまで目安ですので、実際には個々の事情を加味して当事者間で話合い、柔軟に決めていくのが通常でしょう。
家庭裁判所で行う『婚姻費用分担請求調停』の申し立てには、書類と申立手数料が必要です。
ここでは、婚姻費用分担請求を申立てる方法と、必要な書類・費用について解説します。
婚姻費用分担請求に必要な書類は以下のとおりです。
婚姻費用分担請求の申立書 |
裁判所のHPからダウンロード可能(後述) 指定された箇所を記入して提出 |
夫婦の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) |
|
申立人の収入関係の資料 |
源泉徴収票・給与明細・確定申告などの写し 可能であれば相手の収入を証明できるもの |
【参考元】裁判所|婚姻費用の分担請求調停
場合によっては、追加書類の提出が求められることもあります。
申立書などの提出書類は相手に開示されますので、内容に注意して記入しましょう。
婚姻費用分担請求の申立てにかかる費用はこちらです。
収入印紙 |
1,200円分 |
申立書に添付・郵便局やコンビニで購入可能 |
切手代 |
800円(裁判所による) |
決まった内容を通知するための切手代・各裁判所によるため要確認 |
調停の申し立てにかかる手数料は収入印紙1,200円と切手代です。切手代に関しては、管轄の裁判所に確認しましょう。
ここでは、支払いが決まるまでの期間と、婚姻費用分担請求調停の細かい流れについて解説します。
婚姻費用分担請求調停の場合は、支払いが決まるまでおおよそ3~4ヶ月かかることが多いようです。調停が不成立となり審判に移行した場合は、半年~1年程度かかることもあります。
調停はおおよそ1~2ヶ月に1度、平日の昼間に行われ、1回の期日におおよそ2時間ほどかかります。
双方の言い分がすんなりまとまればすぐに成立するケースもありますが、話し合いが平行線になった場合、調停は不調により終了して審判に移行することもあります。
こうした場合は弁護士に依頼することも検討するべきでしょう。
まずは、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所で、婚姻費用分担請求調停の申し立てを行います。
申し立てをすると、おおよそ2週間ほどで裁判所から、申立人と相手の双方に調停期日が記された『呼出状』が届きますので、指定日に裁判所へ行きます。
第1回目の調停は申し立てからおおよそ1ヶ月後です。
調停では、源泉徴収票や直近3ヶ月ほどの給与明細など、収入が確認できる資料の持参を要求されますので、忘れないようにお持ちください。
婚姻費用分担請求調停の流れは以下のとおりです。
調停は1回あたり約2時間で、夫婦各々に対し調停室で30分程度の聞き取りが2回ほど行われることになります。
家庭裁判所到着後は、それぞれ申立人待合室、相手方待合室で、調停が行われるのを待つことになります。
待合室、調停室では、夫婦が顔を合わせないように配慮されているため、基本的に相手に会うことはありません。
調停は申立人から、相手それぞれが交互に、調停室で調停委員や裁判官と話すことになります。
調停が開始されると、調停の進め方などの説明後、婚姻費用分担請求調停を申し立てた経緯を聞かれたり、質問を受けたりすることになります。しっかりと事実を伝えましょう。
2度目に調停室に呼ばれた後は、相手の主張と算定表に基づく目安の金額が伝えられます。双方がこれらのやり取りの中で合意すれば、1度きりで終わることもあります。
成立しなければ2回目の調停が行われることになりますが、流れは1回目と同様です。
調停が成立した後の流れはこちらです。
調停が成立した場合は、合意内容をまとめた調停調書が作成され、夫婦の前で読み上げられます。この際、以下の内容を必ず確認してください。
調停調書は、裁判の確定判決と同じ効力を有しています。調停調書で定められた義務が守られない場合、強制執行手続を実行することも可能です。
なお、調書作成後は必ず調停調書の謄本を郵送申請して保管してください。このときかかる手数料は以下のとおりです。
調停調書の申請費用
収入印紙 |
ページ数×150円×必要な通数 |
切手 |
82円切手(ページが5枚を超える場合は92円以上) |
調停が不成立となった場合、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が証拠に基づいて事実を認定し、認定された事実を踏まえて妥当な金額を決定します。
裁判所による審判が確定した場合には、調停調書と同じように強制執行手続を行うことが可能となります。
そのため、審判で確定した義務が履行されなければ、調停調書の場合と同様に、相手の給与差し押さえなど強制執行を行うことも可能となります。
なお、裁判所の審判に対しては、審判の送達日から2週間以内であれば、高等裁判所に対して即時抗告(不服申立)をすることが可能です。
この手続きを行えば、審判は直ちに執行し、確定することはありません。
