業務委託契約書の損害賠償条項|対等な関係で仕事するための基礎知識

弁護士法人ネクスパート法律事務所
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業務委託契約書の損害賠償条項|対等な関係で仕事するための基礎知識

業務委託契約書に記載されている「損害賠償条項」とは、依頼を受けて仕事する受託者の報酬が支払われない、受託者が契約どおりの仕事をせず委託者側が被った被害などを補てんするための条項です。

業務委託契約を結ぶ際、このような損害を出さないことが大前提ですが、対等な関係で業務を遂行するためにも基礎知識を把握しておくことが大切です。そこで今回は、業務委託契約書に記載されている損害賠償範囲や注意点のポイントについてご紹介します。

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業務委託契約書における損害賠償義務の範囲を明確化

業務委託契約書における損害賠償義務の範囲を明確化

業務を依頼する「委託者」と、業務を遂行する「受託者」の損害賠償の範囲について確認していきましょう。受託者の損害は「報酬が得られない」ことです。一方、委託者の損害は「利益損失や信用を失う」など受託者よりも重要なものが想定されます。

受託者側から見た、損害賠償義務の範囲

受託者が債務不履行に陥った場合、委託者にとっては、営業損害やそれに伴って副次的に様々な損害が生じる可能性があります。したがって、受託者側から見た場合、契約書内で損害賠償義務を限定することが最も重要なポイントになります、限定する方法としては、「直接かつ現実に生じた損害」に限定することや、「直近●か月以内に受領した委託料を上限として損害を賠償する」などの規定を入れることが一般的です。

委託者側から見た損害賠償義務の範囲

委託者の債務不履行受託者が債務不履行に陥った場合、委託者にとっては、営業損害やそれに伴って副次的に様々な損害が生じる可能性があります。したがって、委託者側から見た場合、受託者の損害賠償義務の範囲に制限を設けないことで、上限なく損害賠償請求することができるような規定にしておくことが望ましいということになります。

故意に損害を与えると賠償責任の上限は無効化することも

故意に損害を与えるような行為をした場合、契約書に記載された損害賠償条項の範囲でしか責任を問えないのでしょうか。基本的には、受託者側の過失である場合、契約条項に従った責任追及を行うことになりますが、委託者側の過失は上限が無効化するケースを設けることも珍しくありません。

過去に上限の無効化が認められた判例

委託者が受託者に業務委託した「商品受注システム」が脆弱だったために、顧客のクレジットカード情報が流出しました。裁判では、受託者に重過失があったことを認め、業務委託契約中の損害賠償額の上限を定める規定が適用されるとの被告の主張を退けました。

参照元:東京地方裁判所判決/平成23年(ワ)第32060号

損害賠償条項に関する基礎知識

業務委託契約書面に記載されている、「損害賠償条項」に関する基礎知識について確認しましょう。そもそも、損害賠償条項とは何か、また業務委託契約書に損害賠償条項がない場合の記述について説明いたします。

損害賠償条項とは

損害賠償条項とは、委託者または受託者が契約書の内容に違反して相手に損害を与えたときに、賠償請求するためのものです。ほとんどの業務委託契約書には、この損害賠償条項が明記されています。法律的には、損害賠償の額の予定と解釈されます(民法420条1項)。

業務委託契約書に損害賠償条項がないと民法が適用となる

万が一、業務委託契約書に損害賠償条項の記載がなされていないとき、何をもとに損害賠償請求すれば良いのでしょうか。実はこの場合、民法を元に損害賠償請求することが可能です。

業務委託契約書に損害賠償条項を載せるときのポイント

業務委託契約書に損害賠償条項を載せるときのポイント

業務委託契約書に損害賠償条項を載せるときのポイントを以下にまとめました。言葉だけ聞くとどれも難しく感じるかもしれません。しかし、それぞれの意味を把握しておくことで、不要なトラブル回避に繋がるでしょう。

不法行為責任

不法行為責任とは、故意に損害を与えるなどの行為をした場合に問われるものです。この場合の損害とは、法律上で保護されるべき利益の侵害や、本来得られるはずだった利益の損失が該当します。

契約締結上の過失

契約締結の交渉中、交渉相手に契約が成立することを信頼させておきながら、合理的理由なく途中で交渉を終了させた場合、「契約締結上の過失」があるとされ、交渉相手から損害賠償請求される可能性があります。特に、業務委託契約は双方の信頼関係が非常に重要となるため、契約締結交渉を途中で交渉を終了させることのないよう注意したいところです。

損害賠償の範囲を指定

損害賠償条項を載せる際は、適用範囲についても指定しておくことが大切です。例えば、「受託者が委託者に損害を与えた場合」の記述だけでは、対象が抽象的過ぎて逆に相手への責任追及がしづらくなるでしょう。

損害賠償条項は「契約自由の原則」が適用される

契約自由の原則とは、委託者受託者ともに定めた損害賠償条項に納得すれば、どんな取り決めでも良いということです。そのため、必ずしも業務委託契約に関する民法に則った損害賠償条項である必要はないのです。

契約書に損害賠償の条項を記載するときの書き方見本

業務委託契約書を作成するときは、具体的な業務内容や報酬だけでなく、損害賠償が発生したときの取り決めについても記載しておくのが原則です。下図の業務委託契約書の書き方を参考に、損害賠償条項を契約書内に盛り込んでみてください。

契約書に損害賠償の条項を記載するときの書き方見本契約書に損害賠償の条項を記載するときの書き方見本

引用元:厚生労働省

ただし、上記はあくまでも一般的な例であり、個別の事情によって記載すべき項目や定義をより厳密に行うことが必要になる場合もあります。

少しでも不安があるのであれば、一度弁護士に相談いただくことをオススメします。

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業務委託契約の損害賠償条項に関する知識

業務委託契約の損害賠償条項に関する知識として、以下のことを把握しておくと良いでしょう。「瑕疵担保責任」と「責任限定条項」は、委託者受託者それぞれの利益を守るために、とても大切な項目です。

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは

瑕疵担保責任とは、受託者が納品したものに欠陥や不備があった場合に課される受託者の修補義務や損害賠償責任のことをいい、受託者は無過失でもこれらの責任を負います。例えば、納入した家電製品に不備があった場合、不備のないものに取り替える義務などがあります。

責任限定条項とは

責任限定条項とは、賠償額の上限を設けることを言います。業務委託契約書に「損害賠償額は、報酬〇ヶ月分を上限とする」といった記載事項を見たことはありませんか。実は、この内容が責任限定条項に該当します。

まとめ

業務委託契約書に記載されている損害賠償に関する記述は、受託者の非を責めるためのものではなく、健全な業務委託契約の遂行を目的としていることが伺えます。双方が気持ちよく業務を行うためにも、契約締結前に損害賠償に関する基礎知識を心得ておきましょう。

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2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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