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KL2020・OD・037
パワハラに悩んでいる方、パワハラによって精神疾患になった方は、労災申請をすることで治療費が補償されます。パワハラの労災は退職後も申請できる場合があるので、パワハラで退職してしまったという方も労災申請を諦めないでください。
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目次
パワハラでうつ病などの精神疾患になり、治療が必要になった場合、業務災害として労災の申請ができます。労災とは、労働者が業務上の事由又は通勤によって怪我・病気などになった場合に保障する「労災保険制度」のことです。
パワハラなどでうつ病などの精神障害になった場合の労災認定には以下の要件があります。
①認定基準対象精神障害を発病
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
引用元:厚生労働省
上記の各要件は次の項目から詳しくお伝えします。
労災の認定基準対象となる精神障害は以下の表の通りです。
分類コード | 疾病の種類 |
F0 | 症状性を含む器質性精神障害 |
F1 | 精神作用物質使用による精神および行動の障害 |
F2 | 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害 |
F3 | 気分[感情]障害 |
F4 | 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害 |
F5 | 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群 |
F6 | 成人のパーソナリティおよび行動の障害 |
F7 | 精神遅滞〔知的障害〕 |
F8 | 心理的発達の障害 |
F9 | 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害 |
なお、うつ病などは、気分[感情]障害に該当します。各分類に該当する詳しい病名は厚生労働省の資料をご覧ください。
心的負担の程度の判断は、『生死に関わるような「特別な出来事」に該当するか』もしくは『それ以外の「具体的な出来事」からの総合評価』によって判断されます。各判断基準の詳細を以下にまとめました。
「特別な出来事」とは、生死に関わる極度の苦痛、強姦などのセクハラ行為を受けたなどが挙げられます。また、発病直前の1ヶ月に160時間を超えるような長時間労働、3週間に120時間程度の時間外労働を行なった場合なども含まれます。
「特別な出来事」以外は「具体的な出来事」として、個別に総合評価で判断されます。精神疾患の発症原因は人によって様々なので一概に言うことはできません。総合評価の共通事項は、以下の通りです。
(総合評価における共通事項)
1 出来事後の状況の評価に共通の視点 出来事後の状況として、表に示す「心理的負荷の総合評価の視点」のほか、以下に該当する状況のうち、著しいものは総合評価を強める要素として考慮する。 1 仕事の裁量性の欠如(他律性、強制性の存在)。具体的には、仕事が孤独で単調となった、自分で仕事の順番・やり方を決めることができなくなった、自分の技能や知識を 仕事で使うことが要求されなくなった等。
2 職場環境の悪化。具体的には、騒音、照明、温度(暑熱・寒冷)、湿度(多湿)、換気、臭気の悪化等。 3 職場の支援・協力等(問題への対処等を含む)の欠如。具体的には、仕事のやり方の見直し改善、応援体制の確立、責任の分散等、支援・協力がなされていない等。 4 上記以外の状況であって、出来事に伴って発生したと認められるもの(他の出来事と評価できるものを除く。)恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価
1 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価される場合であって、出来事の後に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労 働)が認められる場合には、総合評価は「強」とする。
2 具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価される場合であって、出来事の前に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労 働)が認められ、出来事後すぐに(出来事後おおむね10日以内に)発病に至っている場合、又は、出来事後すぐに発病には至っていないが事後対応に多大な労力を費しその 後発病した場合、総合評価は「強」とする。
3 具体的出来事の心理的負荷の強度が、労働時間を加味せずに「弱」程度と評価される場合であって、出来事の前及び後にそれぞれ恒常的な長時間労働(月100時間程度 となる時間外労働)が認められる場合には、総合評価は「強」とする。
