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KL2020・OD・037
近年インターネットの普及により、ネット上での特定の個人や企業に対する誹謗中傷に値する書き込みが増え、名誉毀損として刑事事件や民事訴訟に発展する事が増加しています。
名誉毀損は人の名誉を毀損(傷つける)することだということはあなたもご存知でしょうが、実際にどんなことが名誉毀損になったりならなかったりするのか、具体的なことを知っている人はそんなに多くはないと思います。
ここでは名誉毀損について実例を踏まえながら、具体的に解説をしていきたいと思います。
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目次
名誉毀損罪は刑法第230条に規定されています。
刑法第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損したものは、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
引用元:刑法第230条
条文だけだと少し難しいので解説しますと、「公然」とはその内容が他者へと広がっていく可能性がある状態のことを言い、「事実を摘示」というのは人の名誉を傷つけることを言ったりネットに書き込んだりして示す事を言います。ここで言う「事実」は真実ということではなく、真実か虚偽かは問われません。後述しますが、「事実を摘示し」と明記されているのは侮辱罪と区別するためであって、真実性は問われないのです。
そもそも名誉毀損の名誉とは何かということですが、その定義は曖昧ですが主に以下のような意味合いがあります。
概要
例
内部的名誉
その人の真価
人知れず善い行いをしているなど
外部的名誉
その人の社会的地位や評判、事実
真面目な生活を送っているなど
名誉感情
その人が自分に対して持っている価値観など
プライド、自尊心
引用元:刑事事件弁護士ナビ
名誉毀損罪に類似している罪で侮辱罪というものがあります。
刑法第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用元:刑法231条
名誉毀損と侮辱罪との違いは「事実を摘示」しているかしていないかというところになります。例えて言うなら、「あの人は浮気をしている」というのは、嘘か本当かを別にして事実を言っているので名誉毀損に当りますが、「バカ野郎」は事実を言っていることにはならないので侮辱罪に該当します。
名誉毀損罪と侮辱罪はどちらも親告罪となっています。被害者の告訴がなければ刑事事件にもなりませんし逮捕されることもありません。
刑法第230条の2にはこのように規定されています。
刑法第230条の2 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
引用元:刑法第230条の2
つまり、名誉毀損に該当する事があったとしても、
この3つに当てはまれば、刑事罰や損害賠償などの対象になることはありません。
事実の公共性とは、問題とされる発言などの表現行為が「公共の利害に関する事実」に関することで、世間に公表しなければ公共に対して利害が生じるような場合です。
目的の公益性は、事実を摘示した動機が公益を図ることであることを言います。例えば、政治家の資質を問うためにスキャンダルを報じたり不正を暴露したりすることを指します。
真実性・真実相当性とは、摘示した事実が真実であると証明される(できる)こと、真実の証明ができなくても真実と信じるに足りる相当な理由があることを言います。
これらの3つの要件を満たせば名誉毀損で罰せられなくなりますが、これらの要件の立証責任は被告側(訴えられた側)にあります。
冒頭でも軽く触れましたが、名誉毀損は刑事事件と民事問題のどちらにも発展することがあります。名誉毀損であることに違いはありませんが、裁判所に訴えるか警察に訴えるかで民事か刑事に分かれます。
最終的に賠償責任や刑事罰を決めるのは同じ裁判所ですが、民事事件の場合と刑事事件の場合では判断基準が違います。
刑事事件 |
民事事件 |
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事実の摘示 |
事実を提示し、社会的評価を低下させた場合のみ名誉毀損罪が成立する |
事実の提示だけではなく、意見や評論であっても、社会的評価を低下させれば名誉毀損による不法行為が成立する |
意見や論評 |
事実の摘示以外で社会的評価を低下させた場合は侮辱罪が成立する |
|
名誉感情の侵害 |
社会的評価の低下が無ければ、名誉毀損罪も侮辱罪も成立しない |
民事上の名誉毀損は外部的名誉のみ。ただ、名誉感情の侵害として不法行為が成立することがある |
故意・過失 |
故意の場合のみ名誉毀損罪が成立 |
過失であっても不法行為として成立する |
公然性 |
公然に名誉が毀損されていないと成立しない |
公然性は要件とはなっていないものの、社会的評価を低下させていることが要件となるため、公然で行われていなければ、名誉毀損として成立する可能性は低い |
基本的にどのような容疑で逮捕されたとしても、次のような流れで進みます。
未成年が罪で逮捕された場合は、検察までの捜査段階までは成人と同じ手続きになりますが、その先は成人とは大きく異なってきます。
名誉毀損罪の平成27年の起訴・不起訴件数と、直近14年の起訴・不起訴件数の推移は以下のグラフの通りです。
見ていただくとお分かりいただける通り、名誉毀損罪の起訴率は30%未満でかなり低くなっています。また、検挙数の推移も一時期減少したものの平成27年には800件を超えています。
名誉毀損で告訴され刑事事件に発展した場合、有罪判決を受けてしまうと前科が付くことになります。それを阻止するためにはどうすれば良いのでしょうか。
日本の刑事裁判では、起訴されてしまうと約99.9%有罪になってしまうと言われています。ですから、逮捕されてしまった場合は起訴されないようにしないといけません。
起訴されないためにすべき事の1つに被害者との示談交渉があります。被害者に慰謝料などを支払うことで示談してもらい、被害届を取り下げてもらうのは非常に重要なことです。示談が成立していれば、起訴される可能性は大きく減ります。
ただ、被害者との示談交渉は慎重に行う必要があります。謝罪・弁済を行うことはもちろん、示談を提案するタイミングも見計らう必要があります。
示談交渉に失敗してしまうと、その後示談を成立させることは非常に困難になりますので、刑事事件を取り扱う弁護士に相談した上でどのように進めていくか決めることをオススメします。
名誉毀損は主に言葉で人の信用を傷つける行為になりますから、法律でも判断しにくい部分もあります。もしあなたが名誉毀損で訴えられそうになっているなら、一度弁護士へ相談してみてください。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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