所得税の更正の請求手続きをする方法|初めてでも分かる手順と前知識

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
所得税の更正の請求手続きをする方法|初めてでも分かる手順と前知識

所得税で更正の請求に必要な条件や手続きについてご存知でしょうか。更正の請求には、対象条件や提出期限などが設けられており、誰でも簡単に手続きができるものではありません。

税制改正によって、納税者は、請求範囲の拡大や期間延長などメリットを受ける可能性があるため、基本的な知識を心得た上での手続きが望ましいと言えます。

そこで今回は、初めての人でも安心して手続きができるよう、所得税で更正の請求をするときの手順や前知識などについてご紹介します。

所得税の更正の請求について

所得税の更正の請求について

まずは、所得税で更正の請求手続きをする意味や条件などを確認していきましょう。更正の請求手続きには、誤って支払うべき税額よりも多い金額で申告していたものを訂正する意味があります。

対象となる条件

所得税の更正の請求手続きが必要な条件は主に3つです。

  • 申告した所得税が正しい額よりも多かったとき
  • 還付金の申告が正しい額よりも少なくなったとき
  • 純損失額の申告が正しい額よりも少なくなったとき

修正申告との違い

更正の請求と修正申告は、似ているようですが大きな違いがあります。具体的な違いとして、更正の請求は正しい税額よりも『多く』申告していた場合に行い、修正申告は正しい税額よりも『少なく』申告していた場合に行います。

用意するもの

手続きに必要なものは、『必要事項を記載した申請書』と『更正の請求の根拠を示す書類』の2つです。お金にかかわる手続きですから、誤りや記載漏れがないように注意したいところです。ちなみに、申請するための手数料はかかりません

【用意するもの】

  • 所得税及び復興特別所得税の更正の請求書
  • 必要に応じて更正の手続きの根拠を示す書類

所得税の更正の請求手続きをする際の前知識

所得税の更正の請求手続きをする際の前知識

所得税の更正の請求手続きをする際の前知識をご紹介します。手続き前に、以下の項目に該当するものがないか確認しておきましょう。

必ずしも請求が認められる訳ではない

所得税の更正の請求は、すべてのケースで認められるわけではありません。申告書の内容などを税務署で確認し、適法と判断された場合のみ請求が通ります。

更正の請求期間が延長されるケース

平成23年12月2日に税制改正が行われたことにより、更正の請求ができる期間は1年から原則として5年に延長されました。ただし、平成23年12月2日より前に法定申告期限が来る国税については、請求期間が1年のままとなるため注意が必要です。

増額更正の期間延長

上記税制改正により、増額更正の期間が3年から5年に延長されました。平成23年12月2日以降に法定申告期限が来る国税についての増額更正が対象となります。そのため、法定申告期限が平成23年12月2日以前のものについては適用されません。

更正の請求範囲の拡大

平成23年12月2日までは、申告書に金額を記載していた分のみの『更正の請求』が認められていました。しかし、税制改正により、一部の税については『更正の請求』で事後適用が可能となったのです。以前よりも申告者に優位なルールへ改正されたと言えます。

所得税で更正の請求が必要な証拠書類の提出

平成24年2月2日以降から、更正の請求を行う際には『事実を証明する書類』の添付が必要となりました。国税庁のホームページでも、更正の請求を行う場合、その事実を証明する書類を確実に添付するようにといった記載がなされています。

虚偽の内容を記載して提出した場合

更正の請求手続きで提出する申告書に虚偽を記載した場合、罰則が適用されるというルールが新たに設けられました。罰則の内容は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金と決して軽いものではありません。更正の請求手続きを行う際は注意しましょう。

更正の請求手続き方法

更正の請求手続きの方法は、所定の申告書に必要事項を記入した後に管轄の国税局へ提出すれば完了です。提出方法は、国税局へ直接赴くか、郵送、もしくは電子申告の3種類があります。

更正の請求手続き方法

申告書を記入する

所得税で更正の請求手続きをするには、まず規定の書類を印刷してから必要事項を記入します。金額の記載は、該当する項目のみで問題ありません。ちなみに、還付される税額の受取り口座は、管理人を指定していない限り本人名義であることが必須です。

