キャリアアップ助成金とは|各コースと金額、手続き方法について

( 2件 )
分かりやすさ
役に立った
この記事を評価する
この記事を評価しませんか?
分かりやすさ
役に立った
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
キャリアアップ助成金とは|各コースと金額、手続き方法について

キャリアアップ助成金(きゃりああっぷじょせいきん)とは、契約社員やアルバイトの非正規雇用者に、正規雇用者に転換するなどのキャリアアップ措置を行った企業に対し、国から支払われる助成金です。

キャリアアップ助成金にはいくつかのコースがあり、行った措置に応じて助成金が支払われます。企業は制度をきちんと理解し、積極的に利用していくべきでしょう。

この記事では、キャリアアップ助成金の概要と7種類のコースについて説明します。

(※この記事の内容は平成30年4月1日現在の情報を参考としております。)

キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金の概要

まずはキャリアアップ助成金の概要について説明します。

キャリアアップ助成金の目的

キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用者のキャリアアップを促すための制度です。実際にキャリアアップ措置を行った企業に対し、助成金が支払われます。

・非正規雇用者を正規雇用者にキャリアアップさせる、『正社員化コース』

・非正規雇用者の賃金を増加させた場合に支払われる『賃金規定等改定コース』

・社会保険に未加入であった労働者を新たに加入させ、さらに基本給を増加させた場合に支払われる、『選択的適用拡大導入時処遇改善コース』

上記を含め、労働者に行う措置によって7種類のコースが設けられています。コースに応じて助成金の金額は変動します。

生産性の向上が認められた場合には金額が増加する

後述の『キャリアアップ助成金の7種類のコース』の章で、各コースごとの助成金の金額についてご説明しますが、キャリアアップ措置を行っただけでなく、キャリアアップ措置を行った結果、労働生産性が向上した場合には助成金の金額が更に増加します。

中小企業と大企業では金額が違う

キャリアアップ助成金は中小企業と大企業では金額が異なります。中小企業の定義は以下になります。

 

資本金の額・出資の総額

 

常時雇用する労働者の数

小売業(飲食店を含む)

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円

300人以下

キャリアアップ助成金の7種類のコース

キャリアアップ助成金の7種類のコース

キャリアアップ助成金には7種類のコースがあり、それぞれ労働者の条件や支給額が異なりますので、1つずつ順番に説明していきます。

正社員化コース

契約社員やアルバイトなどの有期雇用契約の従業員を正社員に転換したときに受給できるコース。契約社員やアルバイトの正社員化だけでなく、派遣社員の直接雇用化も対象になっています。

対象となる労働者

正社員コースで助成金を受給するには、対象となる労働者が以下の条件を満たしている必要があります。

・雇用されてから6ヶ月が経過している有期契約労働者、もしくは同一の派遣先で6ヶ月以上勤務している派遣労働者

・雇用時に『正社員にするよ』などの約束をしていない有期契約労働者

・キャリアアップした日の前日から数えて過去3年以内に、現在勤務している会社と親密な関係にある会社(親会社、子会社、関連会社など)で正社員、もしくは役員(取締役、監査役など)をしていないこと

