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KL2020・OD・037
事業譲渡や会社分割はM&Aの手法の一つで、買収や合併をして会社個々の経営状態を経済状況に最適化することが目標です。手段はいくつか存在しますが、どの方法を利用するかは目的によって選ばれます。
M&Aの方法の中には、1つの会社に存在する複数の事業を切り離すものがあり、【事業譲渡】と【会社分割】の2種類が存在します。
事業譲渡と会社分割の両者は似ていますが、それぞれの説明をさせていただいた上で、その2つはなにが違うのかをお伝えします。
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目次
事業譲渡と会社分割のどこが違うのかを説明していきます。
M&Aは経営権を取得するか、取得しないかによって区分され、下記のようになります。
経営権 | 種類 | より詳しい種類 |
取得する | 合併 | 新設合併 吸収合併 |
分割 | 新設分割 吸収分割 | |
買収 | 株式取得 事業譲渡 | |
取得しない | 資本提携 | 相互保有 資本参加 |
業務提携 | 販売提携 生産提携 技術提携 |
新設分割と吸収分割は分割に分類され、事業譲渡は買収に分類されます。
事業譲渡とは、自社のもつ事業を他の企業へ移動させることです。そして事業譲渡には、事業すべてを他の企業に渡す【全部譲渡】と事業の一部を渡す【一部譲渡】があります。
会社分割とは、すでに存在する会社を複数の会社に分けることです。これによって事業を他の会社に移動、あるいは新しい会社を設立します。
細かく4パターンありますが、詳しくは事業譲渡と共に後述します。
支払対価 | 取引関係の移転 | |
事業 譲渡 |
現金 | 債権の移転は債権譲渡手続きが必要 債務は債権者の許可が必要 |
会社 分割 |
一般的には承継会社の株式。ただし吸収分割は金銭などの財産でも可 | 包括承継ゆえ契約相手に 許可を得る必要がない |
雇用の移転 | 課税 | |
事業 譲渡 |
労働者からの許可が必要 | 登録免許税、不動産取得税がかかり軽減措置は受けられない 消費税がかかる |
会社 分割 |
労働者からの許可は不要 労働承継法上、手続きが必要 |
登録免許税、不動産取得税がかかり軽減措置は受けられる 消費税はかからない |
前述のとおり、事業譲渡とは事業のすべてや一部をほかの会社へ渡すことですが、どのようなメリット・デメリットがあり、また実行するときなにが必要なのでしょうか。
具体的になんの事業を譲渡するのかですが、そもそも事業とはなにを指すのかという話から先にふれる必要があります。
事業譲渡でいう事業とは、「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産」という判例上の定義がありますが、具体的にはある事業運営に必要となる以下の財産の集合体のことです。
事業譲渡の特徴は上記の事業の中から、譲渡したいものだけを選べることです。
事業を受ける側のメリット | 譲渡する側のメリット |
● 譲り受ける事業のうち、どれを選ぶか任意で選択できる● 債務の特定ができるので、相手の債務を負わずに済む | ● 譲る事業を選択できる。つまり経営状況に応じて戦略的に動ける |
事業を受ける側のデメリット | 譲渡する側のデメリット |
● 対価として金銭が必要● 不動産取得税や登録免許税などの税負担がある ● 面倒な移転手続きがある |
●株主譲渡と比べると課税率が高い● 競業避止義務が発生する(手放した事業と同じ事業を再度立ち上げることができない) ● 資産や負債の移転手続きが面倒 |
譲渡する側に必要なことは、事業の全部もしくは重要な一部を譲渡する場合、株主総会の特別決議により承認を受けることです。一方、譲受する側(受け入れる側)に必要なことは、重要な財産を譲受する場合は取締役会の決議による承認を受けることです。
すべての事業を受ける場合は、株主総会の特別決議による承認手続が必要になることを覚えておくとよいでしょう。
事業譲渡は株主総会の特別決議や取締役会を経て行われるものですが、ある特定の条件下であれば、株主総会の特別決議が不要になります。どのような条件が必要なのでしょうか。
対象の資産の帳簿価額が自社の総資産額20%以下のとき、株主総会決議は必要ではありません。