引用元:厚生労働省
評価は、「強」、「中」、「弱」で判断されます。これらの総合評価がおおむね「強」と判断されたとき、労災認定されます。
精神疾患の発症理由がパワハラであるという判断は、労働基準監督署の調査に基づいて行われます。企業が労災申請のための証明印を拒否した場合でも、申請があると労働基準監督署が労災認定のための調査に入ることになります。
パワハラによる労災はどのような場合に認定されるのでしょうか。この項目では実際に労災認定がされた事例をご紹介します。
総合医療販売店に勤務していたB氏は、課長に昇格、新規顧客獲得などの部署に異動となった。異動先部署の上司から連日のように叱責、「辞めてしまえ」、「死ね」などの暴言、書類を投げつける等のパワハラ被害にあっていた。B氏は約3ヶ月後に「うつ病」と診断された。
上司からの言動はパワハラ行為であり、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」の心理負荷にあてはまるため「強」と判断された。また、パワハラ行為の内容の悪質性や頻度などから総合評価も「強」と判断された。このことから、B氏は労災認定された。
労災は、本人またはその家族が労働基準監督署に行って申請書をもらいます。申請書は、労働者労働災害保険請求書(5号、7号、8号)です。労災の申請用紙は厚生労働省のホームページからもダウンロードできます。
精神疾患の治療を受けている病院から、治療日数と医師の証明印の入った診断書をもらいましょう。労災の申請書には、事業主(企業)の証明印と労働保険番号の記入が必要です。企業の協力が得られない際に、診断書を出すことで申請を有利に進めることができます。企業の協力が得られない場合や、退職後の申請については後の項目でお伝えします。
各書類は請求先が異なるので注意してください。まず、5号の申請用紙は病院に提出してください。7号・8号の申請用紙は「労働者労働災害保険請求書」と一緒に労働基準監督署に提出します。
労災は退職後に申請することも可能です。また、労災申請中に退職をした場合でも労災は継続されます。
休職などで一度申請している状態で退職した場合、退職によって労災の給付がなくなることはありません。
退職してから労災の手続きをする場合は、労働基準監督署で請求用紙をもらう必要があります。請求用紙が揃ったら、必要事項を記入し、事業主(企業)に証明印を押してもらいます。
企業がパワハラなどを認めたくないために、証明印を押さないという場合があります。その際は、労働基準監督署に協力を得られなかった旨を伝えて事業主の証明を空白のまま提出することができます。
悪質なパワハラは、さまざまな罪に問われる可能性があります。この項目ではパワハラの種類やパワハラによって問われる可能性のある罪についてご紹介します。
厚生労働省ではパワハラには6つの型があるとしています。
また、性的な言動の場合はセクハラ(セクシャル・ハラスメント)、妊産婦や子育て中の方にパワハラをした場合はマタハラ(マタニティ・ハラスメント)にもなります。
パワハラはさまざまな罪に問われる可能性のある行為です。パワハラで問われる可能性のある罪については、以下の表の通りです。
名誉毀損罪(刑法第230条) | 3年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金。 |
侮辱罪(刑法第231条) | 拘留または科料 |
脅迫罪(刑法第222条) | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金。 |
暴行罪(刑法第208条) | 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
傷害罪(刑法第204条) | 15年以下の懲役、または50万円以下の罰金 |
強要罪(刑法第223条) | 3年以下の懲役 |
パワハラによって退社に追い込まれた、精神疾患になり働けなくなった場合はパワハラ加害者と企業に損害賠償として慰謝料を請求することができます。パワハラで慰謝料を請求し、交渉が決裂した場合には訴訟になりますので、弁護士に相談することをお勧めします。
パワハラ被害にあったら必ず相談することからはじめていください。パワハラを相談をするということは、単にパワハラ行為を「言いつける」ということではなく、あなたがパワハラ問題を解決しようと働きかけた証拠にもなります。パワハラ問題の解決には身近な人から巻き込むことが必要なので、相談窓口などは必ず利用するようにしてください。
具体的な相談先には、次のようなものがあります。
パワハラで精神疾患にかかった場合は、労災申請をしましょう。
労災は、企業が拒否したとしても申請することができます。
労災認定が通ると、治療費の補填を受けることができますので積極的に活用していきましょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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