・キャリアアップを行った事業主の3親等以内の親族ではないこと

・短時間正社員にキャリアアップしたにも関わらず、残業や休日出勤などをさせていないこと

・障害者支援(就労継続支援A型)を受けながら就労していないこと

・支給申請日の時点で、キャリアアップ後の雇用形態で継続して働いていること

・定年制の場合、キャリアアップ日から定年を迎える日までに一年以上の期間があること

・自社と密接な関係にある会社で定年を迎えた者でないこと

支給額

支給額は大企業と、中小企業で金額異なります。

大企業の場合

キャリアアップの内容

通常の1人当たりの金額

生産性の向上が認められる場合の1人当たりの金額

有期→正規

57万円

72万円

有期→無期

28万5千円

36万円

無期→正規

28万5千円

36万円

中小企業の場合

キャリアアップの内容

通常の1人当たりの金額

生産性の向上が認められる場合の1人当たりの金額

有期→正規

42万7,500円

54万円

有期→無期

21万3,750円

27万円

無期→正規

21万3,750円

27万円

手続きの流れ

①労働基準監督署にキャリアアップ計画の作成・提出

②就業規則に『転換制度』を規定する

③キャリアアップにあたり、転換制度に関する就業規則に応じた、試験などを実施する

④実際にキャリアアップさせる

⑤キャリアアップ後、6ヶ月経過したら助成金の申請が可能になる

⑥審査後支給される

賃金規定等改定コース

すべての有期労働者、もしくは雇用形態や職種に応じた一部の有期労働者に対し、基本給を2%以上増額させた場合に受給できるコース。

対象となる労働者

賃金規定等改定コースで助成金を受給するには、対象となる従業員が以下の条件を満たしている必要があります。

・賃金改定が行われる日の3ヶ月以上前から、かつ、改定後も6ヶ月以上継続して勤務していること

・増額改定された賃金を実際に受給していること

・賃金改定した日から6ヶ月間、その企業において雇用保険被保険者であること

・賃金改定を行った企業の事業主、または取締役と3親等以内の関係にないこと

・支給申請日に離職していないこと

支給額

すべての労働者の賃金を2%以上増額改定して場合した場合の金額は下記の通りです。

中小企業が、すべての有期契約労働者などの賃金を2%以上増額させた場合

増額改定された人数

1事業所当たりの金額

生産性の向上が見られた場合の事業所当たりの金額

1~3人

9,5000円

12万円

4~6人

19万円

24万円

7~10人

28万5,000円

36万円

11~100人

28,500円(一人当たり)

36,000円

大企業が、すべての有期契約労働者などの賃金を2%以上増額させた場合

増額改定された人数

1事業所当たりの金額

生産性の向上が見られた場合の事業所当たりの金額

1~3人

71,250円

90,000円

4~6人

14万2,500円

18万円

7~10人

19万円

24万円

11~100人

19,000円(1人当たり)

24,000円

中小企業が、一部の有期契約労働者などの賃金の2%以上増額させた場合

増額改定された人数

1事業所当たりの金額

生産性の向上が見られた場合の事業所当たりの金額

1人~3人

47,500円

6,0000円

4人~6人

95,000万円

12万円

7人~10人

14万2,500円

18万円

11~100人

14,250円(1人当たり)

18,000円

大企業が、一部の有期契約労働者などの賃金の2%以上増額させた場合

増額改定された人数

1事業所当たりの金額

生産性の向上が見られた場合の事業所当たりの金額

1~3人

33,250円

6,0000円

4~6人

71,250万円

12万円

7~10人

95,000円

18万円

11~100人

9,500円(1人当たり)

18,000円

中小企業において3%以上増額改定した場合には助成金が加算されます。

手続きの流れ

・労働基準監督署にキャリアアップ計画の作成・提出

・賃金規定などの増額改定の実施

・キャリアアップ後、6ヶ月経過したら助成金の申請が可能になる

・審査、支給決定

健康診断制度コース

4人以上の有期契約労働者に対し『法定外の健康診断制度』を新たに規定、実施した場合に受給できるのがコース。

対象となる労働者

以下の4項目すべてに該当する労働者が対象です。

・助成金を受給する会社の事業主に雇用されている有期契約労働者であること

・入社時の健康診断、もしくは定期健康診断実施日に、助成金受給対象企業の雇用保険被保険者であること

・受給対象企業の事業主と3親等以内の関係にないこと

・支給申請日に離職していないこと

支給額

 