譲受対価となる財産の帳簿価額合計資産額が純資産額20%以下の場合、株主総会決議は必要ありません。
事業譲渡の手続 | |
譲渡側 | 全部および重要な一部の譲渡のとき株主総会特別決議が必要 |
譲受側 | 重要な財産は取締役会の決議、すべての事業を受けるとき、株式総会の特別決議 |
簡易な事業譲渡 | |
譲渡側 | 譲渡資産が総資産額20%以下の場合、株主総会決議不要 |
譲受側 | 対価の財産の合計額が相手の純資産額の20%以下時は株主総会決議不要 |
会社分割には大きく分けて4つのケースがあります。また、それぞれのメリット・デメリットには何があるでしょうか。見ていきましょう。
M&Aには合併にしても統合にしても何かしらの対価が発生します。
原則として例えば合併であれば存続会社の株式が、株式譲渡であれば現金が対価です。事業譲渡の対価は現金で、会社分割は事業を継いだ【承継会社】の株式が対価になることが一般的です。
会社分割は、それは【支払われる対価を誰が受け取るか】と【分割された事業を誰が受けるか】によって区分されます。
1.吸収分割で分割型 | 2.吸収分割で分社型 |
3.新設分割で分割型 | 4.新設分割で分社型 |
吸収分割と新設分割にそれぞれ分割型と分社型が存在するかたちです。下記では吸収分割、新設分割、分割型、分社型について解説していきます。
対価を受け取る相手は2種類です。
1の分割会社の株主が受け取る場合を【分割型】、2の分割会社が受け取ることを【分社型】と呼びます。
分割された事業を受ける相手も2種類です。
1の既存会社の場合を【吸収分割】、2の新設会社の場合を【新設分割】と呼びます。
承継先の既存会社に分割型と分社型があり、新設会社にも分割型と分社型があると考えましょう。
1.吸収分割で分割型 | 2.吸収分割で分社型 |
3.新設分割で分割型 | 4.新設分割で分社型 |
メリット | デメリット |
● 倒産のリスクを分散させることができる● 会社の肥大化を防ぐ、改善 ● 事業承継で便利 |
●分割会社の代表取締役が新設会社の代表取締役に就任することはできない● 財務の手続きが面倒 ● 事業分割を受ける側の会社が非上場の場合、分割会社は株式を現金化しづらい |
吸収分割、新設分割共に手続きの際は取締役会及び株主総会の決議による承認決議、労働者、債権者保護手続きが必要になります。
会社分割の際に株主総会承認決議が必要と述べましたが、分割される事業が小さいときは承認決議を省略することができます。さて、何をもって事業が小さいといえるのでしょうか。以下の条件を満たしたときに簡易分割が可能になります。
①対象の分割事業が債務超過ではなく、また分割会社への対価が承認する純資産額を超過しないこと |
②反対株主の持ち株が議決権の総数の6分の1を超過していないこと |
③承継会社が公開会社ではない場合に、対価の株式が譲渡制限付株式ではないこと |
④分割会社への対価が承認会社の純資産額の20%を超過しない場合、承継会社の承認手続きが不要 |
⑤承継資産の帳簿価額の合計額が分割会社の総資産額20%を超過しない場合、分割会社の承認手続きが不要 |
事業譲渡と会社分割はよく似ていますね。新設分割は優秀な社員を新しい会社の社長にしたいだとか、社内で事業の整理をしたいときに使えます。冒頭でもお伝えしましたが、最後にもう一度違いを確認しておきましょう。
表:事業譲渡と会社分割の違い
支払対価 | 取引関係の移転 | |
事業 譲渡 |
現金 | 債権の移転は債権譲渡手続きが必要 債務は債権者の許可が必要 |
会社 分割 |
一般的には承継会社の株式。ただし吸収分割は金銭などの財産でも可 | 包括承継ゆえ契約相手に 許可を得る必要がない |
雇用の移転 | 課税 | |
事業 譲渡 |
労働者からの許可が必要 | 登録免許税、不動産取得税がかかり軽減措置は受けられない 消費税がかかる |
会社 分割 |
労働者からの許可は不要 労働承継法上、手続きが必要 |
登録免許税、不動産取得税がかかり軽減措置は受けられる 消費税はかからない |
吸収分割と事業譲渡は税金や労働関係の法律で複雑なので、どちらを利用するかは専門家と相談をするのがよいかもしれませんね。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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