前科=前歴じゃない!2つの違いを解説|就職が不利になることはあるの?

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
前科=前歴じゃない!2つの違いを解説|就職が不利になることはあるの?

『前科』という言葉は聞いたことがあるでしょう。しかし、『前歴』はあまり聞きなれない単語ですよね。『前科』と『前歴』、似ていますが意味は異なります。

ここでは2つの違いやそれぞれに生じる制限などについてお話していきます。

前科と前歴の二つの違いとは?

前科と前歴の二つの違いとは?前科と前歴、それぞれの意味を確認しておきましょう。

前科とは

前科(ぜんか)とは、過去に有罪判決を下され、刑罰を受けたことをいいます。ただ、前科は正式な法律用語ではないので、明確な基準は存在しません。

前歴とは

前歴とは、警察・検察に犯罪の被疑者として疑われ、捜査の対象になった事実を言います。

前歴とは犯罪を起こし警察に逮捕されると、検察が裁判を必要と判断した場合、その申請を裁判所へ行います。不起訴とは検察が「起訴しない(裁判をしない)」と判断されることにより下されるものです。

不起訴理由には大きく以下の3種類があるとされていますが、いずれの理由であっても前歴にはなります。

  • 起訴猶予
  • 嫌疑なし
  • 嫌疑不十分

前科と前歴はつくタイミングが違う

まず『前科』『前歴』はそれぞれつくタイミングが違います。前歴は逮捕された場合につくものであり、前科は有罪判決を受けた場合につくという点です。

前科は裁判を経て有罪判決を言い渡されることによりつくものですが、前歴は不起訴となった場合につくため裁判にはなりません。

 

起訴

裁判

前科がつく

起訴される

有罪判決がくだる

前歴がつく

起訴されない

裁判にならない

前科がついた場合は職業制限を受ける

もし、犯罪歴の有無を聞かれた際に前科などを隠して就職すると、企業に知られてしまった場合は経歴詐称で解雇されてしまうなどの可能性が出てきます。

また、一部の職業(例えば、具体的には、国家公務員、看護師、警備員、弁護士や教師など)には欠格事項というものが存在し、前科があるとこれに該当する可能性もあります。

では、前科や前歴を持っているとどのような制限が生じることになるのでしょうか。

弁護士

弁護士法第七条の欠格事由として“禁錮以上の刑に処せられた者”と定められています。

第七条 次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
【引用元:弁護士法第七条

国家公務員・地方公務員

国家公務員法第三十八条、地方公務員法第十六条の欠格条項として“禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者”と定められています。

第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

一 省略

二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

【引用元:国家公務員法第三十八条

教師

学校教育法第九条には“禁錮以上の刑に処せられた者“と定められています。

第九条 次の各号のいずれかに該当する者は、校長又は教員となることができない。

一 省略

二 禁錮以上の刑に処せられた者

【引用元:学校教育法第九条

看護師

保健師助産師看護師法第九条において、次の各号のいずれかに該当する者には免許を与えないことがあるという旨で“罰金以上の刑に処せられた者“と定められています。

第九条 次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。

一 罰金以上の刑に処せられた者

【引用元:保健師助産師看護法第九条

警備員

警備員は警備業法の第三条、警備業の要件という項目に“禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者”と定められています。

罪を犯して刑務所に収監されてから釈放されてから、もしくは執行猶予判決で釈放された人は期間満了してから5年間の間、警備員になることはできないということになります。

第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。

一 省略

二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

【引用元:警備業法第三条

上記にあるものがすべてではありませんが、前科による職業制限があることは留意して下さい。他方、前歴については法律上職業の制限はありません。

結婚・就職などに制限はかかるのか?