1事業所に支払われる助成金の金額

生産性の向上が見られた場合の金額

中小企業

38万円

48万円

大企業

28万5,000円

36万円

手続きの流れ

・労働基準監督にキャリアアップ計画を作成し、提出

・就業規則に健康診断制度を追加する

・健康診断を4人以上に実施する

・支給の申請を行う

・審査、支給決定

賃金規定等共通化コース

有期契約労働者に対し、その職務内容などに応じて正規雇用労働者と共通の賃金規定を作成し、適用した場合に受給できるコース。

対象となる労働者

以下の①~⑤すべてを満たしている労働者が対象です。

・賃金規定を共通化した日の前日から3ヶ月以上の前から勤務していて、共通化後6ヶ月以上の期間継続して勤務していること

・正規雇用労働者と同一の区分に格付けされていること

・賃金規定を共通化した日から6ヶ月間、受給対象の企業において、雇用保険被保険者であること

・受給対象事業者の事業主と3親等以内の関係にないこと

・支給申請日に離職していないこと

支給額

 

通常支払われる助成金の金額

生産性の向上が認められる場合の助成金の金額

中小企業

57万円

72万円

大企業

42万7,500円

54万円

最大で20人までとなりますが、2人以上に共通化を実施する場合は助成金が追加されます。

手続きの流れ

・キャリアアップ計画を作成し、労働基準監督署に提出する

・賃金規定などの共通化を実施する

・共通化した後の賃金を6ヶ月支給すると、助成金の申請ができるようになる

・審査、支給決定

諸手当制度共通化コース

有期契約労働者に対し、正規雇用労働者と共通の諸手当を与える制度を設け、適用した場合に受給できるコース。

対象となる労働者

以下の①~④すべてを満たしている労働者が対象です。

・共通化制度を適用した日の前日から数えて3ヶ月以上前から勤務しており、適用後も6ヶ月以上継続して勤務していること

・共通化制度を適用した日以降の6ヶ月間、受給対象企業において、雇用保険被保険者であること

・受給対象企業の事業主と3親等以内の関係にないこと

・支給申請日に離職していないこと

支給額

 

通常支払われる助成金の金額

生産性の向上が認められる場合の助成金の金額

中小企業

38万円

48万円

大企業

28万5,000円

36万円

最大で20人までとなりますが、共通化した人数や、諸手当の項目が増えると助成金が追加されます。

手続きの流れ

・キャリアアップ計画を作成、労働基準監督署に提出する

・諸手当に関する制度の共通化を実施する

・共通化後、6ヶ月分の給料を支払うと助成金の申請が可能になる

・審査、支給決定

選択的適用拡大導入時処遇改善コース

有期契約労働者を社会保険に加入させ、さらに基本給の増額を行った場合に受給できるコース。

対象となる労働者

以下の①~⑤すべてに該当する労働者が対象です。

・受給対象企業に雇用されている有期契約労働者であること

・社会保険加入日の前日から起算して過去3ヶ月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であること

・受給対象事業の事業主の3親等以内の関係にないこと

・支給申請日に離職していないこと

支給額

中小企業の場合

基本給の増額割合

通常の金額(1人当たり)

生産性の向上が認められた場合の金額(1人当たり)

3%以上5%未満

19,000円

24,000円

5%以上7%未満

38,000円

48,000円

7%以上10%未満

47,500円

60,000円

10%以上14%未満

76,000円

96,000円

14%以上

95,000円

12万円

大企業の場合

基本給の増額割合

通常の金額(1人当たり)

生産性の向上が認められた場合の金額(1人当たり)

3%以上5%未満

14,250円

18,000円

5%以上7%未満

28,500円

36,000円

7%以上10%未満

33,250円

42,000円

10%以上14%未満

57,000円

57,000円

14%以上

71,250円

90,000万円

手続きの流れ

・キャリアアップ計画を作成し、労働基準監督署に提出する

・有期雇用契約者を新たに社会保険に加入させ、基本給の増額を実施する

・実施後、6ヶ月分の賃金を支給すると、助成金の申請が可能になる

・審査

・支給決定

短時間労働者労働時間延長コース

雇用する有期雇用労働者に対し、

・短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、さらに社会保険に加入させる

もしくは

・週所定労働時間を1時間~5時間延長し、さらに社会保険にさせる、加えて賃金規定等改定コースもしくは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施する