即時抗告した場合に、弁護士なしでも裁判を行うことは可能ですが、単に感情的な不服申立てを行っても、判断が覆る可能性はほとんどありません。
そのため、この場合は、弁護士に依頼して説得力ある主張を行うべきでしょう。
ここでは、婚姻費用や調停に関する注意点などを解説します。
婚姻費用分担請求調停は、別居を開始した後、相手が話合いに全く応じないようであれば、すぐに申立てることを推奨します。
というのも、婚姻費用分担の調停を申し立てても、相手が申し立て前の期間に遡って支払い義務を認めるということは稀ですし、審判手続に移行してもそのような遡及的な支払い義務が認められるということは稀です。
そのため、相手の任意の支払いが期待できないのに婚姻費用分担の調停の申し立てをしないという期間が長引けば長引くほど、婚姻費用が支払われない期間が多くなり、結果的に損をしてしまうということが十分あり得るからです。
なお、婚姻費用の調停手続自体も、早急に解決するケースもなくはないですが、通常は半年以上といった相当程度の期間がかかりますので、この点も無視できません。
前述した通り、調停が成立するまではかなりの時間がかかるでしょう。
事前にある程度の生活費を用意しておくことはもちろんですが、調停の申し立てと同時に『調停前の仮処分』や『審判前の保全処分』の申し立てを行うことも、検討に値すると思われます。
調停前の仮処分 |
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審判前の保全処分 |
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実際にこのような保全処分を行うべきかどうかは、まず1度弁護士に相談してみてください。
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離婚を考えているものの、相手配偶者が話し合いに相手が応じてくれないという場合、それでも離婚したいのであれば『離婚調停』を申し立てることになります。
婚姻費用分担の調停であれ、離婚調停であれ、いずれも申立書や事情説明書等の書類が必要になるので注意が必要です。
婚姻費用分担請求と離婚調停を同時に申し立てる場合、メリット・デメリットがあります。
同時申立てのメリット |
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同時申立てのデメリット |
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相手の言い分が受け入れられず、納得がいかない場合は、どこかで落とし所を見極めることが重要です。
婚姻費用は相手の収入や状況によっても左右されるため、調停不成立で審判に移行した際に裁判官が決定した金額が、希望よりも少なくなってしまうことがあるためです。
また、調停では算定表を目安として金額が決まりますので、調停を申し立てたことによって、夫婦間で話し合っていた時より少額になってしまうこともありえます。
いずれにしても、交渉の段階から金額が妥当であるか、調停を行うことでかえって減額されないか、調停中にどこで妥協するかは、1度弁護士に相談してみることをおすすめします。
ここでは、婚姻費用について弁護士に相談するメリットと、相談した方がよいケースについて解説します。
婚姻費用の請求は、調停成立まで時間がかかります。弁護士に相談する大きなメリットは、早期解決できる可能性が高まる点です。
調停前から依頼すれば、弁護士が相手と直接交渉することで、調停にならない、あるいは、審判や訴訟に発展する前の解決が期待できます。
このほか、次のようなメリットがあります。
弁護士に依頼すれば、よりあなたの希望が叶う確率が高まりますし、手続きや交渉も任せられるので、精神的な負担も軽減されるでしょう。
もし、あなたが次に当てはめるのであれば、弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士への依頼には費用がかかりますが、早い段階で相談することで、審判前や訴訟前に解決して、結果的に費用の負担が少なくて済むこともあります。
いずれにしても、まずは無料相談などを活用して、1度弁護士に相談してみることをおすすめします。
離婚が成立するまでは、児童扶養手当や医療費の免除が受けられないため、経済的な負担が大きくなります。
できるだけ早く婚姻費用を支払ってもらうため、早い段階から調停と保全処分を申し立てたいですね。
離婚を扱った実績の多い弁護士に相談することで、あらゆる解決方法を提案してもらえます。解決策や見通しがわかれば、離婚自体もスムーズに進められるでしょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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