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KL2020・OD・037
著作権侵害を理由とする請求や公訴の時効は6ヶ月~20年間です。そもそも時効とは、定められた期間が過ぎれば請求権を失い、又は罪に問われないことをいいます。時効には、民事における時効と刑事における時効の2種類があり、細かく時効に関する規定が定められています。
区分 |
請求権/罪名 |
時効 | |
民事 |
損害賠償請求権 |
損害や侵害者を知った時から | 3年 |
著作権侵害があった時から | 20年 | ||
不当利得の返還請求権 |
10年 | ||
刑事 |
親告罪 |
犯人を知った時から間 | 6ヶ月 |
非親告罪 |
懲役10年未満の罪にあたるような著作権法違反の行為があった時から |
5年 | |
懲役5年未満の罪にあたるような著作権法違反の行為があった時から |
3年 |
引用元:知的財産高等裁判所|知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(全国地裁第一審)
また、裁判所のデータを見ると、著作権を含む知的財産権侵害に関する民事事件の新受件数は年間500件前後あることがわかります。
今回は民事と刑事それぞれの時効になるまでの期間を確認したうえで、著作権を侵害されたときにできる4つの対処法をご説明します。
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目次
民事とは、個人間の法的な争いのことをいいます。著作権者が侵害者に対して、特定の請求をする場合が民事です。著作権者は、侵害者に対して次の請求をする権利があります。各請求の内容に関しては『著作権侵害をされたときの対処法』にて後述します。
この中でも、損害賠償と不当利得の返還に関しては時効がありますので、著作権で民事に関する時効についてはこの2点を覚えておきましょう。なお、差止請求権については、著作権をゆうしている限りいつでもできると考えられているため、時効の問題は生じません。名誉回復などの措置請求は、不法行為に基づく請求をすることが通常なので、損害賠償請求の場合と同様と考えられています。
著作権を侵害されることで損を被った場合は損害賠償請求ができます。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法第709条
損害賠償の請求権の時効を確認していきましょう。民法第724条では、被害者が損害や加害者を知ったときから3年間と、不法行為のときから20年経過した場合に時効となると規定されています。
なお、厳密には、20年の期間は時効ではなく、除斥期間と呼ばれます。両者の違いは、民事上の時効は、請求を受ける側の援用により初めて効力を生ずるものである一方で、除斥期間は、期間の経過により自然と効力が生ずる点にあります。
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法第724条
著作権を侵害することで侵害者が利益を得ていた場合、その利益を著作権者に返還せねばなりません。不当利益の請求権に関しては、民法第703条に規定があります。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
引用元:民法第703条
財産に関して請求できる権利を債権といいます。不当利益の返還請求権は財産に関する請求なので、10年間で時効になります。
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
引用元:民法第167条
刑事とは、犯罪を犯した個人を裁判にかけ刑罰を課すか判断する手続きのことを指します。著作権を侵害した場合は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が課せられる可能性があります。刑事に関しては、親告罪と非親告罪で時効の規定が違いますので、それぞれ確認していきましょう。
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:著作権法第119条
親告罪とは、被害者(著作権者)が告訴する必要がある罪のことです。著作権侵害に関して侵害されると親告罪となる権利には次のようなものがあります。
刑事訴訟法第235条では、犯人を知った日から6ヶ月を経過すると親告罪の告訴ができなくなるとあります。
親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
一 刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
二 刑法第二百三十二条第二項 の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条 の罪につきその使節が行う告訴
○2 刑法第二百二十九条 但書の場合における告訴は、婚姻の無効又は取消の裁判が確定した日から六箇月以内にこれをしなければ、その効力がない。
引用元:刑事訴訟法第235条
被害者(著作権者)の告訴がなくても警察が取り締まれる罪が非親告罪です。著作権で非親告罪が適用されるのは次のような場合です。
非親告罪の事項に関しては、懲役の期間に応じて細かく規定されていますが、著作権を侵害した場合の懲役は最長でも10年以下なので、時効は3年か5年です。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
○2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
引用元:刑事訴訟法第250条
著作権を侵害された場合、著作権者は侵害者に対して次の4つの請求ができます。
差止請求をすると、著作権の侵害をやめるよう命ずることができます。具体的には、違法アップロードされた動画を削除させたり、複製した本を回収させたりできます。
債権ではないため、差止請求に時効はありません。
例えば、海賊版のDVDを販売されて、本来得られたはずの売上を得られなかった場合など、著作権侵害により損害が生じたときには損害賠償請求ができます。著作権の場合、具体的な被害額を計算しなくても、複製物の数量や売上額から推定して請求できるようです。
侵害者が海賊版のDVDを販売することで得た利益を返還させる場合など、不当に得た利益を返還させる請求を不当利得返還請求といいます。侵害者が著作権侵害に気付いていなかった場合は、利益のうち残っている分を、知っていた場合は利益額と同等の額を請求できます。
著作権侵害で著作権者の名誉が損なわれた場合、名誉回復措置請求が可能です。具体的には謝罪広告を掲載させるなどの措置ができます。
最後に、著作権を侵害された際の相談先をお伝えします。
国が設置した機関で、相談窓口としての役割があります。相談内容に応じて適切な専門家や機関を相談してくれますので、どこに相談すればいいのかわからない人に向いています。
著作権侵害の解決実績がある弁護士に依頼することで、著作権侵害を食い止めたり、損害賠償を支払わせたり、不当利得を返還させたりできます。被害額が高額な場合は、あなたの主張を通すためにも弁護士に依頼した方が良いでしょう。
著作権侵害の時効は民事と刑事でそれぞれ規定されており、6ヶ月から20年間の期間が時効として定められています。
著作権侵害に気づいた場合、時効まで遠かろうが各種請求をされることをおすすめします。複製物が流通すればするほど、本来得られたであろう利益が失われますし、損害賠償請求や不当利得返還請求をしても確実に利益が返ってくる保証はありません。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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