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KL2020・OD・037
賃貸物件を借りた際は、退去時に原状回復義務が発生します。原状回復義務は通常使用・経年劣化以外の理由による建物の汚れ・破損を入居者負担で修繕することです。普通に生活をしている範囲での汚れ・日焼けなどの自然現象や経年劣化による破損はオーナー側が負担するものです。
今回は、原状回復の判断基準やトラブルの対処法などをご紹介します。
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目次
原状回復トラブルが数多く発生しているなか国土交通省では、原状回復を以下のように定義しています。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
この項目では、上記の定義をより具体的にご説明します。
オーナーが原状回復費用などを入居者に負担させるには以下の要件が必要です。
【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
基本的に、入居者負担となるのは手入れ不足によって生じた汚れや下地ボートなどの張替をしなければならないほどの破損と考えていいでしょう。通常使用の範囲での汚れ、日焼けなどの自然現象・経年劣化による破損はオーナー側の負担になります。
部屋の箇所 | 入居者負担 | オーナー負担 |
壁 | 手入れ不足による拡大した壁紙クロスのカビやシミネジや釘穴など下地ボートの張替が必要な破損 | 日焼けなどによる壁紙クロスの変色下地ボードの張替が不要な範囲の穴(画鋲やピンによるもの) |
床 | 手入れ不足によるカビやシミ(飲み物をこぼして放置した等) | 家具の設置などによる床やカーペットのへこみ |
キッチン | 通常使用の範囲を超える油汚れやスス汚れ | 冷蔵庫の後ろなどの壁紙の汚れ |
お風呂 | 給湯器を空焚きして壊してしまったなどの場合 | 経年劣化による故障通常使用の範囲内のタイルのカビ等 |
参照元:スーモジャーナル|知らないと損する! 泣き寝入りしない「敷金トラブル」
賃貸住宅などで部屋を明け渡した後に発生する原状回復トラブルは、毎年14,000件ほど発生しているといわれています。原状回復トラブルは、退去時に高額のハウスクリーニング代金を請求されたり、敷金の返金がされないようなトラブルです。
この項目では、原状回復トラブルの相談件数と具体的な相談事例などをご紹介します。
賃貸住宅での敷金の返金や原状回復に関するトラブルは年間平均14,000件余り発生しています。また、近年では入居者(借主)側に原状回復への関心が高まっているやDIYブームなどによって、微増傾向にあると考えられています。
年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 相談件数
15,518
14,222
13,921
13,913
14,228
13,016(前年同期 13,242)
<相談事例>賃貸物件を借りる際、敷金として家賃4ヶ月分の金額(56万円)を支払った。契約時、原状回復費用として敷金から家賃約2ヶ月分の金額が引き去りとなり、残りは返金されると説明を受けた。しかし、退去時には23万円以上がリフォーム代金として請求された。相談者は夫婦2人で居住しており、子供もいないため大した汚れはないと主張した。 |
<結果>賃貸物件の通常使用や経年劣化による汚れ・破損はオーナー側が負担すべき修繕費であり、原状回復費用には含まれない。今回の相談事例ではリフォーム費用のうち、クロス張替費用や塗装費用、諸経費分(18万円)が相談者に返金された。 |
原状回復トラブルの内訳は、賃貸物件を次の入居者に明け渡すためのハウスクリーニング代金です。賃貸物件を借りた際には、退去時に通常使用や経年劣化以外の汚れや破損を修繕してオーナーに返すという原状回復義務が発生します。原状回復のための費用は賃貸を借りる際の敷金で賄うのが通常です。
しかし、オーナー側・入居者側に敷金と原状回復義務の解釈に齟齬(そご)があった際、少額訴訟などの裁判に発展する場合もあります。
人が居住している物件には汚れや破損が自然と発生します。そのため、賃貸物件などを契約する際、ある程度の修繕等が発生することを前提に損害の担保として敷金を支払います。
この項目では、原状回復トラブルに巻き込まれないための知識についてご紹介します。
入居時、物件状態を確認するためのチェックリストが配られ、汚れや破損がないかどうかを確認しますよね。この際の確認は必ず行い、気になった箇所は写真にとっておきましょう。また、後から気づいた場合も、必ずオーナーに連絡しておくなどコミュニケーションをとっておきましょう。
また、オーナーと物件状態に関してやり取りをした際は、「いつ」・「どのようなこと」を連絡したのかなどの記録をとっておきましょう。
