展示会商法の手口と対策|断りきれず高額契約をしてしまった際の対処法

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
展示会商法の手口と対策|断りきれず高額契約をしてしまった際の対処法

展示会を開催すると、企業は顧客の反応を直接見られますし、顧客側も楽しみながら興味のある商品を見比べられます。ただ、中には展示会商法という手口もあり、「見ていくだけでも」とターゲットを会場に呼び出し、不当に高額な商品を購入するまで家に帰らせてくれない場合もあります。

今回は、展示会商法の手口と事例、問題点や被害に遭った際の対処法をお伝えします。

展示会商法の手口

展示会商法の手口

展示会商法の手口をご説明します。

「見るだけでも」とターゲットに声をかけ、展示会会場に連れて行く

展示会商法の勧誘員は、「見るだけでもいかがですか」「無料のプレゼントをお配りしています」などと言い、ターゲットを会場に連れ込もうとします。美人やイケメンを勧誘員に使い、ターゲットが要求に応じやすいよう工夫している場合もあるので気をつけなければなりません。

勧誘方法は路上で声をかける、電話勧誘をする、ポストにビラを入れるなどがあります。

展示会商法で悪用されやすい商品

展示会商法では、次の商品がよく悪用されます。

  • 絵画|男性がターゲットになりやすく、本物かどうかはわからない
  • スーツ|こちらも男性がターゲット。よくお似合いです、などとおだててくる場合も
  • 着物|女性が狙われやすいようです。断れない人は要注意
  • 宝石|こちらも女性狙われがち。不要なものは断りましょう

無理やり契約をさせる

会場についてきたターゲットが高額な商品を購入するように仕向けていきます。

  • ターゲットが首を縦に振るまでしつこく商品を勧める
  • 複数人で囲んで帰れないようにする
  • 荷物や靴を預かり帰れなくする
  • 恫喝する

消費者が納得して自分の意思で商品を購入する分に関しては問題ありませんが、展示会商法では法外に高額な商品を消費者の意思に関係なくむりやり購入させるところに問題があります。

展示会商法の問題点

展示会商法には次のような違法行為が見られます。

勧誘である目的を告げない

展示会会場が営業所とみなされない場合は訪問販売とみなされ、業者は勧誘時に第一声で次の3点を消費者に伝える義務(氏名等の明示義務)を負います。

  • 業者の名称
  • 商品、サービスのセールスである旨
  • 商品やサービスの種類

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。

引用元:特定商取引に関する法律第3条

購入するまで帰れない

集団で囲む、預かった道具を返さないなどして、帰りたがっているターゲットを家に帰さないことを退去妨害といいます。退去妨害があった場合は消費者取消権が発生し、拘束された時間の長さに関係なく契約を取り消せます。

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一  当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

二  当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

引用元:消費者契約法第4条

恐怖を感じさせる

他人に不安を感じさせることを威迫といいます。展示会商法の場合は、複数人で囲んだり、脅したりする行為が威迫とみなされる可能性があります。

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。

引用元:特定商取引に関する法律第6条7項3号

展示会商法の事例

展示会商法の事例をご紹介します。

事例1

以前購入したことのある呉服店から旅行の招待を受け、1万円を払って参加した。誘われた時は、旅行先で着物の展示会があるが見るだけで購入は勧めないとのことだった。ところが、現地の旅館では無理やり展示会場に連れて行かれ、入口で履き物を取り上げられ、会場内では担当者3人に取り囲まれトイレに行くにも監視の人がピタリと付いてきた。結局、断り切れず150万円の着物を契約した。

(60歳代 女性 家事従事者)

引用元:国民生活センター

この事例の場合、もし消費者が「帰らせてください」「いりません」と言っても監視を辞めなかったのであれば、退去妨害に該当する可能性があります。展示会商法に限らず、不要なものを勧められた際は断固として断ることが大切です。

事例2

7年前、呉服店で小物を購入したところ、その1カ月後に着物の展示会に誘われ、担当者が自宅に迎えに来た。「買うつもりはない」と伝えたのに、会場でスタッフ数名に囲まれ、2点の反物のうちどちらがいいかと聞かれ「こっちが良い」と答えただけで買ったような雰囲気になり、契約してしまった。その後も、「見るだけでいいから」と誘われて参加すると、長時間勧誘されて断りきれず契約することを何度も繰り返し、総額1千万円以上も使ってしまった。(70歳代 女性)

引用元:国民生活センター|「見るだけでいいから」と勧誘され…展示会で何度も着物を購入

氏名等の明示義務違反と退去妨害に該当する可能性があります。また、この事例の被害者は何度も同じ手口に引っかかり、1千万円以上使ってしまいました。一度騙されると「カモリスト」に個人の情報を掲載され、再び狙われる可能性があります。

不要なものはきっぱり断り、一度でも買ってしまわないよう心に決めることが大切です。

展示会商法に遭わないための対策

展示会商法に遭わないための対策

次の対策を徹底することで、被害に遭うリスクを減らしていきましょう。

最初の提案を断る

展示会に行きさえしなければ、帰れなくされることもありません。「見るだけも良いので」という最初の提案をきっぱりと断るようにしましょう。

怪しいと思ったら走って逃げる

会場に移動するまでに相手に不審な点を感じたり、怪しい場所に連れて行かれそうになったりしたらその場の雰囲気や流れに関係なく走って逃げましょう。会場に行くと、荷物を預かられたり、囲まれたり、しつこく勧誘されたりするのでさらに状況が悪くなります。

知らない場所に行く際は持ち物を預けない

怪しい場所に行く際は、上着、カバン、靴などを預けないことが大切です。監禁をする際はターゲットの所持品を確保するのが基本ですから、絶対に渡さないようにしましょう。

展示会商法に遭ってしまった際の対処法

展示会商法に遭って不用品を購入してしまった場合、すぐにクーリングオフをしたり、専門家に相談したりしましょう。

クーリングオフをする

展示会商法は上記の通り訪問販売に該当する可能性があり、その場合、書面を受け取ってから8 日間はクーリングオフが可能です。

専門家に相談する

被害に遭った際は一人で悩まず、警察や国民生活センターに相談しましょう。被害額が高額な場合は、弁護士に依頼して被害額を返還してもらうことも考えたほうが良いかもしれません。

まとめ

展示会商法では、「見ていくだけでもいかがですか?」という最初のオファーを断ることが大切です。無警戒に知らない人についていき、知らない場所に入るのはやめましょう。もし不要な高額商品を購入してしまった場合は、すぐにクーリングオフをしたり、専門家に相談したりしましょう。

展示会が終わって居場所がつかめなくなれば、お金を返してもらうのがより困難になります。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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