上記のどちらかの措置を行った場合に受給できるのが短時間労働者労働時間延長コース。

対象となる労働者

以下の①~⑤いずれかに該当する労働者が対象です。

・週所定労働時間を5時間延長した日の前日から数えて6ヶ月以上前から継続して勤務している

・週所定労働時間を1時間~2時間延長した日の前日から数えて6ヶ月以上前から継続して勤務していて、かつ延長実施後の基本給が13%以上増加している

・週所定労働時間を2時間~3時間延長した日の前日から数えて6ヶ月以上前から継続して勤務していて、かつ延長実施後の基本給が8%以上増加している

・週所定労働時間を3時間~4時間延長した日の前日から数えて6ヶ月以上前から継続して勤務していて、かつ延長実施後の基本給が3%以上増加している

・週所定労働時間を4時間~5時間延長した日の前日から数えて6ヶ月以上前から継続して勤務していて、かつ延長実施後の基本給が2%以上増加している

支給額

短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、さらに社会保険に加入させた場合の助成金の金額

 

通常の金額(1人当たり)

生産性の向上が認められる場合の金額(1人当たり)

中小企業

19万円

24万円

大企業

14万2,500円

18万円

週所定労働時間を1時間~5時間延長し、さらに社会保険にさせる、加えて賃金規定等改定コースもしくは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合の助成金の金額(中小企業の場合)

 

通常の1人当たりの金額

生産性の向上が認められる場合の1人当たりの金額

1時間~2時間

38,000円

48,000円

2時間~3時間

76,000円

96,000円

3時間~4時間

11万4,000円

14万4,000円

4時間~5時間

15万2,000円

19万2,000円

週所定労働時間を1時間~5時間延長し、さらに社会保険にさせる、加えて賃金規定等改定コースもしくは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合の助成金の金額(大企業の場合)

 

通常の1人当たりの金額

生産性の向上が認められる場合の1人当たりの金額

1時間~2時間

28,500円

36,000円

2時間~3時間

57,000円

72,000円

3時間~4時間

85,500円

10万8,000円

4時間~5時間

11万4,000円

14万4,000円

手続きの流れ

・キャリアアップ計画を作成し、労働基準監督署に提出

・週所定労働時間の延長を実施する

・延長後6ヶ月分の賃金を支給すると、助成金の申請が可能になる

・審査、支給決定

まとめ

キャリアアップ助成金の概要、目的、各コースや手続きの流れについて説明しました。従業員をキャリアアップさせることは、会社の士気や生産性を高めることに繋がります。企業・従業員どちらにもメリットがありますので、キャリアアップ助成金を利用しながら積極的にキャリアアップを実施していきましょう。

また、不明な点がある場合は厚生労働省のホームページ内に各案内が記載されています。実施の際に不明な点がある場合には参考にしましょう。

数十万~数百万の弁護士費用、用意できますか?

決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。

Cta_merci

離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。

【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】

  • 保険料は1日あたり約96円
  • 通算支払限度額1,000万円
  • 追加保険料0円で家族も補償

保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。

ベンナビ弁護士保険に無料で資料請求する

KL2020・OD・037

この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

この記事を見た人におすすめの記事

この記事を見た人におすすめの法律相談

  • アルバイトで厚生年金・社会保険
    いきなりすぎて滅入っています。 現在、アルバイト雇用で週6日50時間以上...
  • 雇用契約をしなかったケースでのアルバイト代支払いで異議申し立ては法的に可能でしょうか
    歯科医師として週2日アルバイトしていました。 アルバイト前にブランク...
  • 正社員登用を考慮すると言われていたが反故にされました
    昨年の10月まで派遣社員として従事しておりました。 派遣先企業から正...
  • 正社員と準社員の手当の違い
    準社員として勤務しています 社員と同じ勤務です 冬季燃料手当、住宅手当...

new企業法務の新着コラム

もっと見る

企業法務の人気コラム

もっと見る

企業法務の関連コラム

編集部

本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。

※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
 詳しくはあなたの弁護士の理念と信頼できる情報提供に向けた執筆体制をご覧ください。

※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。