所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

引用元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

管轄の国税局へ提出する

申告書の記載が完了したら、あなたの住んでいる地域を管轄している国税局へ書類を提出しましょう。提出方法は、国税局へ直接行くまたは郵送、電子申告による提出の3種類があります。

税務署へ直接行く

住んでいる地域により、管轄の地域が異なります。地域によって提出先の税務署が異なりますので、該当する税務署を事前に確認しましょう。

郵送による提出

更正の請求手続きは郵送による手続きも可能です。作成した申請書と修正内容を証明する書類を添付して、管轄の税務署へ送りましょう。

電子申告による提出

更正の請求手続きは、電子申告による提出も可能です。自宅のパソコンから手続きができるため、とても便利な提出方法です。ただし、月曜日~金曜日の8時30分~24時までの間しか利用できないため注意が必要です。

更正の請求書・修正申告書作成コーナー(国税庁)

引用元:更正の請求書・修正申告書作成コーナー(国税庁)

請求書の提出期限

更正の請求手続きには提出期限が設けられています。平成23年度以降の申告分については、法定申告期限から5年以内が提出期限となります。なお、提出期限日が土日祝日に該当する場合は、その翌営業日が期限となるようです。

対象内容 提出期限
平成23年度以降の申告 法定申告期限から年以内
平成22年度分の申告 法定申告期限から年以内

ちなみに確定申告の必要のなかった人が申告を求められ、還付を受けるための申告をする場合、提出期限は平成23年12月2日以降と以前で異なります。

対象内容 提出期限
平成23年12月2日以後に申告書を提出 提出した日から年以内
平成23年12月1日以前に申告書を提出 提出した日から年以内

更正の請求に必要な申告書の書き方

更正の請求手続きに必要な申告書の書き方についてご紹介します。記載の際、名前や住所などの基本情報や申告理由、還付される税金の受取り口座情報は必須となります。請求額の計算書欄については、必要箇所のみの記載で問題ありません。

更正の請求に必要な申告書の書き方

参照元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

名前や住所などの基本情報と申告理由

まず始めに、名前や住所などの基本情報を記載します。また、更正の請求手続きをした理由と、根拠となる書類の内容についても漏れなく記載しましょう。

更正の請求に必要な申告書の書き方

参照元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

【更正の請求に至った理由例】
更正の請求に至った理由例をいくつか記載しています。申請の際、当てはまる内容を参考に記載するとよいでしょう。

更正の請求に必要な申告書の書き方

引用元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

該当項目に正しい金額を記載する

該当項目のみ、正しい金額を記載していきます。還付される税額は、下図の右下にある青枠内の数字の差額分となります。

更正の請求に必要な申告書の書き方

参照元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

還付される税金の受取り口座情報

還付される税金の受取り口座情報を記載します。口座名義は原則として本人名義のみ有効となります。家族であっても、他の名義では受取れませんので注意してください。

更正の請求に必要な申告書の書き方

参照元:所得税及び復興特別所得税の更正の請求書

課税対象の所得金額を算出する方法

課税される所得額は、以下の方法で算出することが可能です。更正の請求手続きで、具体的な金額を算出する際にご活用ください。

【課税される所得金額の計算方法】

課税対象の所得金額を算出する方法

引用元:確定申告書の記載例(国税庁)

所得の合計額-所得から差し引かれる金額の合計=課税対象の所得金額(千円未満の端数は切捨て)

【課税額の算出方法】

課税対象の所得金額 課税額の算出方法
0円 課税額なし
1,000円~1,949,000円 課税対象の所得金額×0.05
1,950,000円~3,299,000円 課税対象の所得金額×0.1-97,500円
3,300,000円~6,949,000円 課税対象の所得金額×0.2-427,500円
6,950,000円~8,999,000円 課税対象の所得金額×0.23-636,000円
9,000,000円~17,999,000円 課税対象の所得金額×0.33-1,536,000円
18,000,000円~ 課税対象の所得金額×0.4-2,796,000円

※課税額の算出方法の計算式で出た金額が課税額となります。

まとめ

所得税で更正の請求手続きを行うには、対象となる条件や提出期限内に当てはまっているか確認した上で進めなければなりません。また申告内容に虚偽があった場合、1年以下の懲役刑や罰金刑を受けることになるため注意が必要です。あなた自身の利益を守るためにも、更正の請求手続きは慎重かつ丁寧な作業を心がけて取組みましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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