前科や前歴がついていることによって結婚や就職、離婚など生活上の不利益が起こるのではないかと心配される方も多いのではないでしょうか。

しかし、日常生活に影響はあまりありません。結婚や離婚、また家のローンを組むことも可能ですし、就職や転職も限られたもの以外では基本的に自由に選ぶことができます。

制限がかかるのは海外旅行

前科や前歴により起こりえる制限としては、海外旅行といえるでしょう。また旅券法第13条の1号~3号にはこう記載されています。

第十三条 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
二 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾こう引状、勾こう留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
【引用元:旅券法第13条

国内での旅行に関してはそこまでの規制はないようですが、国外となると入国に厳しい国も出てきます。特に厳しい国としてアメリカが挙げられるのではないでしょうか。

旅券法第13条の1に定められている規定により、渡航先の法規で入国の許可が下りない恐れが出てくるかと思われます。

実際、在日米国大使館のホームページには「逮捕されたことがあるがビザ無しで渡米ができるか?」といった質問が掲載されています。

そして、逮捕歴や前科について必要とされる情報を告知しないまたは虚偽の申告を行った場合、旅行者は入国を断られるだけではなく永久に入国の許可を下されない場合もあるということが掲載されています。もし海外旅行を考えているかたがいらっしゃるのであれば一度入国に関して問い合わせてみましょう。

前科になるタイミング

前科になるタイミング前科がつくタイミングは次の通りです。

有罪判決が下されたとき

主に死刑・禁錮・懲役・罰金・拘留・科料を指し、このうちどれかの判決が言い渡された時点で前科がつくことになります。

なお、有罪判決に執行猶予がついても同様です。他方、実刑判決を言い渡された場合は刑期を終えるまで刑は消えません。

※執行猶予とは“裁判で定められた期間に罪を犯さなければ刑の言い渡しを失効する”というものですが、決して無罪で釈放されるというものではありません。

略式命令を受けたとき

略式命令とは簡略化された手続きにより裁判を開かず有罪判決を受けるものです。

罰金刑を科す場合のみ認められ、本人が略式手続に同意していることが条件です。略式命令であっても有罪判決であるため前科がつきます。

前科と前歴によって生じる問題

前科と前歴によって生じる問題上記では前科によって職業や海外旅行について制限が生まれる場合があることについてお話しましたが、ほかにはどのような問題が生じるのでしょうか。

前科・前歴は消えない

まず、前科や前歴は消えることはありません。この2つは検察などの捜査機関の犯罪人名簿に記録として保管され、再び罪を犯した際、裁判での判決などにおいて考慮される情報となりえるからです。

捜査機関以外に各市町村の犯罪人名簿に記載されることとなりますが、こちらは刑法第三十四条の記載にあるように“禁錮刑に処されていた場合、再度罰金以上の刑に処されずに十年を経過すれば刑の言い渡しが失効される”と定められているため、市町村の犯罪人名簿からは抹消されることとなります。

罰金の場合は定められている期間が5年と禁錮刑に比べて短いですが、同様に罰金以上の刑に処されないことを条件として刑の失効がされるようです。

しかし、捜査機関の犯罪人名簿からは年数が経っても抹消されることがありません。

再び罪を犯して起訴された場合は以前より重い判決を言い渡されることが予想されます。

履歴書への記載の要否が問題となる

就職や転職などで履歴書を書く機会があると思いますが、履歴書に賞罰欄がある場合、前科・前歴を記載すべきかどうか判断を要することがあります。

企業が前科・前歴を調査することは極めて困難であるため、前科前歴の事実を秘匿するということも1つの方法とは思われます。

しかし、これを秘匿して採用されたものの、後日に前科前歴の事実が明らかとなった場合は解雇などの処分があり得ると思われます。

実際に記載すべきかは前科前歴の内容と応募先企業次第と思われます。

国家資格を有する権利を失う

前科がつくと、国家資格を有する権利を失う可能性があります。

国家資格の中には一定の刑の宣告を受けたことが欠格事由となると定められているものがあるからです。

前歴がつくデメリットとは

前歴がつくと、次のようなデメリットが予想されます。

  • 警察庁・検察庁等に記録が残る
  • メディアへの報道・投稿等がされた場合、第3者に検索される恐れがある

上記に起因するトラブルに関しては、注意しなければいけないでしょう。

とはいえ、再犯の場合に前歴は前科ほど不利な情状となることはありません。前歴が有るからといって、次に罪を犯したら直ちに実刑となるということもありません。

前科や前歴は他人から分かるのか?