部屋を借りるための賃貸借契約を交わす際、敷金や礼金を支払いますよね。「敷金」とは家賃滞納や、原状回復費用の担保として事前に支払うお金のことです。原状回復費用が敷金で預かった金額を上回った場合は追加で請求され、また、敷金よりも下回った場合は余り分のお金は返金されます。「礼金」は部屋を借りるに当たってオーナー側に支払うお礼金なので、返金されません。
入居者(賃借人)はオーナー(賃貸人)に対して原状回復義務があります。原状回復義務とは民法545条によるもので、賃貸借契約を解除した際に原状回復をした状態で不動産の返還を行うというものです。
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
引用元:民法
原状回復は、借りる前の状態に戻すのではなく、通常の生活による消耗や経年劣化を考慮して判断します。もしも、修繕が発生した場合は、まず敷金として預かったお金から支払われます。原状回復費用が敷金で足りなかった場合は追加で請求することになります。
第三百十六条 賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
引用元:民法
入居者が建物を退去・明け渡しをする際に原状回復するために負担するのは「通常の使用方法によるもの・経年劣化」以外の理由で建物を汚したり壊したりした場合の原状回復費用です。この項目では、退去時に原状回復費用を請求された際の対処法をご紹介します。
引っ越して、部屋を退去・明け渡しをする際に、現状確認を行いますよね。その際は、面倒がらずに必ず大家や管理会社などのオーナーと一緒に立ち会って現状確認を行ってください。その際、修繕が必要な箇所がないかどうか聞き、指摘を受けた場合は応じる・応じないに限らず写真に撮るなどして記録に残してきましょう。
オーナーが原状回復費用を入居者に負担させること自体は違法・無効ではありませんので、オーナーから高額な原状回復費用を請求された場合は、ひとまずどのように修繕を行ったのか内訳や説明を求めましょう。
修繕を行う前の状態や修繕後の状態を写真や文書で説明を求めたり、修繕をする際の見積もり等の説明を聞いたりすることで、修繕が入居者負担で行う必要のあるものであったのかを判断します。判断基準は「入居者負担となる汚れや破損の基準」でお伝えしたものを参考にしてください。
もしも、請求された原状回復費用が高額なものであったり明らかに入居者負担とは考えられないものであった場合は、後の項目「原状回復トラブルの相談先」でお伝えする相談先を利用して法的措置をとることも考えましょう。
また、オーナー側が原状回復費用を請求するために、少額訴訟などを起こすこともあります。その場合も慌てず、弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
高額なハウスクリーニング代金を請求されるような原状回復トラブルは、日々使用に気をつけていた入居者にとって納得の出来ない問題ですよね。原状回復義務があるとはいえ、退去時の修繕などの費用は原則として敷金を担保として行われるものですし、通常使用の範囲の汚れ・破損はオーナー側が負担すべきものです。
もしも、あなたが原状回復トラブルに巻き込まれてしまった際は、この項目でご紹介する相談先を利用して解決策を考えていきましょう。
原状回復のために高額なハウスクリーニング代金等を請求されて困っている
問題解決のために何をしたらいいかわからない、話を聞いて欲しい
請求された費用が入居者負担で妥当なのか判断して欲しい
上記のような場合は、国民生活センターに相談することをおすすめします。国民生活センターでは、原状回復トラブルの解決方法の提案や妥当性の判断を行なってくれます。国民生活センターへ相談するには電話相談、もしくは最寄りの消費生活センターの窓口で行うことができます。
原状回復トラブルは相手から少額訴訟などを起こされる場合もあります。不当な理由で高額な原状回復費用を請求された場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
賃貸物件の契約や契約解除の際に気になるのが原状回復トラブルですよね。入居時・退去時は汚れや破損がある箇所をよく確認して記録し、自分の住んでいた部屋の汚れ・破損が通常使用や経年劣化の範囲であるかどうかをよく考えましょう。通常使用や経年劣化の範囲の汚れ・破損はオーナー側の負担です。
この記事が、原状回復トラブルに巻き込まれた方にとって解決のための手がかりとなれば幸いです。
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KL2020・OD・037
本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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