私人逮捕ができるのはどんなとき?

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
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私人逮捕ができるのはどんなとき?

私人逮捕(しじんたいほ)とは、一般人が現行犯を逮捕することをいい、常人逮捕とも呼ばれます。現行犯の場合は誤認逮捕の恐れも少なく、なおかつ身柄を拘束する必要性が高いため、逮捕状を持たない一般人でも逮捕することが可能です(刑事訴訟法213条)。

犯人の身柄確保のために必要な制度ではありますが、相手にケガをさせて暴行罪や傷害罪に問われたり、誤認逮捕をしたりしてしまうなどいくつか注意しなければいけないこともあります。今回は、私人逮捕の概要についてご説明していきます。

私人逮捕ができる2つの条件

私人逮捕ができる2つの条件

冒頭で軽く触れたように、私人逮捕はいついかなる場合もできるわけではありません。ここでは、私人逮捕が認められるための2つの条件を確認していきましょう。

現行犯である

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

引用元:刑事訴訟法213

現行犯は緊急性が高いため、警察であっても逮捕状なしに逮捕ができます。ただ、現行犯でなければ、仮に目の前の人物が罪を犯したことを知っていたとしても、私人逮捕はできません。

犯人の住居や氏名が明確でない、または逃亡の恐れがある

30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯を私人逮捕するには、次の条件を満たしていればなりません。

  1. 犯人の住所または氏名がわからない
  2. 犯人が逃亡する恐れがある

三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。

引用元:刑事訴訟法217条

つまり、犯人の名前や住所を知っている場合や、逃亡の恐れが無い限り私人逮捕はできないということです。

私人逮捕の事例

私人逮捕の事例

私人逮捕の事例をご紹介します。

3日午後、福岡県内の中学校で、男子生徒(14)が、男性教員(46)の顔を拳で数回殴る暴行を加え、顔面打撲の傷害を負わせたとして、この教員が生徒を傷害容疑の現行犯で常人逮捕した。

 県内では、先月29日、私立高校の男子生徒(16)が男性講師(23)を蹴る動画がインターネット上に投稿され、福岡県警が生徒を傷害容疑で逮捕する事件があったばかり。福岡地検は2日、この生徒について「勾留は不必要と判断した」として釈放した。

引用元:Yahoo!JAPANニュース

教員を殴った男子生徒が教員に私人逮捕をされた事例です。教師は生徒の名前や住所を知っているはずですので、本来は私人逮捕が認められないはずですが、男子生徒が教師に傷害を負わせるほど暴れていたため仕方なく逮捕した可能性もあります。

私人逮捕後にやるべきこと

ここまででは、私人逮捕できる条件やその事例などを確認してきました。以下では、現行犯の身柄を拘束した場合に何をすれば良いのか、ということをお伝えします。

司法警察員・司法巡査に犯人の身柄を引き渡す

逮捕後は、司法警察員・司法巡査に現行犯の身柄を引き渡しましょう。やること自体はシンプルで、身柄を拘束した上で警察を呼ぶだけです。手が空いていなければ、近くにいる人に呼んでもらうのも良いでしょう。

警察署等に同行する

司法巡査は、必要に応じて逮捕者に官公署への同行を求めることができます。

司法巡査は、犯人を受け取つた場合には、逮捕者の氏名、住居及び逮捕の事由を聴き取らなければならない。必要があるときは、逮捕者に対しともに官公署に行くことを求めることができる。

引用元:刑事訴訟法215条2項

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 逮捕の事由

などに関していくつか質問をされると思いますので、事件解決のためにも協力したいところです。

私人逮捕をする際に注意したいこと

私人逮捕をする際に注意したいこと

暴力沙汰になったり揉め事になったりする可能性もあるため、私人逮捕は冷静に行いたいところです。最後に、私人逮捕をする上での注意点を確認しておきましょう。

不要な暴力を振るわないようにする

犯人が興奮していて手をつけられない状態になっているときなどは、暴力に発展してしまう恐れもあります。逮捕する側もやむなく暴力を振るってしまうこともあるかもしれませんが、場合によっては暴行罪・傷害罪に問われる恐れもあります。

可能な限り暴力は避けた方が無難です。

速やかに司法警察員に身柄を引き渡す

身柄を拘束したらすぐに警察に通報しましょう。勝手に現行犯の身柄を一定期間拘束してしまうと、逮捕監禁罪に問われる恐れがあります。

不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

引用元:刑法220条

速やかに警察を呼ぶことを徹底しましょう。

誤認逮捕は避ける

誤認逮捕だった場合、逮捕された側が受けた精神的苦痛の補填として慰謝料請求をされる可能性があります。

思い込みから私人逮捕をすると誤認逮捕のリスクがあるので、犯罪を目の前で目撃して確実に現行犯である場合のみ私人逮捕を考えるようにしましょう。

周囲に協力を求める

全て1人で何とかする必要はありません。複数人で取り押さえができれば、暴力に頼らないでも身柄を拘束しやすいでしょう。また、私人逮捕にこだわらずに、こっそり警察を呼んで警察がくるまで待つという選択肢もあります。

犯人が刃物等を持っていればこちらもタダでは済まないので、状況を冷静に判断し対応を考えていきたいところです。

まとめ

まとめ

今回は、私人逮捕できる条件や逮捕後にやるべきこと、逮捕する際に注意したいことなどをお伝えしてきました。

確かに私人逮捕ができれば、現行犯を取り逃がさないで済みますが、暴力に巻き込まれたりするリスクもあるので、可能であれば先に通報してしまって警察を待つのが得策かと思います。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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