前科や前歴は他人から分かるのか?犯罪歴を周りに知られてしまうことは避けたいものですよね。

社会復帰を果たし就職や転職を考えているときなど、その事実が及ぼす影響などで採用されにくいのではないかと不安な方もいるかもしれません。

では、外部の人が犯罪人名簿などを見て前科や前歴を知られてしまうことなどはあり得るのでしょうか。

厳重に『犯罪人名簿』に保存されているため外部には漏れない

捜査機関や市町村に記録として保管されることになる犯罪歴ですが、この記録は誰でも閲覧ができるわけではなく、担当の職員しか見ることができません。

また担当の職員であってもこの内容を外部に漏らすことは禁止されているので、外部へ漏れる心配もないと言えるでしょう。

前科や前歴といったものは再犯があった場合の裁判で刑の重さを考慮するときなどの資料として使われるためのものであり、一般人や企業には開示されません。

つまり前科など、本人が話さなければ分からない場合がほとんどであるといえます。

マスコミによる実名報道で判明することはある

犯罪人名簿から情報が洩れることがなくとも外部に知られてしまうことも。その一例がテレビやインターネットのニュースによる実名報道です。

日本では実名報道が認められており、大きな事件であったときはほとんどがニュースで報道されます。

自身が話さなくとも、ニュースなどで流れた名前を知ってしまう、もしくは覚えていたなどの理由で周りの人たちに知られてしまうというケースも考えられます。

ネットによる拡散で露呈する

現代では、インターネットの普及によりさまざまな情報を手に入れることが可能となりました。

便利な情報だけではなく、起こった事件や被疑者の名前などがネットに一度でも流れ出してしまうと収集のつかない事態になってしまいます。

そのサイトを削除したいと思っても、まずは削除要請を出すことが必要となりますしその要請に応じてもらえない場合は裁判所への申し立てが必要となります。

インターネットの削除要請に関する問題がある際は早いうちに弁護士へ相談しましょう。

前科を付けないためにできること

前科を付けないためにできること前科と前歴を比べてしまうと、やはり社会生活に戻れたときに職業の制限などがある前科は不利といえるかと思います。前科を付けないためにはどのような方法があるかについてまとめました。

不起訴・無実を目指す

逮捕されてしまったとしても、不起訴になれば前歴という扱いに留まることになります。

前歴がついてしまっても国家資格などの制限は生まれないため職業選択などの際に生じる制限も少ないと言えるでしょう。

起訴されてしまった際も無実となれば前科は付きませんが、日本の刑事裁判では起訴されると高い確率で有罪になると言われています。

逮捕されたら迅速に弁護士へ相談する

逮捕後に迅速に弁護士へ相談する必要があります。弁護士を呼ぶには料金が発生するのではないかと思われるかもしれませんが、当番弁護士であれば、一度だけ無料で呼ぶことができます。

当番弁護士はあなたが置かれている状況やその後の流れ、取り調べに関する助言や黙秘権の存在などを教えてくれるため、違法な捜査を抑止することにも繋がります。

その当番弁護士にこれからも弁護を依頼したいと考えた際はそのまま私選弁護士としてお願いすることもできますし、別の私選弁護士を選ぶ際にも1つの基準にもなるため弁護士への相談は有効な手段であると言えます。

まとめ

前科と前歴は言葉が似ていても意味はまったく違うものです。

  • 前歴:逮捕されたとき・不起訴処分になった場合につく
  • 前科:裁判で有罪判決になったとき・略式起訴となったとき・執行猶予で釈放された場合につく

裁判で有罪を言い渡されてしまうと前科がつき、その前科によって職業や国家資格を保有する権利が制限されることとなります。

当番弁護士の存在などについても記載しましたが逮捕されてから頼れる弁護士の存在は大きいと言えるでしょう。

早い段階で弁護士へ相談することが解決への大きな一歩になるかもしれません。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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編集部

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